観客賞スポットライト 室内合唱部門 最終回

 





今回は室内部門、最後の2団体をご紹介します。




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伏見稲荷大社

 



見た目からは想像できない素晴らしい発声の団体と言えば?








10.岡山県・中国支部代表

倉敷少年少女合唱団

(女声23名・2年連続出場・第69回大会から3回目の出場)


昨年の感想では


あんな可愛いのに大人寄りの立派な声で!
ギャップが凄かったです(笑)。

「地球に寄り添って~センスオブワンダー~」
この曲をここまで仕上げたのは凄いと思ったな。
まるで違った曲に聞こえた!

曲の良さを最大限伝えられる団体だと思って。
この曲、ちょっとやってみたいな…
と思うぐらい、作品の魅力が伝わってきました。

…と好評でした。

さて、今年の演奏曲は?
指揮者の難波夕鼓先生からメッセージをいただきました。

 

 


こんにちは!倉敷少年少女合唱団です!
美しい白壁の街(文吾様のお膝元)岡山県倉敷市で、園児~高校生等の団員約150名が、今年の声楽アンサンブルコンテスト「全国大会」で2度目の金賞・本選7位など、生き生き活動しています!
昨年の北海道・全国で、子どもらしく「センスオブワンダー」を演奏した所、多くの方々に、感動した、涙したと温かいお言葉を頂き、皆大喜びでした!
子どもたちも大好きな超名曲ですが、高名な先生方からも「珍しい」「この曲で全国は凄い」など、微妙な?お褒めの言葉を頂きました。笑

そこで…!という訳ではないのですが、以前から、一度は子どもたちと難曲といわれる曲に挑戦してみたく、「難曲でも美しい、練習したい!」と思える曲を探していた所、鈴木輝昭先生の「幻の風・光の海」から3rd Sceneに出会い…。
部活と違い基本「週1」練習の為、大変でしたが、また全国の舞台で皆様にお聴き頂ける事となり子どもたちも喜んでいます。
小学生も含む23名という超少数での2群の大曲への挑戦となりますが、もともと「童声(女声)合唱のための」曲。
子どもから大人へと変わる「今しかない美しい声」が、煌めく風や輝く海、永遠への祈りを表現するのに一番ふさわしい曲と信じています。

また、課題曲F4「その木々は緑」も、まさに思春期の彼らのための曲。
だれよりみずみずしく、伸びやかに歌えるよう、力を合わせてがんばります!
子どもたちの歌声、楽しみにお聴き頂ければ幸いです。

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声楽アンサンブル全国大会での写真ということ。




難波先生、ありがとうございました。
そうなんです、私が住んでいる倉敷の自慢の合唱団!
ヒイキして、出迎えと演奏後の拍手は大きめになったりして(笑)。


鈴木輝昭先生の「幻の風・光の海」は世界の子供たちが詠んだ俳句をまとめた「地球歳時記」をテキストにされているそうですね。
埼玉の岩槻城南中学の委嘱作品ですから、倉敷少年少女さんが演奏されても不思議ではないのですが、2群合唱、リズム、音響と大変な難曲。
しかもそれを23名で演奏されるとは!

ただ、先日岡山で行われた中学校部門の全国大会を聴いて、気付いたことがありまして。
まず私が思う「中学生」のイメージを軽々と飛び越える演奏がいくつもあったこと。
そして、作品への共感を持った演奏は、本当に心を打つということでした。
昨年の倉敷少年少女さんの「地球に寄り添って~センスオブワンダー~」でも、一心に集中した「地球に寄り添えば…」のフレーズで、つい涙腺が緩んでしまったんですが。
たとえ難曲であっても共感し、自分たちの作品として歌うことができれば、観客の心に届くのではないか?と。

課題曲の「その木々は緑」も自分たちの歌として伝えることができる作品。
「幻の風・光の海」と共に、難波先生の仰る「子どもから大人へと変わる『今しかない美しい声』」で聴かせていただくのを楽しみにしています。












室内合唱部門、最後の団体です。
揺るぎない「絶対王女」の団体と言えば?


 

 

 

 

 




11.佐賀県・九州支部代表

女声合唱団ソレイユ
https://www.facebook.com/soleilsaga/

(女声24名・14年連続出場・第59回大会から14回目の出場)



昨年の感想では


聴いた瞬間に
「はい、金賞シード決定!」みたいな。

何歌ってもソレイユ色に染めてくれるんだけど
しっくりくるんだよね。

豊かな音色(ねいろ)と引き出しの多さが
やはり素晴らしい。

別格の快演。
納得の麦藁帽子、自由曲も、各パートとも主張しつつ、決め所はしっかりとハーモニーもしっかりと鳴っていて、素晴らしかった。


…などと大変好評。
14年連続出場、6年連続金賞1位、観客賞でも常に上位という、素晴らしい団体です。

ソレイユさんの今年の演奏曲は
課題曲F3 飛翔―白鷺(「内なる遠さ」から) (高野喜久雄 詩/髙田三郎 曲)
自由曲にMACONCHY, Elizabeth「Prayer Before Birth」。
J.Rutter「When Daisies Pied」。
どんな作品なんでしょう?

 

ソレイユ団員さんからメッセージをいただきました。

 


今年の自由曲は英国の作品です。
1曲目は女性作曲家マコンキーの作品。
はい、音取り難しかったです(笑)

歌詞の訳の一部を紹介します。



ぼくはまだ生まれていない。

ぼくを慰めてよ。

ぼくは不安だから、

人間がぼくを高い壁で囲い、

強い薬をぼくに飲ませ、賢い嘘で誘い、

黒い拷問台でぼくを苦しめ、

血の虐殺に処するのではないかと。


第2次世界大戦の最中に生まれる胎児が、生まれてくる過酷な世界に対し、不安と恐怖に怯えながらも生き抜くための力を求めます。
胎児の祈りを通して、人間の命を軽んじる当時の世界の現状に警鐘を鳴らしている作品です。

2曲目は、ジョン・ラターがジャズピアニストであるジョージ・シェアリングに捧げたマドリガルの1曲です。
私たちの出番は1日目の最後みたいなので、1日の締めくくりの曲としてさわやかな気分で終われるように、会場の皆さんと楽しめたらと思います。

令和2年3月29日(日)に、女声合唱団ソレイユ15周年にして初のコンサートを開催します!
今まで姉妹合唱団の佐賀女子高校合唱部さんのコンサートに出させてもらうことはありましたが、自分たちでコンサートを1から作るのは初めてで、現在試行錯誤中でございます。
詳しくは団のfacebookページやTwitterに随時更新していく予定ですのでよろしければご覧くださいませ。

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 九州支部大会後とのこと。



ありがとうございました。

1907年生のMACONCHY, Elizabethの作品は、かなり難解な無伴奏現代曲なんですが、テキストもかなり恐ろしいですね…。
一転、Rutterの「When Daisies Pied」は「Birthday Madrigals」5曲目の終曲で、ピアノも入り明るく軽やかにジャジーな雰囲気…という、幅がメチャクチャある選曲。

どちらも究めるのは大変な作品で、さらにひとつのステージでこの対照的な2曲を演奏できる団体?
…などと疑問に思ってしまうのですが、ソレイユさんなら間違いないでしょう!

初のコンサートを前に、ソレイユさんがバラエティに富んだ作品を、どれだけ掴んで演奏できるか?
最高のプロモーションの機会です。
この室内合唱部門のフィナーレを、ソレイユさんの華やかな音で見事に飾っていただきたいと思います!



(室内合唱部門のご紹介は今回で終了です。
 明日の同声合唱部門に続きます)

 

 

 

観客賞スポットライト 室内合唱部門 その3

 

 

 

 

全国大会2日目の日曜日、「団の垣根を越えてノーサイドの精神で集まる『史上かつてない2次会』」が開催されます。
今年は奈良の団体:クール シェンヌさんが有難くも、幹事を引き受けて下さいました。

 

 




そういうわけで2日目の同声・混声合唱部門への参加者だけではなく、1日目の大学ユース、室内合唱部門、さらには観客のみなさまの参加も募集されているそうです。
私も行く予定です!
参加ご希望の方は、早めにご連絡お願いしますね。


 

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清水寺へ登る二寧坂からの景色 Photo by いよさん

 

 


室内合唱部門、今回も3団体をご紹介します。
個々が活きた演奏をされる団体と言えば?






7.徳島県・四国支部代表

Serenitatis Ensemble

(混声22名・4年連続出場・第65回大会から5回目の出場)



結成が2005年の「セレアン」とも呼ばれるSerenitatis Ensemble。
Serenitatis (セレニターティス) には、ラテン語で「晴れやかな」「穏やかな」という意味があるそうです。

昨年は西村朗「「死にたまふ母」より「4.かぎろひの」を演奏され。


「大人の市民合唱団」!って感じ。

良い意味で人間臭い団体ですよね。

熱演で、こっちも手に汗握るほど巻き込まれて!

…などという感想がありました。


今回の演奏曲は課題曲G2 Ensam i dunkla skogarnas famn (Emil von Qvanten 詩/Jean Sibelius 曲)
自由曲は「After…」(信長貴富作曲)から「遠くへ」「そのあと」

5番目に出場の合唱団「い~すたん」さんも選ばれている曲集から3、4曲目。
谷川俊太郎氏の、東日本大震災後に発表された詩に作曲された無伴奏作品です。

「遠くへ」は「希望よりも遠く/絶望をはるかに超えた/遠くへ」
「前章を経て歌われる『絶望』の語は、むしろ『希望』よりも生の実感を伴った力強い響きとして出現する。」
終曲の「そのあと」は「静かに、自己内部へと着地する終章。旋法による祈り、魂の鎮め。」…と書かれています。

毎回、力のこもった演奏をされる印象のセレアンさん。
今回も作品の力をさらに増す演奏をされることでしょう。


 



続いて軽やかなリズム、華やかな音色の女声合唱団と言えば?

 





8.東京都・東京支部代表

杉並学院・菊華女声合唱団

(女声24名・3年ぶりの出場・
 杉並学院・菊華混声合唱団としては
 第64回大会以来5回目の出場)
(菊華アンサンブルとしては第59回以来7回目の出場)
(※リンクは菊華アンサンブルHPのもの)


3年前は課題曲に、なかにしあかね「木のように」 、自由曲にRihards Dubra「Ave Regina Caelorum II」「Laudate Dominum」を演奏され。

オシャレでしたよねー。

課題曲、言葉の扱いも良かったです。
自由曲もピアニッシモからの歌い分け、
OG合唱団らしくパートごとの統一感も良い。

透明感のある声は好み!

…などという感想がありました。

 
今回の演奏曲は課題曲F2 Kantat till ord av W. von Konow(Walter von Konow 詩/Jean Sibelius 曲)
自由曲Ēriks Ešenvalds「LUX AETERNA」
Joan Szymko「HODIE」

エセンヴァルズは穏やかな流れから徐々に盛り上がる、この作曲家特有の美しさを湛えた作品。
ジョアン・シムコーの作品はリズミカルな旋律が魅力です。
きっと杉並学院・菊華さんに合っているのでは!


東京支部大会を聴かれた方の感想では 

 杉学菊華、とっっっても良かったですよ!
今回はまず選曲が良くて、特にエシェンヴァルズのLUX AETERNAは温もりある響きが広がって作品の幻想的な世界観にホール全体が包まれるようでした。
今年は菊華アンサンブルの演奏会にも行ったのですが、その時の雰囲気をコンクールでも再現したような印象です。
良い意味で例年のコンクールっぽさがないというか、ミニコンサートのようでした。

勿論統一感あるアンサンブル力や豊かな響きを生む発声などの基礎力は相変わらずの高さで。
それが表現の方向に最大限に活かされたような演奏だったなと思います。

 

ほうほう。このエセンヴァルズの作品、ちょっと聴いてみましょうか。



なるほど、良い曲!
「ミニコンサートのよう」との感想から、今回の演奏にも期待が高まります!




 



昨年、圧倒的票数で観客賞1位!
いつも観客の心に響く演奏の団体と言えば?


 

 

 

 

 


9.長野県・中部支部代表

合唱団まい

(混声23名・11年連続出場・第49回大会から17回目の出場)


昨年、課題曲G1、自由曲に信長貴富「不完全な死体」から「IV.歌曲」「V.不完全な死体」、「ヒスイ」を演奏され、投票や座談会でも熱い感想が並んだまいさん。


泣いちゃいましたよ。
もう、「まい劇場」開幕!

魂を鷲掴みにされました。
何故か、涙が溢れました。

ソリストさんがもう合唱とか歌以前に、しんとしみる優しい優しい声で、何時間か経ったけど思い出すとまだ涙腺が弛む

…などと絶賛が並びました。
さて、今回の選曲は?
団員さんからメッセージをいただきました。

 

 


課題曲G3「蜂が一匹…」(「無声慟哭」より 宮澤賢治詩/林光 曲)
作曲家、林光は自他ともに認める「ケンジニアン」であったといいます。
彼の「無声慟哭」は賢治の最愛の妹トシの死の直後に書かれた「無声慟哭」の5編の詩から「松の針」「白い鳥」「永訣の朝」の3つを選び大幅に刈り込み、更に3編の詩からなる「オホーツク挽歌」の「鈴谷平原」から採ったこの「蜂が一匹…」を加えた4曲で構成されています。
「オホーツク挽歌」はトシの死後、賢治が旅にでた時のことを書いた作品です。
蜂が青空に飛び去る何気ない風景から始まり、解放され和らぐ心と後悔や哀しみが入り混じり揺れている。
飛んでいった蜂はトシだったか。
そして、この曲はこの言葉で終わります。
「こんやはもう標本をいっぱいもって/わたくしは宗谷海峡をわたる」
賢治は旅を経て、日常へ戻って行く心の節目を見つけたのでしょう。
生きていることで感じられるあらゆるよろこびと、喪ったことによるうれいや哀しみ、後悔が混在し、それらを受け入れて生き続けていく。
それでよいのだと。
作曲家の賢治への愛で曲が結ばれていると思っています。

自由曲 混声合唱によるうたの劇場「不完全な死体」より「Ⅰ 書物の私生児」「Ⅵ〈終曲〉流れ星・流れ星」(寺山修司 詩、信長貴富 曲)
東京室内歌劇場の委嘱で2013年に10人の声楽アンサンブルのために書かれたこの作品は、ピアノ、三味線と歌い手で「寺山修司の肖像」を創り上げていくものです。
特に、今回取り上げた2曲は三味線が加わっていることで、独特な寺山修司の空気感が際立ちます。
完全な形で演奏されるのが望ましいですが、コンクールでは時間の制約もあり短縮版でお届けします。
三味線の演奏は、京都出身の三味線奏者 野澤徹也先生。
その艶やかな音色にも是非ご注目ください。

 さ〜て、お立会い!
 三味線の音色に誘われ浮かれた合唱団まいは一体どのようなことになりますやら。
 信長貴富の音楽により鮮やかに描き出される「寺山修司の肖像」と劇団まいの熱演を、しかと御覧くださいませ!!

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2018年3月4日に行われた、CANTUS ANIMAE with 合唱団まい アンサンブルの饗宴 の楽屋裏にて撮影されたものとのこと。




ありがとうございました。
昨年のバードもそうでしたが、毎回まいさんの課題曲は自分たちの歌として自由曲のように演奏される印象なのですが、今回の「蜂が一匹…」もそれが期待できますね。
そして自由曲は昨年好評だった「不完全な死体」から、昨年は演奏されなかった第1曲と終曲の2曲。
しかも三味線との協演!
別の団体の演奏で聴いたところ、三味線とピアノの音色に導かれるように、寺山修司の妖しい世界が広がりました。
「書物の私生児」は「いろは四十八文字を紙に書き/鋏で切ってならべかえてみる」と始まる、シュールレアリスムな詩。
一見、無秩序な羅列の中に、寺山修司の人生が垣間見え。
さらに音楽も歌舞伎、いや、謡いのようなソリストから昭和歌謡、いや演歌?と音楽的にも幻惑されてしまいます。

 


寺山の詩や戯曲の台詞などをテキストにし、「寺山修司の肖像」を立ち現せることをもくろんだ意欲作です。
サブタイトルの「うたの劇場」は、歌を舞台芸術の中で相対化する意図が込められて付けられています。

 

個人の表現力が非常に要求される作品なのですが、昨年のまいさんの演奏からすると、それは保証されたも同然。
「うたの劇場」と題されたこの作品。
みなさん、劇団まいさんの公演を見逃してはいけませんよ!




(明日に続きます)

 

観客賞スポットライト 室内合唱部門 その2




再度観客賞の投票についてご説明します。



参加資格:
「大学ユース部門」「室内合唱部門」
「同声合唱部門」「混声合唱の部」、
それぞれ全団体を聴いていること。
(その部門の出演者は投票できません)



投票方法は2つあります。


1)ツイッターによる投票

投票方法:ご自分のツイッターアカウントで「室内合唱部門」ならハッシュタグ 


#室内合唱19


を付けて23日室内合唱の部終演(予定17:06)から審査発表前の18:00までに良かった2団体を書いてツイート。


その際、各団体の後に感想を書いていただけると、とても嬉しいです。
1団体だけの投票でも結構ですよ。
3団体以上を書かれると無効です。すみません・・・)

※昨年、ハッシュタグを間違えた方が何人かいらっしゃいました。
1文字でも間違うと捕捉できないので正確にお願いします!


ツイート投票の例:

ムジカ●● 熱い演奏に燃えました!
▲▲声友会 密なアンサンブルと笑顔が良かったです。#室内合唱19



ツイッターアカウントを持っていない方は

2)メールによる投票

投票方法:メールアドレス
bungo0618*yahoo.co.jp
(↑ *を@に替えて下さい)
良かった2団体を書いて送って下さい。

件名は「観客賞」で。
締め切りの時間はツイッターでの投票と同じです。


いかがでしょうか?
つまり


1)その部門の出演者じゃない全団体聴いた人

2)2団体もしくは1団体を書いて

3)部門終了後すぐに投票


…してくださると、とってもありがたいです。
たくさんのご投票をお待ちしています!

 

 

 

 

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嵐山の渡月橋 Photo by いよさん

 

 



今回も3団体をご紹介します。
最初の団体は、ルネサンス合唱音楽の広報係さんが4年ぶりの登場です!



 

 

 

 

 


4.栃木県・関東支部代表

ルックスエテルナ

(混声20名・4年ぶりの出場・第65回大会から4回目の出場)



6年前、4年前の出場時には自由曲に15世紀の作曲家、ギヨーム・デュファイの作品を演奏されたルックスエテルナさん。
観客賞でも人気で4年前は1票差で2位。

座談会では

「課題曲G1、素晴らしかったですよね!」
「これだけ短いフレーズの中にこんなにたくさんのニュアンスが入るのか!と驚きました」
「場面転換がかなりあって、それが鮮やかで。指揮者も一緒に歌っているのに音楽がその都度新しく立ち上がり、音色が変わるのが素晴らしかった」
「デュファイのお洒落な感覚が団員さんの体の中にしっかり入っている!」

…と熱く語ることに。

今回の課題曲はもちろんG1の「Ave Maria」。
16世紀の作曲家ビクトリアは、ルックスエテルナさんにはむしろ新しめの作曲家?(笑)
さて、自由曲は何を選ばれたのでしょう。

指揮者の内田等先生からメッセージをいただきました。

 


4年ぶりに全国のステージに帰ってきました­。
メンバー一同、大好きな「オケゲム」のミ­サ。Missa"cuiusvis toni"よりCredoをフリギア旋法で­演奏します。

この4年間、私たちは相も変わらずオケゲ­ムやデュファイなどの初期ルネサンス音楽に­多く取り組んできました。
その中で、より当­時の演奏スタイルに近づいてみようとさまざ­まなチャレンジをするようになりました。
そ­の一つが、クワイアブックを囲んで演奏する­スタイルです。
これは、メンバーの声をまさ­に振動と共にとらえることができ、ひとかた­まりになることで、より「祈りを深め」なが­ら歌うことができ、当時の修道僧たちになっ­た気分になれて、とてもエキサイティングで­す。

またもう一つ、ラテン語の発声について、­楽曲成立当時のフランドル地方の発音で歌う­ようになりました。
発音指導を専門家の渡辺­研一郎先生にご指導いただいて取り組んでい­ます。
500年前の絵画にある料理をレシピ­化して、作って食べるような感覚と申しまし­ょうか、これまたワクワクする取り組みです­。
実は、これらの取り組みは賛否両論あり、­到底受け入れられないという立場の方もいら­っしゃるようです。
しかし今回、全国のステ­ージで我々がこのスタイルでチャレンジする­ことにより、合唱ファンの皆さんに「こうい­うスタイルもあるのか」と認知してもらうチ­ャンスになると考えています。
古都・京都で­古い古い楽曲を、古い古いスタイルで演奏し­ます。

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2018年4月「小さな夜の音楽会」出演のとき­とのこと。

 



内田先生、ありがとうございました。
Missa"cuiusvis toni"は「どのような旋法でも演奏できるミサ」と訳されていますね。
「フリギア旋法」「クワイアブック」「楽曲成立当時のフランドル地方の発音」とドキドキするような言葉が並びます!

写真にある昨年の「小さな夜の音楽会」に私も聴きに行ったのですが、内田先生が書かれているようにクワイアブックで演奏され。
デュファイ、ジョスカン、バードの作品が「この人たち、本当に好きなんだな…」と思わせる演奏でした。

ふたたび4年前の観客賞座談会に戻りますが


「この時代の、こういう曲が大好きなんだ!」
それが伝わるのが、もう、ね。

やっぱりさ、やらされているんじゃなくって
自分たちが選んだ曲は演奏から伝わるよね。
「好きなんです!」って。



この京都での全国大会、さまざまな作品が演奏されます。
齢を重ねても、合唱を続ける意味とは何か?
ルックスエテルナさんの演奏を聴けば、その答えがわかるかもしれません。


 

 

 





昨年、鮮烈なデビューを飾った南の地からの団体と言えば?








5.沖縄県・九州支部代表

合唱団「い~すたん」
https://www.facebook.com/Chorus.EASTERN/

(混声24名・2年連続出場)



昨年の初出場時には沖縄の曲で揃えた自由曲で、冬の札幌を沖縄に変えたい~すたんさん。

「凄く良かった。沖縄の人が作る音楽がありました」
「アンサンブルがすごくシンフォニックに鳴っていて。
 良い意味で24人の合唱とは思えない。
 人の声を聴く、素朴で根源的な愉しみがありました」

…などと好評でした。


さて、今年はどんな曲を選ばれたのでしょう?
団員さんからメッセージをいただきました。

 


合唱団「い~すたん」です。
昨年は団結成以来初めて全国大会に出場し、より多くの方にい~すたんを知っていただくことができました。
昨年の開催地は北海道でありいろんな意味で貴重な経験をしました。
まず、気温差。
当時沖縄が25℃に対して、札幌が-3℃・・・。
道路が凍って歩くのもままならず・・・、私たちにとって本番以上に移動が試練になっていたような気がします。
今年の開催地は京都ですが、京都も11月末はかなり冷えると聞いていますので、体調管理には十分気を付けて挑みたいところです。 

今年は、課題曲がG3(蜂が一ぴき)自由曲では、谷川俊太郎作詞から①「無伴奏混声合唱のための After..」から「言葉」(作曲:信長貴富)、②「混声合唱組曲 五つの願い」から「若さのイメージ」(作曲:三善晃)の2曲を演奏します。 

選曲を見てお気づきかと思いますが、沖縄色の強かった昨年から一転して今年は日本の名作に挑みます。 

「言葉」について、日本は、これまで地震や台風などの災害に幾度も見舞われてきました。
嘆き、怒り、悲しみ・・・様々な感情が、ヴォカリーズから始まります。
一度はその感情や言葉まで失いかけますが、次第に言葉がエネルギーと伴って発芽していきます。
そして、新たに立ち上がる意味。最後もヴォカリーズで締めくくられますが、そこでその過程を感じ取っていただけるでしょう。 

「若さのイメージ」では、「言葉」とは詩のニュアンスは大きく変わりますが、私たちのエネルギーを素直にぶつけられたらと思います。 
 団員一丸となって皆さまの心に響く合唱を目指してきたので、お楽しみいただけますと幸いです。

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九州大会表彰式後ということ。

 



ありがとうございました。

みなさんご存知とは思いますが、10月末に沖縄の首里城が火災に遭いました。
このメッセージは火災前にいただいたのですが、い~すたん団員さんのショックはいかばかりかと考えます。

「無伴奏混声合唱のための After..」は東日本大震災の後に発表された詩へ作曲された作品。
こんなことは決して望まれていなかったでしょうが、団員のみなさんが首里城火災と重ねて演奏されるのかもしれません。

それでも「若さのイメージ」の最初の一連。

遠くまで見えるんだ
スモッグのかなたに夢が見えるんだ君には
そうじゃないのか?

 

「言葉」の意味する、崩壊と再生、「新たに立ち上がる意味」。
「若さのイメージ」からは三善先生の言葉、「絶望を胎生としない愛を信じることができない」を思い出されます。
歌が力になる…軽々しく言ってはいけない言葉とは思いますが、歌うことでい~すたんのみなさんに力が宿ることを私は強く願っています。




 

 




観客賞で大人気! 歌って踊れる地元の団体と言えば?









6.京都府・関西支部代表

アンサンブルVine
http://yumemirusakana.sakura.ne.jp/chorus/play-list/vine.html
(※上の団名リンクはVine指揮者:伊東恵司さんのHP
「~目をひらく 耳をすます つぶやく~」内のものです)

(混声24名・8年連続出場・第57回大会以来15回目の出場)



指揮者:伊東恵司さんのモットー「コンクールにユーモアとリラックス」を体現されているVineさん。
毎回のことなんですが、昨年の演奏でも

「会場も楽しませてくれます」
「洒落ていましたねえ。
 そういう遊びを求めていました!みたいな(笑)。」

と好評。
さらに

 

マンテュヤルヴィ「Pseudo-Yoik(偽ヨイク)」で
「かめはめ波」出している人いた!

マジですか?! 見たかった!(笑)


・・・などと大変ノリの良い団体です(笑)。


課題曲はG1 Ave Maria / Tomas Luis de Victoria

さて、今回の自由曲は?
団員のふじもりさんにお答えいただきました。

 


みなさまこんにちは!
アンサンブルVineです。
京都での全国大会ということで、みなさまをお迎えできること、大変嬉しく思います。
(これを書いてるのは愛知県民なので、京都についての有益な情報は持ち合わせておりません笑)

自由曲
①Alleluia / NARVERUD, Jacob
②How Sweet the Moonlight / STROOPE, Z. Randall
③T-outua / 山下祐加

アメリカの若き作曲家、ジェイコブ・ナーヴァラッドによる活力溢れるアレルヤ、そして、同じくアメリカの作曲家ストループの作品を演奏します。
これは、シェイクスピアの戯曲「ヴェニスの商人」の第5幕冒頭がテキストとなっており、幻想的なハーモニーでその情景を描きだせる演奏を目指します。

 

 


今回もワクワクするようなバラエティに富んだ、面白そうな選曲!
Jacob Narverudのファンファーレのような「Alleluia」から、Z. Randall Stroope「How Sweet the Moonlight」の神秘的な曲想。
さらに山下祐加先生の「T-outua」。
ん?「T-outua」の意味はなんでしょう?? 

 


「T-outua」は、Ironim Ikuzanimの詩、山下祐加先生作曲による委嘱作品です。

テキストは、みなづきみのりによる短詩の表音部分をローマ字変換した後に乖離させ、アナグラム的手法により組み替えた造語(人工語)です。
名古屋の女声アンサンブル「しゃち子。」の委嘱により作曲されたものを我々が混声版の委嘱をいたしました。
どのような曲かは、聴いてのお楽しみ!

今年も全国大会で演奏できることを楽しみ、観客の皆さまと音楽が共有できれば幸せです。
ぜひ、聴いてください!

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関西支部大会の写真とのこと。



なるほど、伊東恵司さんと関わりの深い詩人、みなづきみのりさんの短詩をどうにか(言い方)したものなんですね。

この全国大会で編曲委嘱作品!
検索してしゃち子。さんの演奏も観ましたが、この作品をVineさんがどう演じるか楽しみでなりません。
地元・京都、故郷に錦を飾るチャンス!
観客の応援で、よりVineさんの演奏が輝くことを願っています。
きっと今年もVineの風でホールを染めてくれることでしょう!

 



(明日に続きます)

 

 

観客賞スポットライト 室内合唱部門 その1

 

 



1日目、11月23日土曜日。

 

 

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ロームシアター京都 Photo by 山氏@安芸さん

 

 



昨日までは大学ユース部門に出場の団体をご紹介していました。
13:19から14:15まで約60分の休憩のあと、24名以下の室内合唱部門の始まりです。

こちらの部門は人数が少なめなため、個々の「これがやりたいんだ!」という想いが強く伝わってくる部門です。
だけど客席がいつも寂しめ。
大学生のみなさーん! 
全団体聴いてとは言わないから京都観光前にちょっと聴いていきませんかー?!
卒業して合唱団を作るときの参考になるかもしれないよーー!!


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それでは室内部門へ出場の団体をご紹介しましょう。
今回は3団体。

最初の団体はこの部門で唯一の男声合唱、そして室内部門では初出場になるこちらの団体です。






1.青森県・東北支部代表

みちのく銀行男声合唱団

(男声13名・職場部門から8年ぶりの出場・第30回大会から9回目の出場)


8年前、青森での全国大会:職場部門出場時には14名で木下牧子先生の「祝福」と廣瀬量平先生の「天のベンチ」を演奏されたみちのく銀行さん。
職場部門が無くなってから、室内合唱部門では初めての出場です。

団員さんからメッセージをいただきました。 

 

 

私たちは前身の合唱団である「弘前相互銀行男声合唱団」の設立から数えると結成60周年を迎えております。
普段の主な活動は全日本合唱コンクールや声楽アンサンブルコンテストへの参加、青森県内で開催される各種合唱祭への参加を行っています。
メンバーは青森市内外の支店でバラバラに勤務しており、練習は月1回~2回、1回の練習時間は3時間と限られた時間ですが、密度の濃い音楽づくりを目指しています。
今回幸運にも全日本合唱コンクール全国大会への出場機会をいただきましたが、東北大会の表彰式の際に「全国出場団体」として呼ばれた時は、団員一同うれしさよりも驚きと戸惑いが勝っておりました。

 

 

結成60周年とは凄いですね!
職場合唱団、しかも男声ということで練習回数などは厳しい部分があるようですが、それゆえ全国出場に嬉しさよりも驚いてしまった、ということでしょうか。

みちのく銀行さんの課題曲はM4 物語(「Enfance finie」から) (三好達治 詩/木下牧子 曲)
自由曲はOla Gjeilo「Ubi Caritas」
Joshua B. Himes「Ave Maria」

これらの選曲理由はなんでしょう?

 


今回演奏する課題曲ならびに自由曲2曲はアンサンブルを主体とする私たちの団体に曲調や歌詞の情緒等がぴったりと合うのではないかと考え、これらの曲を磨いていこう!と取り上げたのがきっかけです。

23日の演奏日当日は、全国大会という素晴らしいステージに立って歌うことを楽しみながらも、聞いてくださる皆様に私たちの音楽・想いが届くように心をこめて演奏したいと思います。

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2017年度の東北大会での写真ということ。



ありがとうございました。

「Ubi Caritas」はGjeiloの大変有名な美しい作品。
Joshua B. Himesは1987年生まれのアメリカの作曲家のようですね。
「Ave Maria」は敬虔な信仰心が感じられる作品です。 
(全く別の曲想の混声「Ave Maria」もありましたが、こちらも大変好みの曲でした)

東北支部大会の演奏を聴いた方の感想では


自由曲は2曲とも、弱音の美しさが引き立つ繊細な音楽が印象的でした。
ぴーんと糸の張ったppの静謐な緊張感、そこから曲の盛り上がりに向けても力で押さず音色で聴かせるfが上品で。

その特色は課題曲「物語」でも同様で。
哀切感漂う表現が、この曲の今まで聴いたどの演奏とも異なり、非常に新鮮でした。

 

…とのこと。

課題曲も含めて、現代音楽的な効果を挟まない、全3曲に「歌」がある選曲にみちのく銀行さんの姿勢が現われている気がします。
8年ぶりの全国大会、みちのく銀行さんの音楽と想いが会場に満ちますように。


 




続いて北海道から常連と言っても良い女声合唱団の登場です。








2.北海道・北海道支部代表

ウィスティリア アンサンブル

(女声17名・3年連続の出場・第60回大会から10度目の出場)


藤岡直美先生が指導された枝幸、岩見沢、札幌の中学校OGの合同団体。
今年で結成19年目、以前は「枝幸ジュニア合唱団」という団名でした。
その声は北海道の冬を思わせるクリスタル・ヴォイス。

昨年の札幌の全国大会では、委嘱曲の信長貴富「アイヌ民謡による無伴奏女声合唱曲集『神さま、飛び立つよ』」を演奏。
「団員さんの年齢も上がって、音楽性も高くなった」
「室内合唱のアンサンブル感が良く出ていた」など好評でした。


今年の演奏曲は
課題曲F1 Gabriel Archangelus(Francisco Guerrero 曲)
自由曲に瑞慶覧尚子:女声合唱のための「なんと なんと なんしょ」より「1.なんと なんと なんしょ」「4.とほせんぼ」

F1のゲレーロを演奏するのは全部門でウィスティリアさんだけなので聴くのが楽しみですね。
「なんと なんと なんしょ」は「淵上毛銭の熊本弁によるユーモラスな詩を、リズミカルに時に幻想的に表現した作品」だそうです。
なるほど、リズミカルな「なんと なんと なんしょ」と幻想的なヴォカリーズから始まって軽やかなフレーズが交差し、最後は明るいフォルテッシモで終わる「とほせんぼ」という取り合わせ。
昨年のアイヌ民謡を題材にした選曲から一転して南の地の曲ですが、きっと見事に演奏してくださることでしょう。






続いては10年ぶりに出場のこちらの女声合唱団です!

 

 

 





3.埼玉県・関東支部代表

La Mer
https://twitter.com/lamerchorus

(女声24名・10年ぶり・第62回大会から2回目の出場)


La Mer (ラ・メール)さんは、2006年11月、浦和第一女子高等学校音楽部創部60周年の記念演奏会を機に、指導者の大竹教子先生のもと、卒業生OG有志で結成された女声合唱団だそう。

今回の選曲は課題曲F4、自由曲:木下牧子「春二題」より「あけぼの」「春は来ぬ」。
どういう理由で選曲されたのでしょう?

団員さんからメッセージをいただきました。 

 

 

今回、La Merは10年ぶり2度目の出場です。
関東大会では台風のため出場を断念した団体、順番が変更になった団体、思うように練習が出来なかった団体が多くあります。
当たり前だと思っていたことが当たり前ではないことを痛感しました。
そんな中で代表に選んでいただいたことに、いつも以上の感謝の気持ちを込めて、京都の地で全力の歌を届けます!

今回私たちは、課題曲F4「その木々は緑」 自由曲「あけぼの」「春は来ぬ」を演奏します。
課題曲を初めてピアノと合わせた時、全員の頭の上に「?」がついたことは、今ではよい思い出です(リズムが分からなくなってしまった…)。
若さ溢れる曲ですが、言葉を大切に、少し大人になった私たちにしか出せない、鮮やかさや爽やかを表現したいと思います。

自由曲の2曲は2012年にコンクールで演奏したことがある作品です。
その時は曲を掴みきれず、苦しい思いをしたのですが、数年を経て、「今なら分かる気がする!きっとすぐ出来る!」という謎の自信が芽生え、今回2度目の挑戦です。
しかし、やはり一筋縄ではいかず、前回のような苦しさを味わっていました。
前述した謎の自信に、今からタックルしにいきたい。
そんな中で、コンクールには参加しない団員が、曲を研究し、練習中の歌を分析し、毎日熱いレポートで叱咤激励をしてくれたおかげで、今ようやく苦しみが楽しさへと変わってきています。

あけぼのは、静かな夜明けから始まります。
練習の苦しみから一筋の光を見つけられたように、繊細な音程の中に、小さな希望を見つけられるような音楽をお届けしたいです。
春は来ぬは、あけぼのと打って変わって、軽快なリズムに乗せて、春が来た喜びを歌います。
3曲目ということもあり、だいぶ疲れも見えてくるところですがそこはグッと堪え、軽やかに華やかに、そして美しく歌いきって、翔んで埼玉に帰っていきたいと思います。

 

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関東支部大会での写真ということ。

 

 

 ありがとうございました。
「埼玉県民には全国出場でも祝っておけ!」…ですね。(「翔んで埼玉」ネタ)

都留文科大学合唱団さんもそうでしたが、台風19号の影響で、今年の関東支部大会は開催を危ぶまれる事態になりました。
書かれたように「当たり前だと思っていたことが当たり前ではないこと」を大事に思いたいものです。

10年前の全国大会、La Merさんの若い感性で歌われた「ほたるたんじょう」、音楽の歌い分けが鮮やかだった「嗚咽」「野茶坊」が記憶に残っています。
今回の演奏曲も、7年前のコンクール曲ということだそうですが、少し大人になられたことによる作品の捉え方の変化を、楽しくも興味深く読ませていただきました。

全国大会時、京都は冬が訪れ始める頃ですが、「春は来ぬ」…春の訪れの喜びと、La Merさんの10年ぶりの全国出場の喜びを重ね、華やかに会場を染めていただきたいと願っています。





(明日に続きます)

 

観客賞スポットライト 大学ユース部門 最終回




今回は大学ユース部門の最終回!
最後の2団体をご紹介します。

 

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下鴨神社 Photo by Dalimさん

 

 

オリンピックのマラソンが決まった北の地の男声合唱団と言えば?

 

 



9.北海道・北海道支部代表

北海道大学合唱団

(男声42名・6年連続出場・第50回大会から15回出場、通算29回目の出場) 



昨年は課題曲「秋の夜の会話」が語感を活かし寂寥感を滲ませた名演!
自由曲のバーバーもティンパニとのセッションが心地良い緊張感を生んでいました。
響きの上質さでという面で、新しい男声合唱の魅力を感じさせる北大合唱団さん。

さて、今回の選曲は?
団員さんからメッセージをいただきました。

 


今年の北海道大学合唱団はフレッシュな新入生を含む、40名強がアクティブメンバーとして活動しています。
夏には当団恒例の夏行事で九州へ。
中学校の部九州代表の熊本県山鹿市立山鹿中学校合唱部さんや、大学ユースの部で対決する九大混声合唱団さんとの交流演奏会を実施し、九州という地でエンヤー(!)をするのはもちろんのこと、九州ならではのグルメ、お酒も満喫してまいりました。

選曲に難航し、コンクール曲に取り掛かったのは9月からでしたが、例年より練習時間を増やし何とか北海道支部大会を通過することができました。
課題曲M2「Ne pitkän matkan kulkijat」は北欧フィンランドの作曲家シベリウスの作品。
我々の住む北海道とフィンランドは気候や風土に共通点も多く、北海道の風景をも思わせるふくよかな声で音楽を奏でます。
客演指揮者である尾﨑あかり先生のもとで、速いテンポの中での豊かな情景描写に挑戦中です。

自由曲「永訣の朝(西村朗)」は当団としてはチャレンジともなる、3声から構成される曲です。
普段より声部が少ない分、より高い精度の和音が求められます。
また、器楽的、リズムアンサンブル的な書法も見られ、ピアノ伴奏とのコンビネーションには苦労を重ねました。
合唱としてだけではなく、音楽作品として、完成度の高いものをお見せできればと思います。
客演ピアニスト豊田早苗先生の伴奏にもご注目ください!

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北海道支部大会後とのこと。



ありがとうございました。
そうそう、北大合唱団さんはこの夏、1番目に出場された九大混声合唱団さんとの交流演奏会を行ったんですよね。
コンクールとなるとどうしても敵対するだけのイメージがありますが、このような交流が行われるのは素晴らしいことだと思います。

課題曲はこちらもシベリウス!
これで大学ユース部門、男声3団体みなシベリウス!
でもきっと、まるで違う曲のようにそれぞれが感じさせてくれる演奏になると思います。
書かれているように北海道とフィンランドは気候・風土が似ているようなので、北の大地の魅力が演奏に表れますように。

自由曲は混声版、同声3部など、この全国大会でも多くの団体が演奏されている作品「永訣の朝」ですね。
同声合唱部門に出場のMu Projectさんも同曲を選ばれています。
宮澤賢治の二十五歳の若さで亡くなった妹:とし子を強く悼む詩のまま、西村朗先生の音楽が書かれていて、何度聴いても惹き付けられます。
ただ、強い想いだけの演奏では一面的な印象になりやすく、団員さんが書かれているように器楽的なリズムアンサンブル、ピアノ伴奏とのコンビネーションなど技術的にも難易度が高い作品。
しかし北大合唱団なら大丈夫でしょう!
指揮者:尾﨑先生の優れたセンス、豊田先生の煌めきを感じさせるピアノ、そしてエンヤー(斎太郎節)の爆発力と知性を併せ持つ北大合唱団の、新しい「永訣の朝」、楽しみです!





大学ユース部門、最後の団体です。
毎回同じことを書きますが、最大人数の団体!

 

 

 

 

 




10.東京都・東京支部代表

東京工業大学混声合唱団コール・クライネス

(混声144名・3年連続出場・第30回大会から35回の出場)


「小さい」を意味するドイツ語「kleines」が団名のクライネスさん。
大学ユース部門で最大なのはもちろん、この京都での全部門で144名は最大人数!
ちなみに先日岡山で行われた中学・高校部門を含めても最大人数!!

昨年は課題曲「草の上」から「IV」が「フランスの香りがする」と評判。
自由曲のプーランク「人間の顔」も留まらない流れ、和声の雰囲気が良かったという感想がありました。

昨年に続いて団員の岡田さんからメッセージをいただきました。

 


コールクライネスです!
今年もこのような面白く素敵な企画に参加させていただけることをとても嬉しく思います!
選曲理由は以下のような感じです!

課題曲 G1 Ave Maria
他パートを聞きそれに反応する能力やラテン語の深めの母音を用いて母音の統一や母音への開きの早さの特訓のために選曲しました。
クライネスは大人数なので音楽がボテっとしがちなので軽やかな大人数の合唱を目指しています!

自由曲 Krzysztof Penderecki作曲 Agnus Dei
G1同様ラテン語の深めの母音を用いて母音の統一や母音への開きの早さの特訓のために選曲しました。
あと、G1と違ってクラスターでクライネスの大人数を活かせるのでは!?という発想で選曲しました。
クラスター和音の声のデカさに注目して欲しいです!
G1で我慢した分も大声が出てると思います!体力がもてばですけど…

今年のコンクールで岩本先生によく言われることとして「プロ意識」があるのですが、全国では大量のプロが来たか???と思わせたいですね。
もちろんプロとしてやっておりますのでサインのご依頼は大歓迎でございます。
京都の街をクライネス団員のサイン色紙で埋めつくしたくなるような大迫力かつ繊細な面白い音楽ができるよう精一杯頑張ります!

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合宿での集合写真ということ。


…岡田さん、昨年は「僕たちの演奏の後から札幌がフランスになることを目標にしたいです!!! 聴いてくださった方々全員に、「今日の飯はジンギスカンじゃなくてやっぱエスカルゴにしようぜ?」って感情にして、札幌の全レストランをエスカルゴ品切れ状態にします!」と書かれてましたよね?(笑)
いや、指揮者:岩本達明先生の仰る「プロ意識」、とても大切な言葉だと思います。
京都で聴かれるみなさん、クライネスさんのためにサイン色紙のご購入をお忘れなく!

自由曲のペンデレツキ「アニュス・デイ(神の子羊)」は「ポーランド・レクイエム」というオーケストラ伴奏の作品で唯一の無伴奏曲。
本来はオーケストラと協演する曲ですから、クライネスさんくらいの大人数がふさわしい曲でしょう。
ポーランドがずっと受けてきた悲劇、ポーランド侵攻やアウシュヴィッツ収容所だったり…そういう虐げられた人々、負の歴史に巻き込まれた人たちへのレクイエムの中の1曲です。

この全国大会で何度も演奏されてきて、多くの名演がある作品。
クライネスさんの「クラスター和音の声のデカさ」が新たな名演を生むことになりますか?!
大学ユース部門のトリを見事に締めくくられますように。



(室内合唱部門に続きます)

 

 

観客賞スポットライト 大学ユース部門 その4



今回も2団体をご紹介します。


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栄摂院紅葉 Photo by Nodaさん

 

 

 



7.愛知県・中部支部代表

混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ

(混声123名・4年連続出場・第64回から5回目の出場)

 



毎年100人を越える人数のグランツェさん。
伊東恵司さんが指揮者の団体です。

昨年は会場へ向かう飛行機欠航というトラブルながら見事な演奏でした。
詳しくは昨年の「全国大会あれこれ・前編」の「グランツェさんの全国大会」をお読みください。



「ピアノからフォルテまでのダイナミクスの幅広さがすごく良く出ていたし、メリハリのある演奏」
特に信長先生の「第一章 絶え間なく流れてゆく」が「気合が凄かった」「貫かれた」などと大変好評でした。

グランツェさんの課題曲は大学ユース、室内合唱部門で唯一のG4 雪(「甃のうへ」から)(三好達治 詩/川浦義広 曲)。
課題曲にグランツェさんは公募作品のG4を多く選ばれている印象があるのですが、その解釈・演奏も毎回、若者らしい魅力に満ちた生き生きとした印象があります。

それでは自由曲に何を選曲されたのでしょう。
団長の髙田さんからメッセージをいただきました。

 


こんにちは、混声合唱団名古屋大学コール・グランツェです。
今年も全国大会という素晴らしい舞台で演奏させていただけることを非常に嬉しく思います。
今年の全国大会は指揮者の伊東恵司先生のふるさと京都での開催ともあり、団員の熱意もより一層高まっております。

さて、今年度は自由曲としてJozsef Karai作曲の「De Profundis」を演奏いたします。
この曲は聖書の詩篇をテキストとして手掛けられた作品です。
神々に選ばれし民ユダヤ人が"深き淵"から主を呼び求め、待ち望み、許しを乞い、救いを求めるという内容を歌っています。
救いを求める悲痛な祈りの言葉もやがて熱を帯び、魂の救済を主へ訴え、やがてそれは絶叫の渦へと姿を変えます。
一度救われたかのように感じられたのも束の間、現実に戻され、再び救いを求めて深き淵から祈ります。
コンクールという舞台でこのような曲を演奏することは、私たちにとって非常に大きな挑戦であると心得ております。

「歌う」という言葉は「訴う」を語源としているという話はよく言われております。
私たちが過去の人々の思想や感情に想像力を巡らせ、私たちなりの解釈で聴いてくださる皆さんに訴えかけること。
それが私たちが歌う上での義務であり、この曲を表現する上での責務であると心得ております。

全国大会では主への祈りを誠心誠意「訴え」ます。

 

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中部大会終演後ということ。

 


髙田さん、ありがとうございました。

自由曲のKarai「De Profundis」は髙田さんから申し分の無い紹介をしていただきましたが、いわゆる合唱という枠から出て、人々それぞれの祈りと叫びを感じられるような箇所がある作品です。
ともすればその箇所はキワモノの効果と受け止められる危うさもあるのですが、表現力に長けたグランツェのみなさんならその心配は無用でしょう。

作品の背景を学び、その時代に生きた人たちに思いを馳せ、今を生きる自分たちの歌として「訴え」る・・・。
ステージに表現者として立つ者の姿勢として、とても望ましいものだと思います。
グランツェのみなさんのその素晴らしい姿勢が演奏に結び付き、聴く私たちを別世界へ誘ってくれることを期待しています。






続いて、地元:京都のこちらの団体です!

 




8.京都府・関西支部代表

同志社グリークラブ


(男声43名・第1回大会から11回目・2年ぶりの出場)



指揮者はこの同志社グリー出身の伊東恵司さん…って、前のグランツェさんと連続?!
はー、人気指揮者だとこういうこともあるんですね。
同志社グリーさんで伊東さんが出られた時には精一杯拍手します!

2年前の出場時には課題曲「葉月のお月」の関西弁のニュアンスがさすが。
レガートができている、柔らかい発声が良かった…などの感想がありました。

地元:京都での開催で同志社グリーのみなさんは気合十分でしょう。
さて、選ばれた曲は?

団員さんからメッセージをいただきました。

 

 

【選曲】 
課題曲M2「Ne pitkän matkan kulkijat」
今年2月に開催した弊団の定期演奏会でよく似た言語であるエストニア語を扱った事や、今後のために外国語の経験を積んでおきたかった事などが理由のひとつです。
また、大まかに分類した時に激し目の曲である自由曲と円やかな響きが特徴であるこの曲を歌い、正反対とも取れる別種の面白さをコンクールの場で披露したいという思いがありました。

自由曲は男声合唱とピアノのための組曲「回風歌」から終曲を選択しました。
今年の全国大会は1957年の開催以来、実に62年ぶりに我らがホームである京都で行われます。
今を生きる115年目の同志社グリークラブとして我々が出来る事は何かを考え、数ある候補曲の中から現代を代表する作曲家である松本望先生の作品を選ばせて頂きました。
緩急激しい曲調の中で足掻き続け、その果てに見えた、決意のあらわれを高らかに歌い上げ、コンクールでの演奏を締め括ろうと思います。

 

【全国大会への想い】
同志社グリークラブが最後に全国大会に出場したのは、2年前の第70回全日本合唱コンクールでした。
当時は金賞を獲るまでに至らず、客席で審査発表を聞きながら悔し涙を流しました。
今年は特に京都開催という事もあり、全国大会出場というものに強いこだわりを持ち、ひたむきに練習に取り組んできました。 
今回の関西合唱コンクールにて一位金賞を受賞し、夢の舞台へ進むことが出来、大変嬉しく思っております。

我々同志社グリークラブを応援して下さっている方々には、感謝しても感謝しきれません。
弊団のモットーである「聴衆と一体となった音楽」を我らがホームである京都の地で感じていただければ幸いです。
今後とも同志社グリークラブへの応援、よろしくお願い申し上げます。

 

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「毎年参加させて頂いている祇園祭の山鉾巡行の前夜に行われる宵山コンサートの様子です。今年は大雨が降るなか、たくさんのお客様の前で熱唱しました」とのこと。

 

 

 

ありがとうございました。
京都開催は62年ぶりなんですね!
地元:京都での大会に出場できる嬉しさが伝わってくる文章と思いました。

 

 


同志社グリーさんはツイッターアカウントで京都の観光名所をご紹介してくれています。
現在は1回だけですが、これからどんどん更新されることを期待して!

 


さて、課題曲はシベリウス!
同じ曲でも、きっと関西学院グリークラブさんとはまた違う魅力を引き出してくれるはず。
そして自由曲は松本望先生の男声合唱とピアノのための組曲「回風歌」から終曲の「3」。
団員さんが書かれるように緩急激しい曲調、それは鋭いリズムから抒情的なフレーズ、不穏な無伴奏から歌い上げる最後まで。
木島始氏の詩は、多くの困難に抗うような決意で貫かれている作品です。
昨年出場できず、「夢の舞台」とまで書かれたこの京都での全国大会への経緯と重なるものがあるのではないでしょうか。
同志社グリーのみなさんの強い決意が、同じように困難に取り囲まれた私たちと「一体となった音楽」を生み出しますように。


(明日に続きます)

 

 

観客賞スポットライト 大学ユース部門 その3




今回も2団体をご紹介します。





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五重塔 Photo by 超国家主義の論理と心理さん


 


最初の団体は、昨年のチャンピオンの登場です!




5.兵庫県・関西支部代表

関西学院グリークラブ


(男声72名・11年連続出場・第59回大会から13回目の出場
 第1回大会からは27回目の出場)



昨年も金賞、そして1位相当の文部科学大臣賞も受賞され、さらに今年、なんと創団120周年という伝統ある関西学院グリークラブさん。
日本最古の男声合唱団です。
昨年は「課題曲のシューベルトが柔軟でとても良い演奏だった」
「ノーブルなトップテナー」
「パートの継ぎ目が無いような優れた男声のハーモニーに魅了されました」と好評でした。
さて、今年の課題曲と自由曲は?

学生指揮者の石川さん、部長の林さんからそれぞれメッセージをいただいています。


関西学院グリークラブです。
このような機会をいただき誠にありがとうございます。  

今回私たち関西学院グリークラブが課題曲に選んだのは、M2「Ne pitkän matkan kulkijat(はるかな旅人たち)」です。
最初に合唱名曲シリーズNo.48に収録されている男声の課題曲を聴いたときに、我々が歌えるのはこの曲しかないと運命のようなものを感じ、歌うこととなりました。
しかし、練習の道のりはまるで「はるかな旅」でした。
特にウムラウトは奥が深く日本語で説明することが非常に難しかったのですが、部員一人一人が主体的に考えながら一丸となってフィンランド語の発音と向かい合ってきました。
練習を重ねれば重ねるほど改善点が多く出てきましたが、困難を乗り越えた先に表現されるフィンランドの情景を、我々関西学院グリークラブが京都ロームシアターに鮮やかに映し出したいと思います。(120代学生指揮者 石川龍太)

無数にある曲の中で、なぜコンクールで『Duhaupas』なのか。
その問いの答えは、「我々にしか奏でることができない世界観がそこにあるから」です。
この曲集を関西学院グリークラブが全国大会で演奏することは、金賞1位を超える価値があると思っております。
譜面の音符を音として奏でるだけでなく、様々な人の想いが詰まったこの楽曲には、弊団でしか表現することができない世界観があります。
コンクールで演奏する演者として、譜面の音や指示を忠実に再現し、作曲者の想いを正確に聴衆に届けることはもちろん大切なことですが、それだけでは「今」この瞬間に、我々がこの音楽を演奏している意味がありません。
この時代に演奏する人の心が、当時の作曲者の想いと共鳴することで、永遠に語り継がれる芸術作品が誕生すると思っています。
弊団が本邦初演してから約70年。
「今」この時代だからこそ奏でることができる『Duhaupas』はどのような音楽か。
譜面の音を超えた、令和の関西学院グリークラブが奏でる芸術作品をお楽しみください。
(120代部長 林浩平)

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関西支部大会での写真ということ。

 


石川さん、林さん、ありがとうございました。

男声合唱と親しいシベリウスの演奏ももちろん楽しみですが、なんと言っても自由曲のDuhaupasに注目です。
19世紀の作曲家Albert Duhaupasが作曲された“ MESSE SOLENNELLE”(荘厳ミサ)は男声合唱の名曲と知られています。
この曲を調べているうちに↓のサイトに当たりました。

関西学院グリーさんがこの作品を日本で初演されてからの歴史は、そのままこの全日本合唱コンクールや男声合唱の歴史と言い換えても良いくらいです。
なんと、全日本合唱コンクールの第1回で、関西学院グリーさんはこの「MESSE SOLENNELLE」から「Kyrie」を演奏し見事優勝!
その後年代を経てもさまざまな指揮者と多くの名演を残されています。

選曲の理由に林さんが「我々にしか奏でることができない世界観がそこにあるから」と記された言葉に重みが増します。

「Gloria」という典礼文、神を賛美する華やかな音楽から始まり、後半の切ない優美さなど、今でも聴く者の心を離さない名曲と言えるでしょう。
伝統を尊重しながら今を生きる関西学院グリーのみなさんが、私たちに永続する芸術音楽の素晴らしさを味わわせてくれることを期待しています。









25分の休憩後、毎回観客賞では上位のこちらの団体です!








6.山梨県・関東支部代表

都留文科大学合唱団


(混声50名・12年連続出場・第51回から13回目の出場)



昨年は朝1番の出演にも関わらず、ハンデを感じさせない澄み切った音をホールに響かせた都留文さん。
「音を大切にしている合唱」
「悲しい表現でも発声は美しく、悲しい感情だけが伝わってくる。そこが素晴らしい」などの感想がありました。
男声の割合が毎年少なめなのですが(今年はなんと9名!)それを感じさせない精緻なアンサンブルと知性を感じさせる団体です。
今年は何を選曲されたのでしょう?

団員さんからメッセージをいただきました。

 


都留文科大学合唱団です。
今年もこのような機会を頂きありがとうございます。

私たちは山に囲まれた自然豊かな土地で、顧問・常任指揮者の清水雅彦先生のご指導のもと活動しています。
コンクールや各演奏会を通して合唱経験の有無に関わらず、個人としても団としても日々成長してきました。
今回選んだ課題曲「蜂が一ぴき…」では作詞者・宮沢賢治の樺太での様子が描かれています。
最愛の妹を亡くした宮沢賢治は何を思って旅をしたのか、そして詩のなかに登場する"蜂"とは何を表すのかなど、私たちの演奏と共に皆さんにもぜひ考えていただけたらと思います。

自由曲は「O Gloriosa Domina」「WAR」を演奏します。
この2曲はIvo Antogniniによって作曲されました。
Ivo Antogniniはスイス出身の作曲家で、彼の作品は様々なコンテストで評価され、多くの人々に演奏されています。

「O Gloriosa Domina」は救世主キリストをこの世へもたらした聖母マリアへの賛美を表す曲です。
この曲では「Gloriosa=栄えある」という言葉が、その意味を噛みしめるがごとく繰り返し紡がれます。
序盤のゆったりとした曲調から一変し、疾走感のある中盤を経て、聖母マリアそしてキリストの栄光を高らかに歌い上げるという曲構成も魅力的です。

2曲目の「WAR」は、アイルランド戦争詩人・兵士であったFrancis Ledwidgeによる美しい詩から発想を得て作曲されました。
詩の中の「I」を私たちは戦争そのものと捉え、Francis Ledwidge自身がその戦争体験のなかで形作った戦争観をオーボエとのアンサンブルにより鮮やかに歌い上げます。

全国大会では、関東大会から進化した、より緻密な文大サウンドで3曲それぞれの魅力をお届けします!
ぜひ会場で私たちの演奏をお楽しみください! 

   

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関東支部大会での演奏後ということ。

 



ありがとうございました。
課題曲G3の「蜂が一ぴき…」は大学ユース部門では他に九大さん、室内部門でい~すたんさんとまいさんの4団体が演奏されるのですが、この一見シンプルな、林光先生独特の音楽を都留文さんがどう演奏されるか、とても興味があります。

自由曲の作曲家:Ivo Antogniniの作品は近年、この全日本合唱コンクールでも多く演奏されていますね。
団員さんが書かれたように「O Gloriosa Domina」は「序盤のゆったりとした曲調から一変し、疾走感のある中盤」。
そう、この「疾走感のある中盤」がなんともオシャレで聴き入ってしまいます。
さらに「WAR」はオーボエとの協演。
Antogniniらしい軽やかさもありながらオーボエとアンサンブルする、鮮烈なサウンドと音楽!

みなさんご存知のように、今年の台風第19号は各地で大変な被害をもたらし、関東支部大会も開催を危ぶまれました。
都留文さんも当初は電車で行く予定をバスに変更し、予定よりかなり遅い本番になった上での全国大会出場になったそうです。

「関東大会から進化した、より緻密な文大サウンド」。

困難を乗り越え、万全の状態で歌われる京都での都留文さんの演奏は、きっと素晴らしいものになると確信しています。




(明日に続きます)