「コンクール出場団体あれやこれや:出張版」2010(その4)


10. 大阪府・関西支部代表
創価学会関西男声合唱団
(男声32人・3年連続出場)



今年も一般Aの部で唯一の男声合唱です。
毎回、「どんだけ練習してるんだ?!」と思わせる
演奏をされることで有名な団体でもあります。


課題曲はM4:新実徳英「花に寄せて」から
「ばら・きく・なずな -母に捧ぐ-」


自由曲は昨年と同じR.Strauss!
「 3 Männerchöre」から
(リュッケルトの詩による三つの男声合唱)
「1.Vor den Türen(戸口で)」
「3.Fröhlich im Maien(五月の喜び)」


練習を大変積んでいる団体ですけれど
自由曲の選曲は表面的な難易度にこだわらない
男声合唱の楽しさ、喜びを伝えてくれる、いわゆる
「コンクールらしくない」選曲を続けている団体です。


今年も柔らかく幅広い表現で
演奏会の1ステージのような演奏を聴かせてくれるでしょうか。











11. 島根県・中国支部代表
ゾリステン アンサンブル
(混声26人・5年連続出場)



残念ながら昨年は演奏を聴けなかったゾリステン アンサンブル。
その理由は当ブログの
「いかに私は全国大会へ遅れゾリステンを聴けなかったか」
…でおわかりいただけます。
この教訓を胸にして、今年は早く会場へ向かおう。
昼は大阪で小龍包でも食べようかな。(大学の部は?!)



今年のゾリステンの課題曲はG1。
自由曲は西村朗:無伴奏混声合唱のための「死にたまふ母」から
「玄鳥」。



のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にいて
 たらちねの母は死にたまふなり



斉藤茂吉31歳、その母:いく58歳の時の句。
母の死を見守るような燕ののどの赤さの生命感と
死にゆく母との対比が印象的な句を中心に据えたこの曲。


初演団体「創る会」再演、
田中信昭先生の指揮で聴いたことがあるのですが
全4曲のうち2曲目に位置する「玄鳥」。
テキストに負けない、心に強く訴える音楽がある曲です。


作曲者によるプログラムノートから転載しましょう。

第2曲「玄鳥(つばくらめ)」
(哀切に、かつきわめて表情豊かに。)
「其の二」の14首をテキストとする。
 母の死を見守る。
ここに含まれるいくつかの短歌はことに有名で、
まさに絶唱中の絶唱。
第11首の「我が母よ・・・」と
第12首の「のど赤き玄鳥・・・」は、
「死にたまふ母」全体の心情的頂点を成すものと言えよう。

ゾリステンは昨年のブラームスも意外だったのですが
コンクールでこういう邦人曲を選曲するのも意外といえば意外。
ただ、(これは怒られるかもしれませんが…)
指揮者:西さんの音楽には根っこに激しく熱く、荒々しいものが
隠されている気がします。
印象が近いものとすればESTの向井先生の音楽のような…。


その容易く柔らかくならない、どこか頑なな心。
さらにゾリステンの個性的な団員さんの歌が
この強い言葉と音楽に
一層力を加えてくれる演奏を期待してしまいます。











12. 福島県・東北支部代表
会津混声合唱団
(混声32人・2年連続出場)



実力団体の会津混声。
昨年の団員さんによる丁寧な紹介文では

昨年、今年と、団員の世代交代が進み、
若返りました(特に女性)


ということでその年の演奏では
確かにソプラノの声が若やいだような印象がありました。
そして相変わらず現代曲をシャープに力強く演奏するその姿は
カッコ良かったですねえ。
今年は課題曲G1とウカシェフスキの自由曲2曲。
Vineと同じ曲もあり、聴き比べも楽しみです。
そして今年も団員さんに紹介文をお願いしたんです、が・・・。
Oさぁ〜ん!ホントにこれ、載せちゃって良かったんですか?!

課題曲 Ne timeas Maria
曲集が届いた!さて何やろうかな?とパラパラとページをめくる。
恒例としてピアノ付きはパス!
次に日本語は、と、風?って去年と同じ歌詞?
去年の苦労が頭をよぎるんで印象が悪い。パス!
あと、残りは、と、ゲ!ルネッサンスとフランスね〜。
んでもぉ、おフランスのエスプリなんて、とても無理よね〜。
それに臨時記号多いしぃ〜。
そんで最後に残るのは ビクトリア。
ムム・・・、とっても後悔しています。

後悔してるんかい!
えっと、自由曲は?

◆自由曲
・Beatus vir,Sanctus Paulus
 パウロ讃歌・・・です。ってオイ!それだけかい!
Ave Maria
 歌詞はアベマリアとアーメン。
たまに感嘆詞のようなAーがあるが、
ひたすらアベマリアと希求し続ける。
最後にちょっとした仕掛けが。
SSATとATBBというちょっと珍しい編成。


・・・もうツッコミもできない・・・。

(フィクションも織り交ぜています)

とのことですが。


まあマジメでお堅い印象の会津混声にも
こういう団員さんがいらっしゃいます。
Oさん、会場の隅でちょっとお話しましょうね(笑)。



そうそう、暴走ついでにウカシェフスキのこのCD。
[rakuten:hmvjapan:10363030:detail]


資料用に↑のH◯V 楽◯市場ストア で購入したんですが
対応がもうね、う◯こですよう◯こ!
3〜5日で届く、とか書かれていたんで
なら紹介記事書く前に聴けるなあ、と注文したところ
1週間後にメールが送られまして。


「ご注文頂きました商品のうち、
取引先からの入荷が遅れている商品がございます。
商品が入荷次第、配送の手配をさせていただきますので、
恐れ入りますが、
何卒ご容赦頂きますようお願い申し上げます」


なんじゃそりゃ。
しかもどれくらい遅れるかわからないし。
ご容赦できるかキャンセルだキャンセル!
あーあ、最初からパナムジカで注文すればよかったよ。
で。キャンセルしようとすると


「お客様の御都合でキャンセルは出来ません」


(°Д°)ハァ?
いつ入荷するかわからない商品をそのまま待てと?


そんなわけで購入して2週間経ってもCDは届きません。
HM◯ ◯天市場ストア!どうにかして!!


「キャンセルできないのを確認しなかったアンタが悪いんじゃ…」


(∩ ゜Д゜)<アーアーアーきこえなぁい





む。団員Oさんの文章、まだあったぞ。





<目標>
いつも団員よりも努力してくれている指揮者に
久しぶりに金メダルをかけてあげたい!



・・・ホロリ (゜ーÅ) 。


高橋祐二先生、
(そして会津混声のみなさまも)がんばってください!











13. 東京都・東京支部代表
Combinir di Corista
(混声31人・3年連続出場)



コンビニエンスストアのように品揃えの豊富な
何でも歌える合唱団に!」というのが団名由来のこの合唱団。
創立は2005年という若い団体なのに
一昨年の初出場でいきなり2位のシード。
そして昨年は第1位という実力を持つ急成長の合唱団です。


課題曲はG2のVillette
自由曲はダラピッコラの
ミケランジェロ・ブオナローティの詩による6つの合唱曲」から
「2. 不幸な結婚をした男たちの合唱」。
そしてローリゼン「Les Chansons des Roses(薔薇の歌)」から
「Contre Qui, Rose(薔薇よ、おまえは)」


「6つの合唱曲」1曲目の「不幸な結婚をした女たちの合唱」を
カップリングすればバランスが取れる…と思いましたけど(笑)
時間制限とかいろいろ理由があるんでしょうね。



「2. 不幸な結婚をした男たちの合唱」のヒドイ歌詞。


言っておく、妻をめとれば2日のうちに、
わからされることになる。
地獄の女悪魔
能なしのカボチャ頭


・・・を浄化するために美しいローリゼンを選曲したのかなあ、
などと考えてしまいますがどうなんでしょう?
コンビニ団員chiiさーん!

今年も団内で相談の上、まとめました。


1)選曲理由


皆さんに少しずつ浸透しつつある当団のコンセプト
(=コンビニのように品揃えの良い合唱団)に忠実に、
今年はコンクールの課題曲で
初めて邦人曲以外の作品を取り上げます。
そしてバランスを取ってといいますか、
これまた看板に偽りのないよう、
自由曲には外国語の作品を選びました。
陽気なイタリアのあっけらかんとした歌と、
リルケの内省的で抒情的な思いの両極端を歌った2曲です。
人生の喜怒哀楽のように、歌心も豊かに、と。

なるほど。今回は「人生の喜怒哀楽」の振り幅を
聴かせてくれるわけですね、楽しみです!
そして目標や志は、との問いには

歴史が浅い上に毎年新しい課題に取り組んでいるため、
今年も初出場と同様の気分です。
どこまで思いが伝えられるのか、
これで通用するのか、
と心配が尽きないのはいつものことです。
課題曲の静謐であたたかな空気感、
ダラピッコラのコメディ・オペラかホフヌングか
というようなおどけた歌い回し、
ローリゼンの優雅な雰囲気…
これら三曲それぞれの違いを歌い分けられたらと願っています。

そして最後に

今年も良い音楽を追求して頑張ります。


というメッセージが。
chiiさん、コンビニ団員さん本当にありがとうございました!
あ。写真も送っていただきました。こ、これは…(笑)。





写真は、迷ったのですが、
第4回 定期演奏会(5周年記念) の STAGE IV 「映画を歌おう」 から、
オペラ座の怪人」 Masquerade のシーンを選びました。


「劇団(激団!?)コンビニ」
これも、コンビニが誇る品揃えの一例でございます(笑)


なるほど、この演劇精神で3曲の歌い分けもバッチリですね。
今回の品揃えも楽しみにしております!











14. 愛媛県・四国支部代表
女声合唱団「歌姫」
(女声17人・13年ぶり2回目の出場)

2回目とは言っても、
前回の出場は50回記念の拡大版でしたので、
実質四国2位での代表でしたから、
1位での代表は初となります。
(HP掲示板より)


…とのこと。


そういうわけで念願の全国出場おめでとうございます!
団員さんに知り合いがいるので
ずっとこっそり応援していたんですが
この13年長かったですねえ・・・。(しみじみ)


今年の歌姫の課題曲はF4「五月のうた」
自由曲はカナダ民謡・Allison Girvan編曲
「V'la L'Bon Vent(ほら、良い風だ)」 
William Blake 作詩・Allan Bevan作曲
「To Morning(朝に寄す)」


どちらも少し物悲しい印象の
「V'la L'Bon Vent」「To Morning」。
どういう意図でこれらの曲を選ばれたのでしょう。
指揮者の森岡先生にメッセージを頂いております。

まず選曲ですが。
今年は、私が一番信頼しているピアニストの大澤さんが
コンクールのスケジュール調整OKだったので、
課題曲は「五月のうた」と早々と決めておりました。
いつもコンクールでは課題曲で酷評を
いただいておりましたので、
今年は一番歌姫が得意とするタイプの曲にしようと即決でした。
後でわかったことですが、
大澤さんは「五月のうた」の混声版で
寺嶋先生にレッスンを受けた経験があるそうです。
ピアノにもこうご期待!


ほうほう。寺嶋先生はピアノも素晴らしい腕前ですからね。
楽しみです。

次に自由曲。
このところ自由曲は邦人作品が多かったので、今年は外国ものを…
ということで、
私のお気に入りのカナダのエレクトラのCDを聴きあさっていたら、
「V’La L’Bon…」「To Morning」の組み合わせが思いつき、
同時にちょうど歌姫の元団員で
カナダのバンクーバー在住の友人がいるのを思い出し、
しかも私の勤める中学校の英語教師に
カナダ人がいたことを思い出し…
そういえば、松下先生今年カナダにブリリと行くんだよなあ…
などといろいろ思いを巡らしていたら
→ よし!今年はカナダに決定!!
まずは楽譜を見てみないと、と
Cypress社にカナダの友人から連絡を取ってもらったら
なんとCypress社から即日メール添付で
楽譜を送ってくださいました。
日本国内で楽譜を買うより早い!
しかも円高で安い!!


そして後日談。
私は今年の外国人審査員のことを、
全国大会が決まるまで全く知らなかったのですが
なんと、バンクーバー室内合唱団の指揮者さん。
楽譜をメールで送って下さったCypress社の方は
そのバンクーバー室内合唱団の団員さんでしたとさ。
今年の選曲は因縁めいたものを感じます。
曲については、多くを語りたくはありませんが、
V’La L’Bonはフランス系カナダ人の開拓者たちが
歌い継いで来た民謡。
To Morningは神聖で荘厳な朝を歌った曲です。
一つだけ団員に指揮者としてのテーマをお話ししたのは
「朝の来ない夜はない、必ず夜明けが来ると信じて歌おう」
ということです。

なるほど。「To Morning」も
悲しいだけで終わる曲ではありませんからね。
選曲にもドラマがあるなあ。必然と偶然とも言うか…。
これからはカナダの合唱曲にも注目ですね。
そして森岡先生の文章はこう締められていました。

演奏の目標といえば、
四国大会で涙をのんだ団体の皆さんに、
今年の四国1位は歌姫で間違いなかったと
納得してもらえる演奏をすることでしょうか。

森岡先生ありがとうございました!



天空で眠っている夜明けを起こし
東の空から光を注がせておくれ
そして目覚める日に蜜のような露を贈っておくれ


(William Blake詩「朝に寄す」より)



この言葉のように歌姫の演奏が
夜に朝の光をもたらしてくれることを心から願っています。
「朝の来ない夜はない、必ず夜明けが来ると信じて歌おう」
…良い言葉ですね。



さて、HP担当の方から歌姫の写真も送っていただきました。






これは楽しい合唱祭の写真ですね〜。
HP担当の方もありがとうございました!











15. 神奈川県・関東支部代表
マルベリー・チェンバークワイア
(混声30人・2年連続出場)



13団体前に出演した女声陣が加わっての混声合唱
さて、春子先生お願いします!(あ〜、楽ぅ〜〜〜♪)

課題曲はG1のNe timeas, Mariaです。


自由曲
1.Concerto for Choir(合唱のためのコンチェルト)より
  4楽章
  詩:Gregory of Narek (951-1003)
  曲:Alfred Schnittke (1934-1998)


マルベリー・チェンバークワイアは30名ですが、
この曲は最大26声部に分かれます。
ほとんどのパートが一人になってしまうので、
最初は諦めて他の曲を練習していたのですが、
やはり、とても素敵な曲なので、
「無謀でもいいから、ぜひ挑戦してみよう」
ということになりました。
「私が希望をもって、神の御名のうちに
始めた仕事を完了せよ。
私の歌が、心と体の傷を癒すことが出来るように。
そして、神よ、しもべから称賛を受けたまえ。
アーメン」と、ロシア語で歌います。



2.Kaisa-isa Niyan (たった一つ)
  詩:フィリピン南部の子供の数え唄
  曲:Nilo B. Alcala II (1978- )


昨年に引き続き、フィリピンの作品を本邦初演します。
作曲のAlcala氏はフィリピン・マドリガル・シンガーズの
元メンバーで、現在はアメリカで作曲の勉強をし、
多くの賞を受賞しています。
「たった一つ、たった二つ、たった三つ、
四は交互に働き、五は重すぎて邪魔、
六は音が大きすぎ、七は竜、八はひどく打ちつけ、
九は箱、十は引き出し」という数え唄は
フィリピン・マドリガル・シンガーズが
2007年にヨーロピアン・グランプリを受賞したときの
演奏曲目(未出版)です。

春子先生、今回もありがとうございました。
30人で26声部に分かれる合唱協奏曲かあ・・・。
相変わらず凄い選曲ですね。
「無謀でもいいから、ぜひ挑戦してみよう」
そのチャレンジ精神に幸あることを願っています。
本邦初演のフィリピン作品も楽しみ!
そしてチェンバークワイアも写真を送っていただきました。




写真は、今夏の小田原少年少女合唱隊との
ジョイント・コンサートで、客演指揮のサンナ先生に
ニュージーランドのマオリ族の歌を振りつきで
教えていただいたときのものです。


ニュージーランドのマオリ族!
・・・インターナショナルだなあ・・・。






さて一般A部門、最後の団体です。







16. 北海道・北海道支部代表
ウィスティリア アンサンブル
(女声18人・3年ぶりの出場)



ウィスティリア アンサンブルは枝幸ジュニア合唱団が
改名した合唱団ですね。
藤岡先生が指導した枝幸中OGと札幌の中学校OGの
合同団体でしたっけ?


全日本の全国大会は3年ぶりですが
その間に定期演奏会で高嶋昌二先生を客演指揮に迎えたり
宝塚国際室内合唱コンクールで優秀な成績を収めたり
松下耕先生が主催する軽井沢合唱フェスティバルに参加したり
多様な経験を積んできているようです。


その声は清澄で北海道の冬の空気を思い出させるような音。
3年ぶりの全国大会でどんな風に変化しているか楽しみです。


課題曲は選択する団体が少ないF1
「Surrexit pastor bonus(Giovanni Pierluigi da Palestrina曲)」
自由曲は信長貴富:無伴奏女声合唱のための「万葉恋歌」から
「春の苑」「君待つと」「天の火 」「山桜花」。
高校生のコンクールで聴かれることが多い
万葉和歌を題材にしたこの曲。
(先月の全国大会でも桜花学園高等学校合唱団が
 大変良い演奏をしていました)


ウィステリアのクリアな声がパレストリーナの世界を、
歌心が信長先生の万葉恋歌の世界を
充分に表現してくれることを願っています。





(一般B部門へつづきます)