合唱団訪問記:宇都宮室内合唱団ジンガメルさん その2

 

 

合唱団訪問記「宇都宮室内合唱団ジンガメル」さんの完結編です。

 

合唱団訪問記の再掲については前回の記事をご参照ください。

bungo618.hatenablog.com

 

 

 

 

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「合唱団訪問記」

 第1回「宇都宮室内合唱団ジンガメル」さん。

 <その2>

 

 


 うーむ。栗山先生、さすがにお疲れのようだ。

 早速、長机を半円状に、指揮者を囲むように並べる。

 曲はモンティヴェルディの「アリアンナの嘆き」
 見学だけのつもりだったのが、パートを聞かれ
ベースパートの方に呼ばれ、団員と団員の間に挟まれる!
 しかも楽譜を隣の人が見せてくれる!!

 う~、これって「歌え!」…ちゅーことですかい?

 ノースでも、今まで入っていたどの合唱団でも
初回の見学者には歌わせないよなあ(笑)。

 でも、これってフレンドリーな印象でいいかも~。



 栗山先生のお話は、
まずベルギーを始めとするヨーロッパの話にはじまって。
 バロック音楽の話。

 「バロックは若いうちからやらないとダメだね。
  よくあるでしょう。バッハとかで

  ヒョヒョヒョヒョ~~』

     ↑ヴィブラートのメリスマ(笑)

 とかやってるの。
  あんなの聞いてると、『バロック、何がいいんだ?!』って
  気になるよねェ」

 「だから今、学生たちにはバロックやらせてるの。
  ホント、若いうちから、やらないとダメなんだよね。
  僕も年とってから勉強はじめたから、相当苦労した」

 曲の指揮を始めると、
先生の今まで疲れて見える雰囲気が一転して
『しゃん!』となる。(サスガ!!)


 そういう言葉は御本人、一言もしゃべらなかったけど、
栗山先生の音楽って
「音楽の推進力」をスゴク感じさせる。

 その場にとどまらずに、
前に、前に音楽が進むエネルギー、と言うのかな。
 指揮もそうだけど、団員に欲求するものも、それがビンビン伝わってくる。

よく言われていたのが、イン・テンポ、と言うことと
次のフレーズに持って行く、「つなぎかた」。
 1つのフレーズを「収めすぎない」、と言えばいいか。

 練習の後半は、リズムを叩き、
指定のテンポを指示して終了!

 きっと、これからの合宿などで、内容を詰めていくのだろう。

 毎週練習に来られない、と言う事で
「音楽の設計図」を団員に理解させようとする姿が興味深かった。


 練習の間に
 「合唱指揮者に向いている職業」の話題で、
栗山節が炸裂した事もあって(笑)、とても
刺激的で印象深い練習だった。
(すいません!内容は自主規制でっす!!)


 いやー。18時から練習がはじまって、21時近くになるまで
ほとんど休憩ナシ!
 しかも休憩後の練習は10分で終わるし(笑)。
 (休憩中は、ベルギーでの写真を女性団員に見せる栗山先生…)

 音楽監督はもちろんスゴイけど、
団員のマジメにひたむきに音楽へ取り組む姿勢が、
「あ~、やっぱり良い団なんだなあ」と感じましたね。
(団員には、学生も多いけど、教員の方も多いそうだ)

 6/9の演奏会は残念ながら聴けなかったけど、
その次の日の栃木県合唱祭でも、
「北極星の子守歌」(ジンガメルさんの委嘱作品である!)を
隅々まで神経の行き届いた演奏で感動させてくれたし。


 宇都宮、という東京からやや離れた都市でも
こんなに立派に文化を発信している合唱団があるんだなあ、と
改めて感心させられた文吾でした!




 <余談ですが・・・>

 練習後、一緒に帰る事になった男性団員が。
これが何と、札幌出身の同年代の人で(笑)。
 駅前の居酒屋で色々話を聞いたのだが。

 団員のMさんは
合唱は中学の時に助っ人で合唱部の手伝いをやったぐらいで、
高校、大学ともにラグビーなどのスポーツをやっていた
バリバリ体育会系の人、だったのだが。

 就職で札幌から、ここ宇都宮に転勤になり、
近所にある、というだけで
宇都宮大学の合唱団の演奏会を「たまたま」聴いたところ。



             「!」


 ・・・と思ったMさんは、
同じ指揮者が振る一般合唱団
「宇都宮室内合唱団ジンガメル」に
ほとんど合唱未経験で入ってしまう。


 「もう、あれから7年になりますよ。
  中学の時の音楽の先生に伝えたいなあ。
  『いま、合唱団に入ってるんです!』って。
オドロクだろうなあ~」

 そう言って笑うMさんの顔を見ながら
(いい話だなあ・・・)と思った。

 自分の合唱のキッカケとなった
幼なじみの女の子の中学生の時の顔を思い浮かべた。


 ビールのジョッキを傾けると、しみじみ美味かった。

 

 

(おわり)

 

 


 

 (追記)

  「宇都宮室内合唱団ジンガメル」さんは、2002年の8月、
北海道の釧路と札幌に演奏旅行をされた。

 演奏旅行終了後、団員のMさんから、こんなメールを頂いた。(抜粋)

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 初めて文吾さん とお話しされたときに話したこと、
 何気に言ったことですが、
 その後の合唱団訪問記に書かれたことで、
 私自身の心の中に残っていて、
 そして今回の演奏会でそのことが実現致しました。

 中学校の合唱部でお世話になった先生に連絡が取れて、
 二人のうち、お一人には(札幌での公演に)聴きに来て頂けたことです。
 その先生は校長先生までされて引退されておりました。

 もう一人の先生はご結婚をされて今は主婦をする傍ら、
 ピアノを教えたりしているそうで、
 当日はどうしても来られず花束を贈って頂けました。

 来場者は確かに少なかったのですが、文豪の部屋掲示板での
 Ken5さんの感想のように、
 少なかったこと以上に価値のあるものを私たち演奏する側も、
 演奏を聴いて頂いた側にも得られたのではないかと思えました。



  「出会いって本当に素敵だな」と感じた今回の演奏旅行でした。

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 贈られた花束には

 「バレー部のMくんですね」

 ・・・と中学生時代を覚えている旨のメッセージが
 お祝いの言葉と一緒に添えられていたそうです。

 Mさんの感じたように、出会いとは素敵で、
 本当に素晴らしいものだと、
 私も思います。