MODOKI ☓ CANTUS ANIMAE joint concert in Tokyo感想 2

続いて佐賀の合唱団、MODOKIのステージ。
指揮は山本啓之さん。
団員は約33人。
(この震災の影響で急遽来られなくなった
10人のMODOKI団員がいたとか)


先程のCAステージと同じ、
共通のテキストで昔の曲と現代曲を対比させるもの。


まずビクトリア「めでたしマリア(Ave Maria)」の後、
マンテュヤルヴィの「めでたしマリア(Ave Maria)」


「Ave Maria」と語る女声と重なる男声の歌が、
不思議な音響空間を作る。


「救いなる生贄よ(O salutaris hostia)」
ロッシーニの作品から。
熱さと祈りがこもる、大変良い演奏。
後半の「da robur(力を与えよ)」連続の畳み掛けは
前のめりになる意欲的な表現のMODOKIの良さが生かされた演奏。


続いて松下耕先生の「O salutaris hostia」
MODOKIの特徴と言えるBassの厚い鳴りが
この曲の暗く、重層的な側面を際立たせる。
フレーズも長く取り、前へ前へ、と
どこまでも進んでいこうとする姿勢。
同フレーズの繰り返しは単なる繰り返しにならず、
内省し、徐々に心の奥へ沈んでいくような雰囲気が秀逸だった。


何度か書いているがMODOKIという合唱団は
熱さを特徴としている合唱団だと思っているが
その熱さで曲をねじ伏せてしまうのではなく、
楽曲を尊重し、
その曲らしさというものを巧く表現する合唱団である。
言い換えれば、その曲が成り立つ要素を掬い上げるのが上手い。
マンテュヤルヴィの「Ave Maria」にしても
他の演奏では単純に感じてしまうことが多いこの曲も、
声の方向性、喋ることと歌との違い、響きについてなど
多くの要素を考えた上での表現なのであろう。
単純な曲のはずなのに、MODOKIの演奏は非常に面白い。
その他の曲も、MODOKIらしさを出しながらも
それぞれの曲の個性を充分に表現していた。


最後の2曲はCAメンバー7人が入り。
バード「神の小羊(Agnus Dei)」
一列になり歌われたその曲は流麗で
ひたすら輝き、明るく・・・。
この宗教曲2ステージ最後の曲は
ペンデレツキ「神の小羊(Agnus Dei)」


過去のMODOKIコンクール自由曲でも聴いたこの曲。
始まりから胸が締め付けられるようなソプラノの悲痛な歌。
徐々に高まっていく感情と歌、そして頂点のフォルテシモ。
クラスターが単なる音の重なりというだけではなく、
やり場がなくどうしようもない激情の表現として存在。
眼前に迫り、寒気を引き起こし、引き込まれる、いや、
引きずり込まれる!
長く、長く持続する緊張感と全力で叩きつけるような強さを示し。



そして最後は呻きのような、深い沼に沈む際のつぶやきのような。



Agnus Dei,qui tollis peccata mundi,
miserere nobis.
Agnus dei, qui tollis peccata mundi
dona nobis pacem.


神の小羊、世の罪を取り除かれる方よ、
われらを憐れみください
神の小羊、世の罪を取り除かれる方よ、
われらに平安をお与えください



「われらを憐れみください」
「われらに平安をお与えください」




「宗教曲」のくくりとしての前半2ステージ。
宗教を信じない自分が書いてふさわしいことか分からないが
人の力ではどうしようもない、
身動きができない、まともに考えることができない状態。
やり場のない悲しみ、不安、怒りが心に広がっているとき。
そんなとき、
人のそばに寄り添い、
心の行く先を示してくれる音楽の力を感じた。
生、そして死、人の力ではどうしようもない事態に直面したとき、
人知を超えた存在を意識し、その存在へ祈るという行為。
宗教というもの、そして宗教曲が必要とされ、生まれてきた意味を、
演奏から非常に感じさせる2ステージだったと思う。




(続きます)