「エルンスト・ネト展」

2007年9月29日の土曜日、
香川県の丸亀市にある猪熊弦一郎現代美術館へ行ってきました。

 「エルンスト・ネト展」を観るため。




 1964年生まれのブラジル人アーティスト、エルンスト・ネトの作品は
伸縮性にすぐれた薄い布地を用いた有機的な形態のオブジェや、
そのオブジェで構成されたインスタレーション作品で注目を集めます。
 作品と鑑賞者との双方向の関係性を重視しており、
鑑賞者が実際にその作品の内部に入り直接触れて
体感する作品を数多く制作しています。
 つまりネトの作品は、視覚だけでなく、触覚や嗅覚など
美術館内での作品鑑賞では用いることの少ない知覚を誘発し、
身体そのものやそれを取り囲む空間に対する意識を強く喚起するのです。

猪熊弦一郎現代美術館HPより抜粋)


 結果から言うと、これは大変良かった、面白かった!


 美術館入り口。ゲート・プラザのオブジェで遊ぶ子供たち。



 中へ入る前に靴を脱ぎ、靴下のゴミを粘着テープで取ります。
 (裸足になる人はアルコールを含ませた紙?で消毒)



 入り口から中を覗き



 中へ入ると、まずこんなん。
 (※撮影許可の展示でした)

 足裏に当たるすべらかなシーツの感触が気持ち良いです。



 想像したよりも細かく部屋を仕切っている印象。
 各所に柔らかいクッションが置いてあります。



 蕎麦殻を詰めた細長いロープのようなもので遊ぶコドモ。

 カポーも多かったですがコドモも多かった。
 また、そのコドモの反応が新鮮で楽しく。



 こんなものが垂れ下がっていたり。
 (飛び上がってパンチするコドモ!…だいじょうぶかあ?)



 上下を繋ぐ水色の布がいっぱいある通路。
 ちょっとした迷路のようになっていたり。



 隠し小部屋にはこんなものもあったり。



 80キロのクミン、クローブを詰めた小部屋もありました。凄い芳香。
 (さすがに付きっ切りで監視している人がいて触れるのも禁止)



 プラスチックのボールを詰めたオブジェが多く置かれていたのですが
それを服のように“着る”ことができる部屋もあって。

 試してみるおねーさんを隠し撮り。
 (完成形は昔の大富豪のような
  吊りズボンで腹がやたら出ているステレオタイプなデブに
  なるのですが・・・あんまり上手く撮れなかったな)



 外周。天井から布を吊り下げて壁、天井を作っています。
 部屋は壁長132.31m(自立壁5.0m×27.5m)。
 作成時のスライドショーもあったのだけど、
小型ミシンと針糸を駆使して作成にいそしむ
ネト氏の姿が面白かった。



 そして一番印象的だったのはこれでしょう。


 巨大でとにかく柔らかいクッション?マット?ベッドが置いてあり、
背をあずけると自重でずぶずぶ沈んでいってしまう。
 なかなか離れられない人、多数。
 私もその一人。



 コドモなんか、完全に埋もれちゃってます。




 幼少の頃の感覚を思い出す・・・と書くとベタかもしれませんが
シーツをかぶり、布から透けて見えた光。
 狭い空間のはずなのに薄ぼんやりした光が満ちているため
シーツで作られた世界が実際以上に広がって見えるような。
 そして肌にあたる布のすべらかな楽しさ、気持ち良さ。

 懐かしい、落ち着く気持ちになるとともに
身体の奥から新しい感覚が生まれるような、
そんな不思議な展示でした。
 これが、ネト氏の作品の持つ
 「作品と鑑賞者との双方向の関係性」
 「身体そのものやそれを取り囲む空間に対する意識を強く喚起する」
 …ということなのでしょう。

 とにかく訪れる人がここまでリラックスして、
楽しんでいる「現代アート」というものはなかなか無いと思います。

 残念ながら展示は10月8日で終わってしまったのですが
また日本のどこかでネト氏の展示がされることを強く願います。


 でも、こういうコンセプトのカフェとかバーとか
ありそうだよなー・・・でもあんまり見かけたことないのは何故?
 と思ったら。

 スタッフの手に持っている粘着テープ、コロコロで理解。
 とにかく落ちている髪の毛が目立つんです!
 さらに白い布なので、ちょっとしたシミも目立つ!

 ・・・なるほど。飲食店ではこういうコンセプト、
なかなか難しいかもねえ、などと思った次第。




 私が1時間ほどゆったり過ごし、部屋を出ようとしても
まだ寝ていたカポー。
 キミたち、リラックスし過ぎ。