夏休みに読んだ本 その1


今年の夏はメチャクチャ暑いんで
エアコンの効いた部屋にこもっていた夏休みでした。
読書が進む進む。


読んだ中でオススメの本を何冊か。
今回はこの本です。


サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス)

サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス)


これは傑作。


1942年パリにてフランス警察の手で屋内競技場に集められ
アウシュヴィッツへ送られたユダヤ人約1万3千人。
その中にいた10歳の少女の話と
60年後のパリ在住アメリカ人女性ジャーナリストの話が交互に進んでいく。
この構成がまず巧い。


ユダヤ人少女:サラが
タイトルにもある「鍵」で開けるまでの前半クライマックス、
現在に生きる女性ジャーナリスト:ジュリアが夫の家族、
その住居の謎を探っていくのはミステリの趣があり、
ページをめくる手を止めさせない。


過去と現在が交互に語られ、そしてある一点で重なる衝撃。
訳者:高見浩氏の言葉を引けば
「それは、時空間を自在に行き来できる、
 小説という表現形式のみが持ち得る魔法のなせる業にちがいない」



ユダヤ人少女:サラは
フランス人として普通に周囲と溶け込み生活しているので、
ある日突然「ユダヤ人」として捕まえられる事に激しい困惑を感じる。
その非現実感。


戦争というものがいかに多くの、そして個人へ深い爪痕を残すのか。
そしてジャーナリスト:ジュリアによるパンドラの匣を開けることの是非、
自分たちの幸福が他人の犠牲の上で成り立っている場合、
どう行動すべきか、と読み終えた後も大変心に残る小説でした。