「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2012」(その8)


※この記事は2012年富山での全日本合唱コンクール
全国大会へ出場される一般団体を紹介しております



ぜんぱくさんは既に書かれていますが
全日本合唱連盟twitterで、
「毎年、全国出演団体を詳しく紹介されているブログをご案内!」と
当ブログとぜんぱくさんの「指揮者の独り言」が紹介されました。





https://twitter.com/JCA_from1948/status/268641440857468928


全日本合唱連盟ツイッター担当の方、ありがとうございました!




(´-`).。oO( これでお願いメールを合唱団へ送っても…
(´-`).。oO( スルーされることが少なくなるかな…



・・・などと哀しい裏事情を漏らしたところで
元気に行ってみましょう!
今日も一般B部門、2団体の紹介ですが
超重量級のボリュームですよ!





富山オーバードホール外観
(※建築写真集NOさまより転載)






3.大阪府・関西支部代表
淀川混声合唱団
(混声85人・2年連続出場・57回大会以来6回目の出場)




淀川混声合唱団の課題曲はG2
自由曲は千原英喜作曲
混声合唱のための「Agnus Dei = 空海・真言・絶唱」


この自由曲は私も淀川混声の第24回演奏会で聴いた曲。
虚空蔵菩薩真言、光明真言、Agnus Deiをテキストにし
男性の語りから始まり、鳴り物も入る
演奏効果が高い曲です。
この自由曲を選ばれた理由は?


一般A部門8番目に出場のアンサンブルVINEも指揮される
淀川混声合唱団の指揮者、
伊東恵司さんからメッセージをいただきました。

淀川では千原先生の曲を演奏する機会が多く、
今年は千原先生の曲からと思っていました。
ワールドミュージックのような、
世界中の宗教を祈りという
メッセージ性の中におおらかに取り込み、
スケール大きく歌うことが出来たらと思っています。


聴く人に伝えたいことがありましたら、は
VINEでも言われたことと共通するようですね。

合唱団ごとにある音色に耳を澄ましてもらえたらと思います。
自分たちの歌を歌いたいと思います。

さて、毎年伊東さんには
自団だけではなく日本の合唱文化全体を俯瞰された上での
貴重な提言をしていただいているのですが
今回のコンクール改革についても
建設的な提案をいただきました。

コンクールに関しては意見も言いやすいように
出続けるようにしていますが、
その一方で、建設的で健全な問題意識を感じ続けています。
今回の部門構成の変更は
本質的な構造改革には至らないものだと考えています。
もちろん、全てのことに一長一短があるので、
関係者の発想や努力や工夫を
一概に否定するものではまったくありません。
ただ、私の提案は一貫して一般部門に関しては
ジャンル別の開催です。
もう全体で一番を決めるような仕組みの
社会文化構造ではないと思います。
少なくともルネサンス、ロマン派、近現代、邦人作品、、、等、
合唱音楽の様式や、様々な魅力を感じつつのコンクール開催
(その年ごとにテーマを決めたり)をすることで、
合唱音楽のアカデミズムと、魅力の多様性の両方を
学び味わう仕組みを提案していきたいと思います。


…なるほど。
ジャンル別のコンクールは
日本では宝塚国際室内合唱コンクールが思い浮かびますが
もし全日本合唱コンクール
ジャンル別の部門分けがされることになったら
合唱音楽それぞれの様式を深めることになりそうです。
伊東さんの提言は続きます。

あと、大学コンクールは、一転して、
絶対大学だけで楽しく競い合ったほうが
盛り上がると思っています。
大学生は高校生よりメンタルが育っているので
コンクールの結果に一喜一憂するだけではないでしょうし、、
日本の大学には
「クラブ活動のカルチャー」があるのですから、
逆に大学の名前やクラブ活動を背負って努力することで
アイデンティティを感じたり、達成感を得たり、
大学生同士の友情や出会いを
育む場所にも出来ると思うのです。
これについてもまた楽しいコンクールになるような
建設的提案をしていきたいと思います。


伊東さん、ありがとうございました!
同志社グリークラブの学生指揮者として
名を馳せただけではなく、
現在も大学合唱界に広く深く関わっている
伊東さんならではの提言と感じました。



団長の林さんから写真を送っていただきました。




今年の演奏会で自由曲
「Agnus Dei = 空海・真言・絶唱」を
演奏の瞬間を撮ったもの。




淀川混声の演奏は大人数でもクリアなサウンド感と
伊東さんの知性が光る音楽の構成が印象的です。
今回もきっと強く記憶に残る演奏になるはずです。











4.佐賀県・九州支部代表
MODOKI
(混声50人・14年連続出場・50回大会以来15回目の出場)




MODOKI指揮者:山本啓之さんに
スカイプでお話を伺いました。


「今回、課題曲G1
 自由曲にブラームスのモテット
 『Zwei Motetten Op.74』より
 『Warum ist das licht gegeben?』
 ( 「何ゆえ悩む者に光があたえられたのか」)
 という選曲の理由は?」




課題曲は11年ぶりに
G1のルネサンスポリフォニーを選んだんだけど。
まあEgo sum panis vivusにしても
自由曲のブラームスにしても
現代に残っているという良さ、
つまり歴史が証明する作品の良さがあって。


音楽的な世界遺産みたいな位置付けだね。
凄い景勝地には行かないと体験できないけど、
音楽の世界遺産は楽譜を開けば体験できる!



「その体験の味わいって合唱団で違うのでは…(笑)。
 去年はブルックナー『キリストは我らのために』でしたが。
 自由曲の選択は
 現代曲からそういう時代の作品へ
 山本さんの意識が変わっているんでしょうか?」



別にそちらの時代にこだわっているわけでもないんだけどね。
現代曲でもやりたい曲はいっぱいあるし。
まぁ去年、「キリストは我らのために」のような
ロマン派の曲をやって少し中途半端な気持ちもあって
もう1年続けてやってみようかな、と。
それと去年の課題曲はハイドンで古典派だったけど
ドイツ語だったんで、
続けたらもうちょっと良うなるかな、という思いもあったりして。
さらに1年そういう曲に触れて、
ロマン派の曲やドイツ語を
メンバーに身に付けてもらう気持ちがあったかなあ。


今年人数が少し増えてメンバーも変わってきたんだけど
人の入れ替わる時に現代曲やエフェクティヴなものをやるより
やっぱり基本として
「歌うこと」をもう一度みんなでやっとかないと。
それを考えたときに
今はもう1年ロマン派をやってみるべきだな、と。
ロマン派の曲は本当に全員が歌わないと
なんにも曲として成立しないからね。


和声的な鳴りの充実や
全声部にメロディーもある。
そこはロマン派しか持っていない力でもあるし。
コンクールの成績よりも
ひとりずつ、みんなが歌う力を身につけて、
良いアンサンブルを作り出したい気持ちが強いね。



「今年のメンバー、男女の比率はどうなんですか?」



男女半々ぐらいになってきたね。
今回は女性が多いんじゃないかな?
以前はベース20人ぐらいでアンバランスな合唱団だったけど
今は普通の合唱団になってきた。
ルネサンスポリフォニー
ロマン派を今まで歌ったことのない人も入って
ヒィヒィ言いながらがんばって歌ってくれてるんだけど(笑)。


・・・自分はMODOKIには
上手い人しか入れません、とか言うこともないし。
いろんな人が増えたけど、
そういういろんな人の個性も活かしながら
MODOKIとしてやっていけたらいいなと思うね。




「自由曲のブラームスのモテット
 『Zwei Motetten Op.74』より
 『Warum ist das licht gegeben?』について
 ( 「何ゆえ悩む者に光があたえられたのか」)
 いろいろとお訊きしたいのですが」




やっぱりやって良かったね!
素晴らしい曲だよ。
音楽作品に上とか下とかは無いけど
やっていて今までで一番楽しいね。
知的好奇心をとても刺激する宝というか
凄く難しいパズルをしているような。
掘っても掘ってもいろいろやることがあるし、
やった分、返ってくるものも多い。


選ばれた詩、音の構成にしても
すべて納得できる答えが用意してある気がする。
・・・その答えを再現できるかはわからないけど(笑)。


ロマン派の作品なんだけど、
バッハの時代、古典派の輝かしいいろいろな要素が
たくさん詰まっていて
自分にはディズニーランドの
アトラクションのような楽しさがある曲だよ。
テキストはヨブ記や新約聖書
ルターの詩から選ばれていて
受難の愚痴?と言っては軽いけど(笑)
そこから、やはり神を信じようとする心の動き。
構成と言葉の素晴らしさ。
歴史的な建造物、名画に匹敵する作品で
本当に素晴らしい曲。
この1年間練習が楽しくて仕方がないくらい。




「そこまで?!」




うん(笑)。
だから今回は自信があるとかじゃなくって
この歴史が残してきた作品を
とにかく聴いてもらいたいね。
初めて聴く若い人にも
これをきっかけにブラームスの他の作品に触れて欲しいな。
だから、「聴いて欲しい!」って。


そして聴いたら、次は歌って欲しい。
例えばコンクールでこういう曲を高校生が演奏したら
また違った意味を持つと思うし。


MODOKIもこの曲の様々な音楽的要素を調べたり
ドイツ語の発音も大変だったけど
今後のMODOKIのためには必要な勉強だったと思う。
そういう名曲へのchallengeができたのは嬉しかったな。



「今年もchallenge!ですね(笑)。
 さて、来年からの
 コンクール改革についてお訊きしたいのですが」



やっぱり大学の部が無くなるのは残念だね。
大学の合唱の盛り上がりが、
その後の一般合唱団にも繋がってしまうから。
大学合唱団の良いところは、
未熟だとしても自分達で合唱団を創っていこうという心意気!


仮に高校生が卒業して大学合唱団以外で
一般の合唱団へ行くとなると
やはりOBOG合唱団が主になってしまう。
それはそれで良いかもしれないんだけど、
それだけで良いのか?
他に大学という受け皿がなくていいのか?
…という疑問がね。



「山本さんご自身も大学から合唱を始められて
 学生指揮者として全国大会に出場された体験があるから
 今のMODOKIがあるのでは?」



・・・う〜ん、それは一概には言えんけど・・・。
成功体験だけが意味あるわけじゃないしね。
ただ、九州大会で終わっていたら
今の自分はないかもしれん。
現在、全国大会の大学の部で学生指揮者は3分の1くらいかな?
学生指揮者が全国のステージに立つのは
重要な意味を持つとは思う。
僕はいつも学生指揮者を応援してる!


学生指揮者だけじゃなく、
団員も全国大会という広い世界を体験すると
変わると思うんだよ。
「こんなに世界は広かったんだ!」とね。


そうやって広い世界を見て、
学生指揮者が音楽的に仲間を巻き込んで合唱を楽しんで
一般合唱団を盛り上げてくれたらなあ。
今回の改編で大学合唱団の全国大会出場の機会が
激減するとしたら残念だね。



「なるほど…。
 大学合唱界と一般合唱団の繋がりは
 軽視できない点ですね」



あと部門の編成も難しいよね!
例えば同声合唱の部門で
25人の女声合唱団と50人以上いる男声合唱団が
同じ土俵の上で評価される意味がはたしてあるのか?とかね…。


それと課題曲なんかも
今回の部門編成に合わせた曲が
指定されていたりすると面白いんだけど…
例えば室内合唱部門はこの曲を歌いなさい、とか?
それぞれの部門の特性が出るような
コンクールになるなら楽しいけど…今のところはわからないね。


ただ、改革はやってみないと分からない部分は多くあるよね。
新しい合唱団にチャンスがあるかもしれないし。
そういう新しい合唱団が出場することで
何かが変わるかもしれないし。



「改革後の状況をよく見極めないといけないですね…。
 あ、今年は今までの部門最後の年ということで
 『史上かつてない2次会』も…」



そうそう!
MODOKIが思いつきで始めたこの2次会も、
今まで多くの人の尽力でここまで続いてきて…
本当に感謝しているし、嬉しい事だった。
もし来年やるとしても部門再編などもあるので、
今の形では今年で一旦フィナーレかな?
今年はノース・エコーさんが主催されることに感謝して
みんなで盛り上がりたいね!



「はい、一緒に盛り上がりましょう!
 山本さん、ありがとうございました!!」




MODOKIの代表しおりさんから
写真を送っていただきました。
合唱祭の写真だそうです。






昨年の全国大会、祈りに満ちたブルックナー
今年CWS特別演奏会での独特の緊張感と
魂を鷲掴みするメッセージ性に溢れた演奏が
記憶に残るMODOKI。
佐藤賢太郎氏の「前へ」ではすすり泣く声が
客席から聞こえてきました。
山本さんが「練習が楽しくて仕方がないくらい」と語られる
今回のブラームスにも期待が高まります!






(明日に続きます)