コロ・フェスタin福山 その2


樹の会ユースクワイア奏(東京都)
藤井宏樹先生指揮の「樹の会」10代から30代前半のメンバー40人ほど。
三善晃先生の「地球へのバラード」から「沈黙の名」「鳥」。
若さのためもあってか、やや声も表現も主張が薄い気がしたが
(これは松江でのジョイントコンサートの強烈な熱演が
 まだ頭にあったからかも)
「沈黙の名」での「何故なら〜名づけられぬもの名は」部分での
響きを充実させながらなめらかな音楽の流れ、
かつaccel.のテンポ設定が感情と一致している演奏は
「巧いな〜!」と藤井先生の音楽に唸るものだった。



合唱団ある(広島県)
寺嶋陸也先生作品で「ある」委嘱曲の
「イグナシオ・サンチェス・メヒーアスを弔う歌」より、を
作曲者本人の指揮、浅井道子先生のピアノという豪華メンバーで。
「死」というものの姿を、熱く彫り深く演奏。
ここまで気合いの入り、充実した「ある」の演奏は聴いたことが無いほど。
コンクール参加をせずにこのコロ・フェスタへ注力した理由が
納得できるほどの演奏でした。



クール モンメ(東京都)
栗友会主力の混声合唱団3団体の合同団体85名。
西村朗先生への委嘱曲「無伴奏混声合唱のための<敦盛>」。
指揮は栗山文昭先生。
平家物語の「能」の世界をテーマにしたこの曲。
西村作品らしい熱く厚い声の響きがずっと続き迫ってくる。
15分ほどの曲だというが途中の足拍子と
これほどの曲をここまで高い水準で演奏することに不思議と飽きず。
終結部に鳴らされるシンバル残響に重なる
「跡弔いて賜び給へ、跡とむらひて賜び給へ」の言葉が
作曲者の語る「生と死の狭間、幻想時空領域」へ引き込むようだった。
(作曲者の解説で「シンバル」と書かれているので間違いないんだろうけど
 仏具の鈴(れい)なのかな?と思いました)
栗友会だからこそ聴ける曲、そして凄まじい演奏。



クロージング・コーラスは有志の大人数がステージへ上がり
寺嶋陸也先生の
「二月から十一月への愛のうた」から「九月のうた」
作曲者ご本人の指揮で。


そして最後は寺嶋先生編曲の「荒城の月」をご自身のピアノと
藤井宏樹先生の指揮で全体合唱。




正直に書くと、
「ある」から「クール モンメ」そしてこの
クロージング・コーラスに充溢する、死、亡き人への想いは
こういうイヴェントの締め方としてどうかな?とも思った。


しかし、ありがちな「希望の未来へ!」と明るく終わるよりも、
志半ばにして亡くなった方、
死者の遺したものを確認することこそが
生きること、そして未来へ繋ぐものを強く意識し、
行動する原動力となるのかもしれない。



「九月のうた」はプログラムに
「〜合唱指揮者・田畑政治の思い出のために〜」との副題が付けられていて。
この広島の地で10年前に亡くなられた田畑さんへの強い想いが
伝わってくるような演奏でした。
この曲を既に知っていると思っていた自分なのに
演奏が始まると、様々な感情が突き上げ、目が潤むことに。

悲しみはいつも私にとって
見知らぬ感情なのだ
あなたのせいではない
私のせいでもない



谷川俊太郎「九月のうた」より)


来年のコロ・フェスタは松本だそうです。