クール・シェンヌ第10回演奏会感想 その2


 休憩を挟まず、1回退場・入場の後
 J.S.Bach「Jesu,meine Freude」(BWV227)
 (イエスよ、わが喜びよ)


 コラールの間に合唱を挟む全11曲の長大な曲。


 気合充分な、力強い声で始まった第1曲。
 5曲目コラール、男声の力強いホモフォニックの響きや
ポリフォニーのニュアンス、
10曲目、合唱(1パート2人程度のアンサンブル)の
しっとりした美声で創り上げられる美しさ・・・など
良い箇所はそこかしこに存在するのだが。


 …メリスマが残念ながら硬く、音符の連なりだけで
残念ながらフレーズとして感じられない。
 楽譜だけに歌っている団員さんも散見し、
バッハの難しさを改めて感じることになった。


 ただ、5年前のシェンヌのバッハ演奏を思い出すに
「満足に歌えない」ということで、
そのまま萎縮してしまい、
演奏の姿勢に自信の無さが現れていたのを考えると、
今回の演奏では
「歌えないかも・・・いや、それがどうした!」というような
前向きで力強い表情が加わっていたのも事実。
 (馬鹿にしている訳ではありませんよ、念のため)



 合唱指揮者:栗山文昭先生の言葉で
まだその曲に慣れていない団員へ向かって


 「初めての人に会って、
  『初めて』の顔をするのは子供だけだよ」


 という意の言葉を仰られた練習風景の記事を思い出す。
 「はじめまして」「知らない人ですね」・・・と
曲へ向かって呟いても、聴く側に何ら益するものは無い。


 今回のシェンヌの演奏は、
やや「初対面」に近かったのかもしれないが
少なくとも胸襟を開いて話そう、と前に出る意志が感じられた。



 (つづきます)