「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2011」(その2)

4.東京都・東京支部代表
杉並学院・菊華混声合唱
(混声32名・初出場)



初出場おめでとうございます!
杉並学院・菊華混声合唱団は
菊華中学・高等学校が共学化のため
杉並学院中学・高校に変わったことによる
合同名のOB合唱団のようですね。


今年の高校部門Aグループ全国大会では
杉並学院合唱部の男声が金賞を受賞したそうです。
東京都大会でも菊華アンサンブルが
同じ渕上貴美子先生の指揮で出場されていますね。
高校2部門、一般2部門も出場と渕上先生、ご活躍!


さて、若いメンバーが多いと予想されるこの合唱団。
今年の課題曲はG4の「やわらかいいのち」(松本望作曲)。
思春期の少年少女に向けて書かれたこの詩。
杉並学院・菊華混声合唱団の感性の若さが
共感を持って演奏されることに期待です。


自由曲はKocsár Miklós 曲
「Csodafiú-szarvas (奇跡の鹿)」
なかなかコチャールの混声作品は実演に接する機会が少ないので楽しみ。
菊華アンサンブルは良いリズム感を持っている合唱団と思っているので
躍動感あふれるこの曲にはきっと良い相性でしょう。
2曲目はJaakko Mäntyjärvi 曲
「Pseudo-Yoik(偽ヨイク)」
ヨイクというのはスカンジナビア半島北部に住む
少数民族サーミ人が精霊との交信に使う即興歌とのこと。
しかし、この曲は本物のヨイクでは無いので
「偽ヨイク」と題されたそう。
全国大会では2年前にマルベリー・クワイアとアンサンブルVine、
そして2005年になにわコラリアーズが演奏しています。




私はこの曲、先日聴いた京都:合唱の祭典の
なにコラの演奏・演出の印象が強いのですが
杉並学院・菊華混声合唱団から
また新しい印象を受けることができたら嬉しいですね。








5.長野県:中部支部代表
合唱団まい
(混声19名・3年連続出場)



今回は変則的に応援メッセージの紹介から。


MODOKI、そしてCANTUS ANIMAE団員、
たかさんさんからの応援メッセージです。
この文章があれば、私の言葉なぞひとつもいりませんね。

合唱団まい。
5年前に聴いたコンクールの演奏が素晴らしくて涙してしまい、
それ以来指揮者が同じこともあって
毎年演奏会を聴きに松本まで出かけ、
まいを応援し続けています。
今回の選曲は三善晃の「その日-August 6-」です。
息を呑むような光景、そして鎮魂、
さらに未来への祈りが織り交ぜられたこの曲、
大人数でも表現が難しいこの曲を
平林先生という願ってもないピアニストをパートナーに迎え、
まいはまた新しい合唱の世界を見せてくれることでしょう。
(課題曲なんとG4!これも聴きものですよ〜)
本当に期待しています。
ちなみに「まい」という名は「舞」かと思っていたら
「My」という意味だということを誰かから聞きました。
「自分」を大切にし、
自分たちの音楽を磨き上げて私たちに示してくれる
稀有な合唱団だと思います。
でもメンバーみな気さくで、
一緒にいると楽しい人たちですが、
合唱になると音楽を追求して止まない人たち。
心から尊敬しています。


たかさんさん、ありがとうございました!





さて、国民文化祭のため京都へ行った際、
出場される「まい」代表さんにお話を伺うことができました。



合唱団まい団員さんへのインタビュー。
(10月29日、京都駅に近い居酒屋にて)


代表   「まい」代表さん・・・以下「代」
文吾   インタビュアー・・・以下「文」




  課題曲はG4(松本望「やわらかいいのち」)ですが。
   歌ってどうですか?



  難しいですね…。
   ハーモニー誌での
   「名曲シリーズへのアプローチ」で松本望さんが
   「各合唱団の"演奏哲学”に期待」と
   題された文章を書かれているんですけど、
   松本さんが大事にされている和声感やテンポの微妙な変化、
   表情記号などやればやるほど難しくて・・・。


   あと、松本さん独特の「語り口」というもの。
   三善晃先生には団員の3分の2が実際にレッスンを受けたことがあり、
   三善先生の曲に取り組む機会も増えて、歌っていくうちに、
   三善先生の楽譜を見れば
   「おそらくこういう事なんだろう、こんな語り口だろう」と
   ようやく想像できるようになってきたけれども
   松本さんは、それが分からない!



  あ、でもそれって松本望さんの作品が
   オリジナリティあふれている、ということなのでは?



  そう!自分もそんなにたくさん
   現代作曲家の作品を歌ってはいないけど
   松本望さんは若手作曲家の中でも
   別格の存在じゃないかと勝手に思ってます。
   今回のコンクールは偶然ですが、
   谷川俊太郎さんという詩人の作品に、
   日本の合唱界を担ってきた三善晃先生と、
   これからの日本の合唱界を担っていくのではないかと思われる
   松本望さんというふたりの作曲家の
   それぞれの物語を歌うことになりましたね。



  自分が気になっているのは、
   「あなたは愛される」って凄い言葉とフレーズですよね…。
   この最初のフレーズで全てが決まってしまうと言うか。



  「まい」では「サビアタマ」って呼んでます。



  「サビアタマ」(笑)。言い得て妙ですね!



  この「やわらかいいのち」は
   3曲から成る混声合唱組曲「あなたへ」の終曲なんですよね。
   思春期で精神的にゆれる”あなた”と”わたし”が対峙し、
   徐々に心がほどけていって信頼が生まれ、
   「やわらかいいのち」から、ようやくその人の心と邂逅して、
   そして初めて本音で「あなたは愛される」と語りかけることができる、
   呼びかけることができる。
   そんな”わたし”の「語り口」を松本望さんが示しているように感じます。
   そして、そんな想いを自分たちの語りとして
   表現できればいいなと思っています…けど。



  「けど」?



  全国まで間に合わないかも・・・・・・。



  がんばってください!(笑)


   次に自由曲なんですが、
   先程話が出てきた三善晃先生の「その日-August 6-」ですね。
   広島へ原爆が落とされた時を思う作品。
   どうしても私は今年の東日本大震災を連想してしまうんですが。



  この曲はコンクールで演奏するのを震災前に決定していたんですよ。



  え、そうなんですか?



  だから震災が起こって、むしろこの曲を「歌っていいの?」
  「歌えるの?!」…そんな心境になりました。



  う〜ん、複雑な心境になりますよね・・・。



(ここで、隣で聴いていた「まい」のソプラノの方が発言)


   三善先生といえば「夕焼け小焼け」(唱歌の四季)で
   終戦の焼け野原の中、夕焼けを見て、
   亡くなった人を重ねた
   最後のソプラノHigh-Cだったりするわけじゃない?
   そんなエピソードを思い出したら、
   まともに歌えず涙が出てしまうことがあったわ。



  この曲は詩人の谷川俊太郎さん、作曲家の三善晃先生、
   そして歌う自分たちも原爆の日
   「その日私はそこにいなかった」という距離感、
   共感しようとしても、できない部分があるんですよね。
   それは震災に対する自分たちの心とも共通する部分があって。


   だから原爆に対し色々と勉強したり、
   詩や音からのメッセージをもっと感じられるように、
   近づいていこうとするのは大切だと思います。



  なるほど。
   距離感や共感がしにくいことを認識するだけではなく、
   それを踏まえ、近づいていこうとする行為は尊いと思います。
   代表さん、ありがとうございました!





長野の合唱団まい、来年の第15回定期演奏会は
平成24年7月15日(日)
場所は「福島市音楽堂」です。 

 












6.神奈川県・関東支部代表
マルベリー・チェンバークワイア
(混声29名・3年連続出場)



マルベリー・チェンバークワイアの女声部、
マルベリー・クワイアは15番目、一般A部門の最後に。
母体となる小田原少年少女合唱隊は
翌日の一般B部門の2番目に出演しますね。


さて、今年も超強力な助っ人さんにご協力願いました!
小田原少年少女合唱隊・マルベリーの音楽監督でもある
桑原春子先生からメッセージを頂いております!

課題曲はG1の Vaetです。


自由曲は、1998年福岡全国大会のラフマニノフ以来、
13年ぶりに1曲のみです。


We Beheld Once Again the Stars(我らは再び空の星を仰いだ)
詩:Dante Alighieri(1265-1321) 曲:Z. Randall Stroope


以前から大好きで憧れの曲だったのですが、
ダブル・コーラスのため30人では厳しいかなと、
ずっと諦めていました。
が、昨年、26声部のシュニトケを無理矢理歌ってしまってから
この曲への思いは募るばかりで、結局、今年も
「無理でもいいから歌ってみよう・・・」という選曲になりました。


歌詞はイタリア中世を代表する詩人・政治家ダンテの
『神曲』第1部の地獄篇から引用されています。
地獄篇は、案内人に導かれたダンテが
地獄のありとあらゆる恐ろしい光景を目にし、
24時間以内に抜け出さなければ永遠に留まらねばならない
という切迫した状況の中で、やっと地上につながる孔を見つけて
脱出する様子を描いています。


この合唱曲は、3部構成で、第1部はイタリア語で
「しかし夜がまた、やってくる。
我らはすでに全てのものを見たのだから
さあ、行こう、休まずに」
第2部の男声合唱から始まる激しい部分はラテン語で
「地獄の王が現れた!」
そして第3部は再びイタリア語で
「しかし夜がまた、やってくる。
振り返ることなく天に向って上っていくと
小さな孔から美しい光が見えた。
その孔から外に出て、我らは再び空の星を仰いだ」
と歌います。


作曲のストループ氏はアメリカの現代合唱指揮者・作曲家です。
アメリカ合唱指揮者協会に多大な貢献をした
レイモンド・ブルック氏追悼のため、2004年に書かれました。


春子さん、ありがとうございました!
3年前にはもーるKOBEが演奏したこの自由曲、
美しく、かつドラマティックで
良い曲だなあ、と思っていたのですが、
まさかテキストがダンテの「神曲」とは!
「以前から大好きで憧れの曲」という言葉にも納得です。


昨年のマルベリー・チェンバークワイアの演奏は
課題曲は抑えた表現の中、
音楽の整理とバランスをよく考えられた知的な表現。
自由曲の合唱協奏曲はロシア的重厚さ、
フィリピンの数え歌は音色も一転して、軽妙で楽しく、
声楽的な実力の高さ、表現の幅の広さを示してもらいました。
指揮者:桑原妙子先生の音楽性ゆえでしょうね。



関東大会を聴いた人からはこんな感想が。

マルベリー2団体は言うことなしですな。
個人的にはチェンバーのほうが混声でもあるし
聴きやすかった面はあるにせよ、
音楽を団員も感じて歌っていた感がひしひし伝わってきました。


…とのことで非常に期待ができますね。
そして春子先生からは写真も送って頂きました。




8月10日にインドネシアの聖アンジェラ合唱団と
ジョイントコンサートをしたときのものです。
インドネシアの国旗も日の丸に負けず劣らず簡単で
準備が助かりました(笑)・・・!


なるほど、これは確かに簡単!(笑)
昨年の自由曲はロシアにフィリピン、
そして今年はインドネシアの団体とジョイント、
自由曲はアメリカの作品…と
国際色豊かなマルベリー・チェンバークワイアの演奏、楽しみです!








7.宮崎県・九州支部代表
宮崎Pisello Dolce
(女声24名・4年ぶりの出場)



宮崎Pisello Dolceは2007年に
有川サチ子先生のもとに集った
宮崎女子高等学校、宮崎学園高等学校、
宮崎学園短期大学出身のメンバーを中心に
OG合唱団として結成されたそうです。


Pisello Dolce(ピゼッロドルチェ)とは
イタリア語でスイートピーという意味で
この花の名前をつけたのは
宮崎県がスイートピーの産地だからそう。


結成年の4年前、東京都大会の演奏は
黒のロングドレスで登場したメンバーが
音響的効果が前面に出ている印象の木下牧子先生のオンディーヌを
迫力あるクレッシェンド、
支えある声を駆使し、歌、歌、歌で押しまくる演奏に驚きました。


今年の課題曲はF3「私のいのちは」小林秀雄作曲)
そして自由曲は松下耕先生作曲
女声(同声)合唱のためのコンポジション 日本の民謡2より
「日向木晩唄」「三原ヤッサ節」


中学生や高校生の間で盛んに演奏されている人気のこの2曲。
Pisello Dolceの団員さんも
学生時代に歌ったことがある人もいるのでしょうか。
OG合唱団として、学生団体とはまた違った
大人の味わいの演奏を期待したいですね。









8.山梨県・関東支部代表
S.C.Gioia
(混声23名・2年連続出場)



HPでは山梨県立市川高校音楽部のOB・OGが集まり
平成13年に結成された混声合唱団が
より良い音楽を目指す団として
平成15年、名称を「S.C.Gioia」に改め、
現在では、OB・OGに限らず活動しているとのこと。
団名のS.C.は、教会・合唱団を指し、
Gioiaは、喜びという意味だそうです。



団員の一ノ瀬さんからメッセージを頂きました。

1)選曲及び曲の紹介について
☆課題曲G1
選曲につきましては、特にこれといった決め事はありません(笑)。
毎年G1を選曲することが多いですね。
ルネサンス時代の曲は合唱団でも好んで演奏します。
各パートの駆け引きが面白いです。
その時代に合った演奏ができるように頑張りたいです♪


☆自由曲 Laudate pueri (Busto)
毎年、選曲には大変苦労しています(汗)、
団員より演奏してみたい曲をピックアップして選曲しています。
今年は、Bustoの
Laudate pueri (主よ頌め讃えよ、僕らよ)です。
賛美の歌ですが、Bustoの曲はstoryがあり、
歌っていても心に染みます。
ソロから始まる祈り(演奏)は、
各パートへの祈りと移り、
クライマックスは全パートでの祈りとなります。
Storyが描けるような演奏ができればと思います。
是非お聞きください。



2)この大会への意気込みについて
昨年、初めて念願の全国大会へ参加することができました。
団員は、普段、電線工事をしている人や、
設備工事の職人、介護職員、保育士、公務員、学生など等(笑)。
普段合唱をしている時(姿)とは
とても想像できない多種多彩なメンバーです。
若く未熟な団体ですが、心に残る演奏ができればと思います。
是非聞いていただけたら幸いです。


一ノ瀬さん、ありがとうございました!
昨年のS.C.Gioiaの演奏は課題曲は若々しさが魅力、
自由曲のクベルノ「Ave Maris Stella」は
私も歌ったことがある曲でしたが
それぞれの表現が良くまとまっていて
非常に丁寧な演奏をされる合唱団だなあ、という感想を抱きました。
今年はブストの、リズミカルな部分と祈りの歌が共存する曲。
それぞれの表現がS.C.Gioiaならではの丁寧さで演奏されることを
期待しております。



写真もこの企画のため、わざわざ撮影されて送って頂きました。
ありがとうございます!




フルメンバーではないそうですが、
練習後のヒトコマ、という写真に好印象。
(やっぱり声の印象と同じく、団員さん若いですね〜!)