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「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2014」(その4)

 

 

 

 

 

今日は合唱界の人気者のあの方への特別インタビューです!

 

ぜんぱく サルは1回しか出場してないし・・・。


いや、あの1回だけの演奏が良かったんですよ!


山本 そうやね!
   前回は千原英喜先生の「きりしたん天地始之事」。
   今回も千原先生の「おらしょ」。
   やはり「おらしょ」は名曲なので聴くのが楽しみ!


そんなわけで今日ご紹介の団体は・・・

 

 

 





5.愛媛県・四国支部代表


Chorsal《コールサル》

(混声22名・6年ぶりの出場・第61回大会以来2回目の出場)


 

 

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コールサル指揮者大村善博先生ことぜんぱくさん、
全国出場おめでとうございます!


ぜんぱく ありがとうございます(笑)。


前回の全国出場が岡山大会なので
6年ぶりの出場ですね。


ぜん そうです。
   前は一般B部門での出場でした。
   6年前にオンステしたメンバーで
   今回も重なるのは2人か3人だから
   全く別の合唱団と言ってもいいかも。


団員さんは若い人が多いですよね。
平均年齢20代前半ぐらいでしょうか?


ぜん それぐらいなんじゃないかなぁ。
   入団してくれるのが息子や娘みたいな年代で。
   一番若いのが高校1年生だからね。


高校1年生!


ぜん 責任を感じるよね。
   10代から20代前半の人間にとって
   コールサルでの経験が
   初めてで新鮮なことだったりするわけでしょ?
   自分だったら20代は大久保混声合唱団に入って
   辻正行先生の最後の11年を共にできたわけだし。
   あの時の経験が今に生きてると思うから、
   ヘタな事はできない、と思うよね。


なるほど・・・。
若い人たちの「合唱の初めて」を預かる大事な役目ですね。


ぜん とか言いながらヘタな事しかしてないんだけど!


またそういう事を(笑)。


ぜん 支部大会で嬉しかったのは
   代表になれたのも嬉しかったけど
   審査発表が終わった後、
   四国の指揮者の方々が声をかけてくれてね。
   「ぜんさん、おめでとう! 良かった!」って
   抱きついてくれたり。

   ・・・なんて優しくてあったかい人たちなんだろう。
   ライバルで競い合ってはいるんだけど、
   凄く近い関係というか本当に「仲間だなあ」と思って。
   不思議な話だと思うけど
   他の支部じゃあんまり無いと思うんだな。


それはやっぱり、ぜんぱくさんのお人柄から・・・。


ぜん いやいや! そうじゃないと思う。
   やっぱり自分も歌姫さんや響さんが
   コンクールで演奏する時も
   「がんばれー!」と応援してるしさ。

   そういう風に思い合っている関係というのは
   コンクールだけどコンクールじゃない、
   とてもありがたいことだなあって。
   ジョイントコンサートをやっている関係性なども
   あると思うんだけど。
   それは・・・とっても嬉しかったね。


そうですか…。
さて、選曲についてお尋ねします。
まず課題曲はG1のSalve Regina(Josquin des Prez)ですが
やはり若い団員さんにルネサンスポリフォニーを
学んでもらおうと?


ぜん それ以外考えていないかな。
   まあ人数が少ないのでディヴィジョンしたり、
   5声は難しいという理由もあるけど、
   やはり、この曲を勉強しましょう!という思いが強いですね。
   ルネサンスポリフォニーのような曲ができないと
   きっと成長も無いんだろうと思うし。


自由曲は千原英喜先生の「おらしょ」の2番ということで、
コンクール自由曲としては定番という選曲ですが。


ぜん 定番中の定番だよね。
   この曲を選んだのはおらしょの2番が
   「Salve Regina」だからです。
   グレゴリオ聖歌を土台に
   スペインから広まった曲が
   「Salve Regina」、マリア賛歌なので。

   楽譜もアンティフォナ(交唱)の形式で書かれていて
   グレゴリオ聖歌は1群、2群に分かれ、交互に歌う。

   おらしょも3曲通じて
   ソプラノ・アルト・テノール・バス、
   女声・男声合唱の交唱という形式で書かれている。

   だから今年のテーマは「Salve Regina」です。


ほーう。
「おらしょ」が定番中の定番、
つまり名曲なのはわかるんですが
実際練習されていかがですか?


ぜん いやあ・・・名曲をやると・・・
   ヒドイ目に遭うな!と。


ヒドイ目?(笑)


ぜん あの曲ができてから15年ほどになるんだけど
   その間、演奏でいろんな試みがされてきて
   やり尽くされている感があるわけじゃないですか。
   その先でやっていると、どうしてもどこかで必ず
   過去の演奏に似てきちゃう。

   似るのは別に悪いことじゃなく
   演奏に説得力があれば良いんだけど
   そこに理由を求めるのが難しいですね。

   さらに千原先生の作品は
   課題曲の「夜もすがら」もそうだけど
   耳触りが良いから、
   メロディーラインの美しさに流されてしまい
   本質にたどり着く前に
   自分たちが勝手に気持ち良くなってしまうので
   本当に危険。   

   でも、練習し始めてから8か月ほどになるんだけど
   未だに新しい発見がある凄い曲だと思います。


奥が深い曲なんですね。


ぜん そうですね、奥が深い名曲です。
   たとえば名曲で言えば
   ベートーベンの交響曲などは
   何百年もやり続けられているわけで。

   数多のオーケストラ、名指揮者のいろんな音楽、
   たくさんの解釈を許容しうるだけの音楽だから
   現代にも残り続けているわけじゃないですか。

   過去の演奏に似ちゃうということは
   演奏者が解釈の幅を広げる努力を怠っていることで。
   その音楽が持っている隠れた魅力を
   引き出してあげていないということ。

   結局それは曲の寿命を縮めることにも繋がってしまうし、
   コンクールで一時期にたくさん演奏されて
   すぐ消えてしまうことにも繋がってしまう。
   音楽を消費して使い捨ててしまう。
   だから定番中の定番、昔演奏された曲を今演奏するのも
   大事なんじゃないかな。


「定番中の定番だけど、今聴いてもやっぱり良い曲だよね」って
良い演奏の時は思いますよね。


ぜん ダメな演奏はその音楽にまず聴こえないからね。
   「こんな曲だったかな…」と(笑)。

   新たなことを作ろうとして
   仮にそんな風に聴こえなくても
   聴いた人がその曲を演奏することに繋がる。
   音楽を繋いで次に渡そうとする一環が
   演奏活動だし。

   名曲を作るのは
   作品の力と
   それを活かそうとする人間の演奏努力が
   名曲を名曲として成立させているわけで。


名曲を作るのは作品の力と人間の演奏努力…
良い言葉ですね!


ぜん ・・・ま、コールサルの演奏が
   名演奏になるかは別として(笑)。

   今年は出番が、
   佐賀の女声合唱団ソレイユさんの後じゃない?


はい、ソレイユさんが4番目。
コールサルさんは5番目ですね。


ぜん 大好きなんですよ、ソレイユさん。
   ソレイユさんは日本最強の女声合唱団!
   声も輝かしいし、
   音楽性もあって、
   パフォーマンスもしちゃったりする。
   あの演奏を袖で聴いた後に
   ステージへ出ていかないといけない!

   …もう止めようかな、出るの・・・。


待って待って待って(笑)。


ぜん だって日本最強ですよ。
   その次に出るのが日本最弱ですよ!


バトルものなら盛り上がる展開ですね。
「俺の最弱は、ちっとばっか響くぞ」とか。


ぜん わかった!
   「トイレ行ってください!!」
   と書いといてください。


自虐にもほどがある(笑)。



ぜん 「ホールには誰もいないよ?
    だけどトイレには鈴なり!」みたいな。



たとえホールに他のお客さんがいなくても
審査員9人と私だけはいますよ!
…あ、ちょっとイイこと言いました?(笑)


ぜん そうか・・・
   じゃあその10人のために演奏するよ(笑)。



それでいいのかな(笑)。
えーっと、出場するにあたって
目標などはありますか?


ぜん うーん・・・
   四国の代表って年替わりでさ。


はい、昨年は歌姫さん。
一昨年はSerenitatis Ensembleさんですね。


ぜん 四国の合唱団は仲間だし、
   競い合うライバルでもあると前にも言ったけど。
   その四国の今年の代表である
   コールサルを聴いて
   「四国もがんばってるんだ!」
   …そう思われたら素敵なことだよね。


コールサルさんの演奏だけがどう、じゃなくて
その後ろにある四国の合唱団のがんばりも
認めてもらえたら素敵なことだと。



ぜん 全国はあれだけ凄い団体が並んでいる中
   そんなに偉そうな演奏は
   ほぼできないけど、
   自分たちのできることはやりたいなと
   思っているよ。

   MODOKIの山本さんが
   練習に来てくれた時に
   「コールサルの若者がんばってるね!」と言われて。
   「ホンマかいな?!」とも思ったけど、
   ちょっとでもそういう風に映る瞬間があったなら
   嬉しいね。

   いや、本当にウチの若者たちは、誇りです。
   あとは指揮者ががんばるだけですね。


ありがとうございました!
ぜんぱくさん、がんばってください!!

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 宮中雲子音楽祭金賞受賞、おめでとうございます!

 

 






さて、室内合唱部門、前半最後の団体です。







6.島根県・中国支部代表


ゾリステン アンサンブル
(混声24名・3年連続出場・43回大会以来12回目の出場)



山本 2006年熊本全国大会の
   ベルイ「And death shall have no dominion」、
  (そして死は支配をやめるだろう)
   あれ好きやった!


あ、私も印象に残ってます!
最後広がり、そしてステージ前側で1列になって
一人一人が挑むように、訴えるように、歌い上げていましたね。


山本 MODOKIでやろうかとちょっと思った時もあるよ(笑)。


ぜん 音楽の構築性を非常に大事にされている印象がある。
   クール・シェンヌさんや京都バッハ合唱団さんと
   ジョイントコンサートをされているだけあって、
   他団の良いエッセンスを演奏に感じるね。


過去には藤井宏樹先生のEnsemble PVDさんとも
ジョイントされてましたよね。


ぜん …西先生ってさ、あれだけ才能あるのに
   「私は合唱畑じゃないからどうしても未熟で・・・」
   みたいなこと言うからさ、
   何言ってんの?!って思うんだよなあ。


それ、書いていいんですか(笑)。


ぜん 書いちゃって!
   「そんなこと言うなら
    才能の半分、私に寄越せ!」
   って書いちゃって!!(笑)



さて、指揮者の方に思い出の名演奏を伺う企画。

西先生に答えていただきました。

 


「思い出の全日本合唱コンクール名演奏:西真紀先生」



普段全国に出させてもらっても
あんまり聴けないことも多いし、
自分が「審査される側」なこともあり、
あまり平常心で聴けてないような気がします。。。
そんな中、全国大会に少しずつ出させてもらうようになった
2008年のコンクールシーズンでの
「合唱団ある」さんの「ラプソディーインチカマツ」は
強烈に覚えています。
それまでも素晴らしい団だと思っていましたが、
曲の中で次々に繰り出される鳴り物やパフォーマンスに、
団員さんの個々の強烈な自主性を感じ、
圧倒されました。
そこで「自分たちもやってみよう!」とならなかったのは、
やるなら徹底的にやらなくてはならないと感じ、
中途半端に真似するのは止めようと思ったからです。
現在ゾリステンは歌以外のパフォーマンスをほとんどしませんが、
そういう路線に進むきっかけの一つでもあったように思います。

 

西先生、ありがとうございました!

岡山大会の合唱団あるさんの「チカマツ」は

ド派手な演出と対照的に抑えた静かな音楽が印象的で

「冬の日の花火」とでも言い表したい、

生と死の香りが濃厚に漂う素晴らしいものでしたね。

私も大好きな演奏です。

 

 


さて、ゾリステン アンサンブルさん、

昨年は課題曲のヴィクトリアを
一直線に押し切るのではなく、
成熟した大人の声、陰影ある表現で熱く歌い、
ブラームスの「Schaffe in mir,Gott,ein rein Herz」では
室内合唱の枠を越えるような表現に
とても好感を持ちました。


今年の演奏曲は
課題曲G1 Salve Regina(Josquin des Prez)
自由曲は
「Sechs Lieder im Freien zu singen op.59」から
 6.Jagdlied(Felix Mendelssohn)
「Messe」から
 Benedictus(Paul Hindemith)


指揮者の西真紀先生が
ご自身のブログ「murmur」にて
「全国大会曲紹介」という題で
http://solisten.seesaa.net/article/408034373.html
今年のゾリステン アンサンブルの演奏曲について
詳細な解説を書いてくださっているので
転載許可をいただきました。

 


今年の曲は課題曲がジョスカン・デ・プレ、
自由曲はメンデルスゾーンとヒンデミット。
3人とも歴史的な位置づけも違うし、
様式的なものも全てが違うといって良いと思う。
G2のレーガーを選択すれば、
オールドイツとなったのだろうとは思うが、
G2は男声の比重が大きかったのと、
やはり24人で歌うには私たちには無理があると考えた。

自由曲についてだが、
1曲目はメンデルスゾーンの「狩の歌」。
これが含まれる
「野外で歌う6つの歌 
 Sechs Lieder im Freien zu singen op.59」は、
第3曲の「緑の森よ(森への別れ)」が
邦訳で歌われることも多かったようだ。
(このことは作品41のなかの「ひばり」でも同様。)
「野外で歌う」というタイトルの通り、
無伴奏で野外で歌うことが想定され、
内容も美しい自然や喜び、恋愛、悲しみなどが
のびのびと歌われる。
「狩の歌」は、狩を始める前の森の静けさから始まり、
緊張感が高まっていき、
後半は狩りに向かう心躍る心情が華やかに表現されている。
読めば読むほど恋愛の詩に思えてくるようなところもあり
(恋愛もハンティング、といえるかもしれない)、
歌詞も音楽も飽きさせない。
ドイツ語の早口言葉も大変面白い。
(団員さんの絶句が聞こえそうだが・・・)

打って変わって、ヒンデミット。
この曲は彼の最晩年の作品であり、
初演を指揮した1ヶ月後にヒンデミットは亡くなっている。
彼は「完全な無調はあり得ない」と主張したが、
斬新な和音や半音階を多用し独特の音楽を作り上げている。
私たちが演奏する「ベネディクトゥス」は
「フォーブルドンの形式で」
というサブタイトルがつけられている。
「フォーブルドン」とは14世紀頃の様式で、
定旋律が最上声部にあり、
6の和音が連続する和声進行のことで、
デュファイが始めたとも言われているほどの古い様式。
当然ヒンデミットなので、一筋縄ではいかないが、
アルト以下のパートが奏でるフォーブルドン形式の音楽に
ソプラノが絡んでいく様は大変美しい。
後半は完全なポリフォニー。

音は現代の苦悩を表すような音なのに、
利用されている形式は実は大変古いもの。
3曲通すと、ヒンデミットの後にまたジョスカンが
循環していくような気持ちになることがあるくらい。

神を讃えることはもう2000年近く続いている。
でも様々な戦争が

絶え間なく起こっていることを知る現代の私たちは、
昔のように手放しでただひたすらに神を讃えることは
もうできないのではないか、
神の恩寵を願いつつも無力感に苛まれる自分たちは
どうしたら良いのか、、、などと考えてしまう音楽だ。

さて、メンデルスゾーンとヒンデミットには
ドイツ人である、という特徴とともに、
ナチスに排斥された、という共通点がある。
メンデルスゾーンは7歳の時にプロテスタントに
改宗したユダヤ人であるが、
第2次世界大戦時には彼の曲を演奏することはできず、
有名なヴァイオリンコンチェルトは
作曲者名を隠して演奏されたそうだ。
ヒンデミットはドイツ人でありながら
ナチスの意に沿う保守的作品を作曲しなかったため、
弾圧を受け、スイスやアメリカに亡命を余儀なくされた。

メンデルスゾーンは1809年、
ヒンデミットは1895年に生まれている。
90年の間に音楽は大きく変わったことが
感じられる今度の選曲。
その違いも共通点も味わいつつ楽しんでいただけたら幸い。

 

 

 

西先生、ありがとうございました!

こうして指揮者の方から詳細な解説を書いていただけるのは

とても嬉しいですね。

特にヒンデミットの項は知的好奇心を刺激されました。
古い形式に現代音楽の音、ジョスカンへの連環。
その意味を探ろうとする心。
メンデルスゾーンとヒンデミットの違い、

共通点も面白かったです。

 

 

 

個性的な団員さんが多いゾリステン アンサンブルさん。

合唱音楽だけにとらわれない西先生の豊かな音楽と

今年もがっぷり組み合って、

素晴らしい演奏をしていただきたいと思います!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(明日に続きます)