「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2012」(その6)

※この記事は2012年富山での全日本合唱コンクール
全国大会へ出場される一般団体を紹介しております



ツイッターにて全日本合唱連盟から

富山は明日から寒くなる&雪は降らないでしょう
と実行委員会談。
防寒なさってご来場ください。


…とのこと。
コートかジャケット引っ張り出しますかねえ。



さて「富山全国大会のお目当ては?」2回目。
今日は札幌在住のまぐろ。くんのお答えです。

「参加はしないけど富山へ行く人の
 お目当てを教えて欲しい!」とのことで。
もちろん、あの合唱団の演奏が聞きたい!とか
各地の美味いものが食べたい!
とかもあるのですが、
「滅多に会えない人たちと飲み会がしたい」ということです。


さらに考えてみた結果、
自分にとっては「ロックフェスティバルに行くのと同じ」
ようなものなのではないか、という結論に至りました。


僕は毎年決まったロックフェスティバルに
遊びに行ってるわけですが、
その理由を書くとつまりは
・もう毎年の慣例になってしまっている
・好きな音楽がそこにある
・新しい音楽との出会いもある
・気の合う仲間に会える
・その仲間と酒を飲んで語らって楽しい時間が過ごせる
・新しい仲間が増えるかも
・疲れたら休んで、音楽を聞いてなくてもいい


これらはすべて、
合唱コンクール全国大会にも当てはまるわけです。
違うのは合唱の場合
演奏中に大声を出してはいけないことくらいでしょうか。
そう考えると、夏フェスに行くのと
実はそんなに大差はないのじゃないかと。
新しい音楽や好きな音楽、
そして友人たちとの交流というのが
一番のモチベーションで、
その地域の名産品を食うとか飲むとかは
その副産物なのかなと思います。


まぐろ。くん、ありがとう!
なるほど、ロックフェスと同じですか。
まぐろ。くんらしい答えです。
そう言われてみれば全国大会とロックフェス、
似ているところも多々あって
自分も求めるものはそう大して違わないのかも。


>違うのは合唱の場合
>演奏中に大声を出してはいけないことくらいでしょうか。


あと、ホールでビールを飲んじゃいけないのもね!(笑)



今日は初出場2団体を含め
一般A部門最後まで4団体をご紹介!







11.福島県・東北支部代表
安積合唱協会
(混声29人・初出場)



初出場おめでとうございます!


安積合唱協会、実は昨年、
宝塚国際室内合唱コンクールの
ルネサンス・バロック部門で聴いていて
http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20110728/1311854900
金賞を受賞したその演奏に驚きました。
当時の感想を転載しましょう。

安積合唱協会(福島・混声17名)
Vaet、Tallisの曲を演奏。
素晴らしい!
この部門で個人的にダントツの1位!


それぞれのパートの発声が
非常に高度で整備されているだけではなく
先に述べた音楽の推進力、
お互いに聴き合い、表現する「今」の音楽。
そして演奏することの喜びに満ちた熱さ、と
私にとって大変好みの音楽でした。


安積合唱協会は初出場、
そしてこの部門だけの出場だったんですが
他の部門での演奏も聴いてみたいほどでした。
次の日の上位入賞者による
特別演奏会も聴いてみたかったですね。


そんなわけで念願の「他の部門での演奏」を聴けるこの機会。
安積合唱協会の課題曲はG1
自由曲はAnton Bruckner作曲のLocus iste」「Os justi」。
おお、王道中の王道、名曲中の名曲。
こういう選曲で初出場って凄いことです。
この選曲の理由は?


安積合唱協会テノールパートリーダーtotoroさんことK成さんから
メッセージをいただきました。

安積合唱協会は、中世・ルネサンス時代の
秘められた名曲を歌うことを目的に発足した合唱団です。
毎年の名曲集において、
ポリフォニー作品を中心に選曲をしてきました。
今年は、G1がPalestrinaのEgo sum panis vivusで
私たちとしては、迷う事なく選曲を行いました。
Brucknerの作品は、2年連続の演奏となります。
昨年はAve MariaとChristus factus estを演奏し、
Brucknerの持つ洗練された宗教作品の世界に触れ、
より深い世界観を学びたいと選曲しました。
聞かせ所は、美しい和声進行と、
時折り垣間みえるBrucknerの強烈なまでの信仰心です。
強い精神性とメッセージ性を持った曲ですので、
その世界観を表現できればと考えています。
ロマン派の作品は、ここ5年程度、挑戦している分野で、
演奏の幅や音楽性を広めたいと考え演奏しています。


この全国大会に対する意気込みや目標がありましたら、という問いには

はじめての全国大会出場ですので、
緊張感もありますが、
誠心誠意私たちの安積サウンドを響かせられればと思います。


聴く人に伝えたいことがありましたら、という問いには

東日本大震災以降、暗く、苦しい時間を過ごしてきました。
しかし、日本中、世界中の合唱の仲間や
合唱ファンの皆様から温かい励ましをいただき、
私たちは以前以上に強い意志と情熱で歌い続けています。
全国大会という素晴らしい舞台で
歌う機会を与えていただきましたので、
応援し励ましていただいた皆様に
「ふくしま」の元気をお伝えできればと考えてます。


K成さん、ありがとうございました。
さて、「安積」という言葉から連想するのは・・・
実は安積合唱協会の指揮者は
あの「安積黎明高校」の指揮者:宍戸真市先生なことにも注目です!



写真も送っていただきました。
東北大会演奏後の集合写真だそうです。




昨年から聴くのを焦がれていた演奏。
「私たちの安積サウンド」が富山で鳴り響くことを
願っています!










12.福島県・東北支部代表
会津混声合唱団
(混声30人・4年連続出場・49回大会以来15回目の出場)



いつも自由曲に新しくカッコイイ現代曲を
完成度高く演奏してくれる会津混声。


今年の課題曲はG1
自由曲:Tarik O'Regan作曲
O vera digna hostia
Woo Hyo-won作曲
"Gloria"よりCum sancto spiritu



会津混声団員さんから
定期演奏会パンフレットの自由曲の説明部分を抜粋して
送っていただきました。

O vera digna hostia(おお、偉大なまことの生贄よ)
2003年にイギリスのウィンチェスター大聖堂で、
アンドリュー・ラムスデンが音楽監督を務める
ウィンチェスター大聖堂聖歌隊により初演されたこの曲。
タイトル「おお、偉大なまことの生贄よ」からわかるように、
この曲はキリスト教の復活祭に関する曲である。
バリ(インドネシア)の音楽
ガムラン」に基づく音階とともに、
繰り返すリズミカルな動きを織りまぜることで、
この曲を勢いづけている。
ブリティッシュコンポーザーアウォードを勝ちとった
作曲者であるタリク・オリーガン(1978年生)は、
イギリス若手作曲家の中でも、
今後最も期待される作曲家の一人である。


Cum sancto spiritu(聖霊とともに)
2002年に韓国の女性作曲家
ウ・ヒョウォンにより作曲されたこの曲。
ユン・ハクウォンが音楽監督を務める
韓国のインチョン市立合唱団のために作られた
曲集の中の一つである。
韓国でも広く信仰されているキリスト教のミサの通常文
「Gloria(グロリア)」がテキストとして用いられている。
宗教的なテキストが、韓国の農村地帯の
農楽(プンムルノリ)を感じさせる
リズミカルな作品に仕上げられており、
宗教曲という枠に収まらない新鮮な印象を受ける。
彼女の作品からは、韓国という地域の文化や、
幼い頃からの音楽の環境が、
きめの細かい女性的な感性をもちながら、
大きく、力強く、かつミニマリズムに富んだ音楽を描く
彼女のスタイルを造り上げたことを感じることができる。


会津混声が演奏する曲かどうか不明ですが
Woo Hyo-won作曲で
同じ「Gloria」とタイトルが付いている動画を。




うん、リズミカルで、どこかアジア的な旋律と和声が印象的な曲ですね。
これが韓国の農楽(プンムルノリ)なのでしょうか。
これまた会津混声が演奏するとしたら面白い!



昨年の会津混声の演奏は磨かれた発声で
課題曲は鋭い声だけれど
ゆったり目のテンポで音楽が流れる。
フレーズの目指す方向、持って行き方が◎。


自由曲はホーリー「おおマリア、海の星よ」
オストシガ「ユピテル」
サウンドとしての4声のバランスがとても考えられている。
フォルテッシモでもコントロールを失わず、
2度などでぶつかる音もちゃんとサウンドとしていることに
練習量と客観性の凄さを感じます。
エネルギーの推移、音楽の設計も本当に考えられた演奏でした。



写真は団員さんブログ
「寫眞de会津混声!」から転載許可をいただきました。
http://aidukonsei.jugem.jp/




7月の練習風景とのこと。



毎年、合唱界に吹く新しい風を感じさせる会津混声合唱団。
今年の風はどんなものなんでしょうか。
楽しみです!










13.東京都・東京支部代表
杉並学院・菊華混声合唱団
(混声32人・2年連続出場・64回大会以来2回目の出場)
(※リンクは菊華アンサンブルHPのもの)



杉並学院・菊華混声合唱団は
菊華中学・高等学校が共学化のため
杉並学院中学・高校に変わったことによる
合同名のOB合唱団ですね。
合同の混声合唱を始めて6年と若いメンバーばかりの合唱団。


昨年の演奏はさすがOB合唱団なだけあって
若く統一された声で良く練習された印象。


審査員の寺嶋陸也先生が

この合唱団はすごくいいと思いました。
声の音色が明るくて良かったし、
声量もあって、
特に男声が素晴らしいですね

と感想を言われるほど。


今年の課題曲はG3
自由曲はJohn August Pamintuan作曲
「Christus factus est」「De Profundis」


Pamintuanはフィリピンの作曲家。
Christus factus estは速いテンポの繰り返しと
鋭く挿入されるソプラノが印象的。
De Profundisは
Philippine Madrigal Singersの良い演奏を。




前の会津混声と少し似た方向性の自由曲ですね。
若いセンスが現代曲を華麗に演奏されることに期待!









一般A部門最後の団体です。



14.栃木県・関東支部代表
混声合唱団ルックスエテルナ
(混声16人・初出場)



初出場おめでとうございます!
指揮者の内田等さんからメッセージをいただいております。

当団は全国大会初出場なので、団の紹介から入ります。


私たち混声合唱団ルックスエテルナは、
まず「Lux Aeterna」という名前で
1999年に誕生しました。
ルネサンス音楽を愛してやまない菅谷団長と、
指揮者を務めることになる私が
意気投合して誕生した団体です。
まずはパレストリーナの音楽からはじめ、
徐々に地に足が着いてきたので
2003年に「混声合唱団ルックスエテルナ」として
正式発足しました。


当団は、主な発表の場をアンコンや
連盟コンとしていましたが、
コンクールに出場するからには
勝てる音楽を選曲した方がよいのではという浮気心が芽生え、
一時期はそういった曲を中心に演奏したこともありました。
しかし数年前から吹っ切れて、
われわれの原点であるルネサンス音楽
とことん追究してみようという気持ちになりました。
パレストリーナやバードの音楽を演奏するうちに、
「彼らの音楽が生まれた背景は何か」という
疑問と興味が沸き起こり、
必然的により古い時代の音楽を求めるようになり、
ついに巨人デュファイにたどりつきました。
毎回の練習で試行錯誤を繰り返しながら、
一歩ずつデュファイに近づこうとしているところです。


課題曲について。
当団はそんなこんなで、もともと、ルネサンス期の宗教音楽を
テキストに勉強していくことを活動の主旨としています。
G1はそういった曲が選曲されることがほとんどですので、
特殊な場合を除いては迷わずG1を選びます。
今回は、われわれの原点でもある
パレストリーナの音楽、
それも彼の黄金期の音楽がG1に選ばれ、
一部の団員たちと
「久々のG1当たり年だね」なんて会話をしたほどです。


自由曲について。
自由曲はデュファイの
Ave regina coelorum(4声)を演奏します。
コンクール向き・勝てる音楽とは
かけ離れていますが、
ルネサンス音楽を歌う集団の宿命として
デュファイに取り組みます。
この曲はデュファイ晩年の曲で、
和声進行的にも技巧的にも
熟練した技術がちりばめられています。


デュファイの曲の多くがそうであるように、
この曲もまた、リズムの多様性、シンコペーション、
突然倍速テンポになるかのような旋律の進行など、
彼独特の音楽が展開されていきます。
面白いところは、Miserereのくだりで自分の名前
「Dufay」を出して、
神に自分をアピールしているところでしょう。
また、曲の終わり付近では、
倍速(4倍速?)テンポのリズムを経て、
突然ワルツが流れたかと思うと、
不完全テンプスの整然として
ゆったりした流れに移り変わっていくところが
とても面白い音楽です。


そんなデュファイの音楽を、
耳の肥えた聴衆の皆さんに
少しでも共感してもらえるように、精一杯歌います。


内田さんありがとうございました。
続いて団長の菅谷さんからメッセージを頂いております。


この全国大会に対する意気込みは?という問いには

結成以来、コンクールに挑戦すること12回、
当初は県大会さえも突破できないこともありましたが、
昨年まで6年連続して県大会を抜け、
関東大会までには何とか駒を進めていました。
それでも関東Aの厚い壁にことごとく跳ね返され、
自分達よりもあとから関東大会に登場してきた
他県の若い団体に先を越されるなどの
悔しい思いもしてきました。


来年度はコンクールも部門再編です。
人数的にも年齢的にも音楽的にも、
「室内合唱の部」しかない私たちは、
今年度のコンクールは、人数や選曲はもちろん、
指揮者も団員と一緒に歌うなど、
いろいろな意味で、
その「プレ的」な「トライアル」をしました。
それが初の金賞、
初の全国大会出場につながったのかもしれません。
でも、正直なところ、無欲の挑戦でしたので、
今年行けるとは団員の誰もが
思っていなかったのではないでしょうか。


聴く人に伝えたいことがありましたら、という問いには

私たちは、一般合唱団の主流である
高校や大学のOBOG合唱団ではありません。
年齢も様々で、平均すればアラフォー合唱団です。
この指揮者のもとで、ルネッサンスを中心とした
少人数アンサンブルに真面目に取り組みたい、
というメンバーが集まりました。
さまざまなジャンルの曲が歌える器用さも、
持ち合わせていません。
都会から遠く離れた地方で、
週1回の練習にこつこつ打ち込んできました。
そんなグループでも、
こうして全国大会のステージで
演奏できる機会をいただけました。
全国の同じようなグループの励みになればと思っています。


来年から始まる部門編成のコンクール改革については?

楽しみですね。わくわくします。
ただ、私たちが目指すであろう
室内合唱の部に関してだけ言うと、
現在あちこちで行われている
「アンコン」との境目が微妙かなとも思います。
「福島」ではない「全日本」の
「アンコン全国大会」を作ってもらいたかったですね。


菅谷さん、ありがとうございました。
さて、混声合唱団ルックスエテルナの関東支部大会の演奏を
名レポーター鱸さんに報告して頂きました。

混声合唱団ルックスエテルナ
関東大会でも、栃木県代表として
毎年いい演奏を聴かせてもらっています。
これまでの印象としては
「すごく真面目に合唱に取り組んでいる団」という感じです。
指揮の内田先生も、合唱に対して、
真剣に取り組んでいる様子が伝わってきます。


演奏の印象は、指揮者も加わり半円になった並び方でG1の演奏
端正な、そして流れるようなパレストリーナでした。
旋律の受け渡しでは、
パートごとの色彩変化が美しくこの曲の持つ
「幸福感」がにじんでくるような演奏でした。
自由曲はG.Dufayの「Ave regina coelorum」
丁寧に作り込まれた曲が印象的でした。
緊張感とテンションの持続が最後まで途切れず好演でした。


鱸さん、ありがとうございました!



写真も菅谷さんから送っていただきました。





3年前開催のミニコンサート終了後の写真だそうです。



15世紀の作曲家デュファイを自由曲にして全国初出場。
これは、ある人が言ってましたが
「事件」と言うべきなのでは。


団長菅谷さんの
>都会から遠く離れた地方で、
>週1回の練習にこつこつ打ち込んできました。
>そんなグループでも、
>こうして全国大会のステージで演奏できる機会をいただけました。
>全国の同じようなグループの励みになればと思っています。


…という言葉に打たれました。
自分たちは何故歌っているのか、という問いは難しいものですが
ルックスエテルナの演奏を聴けば
その答えが胸から湧き起こるかもしれません。


内田さん、菅谷さん、ルックスエテルナのみなさん、
初の全国大会、どうか愛し続けた曲を
力一杯演奏していただきたいと思います。
心から応援しています!






(明日に続きます)