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合唱団訪問記:VOX GAUDIOSAさん その2

 

 


VOX GAUDIOSAさん訪問記、その2です。

 

 

 

 

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「合唱団訪問記」

 「VOX GAUDIOSA」さん訪問記その2

 

 




 「最後の練習、ということで曲の成り立ち方を説明しようか」

 曲全体の区切りから、構成の話になり、
劇的、という事でヴィクトリアの「アヴェ・マリア」の話になり、
最後はパレストリーナの様式の話になる。

 1回止めると、松下先生、2分ぐらいはたっぷり話す事が多い。
 2分って、かーなり長いよ!
 今度、指揮者が止めて、指示を出す時間を計ってみると
良く分かる。(イジワル?)

 半分の1分程度でも
 「もう、歌わしてくれよー。 話、なげーよお」
 ・・・って顔になるのは、多分間違いない。
 (もちろん、練習中、2回、とかなら問題ないと思うけど)

 しかし松下先生の話は、なぜか飽きないんだよなあ。
 話題の変え方が意表をつき、それぞれの内容が深い、と言うのもあるが。
 こっちは歌わないで見学しているだけだというのに、話に聞き入ってしまう。

 あんまりこういう言葉を使うのは好きじゃないけど
 『オーラ』というか、人を惹きつける魅力がとてもある感じ。

 指示も 「こうしろ!」・・・という印象ではない。
 「23小節目で終止があるよね。
  これを(観客に)感じさせるためにはどうすればいいか?」

 条件を与えた後で、歌う側に問いを投げかけ、
そして説明する、というような。

 さらに、ちゃんと「なぜそうするか?」というのを理論的にしっかり説明する。
 (例えば55小節からの偽終止から、トニック・ドミナント・サブドミナントの
  和声学でのそれぞれの説明をして、各フレーズの音の役割を
  解説する、というような・・・)

 23小節の「ita」から、しばらく終止がない3拍子になり、
これがキリスト教での「三位一体」を表す。

 そしてanimaになってから3拍子が崩れる。
 この時、3拍子で静かに静かに蓄積されたエネルギーが
「anima」で解放されるように!…などなど。

 言葉からのアプローチも「ad te, Deus(~へと あなた,神よ)」
 「te としゃべって、そのままDeusを歌うんじゃなくて
  Deusでちゃんと舌を使って、『神よ!』と言い換えるのが大切」
 ・・・と言う様に、団員に発音させるのも忘れない。


 聞いていて、ほー、と感心してしまう説明をいくつもいくつも。
 引き出しが多いなあ!…と思ってしまう。

 印象的だったのは、そうやって理論の側から説明する指導、というのは
どうしても無味乾燥で、いわゆる「血が通っていない」指導になりがちだけど
松下先生は違う。

 説明自体も「理論のための理論」…ではなく、
「生きた音楽表現」をするための理論の説明、に思えるし、
歌わせる時の指揮や一言はパッションあふれるものだ!


 理論と感情表現、ということで、とても記憶に残っていた
松下先生の言葉を(ちょっと長いが)引用すると。

 松下先生
 「パレストリーナの書法(様式)は強制力があるけれども
  “歌う“という意志の発露を妨げるものではない。

  しかし、秩序を守らない表現はただのワガママ。
  その逆に、秩序を守りすぎると『アカデミック』な演奏になりすぎてしまう。

  『1mmズレていても危ない』

  ・・・そういう『平均台の上でのギリギリのバランス』の
  音楽を、目指したい」

 

 さらにその『“歌う“という意志の発露』を引き出す
「感情表現」も熱いもので。

 「Sicut cervus」後半の各フレーズを1回ずつご自分で歌って、
それぞれその後に

 「悲しみや苦しみをぬぐい去ってくれる」

 「優しく …抱いてくれる」

 「それでいいんだ! ・・・一生懸命生きている事への肯定ですね」


 と、曲のイメージを、心から語り、伝えることも忘れない。


 念入りな理論の説明と、熱い感情表現。
 フランクに友達と接するような、笑いを多く含む団員とのやり取り。
 それと反するように国立音大「松下ゼミ」の生徒に接するような
『先生』の顔。
 (松下先生は国立音楽大学の音楽教育科の先生である!)
 団員の方々も大変リラックスしているが、
それでいて非常に音楽には真摯で。

 ・・・対極するものが同時に存在する、不思議な空間だ。
 やっぱりこれは、松下先生でないと成り立たない時空なのかも、
と思ってしまうような。

 歌わせ、曲の終わりに


 「神を見て!」


 …と視線を動かさない指示で、この曲の練習は終了、休憩。
 いつのまにか14時45分にもなっていた。

 先ほどの副団長、しまこさんにお聞きすると。
 女性団員の約半数は国立音楽大学 音楽教育科出身の方、
ということ。
 
 「VOX GAUDIOSA」の元になった団体のひとつで
松下先生が指導された他大学合唱団出身の方は、
今は全員の約1/4人ということだ。
(現在は、いろいろな職種の社会人や、別の大学からの
メンバー も増えているそう)

 

 

(その3へ続く)