第32回宝塚国際室内合唱コンクール感想 その3




さて、近現代部門!
…の前に

12:25から宝塚音楽学校本科生の演奏でした。

 

 

 


まあ相変わらず素敵だったんですが。
(例年より胸声気味だったかな?)
ここでけっこう困ったことが。

…というのは13:05から近現代部門開始のため、
本科生の演奏を聴いた後では
正味15~20分ほどしか昼食に使える時間が無い!

 

 

 

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宝塚音楽学校本科生の演奏が終わったらすぐ近現代部門!

 

 

 


いつもならお気に入りの定食屋へ行くはずが
今回は近所のスーパーに並び、
冷たいそばを掻っ込んですぐホールへダッシュ!
…というなんとも味気無い昼食に。

終了時間の関係などいろいろ事情はあるのでしょうが
できれば例年のように
50分以上は昼休憩を確保して欲しかったなあ・・・。
(じゃあ本科生の演奏を聴かなきゃいいだけでしょ?
 というツッコミは受け付けません!)

 

 


近現代部門の感想です。
13団体が出場。
賞を獲得した団体と賞外で印象に残った団体の感想を。


賞外では5番目に出場の


Ensemble Mikanier
(和歌山・18名・混声)


ミサ曲 第1番「日本から」より
「Gloria」「Sanctus-Benedictus」
(名島啓太作曲)


まず阪本健悟先生のiPad楽譜が目を惹きました(笑)。

そして指揮者という印象が強い名島先生の作品。
「日本」という題名から千原先生風のジャポネスク的音楽?
そんな予想を覆して明るく美しくポップス要素もある
非常にキャッチーな音楽が展開します。
全然「日本」っぽくない?!


ロマン派部門と同じように
テノールとソプラノの発声にやや疑問を持ったり、
音程の不安定さに惜しいな…と。
しかしQui tollis peccata  mundiからの
心からの優しさ、温かさはMikanierさんの真骨頂。
ゆったりしたテンポから加速していく箇所なども良かったです。

2曲目の「Sanctus」はワルツのような趣も?

全曲は聴いていませんが
この2曲は並べて同じような曲に聞こえてしまったのは
コンクールの選曲として残念だったかな。

しかしこの曲のキャッチーさは
一聴して「やってみたい!」と思う方も多いのでは。
「良い曲!」と惚れ込んで演奏する
Mikanierさんの魅力があふれた演奏でした。





同じく賞外で11番目に出場の

Orphe Chorus
(大阪・20名・混声)



Salmo150
(E.Aguial)

Magnificat
(E.Ešenvalds)

Christus est natus
(D.Močnik)


山口英樹先生の指揮で。


全体に良く練られた発声で
流麗な音楽を指向されている印象。
ただ、最後のモチュニクなどはスピード感あり、
キメのハーモニーも良いのですが
その流麗さが仇になり、
場面転換などの鮮やかさが出ずボヤけてしまったような。

ここまで!と明確に線を引いた世界の中の表現なので
もうひとつ、殻を破った表現が欲しかったです。
ステージ上で完結された世界のため
観客までわずかに届いていない気がしました。


しかしまあ、それは私個人の好みですね。
エセンヴァルズはその磨かれた発声による美しい響き、
哀感あるフレーズの魅力に浸らせていただきました。

今回は海外勢のレベルが非常に高かったので
例年だったら銅賞だったかも?






銅賞は2団体。




10番目に出場の

清教学園中・高等学校合唱部
(大阪・20名・女声)


Věneček
(Z.Lukáš作曲)

Deus ultionum
(L.Gyöngyösi作曲)

双子座のあわきひかりは…
(鈴木輝昭作曲)


安藤浩明先生の指揮で。


ユース団体は他に複数出場していますが
ひとつの高校、中学からは唯一の出場団体。
中学2年生から高校2年生までということ。

最初は10人ほどでステージに上がり。

それでも第一声からその豊かで純粋な声に驚いた!
ルカーシュの「花の冠」は愛唱曲にもふさわしい美しい曲。
爽やかで愛らしい表現に魅了されました。

ジェンジェシからは人数が倍に。
手拍子、タンバリンを激しく鳴らす
速いテンポの難曲を見事にこなし。

最後の鈴木輝昭作品は
フレーズからの音響(サウンド)への意識、
変化がとても良かったです。


良いソプラノを筆頭に的確な音楽表現。
制服から判断して中学生は2人だけ?
関西の学生団体の層の厚さを感じさせられた団体でした。




同じく銅賞。13番目、最後に出場した

G.U.Choir
(京都・20名・混声)


Beatus Vir, Sanctus Martinus

Dwa motety wielkopostneより
Crucem tuam adoramus, Domine
(P. Łukaszewski作曲)


山口雄人先生の指揮で。


静寂から音が生まれる。
フレーズのうねり、力感が巧い。
各パートのバランスも良く考えられていて、
その結果の音響表現も充分。
音楽の場面転換も素晴らしく
その都度、歌い手の感情も
見事に変化するのが見えるよう。あざやか!

ピアニッシモとフォルテッシモの対比。
最後、声の解放というニュアンスがブラボー!

 


2曲目、はじまりのフレーズの美しさに、じーん・・・。
フォルテッシモで男声は聴き合わず吠えてしまったかな?
それでも全体の音響はとても良く、
ソプラノのフレーズがそっと入る箇所などは
温かい光がホールに射し込むようでした。

長崎で聴いた時と同じように
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2015/12/11/211937
声と音響の関係、
そして音と感情をどう結び、どう聴く人へ伝えるか?
そういうことをよく考えている団体。


「巧い!」という団体はそりゃいっぱいありましたが
感情を揺り動かされたのはKamērとこのG.U.Choirだけ。
銀賞、金賞へ昇るために必要なものは
私などより指揮者、団員のみなさんがよくご存じでしょう。

がんばってください。
また、聴かせてもらうのを本当に楽しみにしています。




(つづきます)