THREE in Sapporo 感想 その3


続いてはシンガポールの
SYC Ensemble Singers
指揮:Jennifer Tham


女声11名男声9名


in the sound of a clock (tokei no oto nimo)

1. Clocks
2. In the Sound of a Clock
作曲:Rita UEDA
Ave verum corpus
作曲:Americ GOH
The Happiness of Fish
作曲:Zechariah GOH Toh Chai
Both Sides Now
編曲:Annie NEPOMUCENO


函館生まれの日系カナダ人
リタ・ウエダ作曲(会場にいらしていた)の
「in the sound of a clock」は
チクタクと時計の針の音を言いながら客席を歩き回る。
そういうパフォーマンスだけではなく
「Ave verum corpus」も
静謐さと高い集中力を感じさせる高度な演奏。
非常に優れた合唱団というのがとても分かる。
荘子の言葉による「The Happiness of Fish」も
音によって神秘性に満ちた空気で包まれるような。


このジェニファー・タムさんという女性指揮者、
松下先生が
「指揮者3人が同じ年で・・・」と言ったら
「25歳!」(実際は50歳)と突っ込んだり、
フィリピン指揮者とのハグのあと茶目っ気たっぷりに顔を背けたり、
なかなかユーモアのセンスがある人だな〜と感じたけど
音楽の作り方としてはあまり盛り上げることをせず、
曲の中にクライマックスをあまり作らないと言うか・・・。
指揮者のそんな性質と音楽とのギャップが
面白いステージでもありました。





Ateneo Chamber Singers
指揮:Jonathan Velasco (フィリピン)


アテネオ・チェンバー・シンガーズは
アテネオ大学グリークラブの卒業生によって
2001年に創団されたのだとか。
スペインの第38回トロサ合唱コンクール、
ポリフォニー部門で第1位を獲得。


女声14名 男声11名


この合唱団は聴けて良かった!
この日聴いた全ての団体の中で一番の衝撃。


KAISA-ISA NIYAN
作曲:Nilo Alcala


フィリピン童謡を元にした作品。
男声のスピード感あるリズムに乗せて
女声がメロディを。
ボイスパーカッション、ボディパーカッション、
そして叫びが挿入されるが
それが実に効果的で合唱団の演出力も抜群。
この曲でまず引き込まれる。



続いての
GLONGO KO (Praise You)
作曲:Excelsis Betil


フィリピン3つの島の言語とチャントを題材にした作品。
男声ソリストが合唱団から離れ山台の最上段で
民謡を歌う。
その歌唱力もさることながら
フィリピン民謡の味わい、本質というものを
ポイントごとの動き、演技も伴い見事に伝える。
女声ソリストとの2重唱、
そして合唱との呼応する響き。
最後にkubing(竹の口琴)が鳴らされた後の余韻…。
観客を札幌キタラではなく、フィリピンの島へ連れていった。
すばらしい!



KOYU NO TEBULUL (T’boli Folk Song)
編曲:Eudenice Palaruan
ハミングを含めた楽しいメロディ。
聴いているうちに自分も笑顔に。



PAMUGUN (Sparrow)
作曲:Francisco Feliciano


なかなか有名な曲だと思うが今まで聴いた演奏とは段違い。
リズム感、ボイスパーカッションの速さ。
鳥の鳴き声を歌う個々人の能力の高さ。
そしてそれが必死さではなく
ユーモラスな雰囲気として伝わるのが特に凄い!


いっやあ堪能しましたアテネオ・チェンバー・シンガーズ。
深みのある、それでいて華やかな響き。
演技力も含めたそれぞれの団員の技量。
指揮者のジョナサン・ヴェラスコ氏の音楽も
生命感あるリズム、聴く者を惹きつける空気、
1曲を通した音楽の起伏など
優れているだけではなく
観客を楽しませる意識が強い指揮者とお見受けしました。



特に2曲目のGLONGO KO (Praise You)は印象深かったなあ。
民謡の合唱版は「本来の持ち味」が損なわれてしまいがち。
アテネオの演奏はソリストの歌唱が重要だったとは言え、
日本の民謡を合唱曲として演奏し、
ここまで日本を感じさせる曲、演奏ができる団体はあるだろうか?
大人数の歌唱という「合唱」の形態が
民謡本来の持ち味を失っている部分が多いのでは?
…などといろいろ考えてしまいました。


YouTubeにアテネオ・チェンバー・シンガーズの演奏があったので。




・・・それにしてもガイア、SYCは細めの方が多かったのに
このアテネオは女声・男声共に
メタボリックな体型の方ばかりだったなあ(笑)。



(つづきます)