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コーラス・どーなっツー演奏会感想 その2

 

 


休憩後に男声アンサンブルの
「うたを うたうとき」(信長貴富)を挟み、合同ステージ。

 

 

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合同と言っても全体を30人弱から40人超の
3グループに分ける形。

人数が増えたせいか、
演奏曲が愛唱曲のためか、
3曲とも安定感が増し、音楽のメリハリもちゃんと。
特に2曲目の「夢みたものは……」は少し涙腺に。


そして100人を越える本当の合同合唱。


まず縄裕次郎さんの指揮。
九州からの客演ピアニスト:鈴木めぐみさん。

「今年」
詩:谷川俊太郎 作曲:松下耕


縄さんが演奏前に語ったように
学生たちの実感としての「今年」が響く。
後半「今年は!」のフォルテッシモの後、
ピアノが美しく鳴り。そして
「地平は遠く果てないだろう」のフレーズは
胸に染みるほどの説得力。



続く大村善博さんことぜんぱくさん指揮による

「ヒロシマにかける虹」
詩:津田定雄 作曲:新実徳英


この名曲が最近はあまり演奏されないこと。
そして「ヒロシマ」で演奏することの意義を
語ったぜんぱくさん。
かなり難易度が高い曲のため、
音程に不安が感じる箇所もややありましたが
黎明から虹への「甦るヒロシマ」を熱く体現していました。
最後の「Ave Maria」のなだれ込むカタルシスと言ったら!


ここまでの2曲で、
人数が増えたための安定感や
表現の幅の広さもあるけれど、
やはり指揮者の力を強く感じることに。
学生さんより長く生きているだけあって
1曲を通した音楽の構成。
ここぞ!というところの表現の決め方など。
ちゃんと音楽を聴いたという満足感があります。


そして最後は山本啓之さんが指揮する

「くちびるに歌を」

信長貴富氏の言わずと知れた名曲。
ピアノの前奏後、どんな音楽が流れるか…。


! 
今日、聴いたことのないほどしっかりした、
ゆたかな歌がステージからあふれだす。
学生には不慣れなはずのドイツ語の歌詞なのに。

(…山本さんは、どんな魔法を使ったんだ?)

驚きの中、途切れることなく高まり、
ごん、ごん、と胸を強く打つように迫る音楽。


他の優れた合唱団で、
何度も良い演奏を聴いているこの曲なのに、
いま、自分が聴いているこの瞬間こそが特別であり
かけがえのない演奏であるという想いが湧きおこり、
涙が出そうになる。



この「くちびるに歌を」が作曲されて10年経ち
信長貴富氏が

「歌う人によって、
 この曲の意味を深めていただいている感じがして。
 作曲者にとっても大切な曲になっている」

と語られたように、
彼らが「この曲でなければならない」歌う意味が
和音に、リズムに、旋律に、そして一音に深く宿り、
聴く自分を圧倒する。


  くちびるに歌を持て
  心に太陽を持て
  ひとのためにも言葉を持て


クライマックス。
身体全体を使い、渾身の力で振る山本さんと
それに精一杯応える学生たちの歌が輝き、弾ける!

 

これは、この「コーラス・どーなっツー」だからこそ
成し得た名演だ!
心からの、精一杯の拍手をおくった!




そしてアンコールは縄さんによる思いのこもった「鴎」。




前半の単独ステージでは厳しい感想になってしまったが、
この合同ステージで彼らの実力を
自分が完全に見誤っていたと反省した。

喩えるなら彼らは物凄い可燃物の固まりだ。
火がつけられる前は沈黙しているが、
いったん火がつくと
周囲を焼き尽くす勢いで激しく燃え盛る。

最初にその火をつけるおっさんたちと
大学生という可能性の固まり。





「コーラス・どーなっツー」参加団体

香川大学合唱団
島根大学混声合唱団
就実大学・就実短期大学グリークラブ
広島大学合唱団
広島大学東雲混声合唱団パストラール
安田女子大学合唱研究会Vivid Nova
山口大学混声合唱団




どーなっツー終演から数日が経ち、
普段の練習に戻った団体もあるだろう。
練習には人が集まらず、音も安定せず。
指揮者は要求に応えてくれない団員に苛立ち。
歌う側は勝手なことばかり要求する指揮者に苛立つ。
火は消えてしまったのかもしれない。
あの日の呉での演奏は夢だったと思うかもしれない。


だが、ここから始まるのだ。
今度はおっさんじゃなく、
この文章を読んでいるあなた自身が火をつけるのだ。
何度消えても、どんなに小さくても。


次回私が、あなたの合唱団の演奏を聴く時、
そこに火は灯っているだろうか?

 

 

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