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スヴァンホルムシンガーズ演奏会感想

 
 
スヴァンホルムシンガーズ演奏会感想

2013年12月14日 19:00~ 倉敷市民会館

2013年11月30日から12月18日までで
なんと12公演という多さの日本公演。
12月14日の倉敷公演は9公演目。
前日は島根:松江での演奏会。
疲労とか喉とか大丈夫かなあと不安になりながらも
会場の倉敷市民会館へ向かう。
 
 

会場は7~8割の埋まり。
5300円という比較的高額なチケットなのにみなさん豪勢な事だ。
珍しいスウェーデンの男声合唱団という期待もあるのかねえ。
…などと思っていると上手と下手の両側から
長身細身の男性が1列に並んで颯爽と登場!
両側からの入場というのはなかなか無いのでは。
スヴァンホルムシンガーズは21人の男声合唱団。


最初の曲はその名も「イントロ」という
女性指揮者:ソフィア・セーデルベリ・エーベルハードさん作曲。
多彩なスキャットとハンドクラップに足、ひじと
リズムパートに体のあちこちを使ったノリの良い明るい曲。

続いて「ホルガの歌」というスウェーデン伝承曲と
日本の「見上げてごらん夜の星を」を演奏。
ここで曲への感想よりまず声、響きに「…ほーっ」と思ったのは
私がずっと聴いてきた海外の有名アカペラミュージシャン。
例えば同じくスウェーデンの
リアル・グループの音が生で響いていること。

「マイクやアンプを使わなくても生でああ響くんだ!」

喉に無理をさせず、柔らかで軽く明るく頭から開放的に響く発声。
「見上げて」では聴き合い、響かせ合う声と
旋律のデクレッシェンドの美しさに惹かれました。
スヴァンホルムシンガーズいいじゃん!
疲れも演奏への飽きも全く感じさせないぞ!


その次にスヴァンホルムシンガーズが主催したという
男声合唱曲の国際作曲コンクールから上位の3曲。
フランスの核実験への抗議をテキストにした
「公的保証」(ダニエル・ユート作曲)。
スタンダードな現代合唱作品「とても静かだ」
(グスタフ・エングクヴィスト作曲)を演奏したのだけど
この日に演奏された曲の中で
一番日本の合唱団へのレパートリーにお勧めしたいのは
「鳥の歌(Birdsong)」(ジョン・ミルン作曲)だろう。

ステージ上に3つのグループを作り、
美しい前奏を歌い始めると
カウンター・テナーのソリストが
鳥の鳴き声のような短めの旋律を繰り返し歌いながら
3つのグループの間を渡り歩き
合唱と独唱の世界を創り出す。
ヴォカリーズの響きの美しさ、
3つの合唱グループとソロの歌唱との絡み合い。
シンプルでありながらも忘れがたい美しさを残した。
良いカウンター・テナーがいる男声合唱団の演奏なら
ぜひまた聴きたいと思わせる曲。


他に「リム・リム・リーマ」というスウェーデンの伝承曲。
言わずと知れた日本の「斎太郎節」「音戸の舟歌」
「ダニー・ボーイ」を演奏。

「こんなの斎太郎節じゃねえ!」と
怒り出す日本の男声合唱ファンがいるかもしれない
この上なくノーブルな斎太郎節。
ソリストもファルセットを自在に混ぜる発声で
決して無理をしない自然な発声。
そう、この「無理をしない」という印象は合唱でも独唱でも同じで
この演奏会の最初から最後まで徹底していた。
日本人のソリストなら首に血管を浮き出たせ
いわゆる「声を押す」「張る」印象になりそうだけど、全く逆なのだ。
もちろんこの曲本来の土俗性や興奮は無いが
しかし、和音の変化がこんなにも明瞭に分かる演奏は初めて(笑)。

「リム・リム・リーマ」は言葉遊びのような
音響効果、響きが面白い、私も気に入った曲。
「ダニー・ボーイ」も4重唱から独唱、
3重唱にバックコーラスがかぶさるような
凝った美しい編曲。

こういう3重唱、4重唱でも
スヴァンホルムシンガーズはバッチリハモる、響く。
これは先ほどの「決して無理をしない自然な発声」もあるが
声の方向性を揃える、聴き合う力、音程感、
三声、四声のバランスを読み取る力(これ重要!)が優れているのだろう。
いわゆる「声を押す、張る」発声だと
周りの声が聴こえにくくなってしまうのも
日本の小アンサンブルが
いまいちハモって聴こえにくいと感じる原因なのかも。

さらにその聴き合った声で
各パートが1本の線となり、ハーモニーが面となる素晴らしさ。
BGMとしてのヴォカリーズで日本の合唱団では単に
「声が集まっている音」と感じることがほとんどだけど
スヴァンホルムシンガーズは声じゃなく
オルガンや木管楽器に聞こえてしまう不思議。



休憩後の第2部は
「サンタクロースがやってくる」
「サンタが街にやってくる」などが入った
「サンタクロースメドレー」から始まるステージ。

うーん、こういうリズミカルで明るく軽い曲はハマってるなー!
高音は軽やかにセンス良く、フレーズの抜けが実にシャレている。

「ホワイト・クリスマス」「アメージング・グレース」などの
メジャー曲も演奏し。
(「アメージング・グレース」の曲中、
 指揮者が「赤とんぼ」を歌うという意外性ある編曲アリ)

このステージで印象的だったのは
「冬の山のヨイク」(セッポ・パークナイネン作曲)
「精霊の風(ユーハン・メーラクのヨイクにもとづく)
(ヤン・サンドストレム作曲)の
ラップランドの原住民サーミ人の音楽「ヨイク」を題材にした2曲。
言わば本場の演奏が聴けたようなものですよ。

「冬の山のヨイク」はテンポ早めで
さまざまな動物の鳴き声が生き生きと湧き起こり
鈴なども使った生命感あふれる演奏で説得力あった!
続く「精霊の風」は跳ねるリズムが楽しい曲、と思ったら
一転して美しいロングトーンやスピーキングコーラスがある
変化が激しい曲。
そして「精霊」とタイトルにあるのが理解できたラスト。
沈黙したまま、団員全員が精霊を見つめる視線移動と
そのオチは・・・これ、やってみたい!(笑)
客席は大ウケでした!

最後の3曲は「聖しこの夜」「マリアの御子」
軽やかでリズミカルな「レット・イット・スノウ」で愉快に締め!

アンコールはなんとスマップの
「世界に一つだけの花」を日本語で。


いやあ、楽しい演奏会でした。
涙腺を刺激される、心に強く刻まれる感動…というのは無かったので
5300円というチケットは正直高いと思ったけど
男声合唱に少しでも関わる人は未来を夢見るためにも
絶対体験すべき演奏会かなあと思いましたよ。
特にポピュラーソングを合唱でやると
ダサいのはある程度仕方が無いと思っていたけど
それは合唱という演奏形態のせいじゃなく
演奏者のせいだ、というのがとても分かったというか。
(自分のセンスの無さを放り投げてますが…)


あと、指揮者のソフィア・セーデルベリ・エーベルハードさんは女性。
見た目は30代前半(実年齢30代後半~40代前半?)だったんだけど
ブロンド、ポニーテールの女性指揮者が
くッ、と体を曲げ音叉で音を取り、ソプラノで音出しをし
それに従う21人の黒衣の男性というシチュエーションに
なんだか魔術的、もしくは音の司祭、聖的なものを感じてしまって。

特に最後のアンコール曲。
団員が2手に別れ客席の通路に並び
他に誰もいないステージで
ひとり客席へ向かって指揮を振る姿は
会場に響き渡る男声もあいまって
何かを召喚する魔術師のように見え
非常にイメージを掻き立てられましたよ。

優しく神秘的な男声合唱が会場全体を美しく満たし。
その世界の中心に黒衣の女性がゆったりと腕を振っている・・・。
あの演奏、光景は忘れられないものでした。


 

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8年ぶりという日本公演、
色々と刺激になるスヴァンホルムシンガーズ演奏会でした!