合唱団訪問記:合唱団MIWOさん その2

 

 

 

合唱団訪問記、合唱団MIWOさんのつづきです。

 

 

 

 

 

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「合唱団訪問記」

第3回「合唱団MIWO」さん訪問記

 2話目:大谷先生の練習風景をお届けします

 

 

 


 大谷先生の指示は発声から音楽史、曲への解釈、と
多岐に渡るもので。
 でもあんまり、基本的な事を言わないせいか
 (MIWOができているから、ですね)
 曲への解釈の言葉が目立つかな。

 いつぞやの「ハーモニー」誌で「サウンドを重視する」
…という大谷先生御自身の文章があったけど
前に先生が指揮する東京混声合唱団の演奏を聴いて、
それを実感した。

 モンテヴェルディならモンテヴェルディらしい『音』があるし
 メシアンならメシアン、武満なら武満の、独特の音世界を
最初の1声から感じさせられる希有な指揮者なのだ。

 だからロック・スターのような(笑)いでたちは別として、
「大谷研二」という個性を前面に出す指揮者ではない、ということ。
 たとえば京都エコー:浅井先生の音楽を聴いて
 「やっぱり『浅井節』だなぁ」…と感じるのとは違うという印象。
 (もっちろん『~~節』も好きだぜ、オレは)


 「イタリアの曲なので『ハデ』に!!」
との指示や、言葉の歌わせ方で
 「ちょっと今の箇所、『フランス語なまり』じゃない?」
ユーモアたっぷりに言ったかと思うと、
パレストリーナとモンテヴェルディの違いに言及し、

 「パレストリーナは『興奮させてはいけない音楽』。
  それと違ってモンテヴェルディは『興奮を生む』、
  音楽の繰り返しや不協和音を使っているんだよね」


  さらには低い音域で苦労しているアルトに向かって
  「低い音を出すコツはね。『男』になることなんだよ」(笑)
  (大谷先生御自身、見事なカウンター・テナーなので
   女声の発声の見本を、瞬時に表わせるのはスゴイ!)

 14時30分ごろに1回目の休憩。

 子供を練習場所に連れて来ることについて。
 団員の方々に話をうかがう。

 MIWOでも最初は、お祖母ちゃんやお祖父ちゃんに
預かってもらっていたが
なかなか難しい状況になる団員もいたそう。

 ベビーシッターを雇う、という意見も一致せず、結果。

 「子供が練習場所にいても、
  できるだけ、気をとられないようにしよう。
  歌っている親を見て、
  子供も何か感じるものがあるかもしれないし。
  歌う方も、どんな状況でも歌える、という
  集中力が付くかもしれないから」

 ・・・となったそうだ。

 う~ん。確かに「集中力」!
 練習を見てると、感じるものがあったぞ。

 日本のコンクールと比べ、はるかにアクシデントが多い。
と言われる外国のコンクールでMIWOが成功したのも
子供たちがいたからかな?!


 「目を離すとキケン」な2~3歳のオコサマは、
こうして練習場所に入れているが、少し年長になると
公民館内の談話室のような所で、
いっしょに本を読むように言い聞かせたり、
ゲームをさせていたり。
 子供が多い時は親御さんが練習中に、
交替で面倒を見たりしているそうだ。
(あんまり騒がしいと、実の親じゃないのに叱ることも!)

 オコサマ方も6人ぐらいになると、固まって遊ぶ子が多く、
それほど騒いだりするわけでもない。
(でも、どんなppで練習していても、
 いつも子供の声が聞こえてるんだけどね(笑)

 大谷先生も慣れっこで、
休憩中はコドモの一人をあやしたり、遊んだり!



 14時45分からはピツエッティの「2つの合唱曲」
 8月26日に岐阜で行われる東京混声合唱団公演の
賛助で、MIWO単独ステージの曲。

 これは、結構練習を積んでいるようで。

 大谷先生今度は「大人の声」を要求。
 「詩が『ギリシャ』の世界だよ!」と、
ねっとりと深い声を求める(笑)。
 また、その一言で変わっちゃうんだよなあ、歌が。

 MIWOって、曲ごとに演奏のスタイル、特に声、を
変化させるのが、とても上手な合唱団である。

 かなり優れた団体が、
邦人作品でもルネッサンスでも現代音楽でも
あまり声が変化せず、同巧異曲な事が多いのを考えると
MIWOはとてもユニークな団体だ!
(いや、そもそも「声を変えよう」
 …という意識がある団が少ないのかもしれないな)


 先程は「指揮を見ていないのに、なぜ対応できる?」
って書いたけど、よくよく団員を見ると、音楽の一瞬の合間に
指揮を見、すぐ楽譜に目を戻している。
 同じ所を何回かやると、楽譜から目を離し、
指揮を見る時間がどんどん長くなる。
 その様子が

 「ここまで『歌いたがり』になる欲求は、どこから湧くのか?!」
というほどの歌とあいまって、ホント感心してしまう。
 「歌いたがり」って言っても、
よくいる「声自慢」が、周りと関係なしに声を張り上げるのではなく
ちゃーんと絶妙なアンサンブルを心得た上で、
とってもイキイキと歌っているのだ。

 大谷先生の指導も、決して頭ごなしに指示するワケでもない。
 団員を愛称で「~~ちゃん」と呼ぶ事もモチロンだが
 (また団員とのかけあいが、和気あいあいとして楽しいのだ!)

 「うん。それなら、こういった感じで歌ったらどう?」…と
提案をするように言い。
 またそれを受けてMIWOが表現を見事にふくらます。
  さらにそれを受けて大谷先生が

 「イイね!」とすかさずホメ、

 

 さらにさらに深い表現を要求し、

 

 音楽が膨らみふくらみあって・・・。




 音楽的に同等な仲間と、高度な音楽を「楽しんでいる」
という雰囲気がとってもあった!!

 横にいるyoshiと共に
 「く~~~っ、歌いてええええ~~~~!!!」
とジタバタ(笑)。


 こんな指揮者、こんな合唱団。滅多にないよね?


 ピツエッティのこの曲も、その結果
1音に色々なニュアンスのある
たいへん官能的で「オトナの音楽」に仕上がった!
 曲のニュアンスを表現するのに、
マーラーの5番、第4楽章の
「アダージェット」を引き合いに出した後の
音楽なんて良かったなあ・・・。(うっとり)

 ピツエッティ2曲目の最後。
 ベース上と下の人がCと下のFを鳴らすと
倍音の関係で誰も歌ってない上のGが聞こえた!
人間の声って不思議・・。いやMIWOが不思議なのかも(笑)。

 この日の練習は、1月以上先の本番のための練習だった。
 しかし、こういう書き方でしか伝える事ができないのは残念だが
この練習の演奏を、そのままコンクール全国大会に持っていっても
まず間違いなく金賞は確実だろう。
 それだけの演奏を、練習でしている、と言うこと。

 

 

 



(つづく)