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観客賞スポットライト 大学ユース部門 その1

合唱




昨年まで「全国大会あれやこれや:出張版」という題で
室内合唱部門、混声合唱部門の
全国大会へ出場される団体をご紹介していました。

大学ユース部門、同声合唱部門を担当されていた
ぜんぱくさんが連載を終えられるということもあり
私もこの連載を終わらせることに。


そして今年から「観客賞スポットライト」と題し、
新しい企画を始めたいと思います。


観客賞とは…?
4年前から当ブログで始めた観客賞。
各部門の、全団体を聴かれた方の投票で決定する賞です。

この観客賞の意義を説明すると
審査員による順位、賞の決定は
音楽のプロフェッショナルたる審査員が
それぞれ真剣に誠実に演奏へ向かい、出された結果であり、
尊重しなければならないと思います。

しかし、「傷はあるけどあの演奏凄く良かった!」
「コンクールに向いてない選曲はわかるけど涙があふれた!」
…などという声を多く聞いていた自分は、
「じゃあ、観客による投票を行ったら
 演奏への新しい価値観が生まれるのではないか?」
と考えました。

さらに「この賞が銅賞だったから私は投票する!」…のような
判官贔屓を無くすため、投票は審査結果前に締め切っています。



この観客賞に関連付ける形で、
各部門から数団体にスポットライトを当ててご紹介するのが
この「観客賞スポットライト」という企画です。



それでは始めましょう!
今年の全国大会は鳥取市。
とりぎん文化会館の梨花ホールにて
11月19日、20日に行われます。

 合唱倉庫さんから
http://choral.nusutto.jp/
全国大会へ何回出場されたかという
データをお借りしております。
ありがとうございます!

 

 

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(岡山で開催された中国大会でいただいたパンフレットなど)

 

 

 

 


大学ユース部門は19日の午前10時から開始の予定です。
10:08出演予定のこの大会のトップバッターは…

 

 


1.兵庫県・関西支部代表

 

関西学院グリークラブ

(男声94名・8年連続出場・第59回大会から10回目の出場
 第1回大会からは24回目の出場)


課題曲はM2 Fölszállott a páva 
(Ady Endre 詩/Kodály Zoltán 曲)


自由曲は千原英喜作曲
平家物語による男声合唱のためのエチュード「那須与一」。

屋島の戦いをダイナミックに描いた曲。
最後に尋常小学唱歌があるのも面白いです。
千原先生からは
「男声合唱ならではの雄渾華美の音絵巻となるよう願っている」。

関学グリー、昨年の観客賞座談会でも
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2015/12/05/215830
 

フォルテッシモも力任せで張り上げていなくて。
それは抑制しているということではなく、
関学ならではの上品さなのでは。


そんな感想が出ていました。
いわゆる「関学トーン」で
今年も観客を魅了していただきたいものです。








2.新潟県・関東支部代表

 

新潟大学合唱団

(混声46名・2年連続出場・第59回大会から7回目の出場)

 


課題曲はG4 角を吹け(「印象」から) 
(北原白秋 詩/市原俊明 曲)

自由曲は
1963年生まれのスイスの作曲家Ivo ANTOGNINIによる
「Dream Land(夢の国)」
「There will come soft rains(やわらかい雨がやってきて)」

「There will come soft rains」は
ジャズ風味のリズム、ハーモニー、
口笛が効果的に使われたオシャレな曲。

昨年の座談会では

全体的に演奏が温かく爽やかでしたね。

指揮者の先生が全部作ってしまう演奏じゃない、
自分たちの気持ちが入った演奏でした。

 

…などと名島啓太先生がコントロールし過ぎない
大学生の等身大の音楽を聴かせてくれる新大合唱団。
自由曲の2曲もコンクールっぽくない雰囲気なので
今年も楽しみにしております。








3.広島県・中国支部代表

 

ひかりカレッジクワイア

 

(混声39名・2年連続出場・2回目の出場)

 


課題曲はG3 むらさきの(「Little by Little」から) 
(吉行理恵 詩/池辺晋一郎 曲)

自由曲はポール・エリュアール詩、信長貴富作曲
「ポール・エリュアールの三つの詩」より
「私は孤独ではない」
「メッセージ」


ひかりカレッジクワイアはコンクールのために
広島の大学生で昨年結成。
そしてすぐ全国大会に出場されたのですが
昨年は課題曲G1、自由曲の松下耕先生「今年」で
とても良い演奏をされていました。
特に「今年」は繊細な発語と思いがこもった演奏で
「今までに聴いた『今年』の中で一番良い!」と思ったほど。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2015/12/11/211937


詩人・エリュアールと言えば
プーランク「人間の顔」の「自由」が有名ですが
エリュアールのナチス支配下のフランスと
ファシズムに傾く、現在の日本の時代的符号を感じ、
作曲されたと信長先生は書かれています。

作曲を学ばれたこともある指揮者:縄裕次郎さんの
楽曲を掴む力と共感性が高い演奏で
今年も聴く人の心に響く演奏を期待しています。





さて、今回のスポットライト!




4.福岡県・九州支部代表

 

九大混声合唱団

 

(混声133名・2年ぶりの出場・第40回大会から15回目の出場)


課題曲はG2 Szép könyörgés 
(Balassi Bálint 詩/Kodály Zoltán 曲)

 

自由曲は原民喜:詩、信長貴富:作曲
「廃墟から」より
「第一章 絶え間なく流れてゆく」

 

 

団員の岩崎さんからメッセージをいただきました。
まず133名という大学ユース部門はもちろん
この鳥取大会全部でも最大人数の九大混声合唱団さんについて。

 

1,団全体のこと


九大混声合唱団(以下、九混)の特徴は、
良くも悪くも、
大学合唱団では最大規模の人数を有していることにあります。
その多さから大会の待機中や控え室、曲間の移動、
そして飲み会に至るまで、
存在しているだけでうるさいと言われることもしばしば。
そんな明るい賑やかさに惹かれ、
経験の有無を問わぬ豊かなメンバーが山ほど集い、
皆で「歌うヨロコビ」を味わいながら日々練習に励んでいます。
もはや家族とも言える仲の良さと温かさも、
私たち九混の強みのひとつかもしれません。

 



続いてコダーイに信長貴富先生という選曲について。

 

 

2,コンクール曲のこと


課題曲は、九混の最大の強み「人数」を
ふんだんに生かし圧倒できる曲だと思い選びました。
最初のユニゾンに始まり最後のAmenに至るまで
壮大でダイナミックな演奏をすることができます。
もちろんマジャール語という未知の言語を歌いきるために、
言葉、和音、メリスマなど細かな研鑽を怠りませんでした。
自由曲は戦争と原爆をテーマにした凄烈な作品です。
目を覆うような惨状と悲痛な祈りがこもったテキストを、
どうすれば歌という媒体に乗せて届けられるのか。
私たち九混がその全てを注ぎ込んで
挑戦してみたいと思える曲でした。
懸ける思いをひとつにするべく、
練習中の反省や自主的に学んだことをどんどん共有しながら
徹底的に練り上げました。
指揮の竹田先生の積極的なご尽力もあり、
個人のスキルと団のレベルが向上したと思います。

 

 


この「廃墟から」は
2007年岡崎高等学校コーラス部・岡崎混声合唱団の委嘱作品。

広島被爆者の母を持つ信長先生が作曲した
原爆投下後の惨状と哀切な鎮魂歌。
過去の記憶が現在のものとして甦るフラッシュバック。

この曲を委嘱された岡崎混声合唱団さんが
2012年に富山での全国大会で再演されたのですが
弱声の美しさと緊張感。
レクイエムとしての哀切さと説得力がある名演奏でした。

九混さんもそれに勝るとも劣らない演奏を期待してしまいます。


最後に「全国大会への意気込みとメッセージ」です。

 

大学合唱団は、毎年メンバーが入れ替わる特殊な環境です。
ぜひ、”今年の”九混の演奏を耳に残してほしいです。
九混はみなが団と団員を愛する力で成り立っています。
この1年間、悩みぶつかりあいながら成長してきました。
そういった青春が凝縮された熱い一滴を、
133人がステージ上から放ちます。
この熱量を、皆様にお届けできれば嬉しいです。

 

 

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岩崎さん、大学生らしい若さあふれる熱いメッセージを
ありがとうございました!

九混さんの演奏は昨年の九州支部大会で聴いたのですが
若さ弾ける課題曲のメンデルスゾーンと
大人数を活かしたダイナミクスと表現の幅が広い
カライのStabat Mater。
全体に爽やかで好感を持つ演奏でした。

今年も大人数ならではの
熱く、迫力ある演奏を聴かせていただきたいと思います。


 





5.埼玉県・関東支部代表


Chor OBANDES

(混声35名・初出場)


初出場おめでとうございます!
ところで団名の「オバンデス」って
私(北海道出身)には「こんばんわ」って意味なんですけど?

 

「おばんです」とは東北弁で「こんばんは」を意味します。
元々は福島出身の合唱人中心に結成した合唱団なので、
親しみ深く、響きの良いこの言葉をチョイスしました

Chor OBANDES HPより


ありゃ、本当にその意味だったんですね!
朝に会っても「おばんです」・・・。


課題曲はG3 むらさきの

自由曲は千原英喜作曲「猿楽談義《翁》」から「翁」

「世阿弥の『風姿花伝』と謡曲『翁』をテキストとして、
風流延年や催馬楽歌謡、尺八楽や聲明などを音楽素材に用い、
日本の祈りのかたちと美のこころを表現すべく、
私の自由なイマジネーションで描いた音のタブロー(絵)です。」
(千原英喜)とのこと。 


指揮者の蓮沼喜文先生は私のようなオールド合唱ファンには
埼玉栄高校での数々の名演奏が思い出されます。
Chor OBANDES HP内の「WORK」を開くと
OBANDESさんの過去の演奏を聴くことができ、
若さゆえの抒情と
しっかりした混声体のハーモニーを意識された音楽は
全国大会での演奏も大いに期待できます。


初出場、どうかすべてを出し切れる演奏を!




今回、最後に紹介する団体は

 

 



6.福島県・東北支部代表


福島大学混声合唱団


(混声39名・10年連続出場・第55回大会より14回目の出場)


課題曲はG1 Che se tu se'il cor mio 
(Giovanni Battista Guarini 詩/Claudio Monteverdi 曲)

自由曲はJosef Rheinberge作曲
「Drei geistliche Gesänge(3つの宗教的な歌)」より
「Morgenlied(朝の歌)」
「Abendlie(夕べの歌)」。


凛とした気品のある響きが魅力的な福島大混声。
基礎力の高さも感じるのですが、
これはコンクールで優秀な成績だった
福島県の中学・高校生が団員さんの中にいるからでは?
などと考えてしまいます。

福島大混声は昨年までプーランクを演奏していて
そのイメージが強かったんですが
今年はドイツ・ロマン派のラインベルガー。
課題曲のモンテヴェルディを含め、
名曲へ真正面に取り組む福島大混声の姿勢は
賞賛に値するものだと思うのです。






「観客賞スポットライト 大学ユース部門」、
今回はここまで。
明日の更新をお楽しみに!