「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2012」(その5)


※この記事は2012年富山での全日本合唱コンクール
全国大会へ出場される一般団体を紹介しております



太田和彦さんというデザイナーで
居酒屋評論家の肩書きも持つ方の
紀行文が好きでよく読むんですが


自選 ニッポン居酒屋放浪記 (新潮文庫)

自選 ニッポン居酒屋放浪記 (新潮文庫)


この本で
「富山の昆布〆とガンコ親父たち」というタイトルの
富山を訪れた時の文章が楽しい!
富山居酒屋やラーメン屋のガンコ親父たちに翻弄される
太田さんと同行者の戸惑いが笑いを誘います。

「富山県人はどういう人ですか」
「まじめで堅実、かな。
 高校で修学旅行がないのは
 富山県位でしょう」
「旅行より、勉強ですか」
「そうです」
「無口で自己表現が下手だね」
連れの人がまぜっかえした。

「頑固ですか?」同行者がきいた。
「どうですかねえ、
 県内にいる私には判りませんが」
「ガンコガンコ」またひやかす。


・・・なんだか富山へ行くのが少し怖くなってきたような。


この文章の取材時は15年ほど前の富山。
太田さんによる最近の富山について書かれている本は

ニッポンぶらり旅 宇和島の鯛めしは生卵入りだった

ニッポンぶらり旅 宇和島の鯛めしは生卵入りだった

ひとり旅ひとり酒

ひとり旅ひとり酒

がありますけれど、
文章から受ける最近の富山ガンコ親父は優しい印象?


ホタルイカや白えびは時期が違うようですが
昆布締めや鱒寿司の名物はいかにも美味そう。

「富山は、水よし米よし魚よし、
 暮らしよい所ですよ」
「それはその通りだな」


(「富山の昆布〆とガンコ親父たち」より)


さあ今日も始めましょう!
今日は2団体をご紹介します。


15分の休憩後、
一般A部門後半の始まりです。
最初の団体はこの団体です。






9.奈良県・関西支部代表
Choeur Chêne
(混声31人・11年連続・50回大会から12回目の出場)



関西の雄、クール・シェンヌ。
その深い響きと音楽性の豊かさで
聴く人を魅了し続けている団体。
昨年の自由曲はメンデルスゾーンとレーガーだったように
毎年、定評ある名曲を取り上げ、
真正面から向かい、真摯に演奏する印象を受けます。
今年のシェンヌの課題曲はG1
自由曲:Anton Webern作曲
(Gottwald編曲)
"Vier frühe Lider"よりTief von fern
Anton Bruckner作曲
Christus factus est


ヴェーベルンブルックナー
「キリストは我らのために」!
さすが、シェンヌの選曲です。
シェンヌ団員ばぶ太郎さんより
メッセージをいただきました。

<演奏曲の魅力>


Tief von fern
ヴェーベルンシェーンベルクの門を叩く前の、
彼がまだブラームス
R,シュトラウスに傾倒していた頃に書かれた
「8つの初期の歌曲」の第1曲「はるかな深み」を
Gottwaldが8声部の混声合唱に編曲したものです。
Gottwaldは多声部合唱の編曲でもよく知られていますが、
この編曲もシンプルな歌曲の、
ピアノも含めた和声を原曲の持ち味を失わないように
注意しながらも色彩豊かに「作り変えられて」います。
シェーンベルクの影響を受ける前ですから、
まだ完全に「調性音楽」です。
ヴェーベルンの初期の作品には
作品番号が付けられていません。
いわゆる習作です。
十二音のイメージを持って聴くと
きっと拍子抜けすると思います。
また他の作品同様、彼の特徴である「曲の短さ」は
この曲でも遺憾なく発揮されています(笑)
とびっきり地味な作品ですが、
一人一人がリートを美しく歌えるような
スキルを持って歌われないと
本当につまらない歌になってしまいますので、
とても苦労しています。


Christus factus est
説明の必要はないと思います。
重厚で大人数に向いた曲だと捉えられていることが多いですが、
20人程度の合唱でもその魅力は伝えられると思います。
20回を超える転調やVII7の多用などで
和声構築そのものに表情が存在するので、
殊更重々しさを表出する必要はないと考えるからです。
つまりそれほど「良くできた」音楽と言えると思います。
音楽そのものが祈りだし、
我々はそれに如何に寄り添うことができるか・・・。


来年度からのコンクール改革についても、という私の問いには

<コンクールについて>


今年で11回連続12回目の出場となります。
シェンヌはコンクールの場で
鍛えられてきたんだと言い切れます(笑)
来年度からどうするかは決めていません。
今回の改革の意味は結局見えないままだし、
これだけ合唱イベントが増えてくると、
その年その年の合唱団の状態に合わせて、
本当に必要なステージを選んでいくべきなのかなと
思っています。


ばぶ太郎さん、内容の濃い曲紹介ありがとうございました。
ヴェーベルンの「Tief von fern」はばぶ太郎さんが書かれるように
1分を少し超えるくらいの短い曲ですが
和音や各声部の動きなど強い印象を残す曲ですね。
そして「Christus factus est」は
昨年MODOKIが自由曲に選び
私も2年前のコーラスガーデンで
シェンヌ:上西一郎先生の指揮で歌った思い出の曲。
http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20100412/1271023729


ばぶ太郎さんは
「20人程度の合唱でもその魅力は伝えられる」と
書かれましたが、
シェンヌならではの演奏を期待したいですね。
代表の福島さんからは

演奏曲の「キリストは我らのために」は
確かにコーラスガーデンで歌ったあの頃が大変懐かしいです。
あの時は人数もたくさんおり安心感がありましたが、
やはり30人に満たない状態では大曲なだけに
緊張感でいっぱいです。
しかも昨年はMODOKIさんが
大変素晴らしい演奏をされていますし、
しっかり歌わないといけないですね・・・緊張します(>_<)




<練習中の雰囲気>


いつも通りの飴(たま〜に)と鞭(ビシバシ)で
鍛えられています(笑)
今年は特にテナーが激減してしまい、
急遽ベースからパート移籍したメンバーもいたり・・・と
いつも以上に大変な今年のコンクールとなりましたが、
厳しさあり、面白さありの中で練習しています。
中でも大変器用な指揮者の
「メンバーの歌声ものまね」は絶品です(笑)

福島さん、ありがとうございました。
なかなか大変な状況なんですね…。
そんな中で全国大会へ出場される実力と努力が凄い。
そして・・・上西先生(笑)。


昨年のシェンヌの演奏は
課題曲G1のはじまりから深い声で
4声の存在感、広がりが分かり、
歌への感情の乗せ方が自然のように思えて巧み。
自由曲のメンデルスゾーン
声の饗宴!という印象であるレーガーの
音楽の豊かさと言ったら・・・。



今年も名曲へ向かう志に敬意を表し、
私も客席で姿勢を正してシェンヌの音楽を迎えたいと思います。









10.島根県・中国支部代表
ゾリステン アンサンブル
(混声32人・2年ぶりの出場・43回大会以来10回目の出場)



2年ぶりの出場になるゾリステン アンサンブル。
今年は本山秀毅先生が指揮する京都バッハ合唱団と
邦人曲を演奏しないジョイントコンサートを開き好評を博したり
意欲的な活動をされています。


指揮者:西 真紀さんの合唱音楽だけに囚われない
深く広い好奇心と考察からか、
個性的な団員さんが多くいらっしゃるためか(笑)
心に引っかかりを残す演奏が多く、
私も好きな団体のひとつです。


今年の課題曲はG2の「Sing Lullaby」
(Frederick William Harvey 詩/Herbert Howells 曲)
自由曲はClaudio Monteverdi作曲
「Lagrime d'amante al sepolcro dell'amata」より
Prima Parte: Incenerite spoglie
鈴木輝昭作曲
「詞華抄」より
2 Eros d'etinaxe moi phrenas(エロースが私の心を襲い)


へえーっ、3年前のブラームス
2年前の西村朗作品にも驚きましたが
今回はモンティヴェルディと鈴木輝昭作品!
この取り合せは・・・不思議?
どんな理由なんだろう、と疑問に思ってネットを回っていると
西さんブログ「murmur」の「全国大会間近」にこんな箇所が。
http://solisten.seesaa.net/article/300480246.html

おそらく、たいていの人は、
「モンテヴェと鈴木?」となると思うが、
聴けばきっと共通点が見つかるはず。


・・・スイマセン(笑)。
なるほど、はてしない時空を超える詩人の言葉の力、
現代音楽と400年前の曲の共通点ですか。
やはり西さん、ゾリステン アンサンブル、面白い!



西さんの選曲の狙いがハマり
「いい演奏がしたい」という思いが
叶うことを願っております。
ゾリステンのみなさん、がんばってください!





(明後日に続きます)