ボクたちクラシックつながり―ピアニストが読む音楽マンガ (文春新書)
- 作者: 青柳いづみこ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/02
- メディア: 新書
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副題の「ピアニストが読む音楽マンガ」ということから
「のだめカンタービレ」「ピアノの森」「神童」などの
ピアノを中心とした音楽マンガを題材に
編集者がする質問を
ピアニストである青柳いづみこさんが答える、という本。
まるっきりクラシック素人にも分かるように
易しく書かれているので多くの人に勧められます。
そして、単に基本的なことを平明に解説するんじゃなく、
「プロの音楽家」として、鋭く深いものも挟んでいて。
いろいろ興味深い話題が散りばめられているのですが
最終章である「ピアニストは本当に不良債権か?」は
なかなか衝撃的。
クラシック演奏家は演奏だけで300万円以上の収入がある人はなんと
全体の0.05%しかいない!!
さらに収入ゼロの人が2万人もいるという驚くべき事実。
幼い頃から毎日厳しいレッスンを積んで
高いレッスン代、授業料を払っても待ち構えるのはこの現実・・・。
さらに年々過酷になっていく音楽の商業主義、
コンクールで良い成績を取っても「売れる」とは限らない現代。
そんな厳しい状況を踏まえて、
青柳さんはそれでも音楽家には喜びがある、とします。
「のだめカンタービレ」のオーボエ吹き:黒木君のセリフを借り。
(音楽やってて……単純にうまくできたら嬉しいし
もっとうまくなったらもっと楽しいんじゃないかって)
音楽家でいいなと思うのは、
ごく小さなことでも進歩があったり発見があったり、
あるいはすばらしい演奏を聴いたりすると、
それだけで幸せになって何日も何ヶ月も生きていけるということです。
(218ページ)
形式的、表面上のレヴェルアップではなく、
試練を求め、内なる向上をこそ喜びとする音楽家という人種。
音楽マンガの解説本のような体裁でも
そこには音楽家としての強い意志と熱い心が込められていました。
この方の本を読むのは初めてだったんですが
「日本エッセイストクラブ賞」も受賞されている
文筆家としても有名な方だったんですね。知らなかった…。
さらっと流し読みしても、青柳さんの言わんとすることが
すとーんと理解できるのは文章力が非常に高い証拠。
ぜひ、他の本も読んでみようと思っています。