「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2011」(その5)

13.北海道支部代表
ウィスティリア アンサンブル
(女声17名・2年連続出場)



藤岡直美先生が指導された
枝幸、岩見沢、札幌の中学校OGの
合同団体であるウィスティリア アンサンブル。
以前は「枝幸ジュニア合唱団」という団名で
コンクールへ出場されていました。
今は離れたそれぞれの地域で練習し、
月2回の合同練習を継続されているとか。


昨年、3年ぶりに聴いたその声からは
「ジュニア合唱団」の面影は消え、
ずいぶん成長した印象。
課題曲F1はその冷たさを感じさせる透明な声で
3声が明確に見えるような旋律の綾を聴かせ。
自由曲の信長先生の「万葉恋歌」では
発する身体のもっと高いところへ響く純度の高い声。
旋律、音楽も息が長く、
表現が以前よりもぐっと深み、陰影を増し、
銅賞というのがもったいなく感じられる演奏でした。


今年の演奏曲は課題曲:F1
自由曲は昨年と同じ信長貴富先生の編曲
「うたつむぎ・おとつむぎ」無伴奏女声合唱による奄美島唄 より
3.一切朝花(ちゅっきゃりあさばな) 4.糸繰り  5.六調


北海道大会を聴いた人の感想では

課題曲はやはりウィスティリア アンサンブルの得意分野でした。
隙のない美しい演奏です。
自由曲は信長さんの島唄3曲。
3曲目は、締太鼓あり指笛ありお囃子のような掛け声もあり
今までのウィスティリア アンサンブルとは
違った一面が見られた気がします。


とのことで、「違った一面」、非常に楽しみですね!


ウィスティリア アンサンブルには
応援メッセージが届いております。


歌姫のもりおかさんから
(10番目に出場の「歌姫」指揮者、森岡さん?!)

軽井沢での演奏聴かせていただきました。
交流会での出し物も忘れられません(笑)
青森で再び皆さんとお目にかかれることを楽しみにしています。
本番後着替えを早くすませて、
皆さんのアンサンブルもう一度聴けたらいいな。

そして今くる代さんからは

昨年、東京から札幌へ足を運び、
演奏会を聴かせて頂きました。
煌めく豊潤な音、その裏にある苦労や葛藤を、
ポツリポツリと代弁された、客演指揮の高嶋昌二先生。
アンコールの藤岡先生を交えての
「愛は時を越えて」には、涙が止まりませんでした。
自由曲の南の島の自由な旋律を、
北国の皆さんがどう歌って下さるのか楽しみです。

ウィスティリア アンサンブル、
残念ながら連絡がつかなかったんですよ。
このブログを見たどなたかが、
こんな風に応援してくれる人がいることを
藤岡先生や団員さんへ知らせてくれたら嬉しいですね。


北海道は途方もなく広い地。
その地に普段はそれぞれ3箇所で数人ずつ練習していて、
藤岡先生の元に月2回集まる・・・。
枝幸ジュニア時代から演奏に惹かれていた私としても
応援しないわけにはいきません。
がんばれ、ウィステリア アンサンブル!











14.千葉県・関東支部代表
VOCE ARMONICA
(混声28名・初出場)



初出場おめでとうございます!


実はVOCE ARMONICA指揮者の黒川和伸さんのことは私、
以前から知っておりまして。
千葉大合唱団を卒業後、東京芸大声楽科へ進み、
現在はプロフェッショナルな合唱指揮者として
合唱団13団体を指導されている方です。


2002年1月、千葉大学合唱団定期演奏会で
学生指揮者だった黒川さんの演奏を
こんな風に記していました。

2st。萩原英彦「混声合唱組曲 白秋による三つの楽想」
 指揮:黒川和伸さん(学生)


 女声のp,ppでもとても良く響く声にまた感動。
 言葉の扱いも神経が細やかで〜。

 細部にハッとさせる上手さ!巧さ!!
 指揮ぶりもかなりお見事。


 日射しの中、陽光がきらめくようなこの楽曲を、
 (楽しく、魅力的だが難曲!)充分に表現していた。
 うーん、良い学生指揮者だねっ!
 (聴いたあと、会場で過去の定演のビデオを買ったのだが。
  この女性の学生指揮者さんもなかなかだぞ。
  どういう育成をしてるんだ、千葉大合唱団?)


あれから9年、学生指揮者だった方が
芸大に入り直し、プロの合唱指揮者としてご活躍とは。
時の流れを感じて思うことは・・・
オレも年くったなあ…じゃなくって!
新たな世代の「合唱バカ」誕生にとても嬉しさを感じてしまいますね。


VOCE ARMONICAの今年の選曲は
課題曲はG1のVaet。
自由曲はE.Whitacreの
「hope, faith, life, love…」
「i thank You God for most this amazing day」


この選曲の理由は?
黒川さんからメッセージをいただきました。

平均年齢20歳の若い団なので、
合唱の基本である
ルネサンスポリフォニーを勉強しようとG1を選曲しました。
初めてルネサンスポリフォニーを歌うメンバーもいて(苦笑)
指揮者も含め良い勉強が出来ました。


とは言え「型から入りて型より出でよ」
アカデミックなルネサンス時代の演奏再現を目指すのではなく、
今を生きる私たちが歌う、
喜びに満ち満ちたG1をお聴かせしたいと思います。


自由曲のウィテカーも
最初は合唱団のトレーニングと
サウンドの魅力で取り組み始めました。


が、詩と音楽の結び付きを勉強する過程で、
この作品を選んで本当に良かったと思っています。


(以下自由曲の曲目解説と演奏に寄せて)


"i thank You God for most this amazing day"で歌われる
「この最も目覚しい日」
それはどのような日なのか?
音楽家で宣教師の友人がくれたヒント
「そういう態度で毎日を過ごせますように。」


そしてスティーブ・ジョブズの言葉
「今日が人生最後の日だとしたら、
私は今日する予定のことをしたいと思うだろうか」から
それは特別な日という意味に加えて
「日々生かされていることに感謝し、
一日一日を最も目覚しい日のように生きよう。」
ということだ、と思った。


「人間は夜眠ることによって一度死に、
朝めざめることによって再び生まれる」
という考え方がある、と哲学書で読んだことがある。
私たちは「昨日死んだ人が必死に生きたかった今日」に
毎日目覚め、生かされている。


"i who have died am alive again today"
昨日と同じ毎日が延々に続くのではなく、
眠りによって一度死に、
朝、日々新しい生を受け、生まれる。
そのように生きよう。
そして生かされ音楽が出来ることに感謝しよう。


私にはいま、重い病と闘っている友人がいる。
彼は誰よりも合唱を愛している。
誰よりも合唱をしたいと思っている。
私たちは合唱が出来る毎日を感謝しなければならない。


全国大会では会場の全ての人に、
そして会場で聴くことが出来ない私の友人に、
このメッセージが届くように
hope,faith,life,loveと
i thank You God for most this amazing dayを演奏したい。
全国大会当日まで、
そのために出来る努力は全てやりたいと思っています。


そして、聴く人に伝えたい事がありましたら、という問いには

VOCE ARMONICAは
2007年10月に千葉県内の中高合唱経験者数名によって創立。
2011年10月9日に創団4周年を迎えました。


ARMONICA(イタリア語で調和)は音楽的な調和は勿論ですが、
合唱活動を通じて一人ひとりが協調性のある、
人間として調和のとれた人物に
なってもらいたいという願いが込められています。


演奏団体としては、
日本中の合唱ファンに全国大会での演奏を楽しみにされる。
日本中の合唱ファンが日本中から
時間とお金をかけて演奏会に聴きに来てくれる。
合唱をやっている学生達の夢。
こんな合唱団にいつか我々もなりたいと思っています。


【予告】VOCE ARMONICA 第二回定期演奏会
2012.4.30(月祝)
京葉銀行文化プラザ音楽ホール(千葉市)
Eric Whitacre作品集
千原英喜:
混声合唱のためのラプソディー・イン・チカマツ(近松門左衛門狂想)他


おっ、ARMONICAの目標が
「日本中の合唱ファンが日本中から
 時間とお金をかけて演奏会に聴きに来てくれる」合唱団とは!
なかなかこういう目標を掲げられる方っていませんよ。
嬉しいなあ。
合唱ファンのはしくれとしては、是非是非実現して欲しいですね。



関東支部大会を聴かれた人の感想では

初全国のアルモニカは、
課題曲の出は乱暴な感じもしましたが
曲が進むにつれ、構成力が感じられ、
声も若々しくはつらつとしていました。
マルベリファミリーを追えるとしたらここかな
という印象でした。
音楽にぎこちなさがなく、のびのび歌っていた感じでした。
ウィテカーも若者が多そうなこの団に合っている印象で
好感が持てる演奏でした。
特にほかの団が課題曲が下手(失礼)なのに対して
よく歌えており、課題曲で勝負すると全国いけるかも
と思っていたらいけました。
後日某先生と話す機会があり関東大会のことを話したら、
ARMONICAは声が明るかったのが
課題曲のテキストに一番合っていた、
とおっしゃっていました。


この課題曲G1、割合暗めに歌ってしまう団体が多いようですが、
テキストはキリストや聖人の栄光、喜びを語っているのだから
それに合わせた音色にするべきなのでは?という意見を
耳にしたことがあります。


実はこの関東支部でのVOCE ARMONICA演奏音源、
とある筋から私、入手しておりまして。
もちろん音源と生演奏では印象は違うのでしょうが
それでも3曲を聴いてまず思ったのは


「! 熱い、そして真っ当な音楽の、好みの団体だなあ!」


ということでした。


真っ当な音楽という言葉には補足が必要ですね。
平均年齢20歳ということで
技術的に不十分なところもやはりあるんです。
でも、それをヘンに隠したりしないんです。
「長所は短所を駆逐する!」とでも歌うように。
おそらくこの合唱団が受けている指導というものは
高い理想があって、それに向かって今は知識を、体験を、
「積み上げている」段階という印象。
弱点を隠す、目立たなくするような指導も世にあるのでしょうが
ARMONICAはそれを選ばない。
どんなに遠くても真っ直ぐに一歩一歩歩いていけば
必ず目的地には着く。
・・・そう信じているような演奏なんです。


そして何より、楽曲への新鮮な驚き、感動が、
ちゃんと歌に現れている!
「歌う」ということへの一番大切な動機として
これを「真っ当」と言わずして何と言うんでしょう。
だから私はVOCE ARMONICAの演奏を


「奇をてらうこと無く、真っ当な音楽を、真っ当な練習で積み上げて、
 真っ当な演奏をしている団体」と感じるのです。


この印象が生演奏でも変わらなければいいな(笑)。
さてVOCE ARMONICAには応援メッセージが届いています。



Shoさんから

こんにちは。Twitter上で黒川先生のお世話になっています♪
県コンクールの時の音源を聞いて、
本当に繊細な音楽をされていて、すごく好きです。
長崎在住なのでなかなかARMONICAさんのステージを
見に行く事が出来ませんが、応援しています!

亀山 史さんから

こんにちは。青森の地での好演を祈っております。
『G1』 端正な演奏、そして特に
アルトパートのいぶし銀のような活躍に期待しております。
『Hope, faith, life, love,dream, joy, truth, soul』
8つのwordを歌い終わった時に、
私たちの心のずっと奥の方に何かが残ることでしょう。
『i thank You God for most this amazing day』
芯のある言葉・音楽が訪れますように。
一生合唱初心者マークの私ですが、
黒川和伸師匠とツイッター上で
いろいろと音楽的やり取りをしまして勉強になりました。
全国からのアドバイスを適度にふまえて、
伸び伸びとした演奏をされることでしょう。
「Qui Bene cantat, bis orat.よく歌うものは二倍祈る」
(アウグスティヌス)

黒川和伸師匠(@chorusmasterK)のツイートはこちら(笑)。
http://twilog.org/chorusmasterK



そしてVOCE ARMONICAの写真を送って頂きました。
関東支部大会の写真だそうです。




写真だと平均年齢20歳というのが実感できますね〜。



初出場のVOCE ARMONICA、
演奏に込めた祈りと願いがホールに満ちあふれるよう。
そしてステージ上の空気を深く吸い、上から降り注ぐまぶしい光を浴び、
青森での全国大会、どうか心から「楽しんで」ください。
応援してます黒川さん、VOCE ARMONICAのみなさん!








さあ一般A部門、最後の団体です。



15.神奈川県・関東支部代表
マルベリー・クワイア
(女声17名・3年連続出場)



マルベリー・クワイアは6番目に出演の
マルベリー・チェンバークワイアの女声部。
昨年の演奏は明るい発声が特徴的。
自由曲のMendian Gora(高い山で)は
透明感ある響きで曲の良さを感じさせる演奏。
俳句をテキストにしたZima(冬)は
変化するリズム、風を表す息などで
緊張感に満ちた冬の世界を見事に表現していました。


毎年、興味深い選曲のこの団体。
今年はどうなんでしょう?
それではお呼びしましょう、春子さーん!

今までは外部からのメンバーもいたのですが、
今回は17名全員が小田原少年少女合唱隊のOGです。


世間の少子化をよそに、マルベリーは今年も
結婚・出産ラッシュで、おめでた続きです。
中には、出産の5日前まで大きなお腹で
本番で歌っていたツワモノもいます。



課題曲はF1の「いとしのピュリスよ」です。



自由曲はフィンランド、スロヴァキア、ロシアと
ヨーロッパの現代合唱曲3曲を組みました。


1. 合唱組曲「Primitive Music(原始的な音楽)」より
The Sunrise(日の出)
 ヴォカリーズ 作曲:Jukka Linkola(1955- )
 

フィンランド名門合唱団タピオラ・クワイアのために
作曲された組曲の第1曲目です。
最大で10声部に分かれます。
ヴォカリーズの歌詞は、
「マレケメレー、ケマレレレー、ラケミレレー・・・」と
日本の私たちには一風変わったものです。
作曲のリンコラ氏はシベリウス音楽院でピアノを専攻。
ジャズにも興味を持ち、アメリカのバークリー音楽学校で
ジャズのワークショップを行うなど、クラシックとジャズの
両分野で活躍しています。
確かではないのですが、多分、本邦初演だと思います。
 


2. Hra(ゲーム)
  ヴォカリーズ 作曲:Iris Szeghyova(1956- )


2曲目も偶然に、またまたヴォカリーズです。
元々は児童合唱ダブル・コーラス用に書かれていますが
女声合唱団でも頻繁に演奏されています。
こちらの歌詞も
「アカフカ、フンダルカ、フンダカヴァ・・・」と
不思議な響きの言葉が使われています。
1998年の全国大会で1位をいただいたときに演奏した曲で
「そういえば、こんな曲があったね」と、
13年ぶりに引っ張り出してきました。
スロヴァキアの女流作曲家セギオヴァー氏は、
現在はスイスに移住し、Szeghy(セギ)と名字を改名して
作曲活動を続けています。



3. Veniki(ほうき)
  ロシア民謡
  共編曲:Feodosiy Rubtsov(1904-1986), Veronica Sichivitsa


5年前にチェンバークワイアが演奏した曲の女声版です。
「ほうき、ほうき、ああ、ほうき、
 掃除人たちが、ほうきを暖炉にたたきつけて
 めちゃくちゃに折ってしまった。
 ゴッドファーザーのガブリエルに
 私は、こう話した」
という歌詞には深い意味はなく
ロシア語の早口言葉です。
以前、ロンドンの音楽学校で
「技術的に難しい箇所になると、
欧米人は必ずと言っていいほど、テンポがノロノロするけれど
アジア人は逆に、必ず走ってしまう」と聞いたことがありますが、
この曲を歌うたびに、つくづく
「私たちはアジア人なんだなあ・・・」と痛感しています。


春子さん、毎度ありがとうございました!


「技術的に難しい箇所になると、
欧米人は必ずと言っていいほど、テンポがノロノロするけれど
アジア人は逆に、必ず走ってしまう」


って面白いですねえ。
「恥の概念の違い」?
「自己主張の仕方の違い」?など色々考えてしまいます。
今回の選曲もヴァラエティに富んで面白そうですね!


関東支部大会を聴いた人の感想では
(マルベリー・チェンバークワイアの感想と同じ方)

マルベリークワイアも、安定感があるうえに、
いつものエンタテイメント性も十分引き出し、楽しめました。
欲を言うとその安定感が一本調子に感じられるかも?
曲というよりも、曲とテキストとを結びつけた
動機というか背景というか、
そういうところに迫れたら全国でも
両団体は金賞を取れるのではないかと思います。


…とのことです。
なるほど、高い実力による安定感というものも
難しい面があるのですかねえ。
それでもマルベリー・クワイア、
「いつものエンタテイメント性」が楽しみです!
きっと一般A部門の最後を締めくくる
見事な演奏をしてくれることでしょう。



春子さんから写真も送って頂きました。



昨年の全国大会ということ。


全4曲。
それぞれの曲の世界を存分に表現してもらいたいですね。
応援しています!