山田和樹指揮:バーミンガム市響公演感想

 

 

山田和樹指揮、バーミンガム市交響楽団公演。

6月23日(木) 倉敷市民会館。

 

 

 

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日本ツアーの最初ということもあり気合い充分。
若さあふれる、溌剌、清冽な、楽しい音楽の時間でした。
良かった!



全体に明るい響きのもと、
音色の対比と融合を意識する演奏だったかなあ、と。
ラフマニノフの3番は最初こそチグハグに聞こえましたが、
徐々にピアノとオケが噛み合い、
たっぷりとロシアロマンの華麗さと美しさを聴かせてくれました。


ベートーヴェンの7番は第3楽章から
ノリノリなヤマカズダンスもあり(笑)、
ベートーヴェンの茶目っ気さえ感じさせる演奏。
クライマックスへ向かい、テンション全く落とさず、
ぐいぐい引っ張る、進む、突っ走る!
そりゃブラボーも出ますわ~、な楽しい音楽!

アンコールのウォルトン「ヘンリー5世」より
「彼女の唇に触れて別れなん」は
そのベートーヴェンのテンションから一転して
しみじみと優しく、いぶし銀に光る演奏を。



自分の感情と音楽のパレットから、
「これが美しいんだ!」「これがカッコいいんだ!」
…と差し出してくれる指揮者がやっぱり好きだなあ、と。


細密な風景画のジグソーパズルに
ピースを次々とはめて完成じゃなくて、
ジグソーパズルから匂いや音や風を感じさせてくれる。
そんなイメージの指揮者が好きです。
ヤマカズ氏はそんな指揮者でした。


指揮者も演奏者も、
「美しさ」の多彩なパレットを持つのはもちろんだけど、
聴く側もそれを持つことの重要性を感じた演奏会でした。
一音を、単なる一音としてしか捉えられないか。
その背後にある、
無数の音の中から聴こえてきた一音と感じるか。

美しさを指揮者と歌い手が共有していれば、
合唱も、今日のオケの一番美しい瞬間に比類する、
いや、越えるものができると感じたのは収穫でした。
音楽は繋がっていて、
その豊潤さをまだ自分が理解していないだけなのかもしれない。
聴く自分もジグソーパズルに
ピースがはまっているかどうかの確認で満足しないように。



演奏終了後、学生券で入ったであろう女子高生が友達と
「良かった! …すごく、良かった!」
と話しているのを聞いて。


自分の中にさまざまな美しさを
増やしていくように生きていきたいものだと。
遥かに年長のおじさんでも。

 

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