「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2014」(その1)

 

 



全国大会へ出場される団体をあれやこれや紹介するというこの企画。

今年も始まりました!


ちなみに昨年の「あれやこれや:出張版」第1回はこちらです。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2013/11/08/133308

 

この企画の本家Web文通相手のぜんぱくさんは

ユース部門と同声部門を担当され

既に開始して快調に進んでおられます!
http://talk21self2.blog111.fc2.com/


私は室内合唱部門11団体、

混声合唱部門16団体の2部門全27団体を
担当いたします。


今年も合唱倉庫さんから
http://choral.nusutto.jp/
全国大会へ何回出場されたかという
データをお借りしております。
感謝いたします。


今回も本当に多くの合唱団のみなさまにご協力いただきました。
心からお礼を申し上げると共に
最終回まで楽しく読んでいただければ幸いです。

 

 

今年の全国大会は香川県高松市。

会場の高松:アルファあなぶきホールは1988年にオープン。

大ホールは2001席。

 

 

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さあ、室内部門出場の団体をご紹介しましょう。

 

昨年はMODOKI指揮者:山本啓之さんとの

対談形式で合唱団の紹介を行ったのですが

今年は引き続き山本さんと

この企画本家のコールサル指揮者:ぜんぱくさんと

出場される団体の、記憶に残った演奏を主に語ってから

合唱団紹介へ移るという形で進みたいと思っております。

 

ぜん ・・・  ぜんぱくさん(コールサル指揮者)
山本 ・・・  山本さん(MODOKI指揮者)

 


第67回全日本合唱コンクール全国大会 大学職場一般部門。
24人以下の室内合唱の部は11月22日の土曜日、
14:00から開始の予定です。
最初の団体は・・・

 

 

 

 

 

 

1.長崎県・九州支部代表

イトウ・キネン・シンガーズ

(混声24名・9年ぶり・3度目の出場)

 

 

代表が伊藤さん。

だから団名が「イトウ・キネン・シンガーズ」(笑)。


9年前、2005年新潟全国大会の自由曲では
木下牧子先生「水底吹笛」の繊細さと
感性の鋭さが記憶に残っています。


ぜん 圧倒的に大人の音楽をする団体ですよね。


あ~、同意です。


山本 そう、印象は大人の合唱団。
   響きも良い合唱団やし、
   細かいアンサンブルもできるし。
   あと、2003年のMODOKIの初コンサートには
   賛助出演してもらったんですよ!


ぜん 深みのある、味わいがある歌が歌えるという意味で
   大人のかっこいい合唱団。
   ちょっと憧れるよね。
   音楽を聴いているという感じがするし。
   こういう団体になりたいね。

 

 

今年の課題曲はG1のSalve Regina (Josquin des Pres)
自由曲はAbendlied, Op. 69, No. 3(Josef Gabriel Rheinberger)
Sure On This Shining Night (Morten Lauridsen)

 

指揮者:猿渡健司先生から

選曲について伺っております。

 

 

 

 

 

【選曲理由】



課題曲 G1 Salve Regina

・  合唱団にとって、コンクールの課題曲として選択する場合、

ルネサンス音楽が最も相応しいと考えています。

よって、よほどのことがない限り、G1を課題曲に選んでいます。


→ パート間に軽重が無い。

より聴き合うことが求められるため、

指揮者主体ではなく歌い手による自主的な音楽創造が可能となる。

アンサンブルの中で自分の声をどう生かすことが出来るかを

歌い手自身で確認しやすいため、歌い手個々の実力アップに繋がる。


・  長い曲であるが、その長さを感じさせないこと。

全体の構成を考え、新たなモチーフを明確にして歌うように心がけました。

また、マリア賛歌であることから、全体を通して暗くならないこと。

歌い手でもあったジョスカンの、

宗教曲でありながら時々顔を出す遊び心を楽しむようにしました。

 


自由曲① Abendlied (夕べの歌 Josef Gabriel Rheinberger)

・  イトウキネン(IKS)には、自由曲を選ぶ場合、

基本的に歌いたい曲を歌うというコンセプトがあります。
・  一番の理由は、代表の伊藤が歌いたいと思ったからです(笑)。

聴いてみるとこれは良い曲だ!と思い決めました。

 

「一緒にお泊りください。

 そろそろ夕方になりますし、

 もう陽も傾いていますから」

という、なんてことはない単純な歌詞の裏に隠された、

宗教的感動が伝えられたらと思います。

 

ちなみに東混の大谷研二先生に、

課題曲講習を受ける機会があったのですが、

IKSの声にはロマン派の方が合っているから、

課題曲はG2で聞きたかったねえと言われたので、

自由曲にこの曲を選んでいることを伝えると、

「たしかに、Nachtlied(夜の歌)の後に、

 Abendlied (夕べの歌)はまずいなあ」

と笑われていました(笑)。



自由曲② Sure on This Shining Night

(Morten Lauridsen)

・  一番の理由は、私が歌いたいと思ったからです(笑)。
・  IKSでは、2009年のコンクールで、

同じくローリゼンの「薔薇の歌」を取り上げるなど、

かなり古くからローリゼンに注目していました。

男声版でこの曲を聴いた際には、

どこか映画音楽を思い起こすような曲想が映画好きの私のハートを捉え、

いつか歌いたいなあと思っていたのですが、

YouTubeで久しぶりに聴いて、

本来、難易度においてコンクール向けではないものの

歌いたい!と思い決めました。

曲の中で作曲家が指定している、

「sense of  wonder」を伝えられたら幸いです。 

 

 

 

自由曲を選ぶ際には「歌いたい曲を歌うというコンセプト」。

コンクールらしからぬ、

しかし素敵なコンセプトだなあ、と思います。

聴いてみると「なるほどこれは歌いたくなる!」と思わせる

とても素敵な2曲です。

 

 

さて、今年度の特別企画。

「思い出の全日本合唱コンクール名演奏」と題しまして

出場団体の指揮者のみなさまにお願いし、

思い出に残る名演奏を語っていただきました。

猿渡先生、お願いいたします。

 

 

 

【思い出の全日本合唱コンクール名演奏:猿渡健司先生】

 

 

高校一年生から連続して出場してきたコンクールも、今年で44回目!

これまで数知れぬ名演奏を聴いてきましたが、

思い出の名演奏は?と改めて聞かれると、

やはり、高野廣治指揮:FMC混声合唱団の演奏を

挙げさせていただく他はないと思います。

 

FMCと言えば、パレストリーナはもちろんのこと、

間宮芳生の「五つのピエタ」など、数多くの名演奏があるのですが、

特に私の思い出に残っているのは、

第42回全日本合唱コンクール福岡大会

(1989 サンパレス)における演奏です。

 

課題曲は、アルカデルトの「Il bianco e dolce cigno」。

自由曲は、得意のパレストリーナでなく、

ジェズアルドの「Ave dulcissima Maria」と「O Vos Omnes」。

4~50人ほどのメンバーを率いて高野先生が指揮を始めます。

後ろ姿からは指揮する様子が見受けられず、

かすかに手が動く気配がする程度。

それでも合唱団は美しい歌声を会場に響かせます。

次第に手の動きが大きくなるに連れ音楽はクライマックスへ!

合唱音楽の真髄に触れた瞬間でした。

 

ところが結果は銅賞…。何―っ!?

同時に私が歌い手で参加したウイステリア・コールは、

パレストリーナで銅賞だったのですが、

その完成度には天と地ほどの差があったように感じました。

 

現在の合唱王国「福島」の礎となった、

高野廣治先生とFMC混声合唱団(現在も高野先生の娘さんが

指揮をされて活躍されています!)の名を、

決して忘れてはいけないと思います。

(そう言えば、宮城三女の名指揮者桑折金三氏も、

 福島大学在学中に団員として在籍されていたと聞いています。)

 

 

 

猿渡先生、臨場感あふれた思い出の演奏をありがとうございました。

FMC混声合唱団さんのパレストリーナは

名演奏だったと聞いております。

現在に続く、礎となった団体、演奏、忘れてはいけませんね。

 

 

さらに猿渡先生からは

 

 

 

【全国大会に臨むにあたって】

 

IKSにとって、9年振りの全国大会です。

これも、昨年室内九州代表の「女声合唱団ソレイユ」さんが、

全国1位のシード権を獲得されていなければ、

他の九州室内合唱団にチャンスは訪れなかったものと思われます…。

ソレイユさんありがとう!!(笑)

昨年の九州大会では銅賞だったIKS。

今年は銀賞が頂ければ良いかなあとマジで思っていましたが、

思いがけず訪れたチャンスなので、精一杯歌いたいと思います。


今回IKSでは、「大人な演奏」を目指しています。

ミドルエイジが大半のIKS。

九州代表、そして一般部門のトップバッターとして恥ずかしくない、

声も歌い回しも、年を重ねているからこその「大人な演奏」が出来れば幸いです。

 

そう言えば、ある芸術家が「あなたにとって技術とは何ですか?」と問われ、

「作り手(歌う側)が意図する方向に、

 見る側(聴く側)がスーッと自然に入っていけるようにするもの。」

と答えていましたが、そんな演奏が出来れば理想なのですが…(笑)。

 

 

 

猿渡先生、ありがとうございました。

最初にぜんぱくさん、山本さんも語られた「大人な演奏」。

若者たちによる大学の部の後で

ミドルエイジの指揮者、代表の方々が歌いたいと思われた曲、

その魅力をたっぷり伝えていただきたいと思います!

 

 

イトウ・キネン・シンガーズさんの演奏に、

ずっと歌い続けてきた想いと喜びが宿りますように。

 

 

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2014.9.14 第69回九州合唱コンクール 
iichikoグランシアタ(大分市)にての写真だそうです。
(大分、高崎山名物の猿にちなんで「サル」真似だそうです!)
 

 

 

 

 

 

(明日に続きます)