大分市民合唱団ウイステリア・コール第61回演奏会感想 その2


休憩後のポピュラーステージ。
さすがに3月に飯倉先生傘寿お祝い演奏会があったばかりで
やや練習量が足りていないことを感じさせるステージでもあったが
他にポピュラーステージを行う合唱団や
演出を取り入れる合唱団にはとても有益な気づきがあると思うので
出来るだけ詳しく記していこう。



色違いのカラフルなTシャツに着替えた団員さんたちが出てきて
「I Dreamed a Dream」(編曲:フィリップ・ローソン)。
女声のマイクを使ったソロから始まったポピュラーステージは
流れを重視した一瞬たりとも間延びがない演出。素晴らしい。
女声ソロのBGMとして座ったままだった合唱群は徐々に立ち上がり、
完全に立った後、全体合唱になると一歩前へ進み、歌を主張する。



信長貴富先生編曲の「ゆけゆけ飛雄馬」
(無伴奏混声合唱のための「アニソン・オールディーズ」より)
まず指揮者:猿渡さんのソロにニヤリとして、
最初が「巨人の星」で出てくるのは野球選手かと思ったら仮面レスラー!
「え?」と思うまもなく「タイガーマスク」主題歌に変わり
最後はバレーの「アタックNo.1」だった…という凄くカオスな編曲。


「だけど…涙がでちゃう
 女の子だもン!」


っていうセリフは「アタックNo.1」のもの…なんだけど
30代以下置いてけぼりな気がするんですが。
いやそれよりそのセリフを発するのが男なことにツッコむべきか?(笑)



さて、この日の演奏会の打ち上げで猿渡さんから
ポピュラーステージに必要なものとして


「笑いと涙と感動、そしてもうひとつ」と話されていたのだけど、
「もうひとつ」とは何でしょう?
みなさんも考えてみてください。
(ヒント:その「もうひとつ」を考えるのが一番難しいのだとか)



続いて信長先生編曲の「伊勢佐木町ブルース」
ミラーボールが輝き回り、これまた雰囲気充分。
見たところマイクが無いのに、
音響ではマイクで拾った音が聞こえるので不思議に思っていたら
ステージ前方の下側に設置しているのだとか。
視覚的にスマートだけど、この曲に限っては
特徴的な「アン♪アン♪」を拾えなくて残念(笑)。
(ちなみに混声合唱のための「アカペラ・エンカ」より)


そして女声合唱による「友 〜旅立ちの時〜」
「ゆず」の北川悠仁氏による今年のNコン中学校課題曲。
(編曲は相澤直人先生)
この選曲は会場にいた中学生にもアピールするものなんでしょうね。
岐阜県の合唱団MIWOの音楽堂演奏会でも中学・高校のNコン課題曲を
毎年取り上げているけど、そういう姿勢はとても大切だと思います。
それにNコン中学課題曲はこのところポップス寄りなので
ポピュラーステージにも使い勝手が良いのでは。


さらに信長先生編曲の「明日があるさ」をカルテットで歌い。
するとテノールから
「飯倉先生大好きです。お願いします!」と始まり
男声陣が次々と飯倉先生へ手を差し出し恋のアピール。
ね、ねるとん?(懐かしいなー)
そこへピアニストの後藤秀樹さんが「ちょっと待ったー!」
「飯倉先生を一番愛しているのは、僕だー!」と立候補し
飯倉先生が「ごめんなさい!」と全員フラれて、オチ(笑)。


「明日があるさ」は合唱に引き継がれ、
さらにはスポットライトがあたる中
ピアノのアドリブソロがジャズ風味、ノリノリで演奏されて楽しさ満点。
最後、ステージいっぱいに広がったダンスがあったんだけど
それに飯倉先生も加わり、またそれが見事なステップで会場中がどよめく!
この方が御年80歳とは到底思えない!!



そう、前述の
「ポピュラーステージに必要なものは
 笑いと涙と感動、そしてもうひとつ」の答え。


それは「驚き」でした。
確かに驚いたよ!(笑)。


飯倉先生傘寿記念の委嘱作品「ネコのおくりもの」
(詩・曲:佐藤賢太郎ことKen-P)の
児童合唱抜きヴァージョンを飯倉先生指揮で。
この曲はバースディソングなので
客席に向かって「今日、誕生日の人いらっしゃいますか?」と尋ね、
(なんと3人もいらっしゃいました)
その人たちへ向かって歌った後、
ポピュラーステージ最後の曲として指揮の猿渡さんから
「いじめに悩み自殺してしまう子のために発表された曲」と
弓削田健介氏の「大切なあなたへ」を。


母の立場から、子どもが生まれてきた時の喜びと
その喜びが成長した今もなお続いていることを切々と訴える、
作品も演奏も、感動的なもの。



これでポピュラーステージが終わり・・・と思ったらまだ終わらない!
プログラムに挟まれていた
「みんなで歌いましょう」と題された
曲名と歌詞が印刷されたプリントを出すように言われ、
飯倉先生主導で
「犬のおまわりさん」「夕焼け小焼け」「手のひらを太陽に」などを
会場中で合唱!
ちなみに飯倉先生はウイステリアと別に
「童謡♪唱歌をうたう会」を開かれている。


飯倉先生は
「2階、3階の人、歌ってますかー?」
「(ステージ上で飯倉先生をサポートして歌う団員さん数名に対し)
 あなたたちの声がウルサくて、会場の合唱が聞こえないじゃないの。
 黙ってて!」
など、煽りと笑いを交えながらなんとか歌わせようとする。
「手のひらを太陽に」は演奏会最後にまたみんなで歌うから、
ここでしっかり歌ってくださいね!…と。



さて、細かく記してきたけれど
最初に書いたように、流れを重視した一瞬たりとも間延びがない演出。
さらに独唱、女声合唱、カルテットや重唱、
ピアノソロなどさまざまな合唱や楽器の形態。
猿渡さんが仰られたように「笑いと涙と感動、そして驚き」に併せた選曲。
「客いじり」…いや、観客も参加させようとする演出。
スポットライト、ミラーボールも加えた照明の演出、などなど
多彩で非常に考えられたステージだったと思う。


打ち上げで、演出担当のくさかさんから
「猿渡さんから演出を受け継ぐとき、
 『なぜ、ここまでこだわらなければいけないんだろう?』
 と最初は思ったんですが
 今では自分もかなりこだわるようになって(笑)」
そう語られていたが、これを考え、そして実行するのはさぞかし大変だろう!
(猿渡さんによる補足:
 「演出はもちろんくさかが一人でやっているわけではなく、
  大方の流れや照明の使い方などは私が企画し、
  肉付けをくさかが行い、さらに私や皆の意見で修正を行っています」
 …とのこと。猿渡さんありがとうございました)



ここまでのことをしてしまうのはなぜか?
何がウイステリアをそこまで動かすのか?
そんなことを考えつつ最終ステージ。




(最終回へつづきます)