全国大会:一般の部感想<その3>

一般Aの部、4番目の団体は
島根県(中国支部代表)
ゾリステン アンサンブル(混声27名)


課題曲はG1。
ちょっとテンポに乗り切れず
男声のフレーズの歌い方にも疑問符が…。
しかし、自由曲のコスティアイネン
「Missa In Deo Saltare Meum」の
「Kyrie」の第1声から女声が変わり別団体の印象!
「Kyrie eleison…」など繰り返しのニュアンスも良く、
音楽が大変考えられているような。
2曲目の「Sanctus」はさらに厚みやエネルギー、スピード感があり、
声が混じった後のユニゾン、ホモフォニックの音響なども
サウンドとしてとっても良かったです。


後半の動きの演出は
「支配からの解放」
「集団の祈りから個の祈り、そして集団の祈り(ベネディクトゥス)へ」
…という意図があったそう。


「合唱、多人数ならではの表現」の可能性を
ちゃんと考えられている演奏だと思いました。
個人的に、
「なんで大人数で歌う必要があるのだろう?」というのが
最近、合唱について考える時の個人的なテーマなので
その回答を聴かせられた気がして嬉しかったです。


全体に音響というもの、
音が空間へ及ぼすことへの
指揮者の西先生のセンスが光る演奏だったと思います。




続けて
京都府(関西支部代表)
アンサンブルVine(混声32名)


パッと見、20代前半中心?の若いメンバーが並びます。
課題曲はG1。
見た目と同じ、若々しくキレイな声が響きます。
ちょっとだけ一本調子な印象もありましたが爽やかな演奏。


自由曲は3曲。
1曲目はウィテカーの「With a Lily in Your Hand」。
最初のフォルテから軽やかな音楽への移行が巧い!
ソプラノのフレーズ入りもとても良く、
ウィテカー特有の和音もしっかり決めて世界を作る。
2曲目のマンテュヤルヴィ「Over hill,over dale」。
演出も含めて、そのリズムと洒落っ気は
古いディズニーアニメを観ているような楽しさが。
3曲目は同じくマンテュヤルヴィ「El Hambo」。
女声が前に、男声が後ろの、1列ずつに並びを変えて。
手拍子、足拍子、和音のハマりと共に
音楽の構成が目に見えるような分かりやすさ、
演奏に不純物が混じらない明快さがあります。


演奏が終わった後は客席に
Vine独特の高揚したような空気が流れていたのが印象深い。
楽しかった!




そして次は
熊本県(九州支部代表)
合唱団Le Grazie(女声28名)


課題曲はモラレスのF1「Kyrie」。
最初の旋律から緊張感が漂います。
ソプラノの喉を絞めるような発声、
そして音程にやや難があったかなあ、という気もしましたが
早めのテンポで歌われるこの曲の演奏は
高校生とは全く違った迫力を感じさせる演奏でした。


自由曲、西村朗先生作曲
無伴奏女声合唱組曲「浮舟」
源氏物語の和歌による〜から「匂宮」。
これも独特の緊張感が漂う演奏。
合唱全体だけではなく、
各パートだけでも音楽の説得力は大したものです。
指揮者の岩津先生は
学生の団体を指揮されたときにも思いましたが
ドラマティックな曲作りが巧みな指揮者。
その音楽が、充分この演奏にも表れていたと思います。


全国大会では邦人曲の、
こういうタイプの女声合唱はなかなか聴けなくなって来ているので
Le Grazieにはこれからもがんばっていただきたいですね。



(続きます)