高校A部門感想つづき


それでは高校A部門、
印象に残った団体の感想を少しずつ。
(金賞団体はやや辛口に…)
もちろん独断と偏見に満ちた感想ですので
検索などで不幸にも見てしまった現役高校生諸君は
あまり真に受けないように!
私が書いていない部分で
あなた方の良さはいっぱいあると思います。



宮崎学園高等学校女声合唱団(銀賞)


自由曲の西村朗「炎の挽歌」より「妻への挽歌」は
高校生が歌うのはおそらく初めて聴いたと思うけれど
各パートの歌としての充実度が優れていました。
歌を大事にするこの団に向いている選曲だったのでは。




佐賀女子短期大学付属佐賀女子高等学校合唱部(銅賞)


等身大の表現が感じられる演奏。
顔だけではなく、体全体での表現が好感。
(そして笑顔が素敵な人が何人も!)
自由曲トルミス「冬景色」ではからかうような、軽妙な表現が上手い。
2番目の出場だったけど、これが後半の出場だったら
賞も変わったんだろうなあ。




北海道帯広三条高等学校合唱部(銅賞)


課題曲F3。自由曲:三善晃「四つの秋の歌」より3、「北の海」
朝3番目の出場にしてはコンディション万全。
飾り気の無い声と
細かい抑揚は無いがすっきりした表現には好感。
フレーズ、音楽の取り方が長く、
頂点に達してもすぐ落ちないのは気に入りました。




福島県立郡山高等学校女声合唱団(銀賞)


「あの」菅野正美先生指揮。
課題曲F2はかつての安積女子のようなウィスパーヴォイスを基調に。
音楽の起点と収め方が感情としっかりリンクし、さすがに上手い。
表現の変化と多彩さが素晴らしく、
さらに壊れそうなガラス細工を思わせる繊細な表現と雰囲気。


自由曲:鈴木輝昭「火へのオード」より「花火ひらく」では
一転して声が前に!
しかし基調となっているこの発声では
(29人という人数、午前10時代ということもあるだろうけど)
フォルテッシモのカタルシスが味わえないのが残念。


それでも語りの上手さと多彩さ。
(一般でもこういう演奏ができる団体は数少ない)
A部門という少人数の良さを感じさせてくれる貴重な団体でした。




岩手県立不来方高等学校音楽部(金賞)


課題曲F1は3声が視える表現、音楽作りがさすが。
自由曲:ペルト「二人の祈祷者」は
透明感ある緊張に満ちた雰囲気。
バランス、サウンドとしての音響、
課題曲につづいて各パートのクリアさ
(それは音楽の中で主役がどこか、というのを明確に伝えていること)
どれをとっても高水準の演奏。


ただソプラノに重点が大きく、
フォルテ以上の音量で下のパートが抑制しすぎの印象も。
(コントロールできなくなってしまうんでしょうか?)
あと、アルトに混じった男声はよく溶け合っていました。
7、8年前の女声合唱に男声が混じり始めたときは
「男声!」という明らかな異物感を感じたんだけど、
不来方に限らず、他の団体でも今回はよく混じり合っていました。




純心女子高等学校音楽部(銀賞)


課題曲F1では「深く豊かな声!」という第一印象。
下2パートのメリスマなど疑問を感じたりで
ややホモフォニックに感じられるけれど
このソプラノの表情と歌は秀逸。
自由曲のニーステット「汝の神を求めなさい」は
表現が練られ、高いテンションをずっと保っていました。




兵庫県立八鹿高等学校音楽部(銀賞)


貴重な混声合唱
豊かな男声が繊細なソプラノを支えるピラミッド型の混声合唱
課題曲G3「風」はサウンドが心地良く
フレーズにうねりがある。
自由曲の松下耕「鳥のために」より「手紙」では
この曲のドラマ性を表現していました。




岐阜県立岐阜高等学校音楽部(金賞・兵庫県教育長賞)


課題曲G1では各パートが少し勝手に歌いすぎ
その時々の主役を聴かずに、やや雑然とした印象。
それでも要所要所はしっかり押さえていてポリフォニックに聞こえる。
表現意欲満点の演奏で、音楽の切り替わり、場面転換も鮮やか。
その輝かしいイメージには非常に好感をもちました。


自由曲:鈴木輝昭「詞華抄」から「エロースがわたしのこころを襲い来て」。
音楽の開始、作ろうとしているサウンド、
表現しようとしている音楽の深さは素晴らしいし高校生離れしている。
ただ、テナーの発声が頭声になりきらない部分や
バスの息漏れなど、主に発声面で「惜しい!」と思わせる部分で
完成に至らないのが残念。
でも、存在として好感を持ってしまう団体なんですよねえ。




桜花学園高等学校合唱団(金賞)


個人的な一位。
課題曲「五月のうた」は音楽の始まりが素晴らしく
それに続く旋律も上品で丁寧な抑揚がある。
音楽の変化も鮮やかで
A部門、この課題曲を演奏した団体で1番なのでは。


自由曲:信長貴富「万葉恋歌」より1、4、5
歌の上手さは課題曲と同様。
さらに歌とヴォカリーズの違いをちゃんと付けられているのが好感。
発声もそうだが、表現も隅々まで磨かれている、
非常によく考えられた演奏でした。Good!




清泉女学院高校音楽部(金賞・兵庫県知事賞)


自由曲の鈴木輝昭委嘱作品「《PSALMUS》22」
これだけの曲を小細工なしで真っ向勝負!という印象。
(ただ速い主旋律に
楔のように他パートが絡む繰り返し…という音楽が
あまり変化をつけないで演奏されるため
この曲、そして演奏の魅力が残念ながら私には理解不能。スイマセン…)
まったくの余談ですがこの団体、髪型が
「さすが神奈川の高校だなぁ」と思わせる
それぞれオシャレな団体なのだけど
足が開き過ぎで全員ややガニ股に見える(笑)。
あと半歩、足を閉じればもっとキレイに見えるのにね〜。


1、2年生だけでこの評価は凄いですね。




豊島岡女子学園高等学校コーラス部(金賞・文部科学大臣賞)


発声、特にソプラノが素晴らしい団体。
深く豊かだけどソリスト的ではなく合唱の歌唱として自然。
課題曲は表現も良い。
自由曲:シュトローバッハ「めでたし、天の女王」は
音楽の始まりが良く、歌、フレーズの流麗さが
この曲の優しさ、美しさという魅力を充分に表現。
(ただソプラノはとても良いけど
バランスとして下パートがもう少し出てくれば・・・好みの問題かな?)


いわゆる超難曲ではなくコンクールっぽくない自由曲を
演奏会の1ステージのような雰囲気でこの1位評価、というのは
今までの「全日本合唱コンクール」へ一石を投じるものだと感じます。
この団体も1、2年生だけの団体。すげー!




出雲北陵高等学校合唱部(銀賞)


課題曲F2は知性と感情のバランスが優れていて
良い空気、良い時間の流れを感じさせる
大変雰囲気の良い演奏。
音楽の場面転換も鮮やかで好感をもちました。
自由曲:鈴木輝昭「わたしは阿国」から5、6
緊張感と説得力がある演奏。




次回は高校B部門への感想を。