「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2015」(その8)

 






11月21日 同声部門と混声合唱部門の日です。



その前に今回からこの連載を
読み始められた方もいらっしゃると思うので2点。



1)閉会式で

「Ave Verum Corpus」を歌おうという企画


・・・が全日本合唱連盟から上がっています。
詳しい説明、演奏音源、無料楽譜のご紹介は
↓ こちらからどうぞ。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2015/11/07/202914

 

 

 



2)観客賞のご案内


各部門の全団体を聴かれた方による投票で決まる観客賞。
投票方法はツイッターとメールの2通り。
↓ 詳しくはこちらからどうぞ。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2015/11/08/210009

たくさんのご投票をお待ちしております。

 

 

 

 

 




さて、14:05から混声合唱の部の開始です。
ハイレベルな団体ばかりが出場するこの部門。

そんな15団体中、最初の団体は
多彩な楽曲を高い水準で聴かせてくれるこの団体です!




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


1.東京都・東京支部代表

Combinir di Corista


(32名・2年連続出場・61回大会から7回目の出場)





団のHPでは

レパートリーの「品揃えの豊富さ」にこだわるということから、
コンビニエンスストアーにちなんで
「コンビーニ・ディ・コリスタ」としました

という通称「コンビニ」な合唱団。


今年の演奏曲は
課題曲はG2
Auf dem See 
(Johann Wolfgang von Goethe 詩/Felix Mendelssohn 曲)


自由曲はJosef Gabriel Rheinberger作曲
Warum toben die Heiden
(5 Motetten nach Psalmtexten op.40, Nr.2より)

Max Reger作曲 
Trost (Drei Chöre op.6, Nr.1より)


課題曲はメンデルスゾーン、
そしてラインベルガー、レーガーと
ロマン派の曲でそろえた今回の演奏曲。
ロマン派とひとつに言えども3曲それぞれ個性あり。


この選曲についてコンビニ団員さんにお伺いしました。

 

 

今年は初のオール・ドイツロマン派プログラムです。
例年の通り、当団のコンセプトであり、
団名の由来ともなった
「コンビニのような品揃え」
という看板を考えての選曲です。
今なお「初の挑戦」が山積しているので、
徐々に新商品を入荷している状況です。



課題曲の詩は、文豪ゲーテが、
26歳の時に体験した失恋の傷心について
チューリッヒ湖でボートを漕ぎながら
しみじみ考えた時のことを書いています。
60歳も年下でありながら、
交友関係にあった作曲のメンデルスゾーンは、
ゲーテの当時の年齢に近い
28歳の時にこの作品を書きました。
同年代になって失恋の痛みが分かるようになり、
当時の巨匠の心境に近づいてみたかったのかもしれません。
夢想と現実が歌い分けられる
音楽の流れに注目して頂ければと思います。



自由曲の1曲目は、聖書の詩編です。
民の嘲りとその反逆を悲しむ神の様子が描かれています。
冒頭部から激しく
「何故に、もろもろの国びとは騒ぎたつのか!!」
と歌います。
深い悲しみ故の怒りです。
「なぜ、いったいなぜ…?!」
というやりきれない思いを、
私たちも音色と表現で表したいと思います。



自由曲2曲目は、神の慈悲と慰めを歌う、
レーガーならではの美しいメロディーです。
ビロードのようにやや重くまとわりつく質感の和音を、
本物のビロードのような
柔らかな声で歌えればよいのですが…。
先の2曲に通底する傷心と悲しみは、
この曲によって淘汰され、
メロディーと共に昇華される、
というプログラムになっています。
3曲の演奏の声色や表現を使い分けることで、
最後のレーガーを聞いたお客様が、
穏やかな安堵感を味わえるような演奏が
できればと願っています。

 

 

 

 

 


ありがとうございました。

 

先の2曲に通底する傷心と悲しみは、
この曲によって淘汰され、
メロディーと共に昇華される、
というプログラムになっています。

 …という、課題曲も考慮に入れた
一連の流れに感心するとともに
コンビニさんならではの演奏を期待してしまいます。

 

「ロマン派」とひとくくりにできない
3曲の個性が現れた演奏が
きっとコンビニさんから聴けることでしょう!



そして、この全国大会に対する志などがありましたら…には
 

 

長崎は、450年前の多くの殉教者たち、
そして70年前被爆した人々と
その悲しみ、苦しみ、痛みは
決して忘れることの出来ない所です。
ラインベルガーは詩篇2番、
レーガーはミュラーの詩を通して、
共通して語り掛けてくるメッセージがあります。


「主によりたのむ人は幸いである。
 真心のこもった神の愛で守って下さる。」


長崎の地で苦しみながら亡くなった多くの人に捧げたい歌です。

 

 

団員さん、ありがとうございました。
今回の全国大会では殉教や戦争をテーマにした作品を
選ぶ団体がいらっしゃいます。
そして、合唱連盟から閉会式には
モーツァルト「Ave verum corpus」を歌おうという提案も。

歌うということが祈りと同じなら、
コンビニさんの歌も亡くなった方たちへ届くのではないでしょうか。




そしてコンビニ団員さんからは写真も送っていただきました。
・・・今までの雰囲気が一転!(笑)

 

 

 

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添付の写真は、今年6月の合宿で撮影したものです。
へんなひと、いっぱいいますね(笑)

 

 

・・・(笑)。
コンビニさんの「我が団のこの人!」をお願いしたところ

 

 

「我が団のこの人!」企画ですが、
コンビニ団員全員が、
かけがえのない「この人!」で、
一人を選び出すことができませんでした。
せっかくBLOGで紹介していただける機会なのに・・・すみません。
かわりに、長崎でコンビニ団員を見かけたら、
ぜひお気軽に声をかけていただきたいと思います。
きっと、その「この人」と楽しい話ができるはず!

 


上の写真を見ると説得力がありますね(笑)。
みなさん、長崎へ行ったら
コンビニ団員さんに声をかけてみて下さいね!
でもコンビニ店員さんに声はかけないでね!




 

 






続いては母体となった高校合唱団も有名な団体です。














2.北海道・北海道支部代表

Baum


(62名・2年連続出場・64回大会以来4回目の出場)

 


Baumさんは2009年に札幌で創立。
指揮は同声部門で出場の
HBC少年少女合唱団シニアクラスも指揮される
大木秀一先生。
大木先生は札幌の名門合唱部、
札幌旭丘高校の指揮者もされています。

Baumの団員さんは大木先生のもとに集まった人たちで
札幌旭丘高OB合唱団というわけでは無いそうです。
団名のBaumはドイツ語で「木」の意味。
大「木」先生を
慕い集まって作られたことによる団名なのでしょうか。



Baumさんの今年の課題曲はG2
Auf dem See 
(Johann Wolfgang von Goethe 詩/Felix Mendelssohn 曲)

自由曲はR.Cayabyab作曲
「Anima Christi」(キリストの魂)

 

 


Anima Christi (Ryan Cayabyab) - Ateneo Chamber ...




優しい出だしの旋律が繰り返され、高まり、
内面の激情が表れたように頂点に達し、
やがて潮が引くように静まっていく・・・。
何度も歌われる旋律、歌が印象的な作品です。



Baumさんの伸びやかな声で
この美しい世界を表現していただきたいと思います。











続いては混声部門で最大人数の合唱団の登場です。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




3.大阪府・関西支部代表

淀川混声合唱団

 

(75名・5年連続出場・57回大会以来9回目の出場)


 



淀川混声さんは昨年の観客賞で2位。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2015/01/04/191822

自由曲に選ばれた信長先生の
「絶え間なく流れてゆく」の評価が高く、
狂気の中の笑い声などの表現力の凄さに感心しきり、でした。



今年の課題曲はG3
知覧節(「12のインヴェンション」から)
(間宮芳生 曲)

 


自由曲は Jozsef  Karai作曲
「De profundis」(深き淵より)


…名曲です!
改めて聴き直し、緊張感満ちる中、
さまざまな要素があり、
繊細さも要求される曲と感じました。




指揮者の伊東恵司さんにお尋ねしたところ


課題曲と自由曲で違うタイプの曲を選びました。
声の使い方、心の持ち方、、
合唱の可能性のいろいろを試したいと思っていました。

 

なるほど。
知覧節と「De profundis」では
全くタイプが異なる曲です。
淀川混声さんの高い表現力が
それぞれの楽曲の魅力を引き出し
きっと説得力ある演奏をしていただけると思います。


さて、淀川混声さんの「我が団のこの人!」ですが…
ピッチャー(ピッチパイプを吹く人)であり
男声技術チーフである、
作曲家:北川昇さんに書いていただきました!


男声最年長・ベースのOさんは、
東京に単身赴任しながら
(さすがに毎週ではありませんが)
よどこんに通っておられます。

学生時代に能をやっていらっしゃったこともあり、
千原英喜作品を始めとする「日本風」の作品での
雄叫びや語りの迫力やクオリティが素晴らしく、
団員一同いつも感動しております。
過去のコンクールや当団演奏会でも
度々活躍されていたので、
ご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。
練習の時から全力で、
初めて合わせた時には
団員からどよめきが起こるほどのド迫力でした。

また、そういった「飛び道具」の活躍だけでなく、
音楽に対しても大変真摯で、
演奏会前はいつも誰よりも早く
全曲暗譜して練習に臨まれます。
その姿勢と温厚なお人柄で、
皆から慕われ、尊敬されるメンバーです。

 


北川さん、ありがとうございました。
淀川混声さんの今までの演奏で、
特に男声ソロの迫力ある声に何度も唸ったことがあり、
なるほど、そうだったのか!と納得する気持ちです。
東京からの遠隔地団員でも、
全曲暗譜で練習へ臨む姿勢が素晴らしいですね。

 

 

 

 

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昨年の全国大会の写真だそうです。


 

 

 

 


最後に。
いま、コンクール、合唱界について
思われることをご自由にお書きいただければ…
と、お願いし書いていただいた
伊東さんのご提言です。

 

 

 

もうこれは本当にたくさん書いて
疲弊してきました。
語るより実践ですから、
私が今後10年間でどのような動きをしていくか
ということが重要でしょうか。
私は、10年間上位の金賞しかとらなかった
「なにコラ」については出場を控え、
自分と混声合唱団の修行のために
コンクールにはまだ出続けておりますが
(なにコラが修行が終わったということではなく、
 修行の形態を変えたということ)、
決して永続的に出場することは考えていません。
もろもろの改革のためには
十分にそこでいろんな気持ちを味わった上で、
利害が絡まない形での改革推進が
必要なのかと思っています。

繰り返しになりますが、
やはり私たちはコンクールの結果に
一喜一憂しすぎるべきではないし、
そんなことをしている間に、
レベルだけは高いという時代も終わって、
アジアの中でも合唱レベルは
中位に下がってきてすらいるように思います。
世界は広く音楽は深い。
そういったことが実感出来る方式のほうが良いです。
そういう意味では、少なくとも大人の部門は
フェスティバル方式の
国際コンクールにすべきではないでしょうか。

 

今年5月にブルガリアとコソボに行きましたが、
世の中は動き、私たちはこの激動の世界の中で
「歌に何が出来るのか」ということについて
知恵を出さねばならないのではないかと思っています。
合唱は「一人では出来ないこと」
「言葉を持っていること」が
最大の特徴である音楽のジャンルです。


つまり文化を背景にし社会性を備えていると
いうことでもあるわけですから、
それを生かした活動の展開を
考えていきたいと思っているのです。
合唱人口の減ってきている育成世代に
もっと教育的効果(情緒性や社会性の醸成)を意識して、
もっと力を入れるべきではないでしょうか?

最近では、議論の始まっている
小学校部門のコンクールについて、
松下先生や戸崎先生と議論の場を持ち、
子ども委員会としても新たなコンクールへの
建設的な提言をしております。
これについては、
また発信していきたいと思っています。

 

 

伊東さんからはこれまで何度も
現状を広く見据えた上で、
合唱界、コンクールについて
鋭いご提言をされてきました。
また同時に、非常に優れた実践者としての
説得力もお持ちです。

今年で最後となるこの連載で
伊東さんのご提言を掲載させていただくのも
これで最後になりますが、
今までのご提言を含め、
これから先の合唱を見る視点にしたいと思っています。

伊東さん、今まで本当にありがとうございました。










(明日に続きます)