「すみれの唄」は本格合唱部活マンガだった!

本も好きだけど相変わらずマンガも好きな私です。


さて、アフタヌーンという雑誌の12月号を購入し。
(「ナチュン」と「ヒストリエ」と「ヴィンランド・サガ」が面白くてさー)



この雑誌は「四季賞」という公募の漫画賞を設けていて
その受賞作品が付録の冊子だったんですね。



で、その冊子を開いてみると大賞受賞作「すみれの唄」(作:十野七)
「経験者による完全高校部活合唱マンガ!」だったのですよ、驚いた。







話の筋は・・・
入学式で合唱部の指揮をする立原君へ憧れて合唱部を訪れた
菫(すみれ)理花。
中学では歌っていなかった未経験者のすみれのため、
入部許可を渋る立花君だが、
すみれの熱意に押しきられる形で歌の指導をしていくことに。
だが、Nコン参加を期に「楽しむ合唱」と「コンクールに勝つ合唱」をめぐって
立花君とすみれとの関係にも亀裂が・・・。



正直に書くと…大賞と言えども、
やっぱりプロとして活動されている作家には及ばないな、とか。
(「オトノハコ」の岩岡ヒサエさんの凄さがわかります)
高校から合唱始めてもいーじゃねーか、とか。
選曲が中学校的なのは顧問がいない学校ならしょうがないのかな、とか。
(まあ中学校的な選曲の方がより多くの読者の共感を得られるし、
 コンクール自由曲に選んだ
 「名づけられた葉」には物語面での理由があったりしますが)
腹筋100回できても歌には直接関係無いんじゃないの?とか。



しかし、そんなツッコミを乗り越えて、
部活は「高校まで合唱部だった」という作者
十野七さんが描く世界はリアリティがあり
経験者にはなかなか胸に迫ります。






「ひとつの朝」「流浪の民」「海はなかった」「いま」
 ・ ・ ・ いいねえ。



コンクール否定派で
合唱の強豪中学校出身だった立原君にはこんな過去が。






こういう「コンクール」という問題と
まっすぐに向き合う作品は無かったのでは?



あと選者の萩尾望都先生のこの作品への講評で
「ちゃんとした悪役を出すことによって、
 もっと話に深みが出るのでは?」というものがあって。







暗くてキモくて悪かったな!


…えーと、この物語ではの悪役は
「体育会系による文化系への無理解さ」というものだけど
物語を描く上で、どうしても悪役や障害というものは必要。
その点、この作品ではそういったものがリアルですね。
でもそれが物語を引っ張る「ちゃんとした悪役」になるか、
というと難しい。
たいていは憎らしい強豪ライバル校だったりするけどねー。



話にリアリティがある分、
コンクール参加問題の解決など、
この作品の中としてはその描き方で正解なんだろうけど、
いろいろ経験してきたおっさんとしては「…う〜む・・・」と思うことに。
「勝ち負け」って非常にわかりやすいものなんだけどさあ。


過去、経験者じゃなかったり取材が不十分な、
合唱を題材にした作品にツッコミを入れてきた私ですが、
リアルな「部活合唱の負の面」をこうしてマンガで見せられると
けっこう凹むものなのだなあ、と。



それはそれとして「負の面」ばかりではなく、
載せた画像でもわかるように
合唱の良き姿もしっかり描いている作品です。


興味を持った方は是非とも購入して
アンケートで「すみれの唄」が良かった!と書いて送りましょう。
ひょっとしたら連載になるかも?!



こんな名セリフが味わえるなら、連載で読んでみたいです。