「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2013」(その1)

 

さて、今年も
「コンクール出場団体あれやこれや:出張版」を始めたいと思います!


全国大会へ出場される団体をあれやこれや紹介するというこの企画。
ちなみに昨年の「あれやこれや:出張版」第1回はこちらです。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/20121107/1352294735


今年でこの企画も6回目になります。
職場・大学・一般A・一般Bという4部門が
今年の第66回大会からは
ユース・室内・同声・混声と再編成されました。

私は室内合唱部門、混声合唱部門の2部門を
担当いたします。
既にスタートしているWeb文通相手のぜんぱくさんは
http://talk21self2.blog111.fc2.com/
ユース部門と同声部門ということ。


今年も合唱倉庫さんから
http://choral.nusutto.jp/
何回全国大会へ出場されたか、という
データをお借りしております。
感謝いたします。


今回も多くの合唱団のみなさまにご協力いただきました。
心からお礼を申し上げると共に
最終回まで楽しく読んでいただければ幸いです。



なお今回は来年3月9日に
佐賀市文化会館で行われる演奏会のため、
今年はコンクールをお休みした、
MODOK指揮者:山本啓之さんをお招きして
対談形式で出場団体を紹介していきます。
言うなればこの大相撲ならぬ大合唱冬場所、
MODOKI部屋:山本親方のご意見を伺うというわけです(笑)。
山本親方、よろしくお願いします!


山本 ごっつあんです!(笑)


さて山本親方、今場所の展望はいかがでしょう?


山本 部門改正によって若い力士(合唱団)が目立ってきたね。
   それにベテラン力士(合唱団)がどう対抗するか。
   激しいぶちかましを期待したいね!
   若い力士の突っ張りをベテラン勢がどう立ち回るかが


・・・え~、際限なく続きそうなので会場の案内を。
会場の千葉県文化会館は1967年開館と古いものの
モダンなデザインと良い響きの大ホールが特長です。
大ホールは1,787席。


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さあ、室内部門出場の団体をご紹介しましょう。

第66回全日本合唱コンクール全国大会 大学職場一般部門。
24人以下の室内合唱の部は11月23日の土曜日、
14:10から開始の予定です。
記念すべき初めての室内部門、最初の団体は・・・



1.福島県・東北支部代表


L'Aube des Temps
(混声21名・初出場)


初出場おめでとうございます!
団員の橋本さん、金田さん、芳賀さんから
メッセージをいただきました。
まずL’Aube des Tempsさんの紹介です。

 

・L’Aube des Tempsは「時代の夜明け」を意味し, 

 合唱音楽の新たな可能性をもとめ, 

 次世代の福島県の合唱をになう 

 演奏活動をすることを意図しています。

・活動は、月に2回、福島市・郡山市に集まり、

 練習しています。

・主に、全日本合唱コンクールと 

 声楽アンサンブルコンテストへの参加を目的に練習しています。

・L'Aube des Tempsは、2008年、 

 福島県合唱連盟60周年記念事業として結成された 

 青少年選抜合唱団(Fukushima Youth Choir)の 

 メンバーを中心に結成されました。

・メンバーは福島県内外に散らばっており、 

 練習のたびに集っては仲良く歌っています。

 


「福島県内出身の若手シンガーを中心に結成した合唱団」ということです。

 


山本 福島県やから歌える人材はおるんやろうね。
   OB合唱団じゃなく
   こういう若い人が集まった団体、いいね。
   大事なことは室内合唱部門ができた意味が

   あるかどうかやから。
   こういう若い団体が出てきたことは
   新しい部門を作った意味があると思う。
   ぜひ長く続けて欲しいね。


そして選曲なんですが課題曲はG1
Victoria作曲「O magnum mysterium」
自由曲はKlusās dziesmas (静寂の歌)より

I. Nosāpi pārsāpi (痛み、耐えられぬ苦悩)

作曲: Pēteris Vasks

The Strathclyde Motets (ストラスクライドのモテット集) より

Lux Æterna (永遠の光)

作曲: James MacMillan



選曲の理由と楽曲の紹介文も
送っていただきました。

 

L'Aube des Temps の選曲では、

作曲者の国籍や活躍した年代、詩の言語などに囚われず、

一聴して優れた音楽として感じられ、

後世にも伝えられるべきだと思える作品を取り上げています。
今回の課題曲&自由曲においても、そのコンセプトは共通しています。

また、今回選んだ楽曲には、一貫したテーマが存在します。

それは「死生観」です。

 (1) Victoria の O magnum mysterium でうたうのは「生」
 (2) Vasks の Nosāpi pārsāpi でうたうのは「死」
 (3) MacMillan の LUX ÆTERNA でうたうのは「弔い」

(1) Victoria が表現した、キリスト誕生、つまり「生」への祝福は、

キリストという特別な存在へと限らずとも向けられるものだと思います。

命の神秘さに、人も動物もみなため息をもらし、

ついには"アレルヤ"と歓喜の声をあげる。

生命力みなぎる、興奮に満ちた楽曲です。

 


(2) 「死」を想起させる、 Nosāpi pārsāpi の意訳です。


痛み、耐えられぬ苦悩
人生の長い日々の…


あなたを 運ばせよう
緑のハンカチーフに
あなたを 埋葬しよう
花とバラをもって
 
そうして あなたは 天へ昇り
やがて 痛みは 癒えることでしょう



打ち拉がれ果てた命…を感じさせる一篇の詩です。
作詩者の Knuts Skujenieks (クヌーツ・スクイェニエクス) は、

反ソ連活動家として有罪判決を受け、

7年間の投獄生活を送った経歴をもつラトビアの詩人です。
「現世で打ち拉がれる様=ソ連からの支配への失望」

「昇天=支配からの解放」と置き換えれば、

作詩当時の世相を咎める詩と読むこともできます。
しかし、組曲Silent Songsが収録されている

CDのライナーノートによれば、

作曲者は絶望的な曲を作曲してはならないとの信念をもっているようで、

「生きている限り希望や愛があり、

 それは闇夜を照らす光のようであるべきだ」と語っています。
冒頭の曲想記号には「慰めを込めて」とあるように、

冷たさを感じる音でありながら、

救いの手が差し伸べられるような雰囲気をも

感じさせられる曲になっています。

 


(3) MacMillan の LUX ÆTERNA は、

作曲者の親族の"銀婚式"に贈られた曲という

一風変わった境遇で作られています。
つまり、ここで言う「弔い」は、

単なる哀悼の意味を表したものではないと考えてください。
Vasksの信条にも通じ、

「希望や愛、恒久的な安らぎ、平和」を願って

歌われるものだと思うのです。

曲は、グレゴリオ聖歌を引用して歌われるAltoを主軸に、

各パートがポリフォニックに旋律を紡ぎ出します。

旋律は光の矢のように次々と差し込まれ、

時間とともに移ろいゆくのが印象的です。

 

 


どちらも神秘的な美しさと同時に
切なさまでも感じさせる繊細な作品。
私も聴いて大変気に入りました。
「死生観」「生、そして死と弔い」。
自由曲を聴くとそれも頷ける気がします。


山本 福島の団体が「死と弔い」というテーマを考えること。
   そしてこういう場で演奏することにも意味があるよね。
   コンクールということと関係ない、
   ひとつのステージとして演奏できるかもしれないし…。


さらに指揮者は「あの」菅野正美先生です!
安積女子、安積黎明という
女声合唱を指揮されたイメージが強いのですが…。


山本 ちょっと前にお会いした時
   菅野先生、「混声はいいよ!」って仰っていたよ。
   先日の福山の全国大会でもさ。


ああ、菅野先生が指揮された郡山高校の混声合唱!
良かったですよねえ。
繊細で、男声のハーモニーの作り方も優れていて
とても良い混声合唱だと思いました。

さて、全国大会への意気込みは?との質問には

初めてつかんだ全国の切符。
本番ではのびのびと、
L'Aube des Tempsらしいサウンドをお聞かせできるよう、
精いっぱいがんばります。

 

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山本 やっぱりこういう新しい団体が
   トップバッターで良い演奏をして欲しいね!


同感です。
菅野先生の優れた音楽と
歌い手さんたちの若さで良い相乗効果を期待したいですね。


さて、続いては




2.北海道・北海道支部代表


ウィスティリア アンサンブル
(女声17名・4年連続出場・60回大会から5度目の出場)


藤岡直美先生が指導された
枝幸、岩見沢、札幌の中学校OGの
合同団体であるウィスティリア アンサンブル。
今年で結成13年目だそうです。


山本 ここの声はピカイチやからね。


そうですね、以前は「枝幸ジュニア合唱団」という団名で。
その頃から数えると全国大会へは8回目の出場になります。
それからは人数も減りましたが
声の質は変わっていませんね。
北海道の冬を思わせる冷たく透きとおる美しさ。
それでもここ数年は表現力の幅が増して
涼やかさを保ちながらも「大人の合唱」になってきています。

今回の選曲は課題曲がF4
きょうの陽に(「明日のりんご」から)(新川和江 詩/髙嶋みどり 曲)
自由曲は作詩:山村暮鳥 作曲:信長貴富
無伴奏女声合唱曲集「種子はさへづる」より
智慧の木
春の河
種子はさへづる


「種子はさへづる」は2012年に初演された新しい曲ですね。
同じく山村暮鳥の詩をテキストとした
無伴奏男声合唱「じゆびれえしよん」と対をなす曲集ということで
「種子はさへづる」は聴いてはいないものの
「じゆびれえしよん」は昨年、
お江戸コラリアーず演奏会で演奏を聴いた私には
「種子はさへづる」にも期待が高まっているんですが。
「じゆびれえしよん」、様々なタイプの曲で構成されて
テキストの選び方も音楽も面白い曲集だったんですよ!


山本 「種子はさへづる」もそうなのかな。


どうなんでしょうね?
詩を読む限りでは「春の河」「種子はさへづる」
自然を描き、賛美する詩のようです。
ウィステリアさんが演奏するのは5曲中、終曲までの3曲。
信長さんの曲だからさまざまに盛り上げてくれるのでは。


山本 前のL'Aube des Tempsさんに続き、
   このウィステリアさんも若い世代の団体でしょ?
   いいんじゃない!
   フレッシュな音に期待しています!


私と同郷の北海道の団体ということで、
もちろん応援しています!

 

 

 

(明日に続きます)