宝塚国際室内合唱コンクール感想 その3

<近・現代部門>
12団体が出場。


・・・だいぶ日が空いてしまいました。
この「近・現代部門」は感想を書くのに抵抗がありましてね。
どう書こうかいろいろ悩んでいるうちに時間がこんなにも。


えーっと、この部門はほとんどの団体が
発声、音程など基礎的な部分はしっかり出来ていて
練習もちゃんと積んでいる印象だったのですが。


発声も音程も問題なく、練習もしっかり、となると
それはどうしたってその団体の
「音楽そのもの」が明らかになるんですね。


審査員の池辺晋一郎先生の講評を引用しましょう。
http://takarazuka-c.jp/page0231.html

私が今日、審査メモに最も多く書いた言葉は、
「色」「ボキャブラリー」「表現」などです。
私は作曲家であり、
書いた楽譜をその通り読んでくれることは嬉しいのですが、
楽譜にどれほどのことが書かれているか
読み取ってほしいとも思うのです。
書か れた楽譜を正確に演奏しても、
それは「いい音楽」とは言えません。
楽譜の音符や休符の背後に何が潜んでいるのか、
それを表現してこそ本当の音楽だというこ とを知ってください。


つまり、「楽譜を読む」ということを、
初心にかえってやっていただきたいと思います。
そうすれば、音楽は一層いきいきとしてくるでしょう。

楽譜の音符や休符の背後に何が潜んでいるのか、
それを表現してこそ本当の音楽だというこ とを知ってください。


いやあ、本当に同意です。
同意なんですが・・・この「楽譜を読む」ということが難問ですよね?
もちろん楽曲解析はその手段になるのでしょうが、
それだけではなく、楽譜を深く読み、
それを表現に上手く活かす、いわゆる「センス」みたいなものって
ここまで発声と音程を団員さんにしっかり叩きこめる、
言わば既に「出来上がった」指導者の方が
さらに磨けるものなのかな、と。


良い演奏を聴き続け蓄えたその感覚、センスは、
私も仲間とけっこう共有できることがあります。
半ばお約束のようになっている表現。
楽譜には特に注意書きがなくても、
なんとなくこういう風なのが良いよね、という表現。


この主旋律に挿入的に挟む短い旋律は
やっぱり鋭さと緊張感があるべきだろう、とか。
曲の終わり、ここの旋律の最後だけが短い音符なのは
ぶつ切りじゃなく、ふわっと解放するような響きだよね、とか。


私はダサダサなセンスしか持ち合わせていないんですが、
それでも聴いていて、音程も発声もバッチリ。
加えて練習はとても積んでいる。
…でもその表現は無いんじゃない?という演奏がいくつか。


さらに言うなら、聴く者を惹きつける、
聴く側の集中度を持続させる音楽作りの感覚も
やっぱり「センス」なんだよなあ、と。
クレッシエンドのタイミング、呼吸、テンションなどなど。
言い換えればドラマ性を作るのが上手い指揮者の指導は
発声などの指導が系統立てて学ばれた印象と比較し、
多分に感覚的、センスによるものなのだなあ、と感じます。


楽曲解析は行われているのかもしれないけれど、
それを音楽へ、生きたものとして実行されていないのか。
それとも方向音痴の私が地図と現実の風景を見比べて、
上手く関連付けることができないように、
他の人には見えるけれども、
その方は見落としてしまっているものがあるのか。


・・・いや、凄い不遜なことを書いてると自分でも思います。


そもそも私の、色が無い、表現の語彙に乏しい、
という評価が正当なものか怪しいものですし、
指揮者の方々は「楽譜をしっかり読み込んで」いるけれども、
過剰に表現へ活かすのではなく、
さりげなさ、自然さを意識する音楽作りをされている可能性もあります。


ただ、もしもそういうセンスをあまり持ち合わせていない指揮者の方々が
センスを磨こうとすれば、
一体どんな方法が有効なんでしょう。
模倣が大事なのでは?という助言ももらったんですが
模倣の対象、その模倣のやり方などもなかなか難問だよなあ、と。
音楽以外にもセンスがいろいろ欠如していて
普通の人より明らかに劣る分野がいくつもある私は
自分自身の問題としてもちょっと考えこんでしまったのです。



各団体の感想を。
賞外ではリトアニアから来た
Choir “Kivi”(キウイ)(女声14名)
この団体についてはフォークロア部門にも出場していたので
その時に詳しく書くとして、
ガーシュインを含む軽めの選曲を振り付けを伴って。
2色のパステルカラーを合わせ、花をあしらったワンピースが
キュートでした!



合唱団La・Lu・La(兵庫・混声20名)は
はもーるKOBEの岸本雅弘先生が指揮者。
初出場なので初めて聴く団体でしたが非常に好みの団体!
「Deus,qui illumina(Julio Dominguez)」は
練られた声、そして響きへの意識が高く、
音楽の構成も良く考えられていて説得力がありました。
2曲目の「UMMAH,SALLIH(John August M.Pamintuan)」は
音色の変化と土俗性が感じられるリズムが魅力的。
いやあ、良い団体を知ることが出来ました。



あと、
HAMAMATSU Chamber Choir(静岡・混声16名)の
「にじ色の魚(木下牧子)」は
村野四郎氏による夏のはじまりと郷愁を誘う詩とあいまって
涙腺を刺激する演奏。


混声合唱曲集 にじ色の魚 著者:木下牧子

混声合唱曲集 にじ色の魚 著者:木下牧子


こういう「日本語の魅力を伝える」演奏は
なかなか無かったので印象深いです。
アンコール曲集に収められている曲だそうで
夏の演奏会の最後に演奏されたら泣いちゃう自信があります(笑)。
この日の全団体の演奏で、唯一ホロリときた演奏。
ネットで探して何度も聴いていますよ。
「母の里のいなか」ってどこなんでしょうね?





(長くなりすぎたので銅賞以上の感想はまた次回に)