観客賞スポットライト 室内部門 その2








17分の休憩後、15:20から
室内合唱部門の後半が始まる予定です。



後半最初の団体は初出場の団体。

 

 

 




6.岡山県・中国支部代表

倉敷少年少女合唱団

(女声24名・初出場)


初出場おめでとうございます!
私が住んでいる倉敷から
全国大会へ出場する団体が出るとは。


全日本合唱コンクールの全国大会は初出場ですが
福島県で行われた声楽アンサンブルコンテスト全国大会で
金賞を受賞された実力ある団体。

私も今年の中国大会で演奏を聴き


課題曲F2 Hegyi éjszakák Ⅲ(Kodály Zoltán 曲)
中学生ぐらいの年代が多く

小学生もいると思うのに
整備され、とても良く鳴る声。
ドラマを作り音楽の表情も優れていました。

自由曲1曲目ナンシー・テルファー「Kyrie」
2曲目ヨーゼフ・ヴォルフガング・ツィーグラー「Gloria」

カナダとオーストリアの違った作曲家のミサ曲。

並々ならぬ緊張感と表現に懸ける迫力!
1曲の中での音楽の変化はしっかり表現され良かったです。


…などと感想を書いていました。

倉敷少年少女合唱団さん、
12月18日にコンクール曲や
ミュージカルも演目に入れた
クリスマスコンサートを開催されるそうです。

コンクールが終わってから間もないですが
がんばって欲しいものですね。




 



続いて菅野正美先生が指揮される若き実力合唱団。


 





7.福島県・東北支部代表

L'Aube des Temps(ローブ・デ・タン)

(混声19名・第66回大会から4回目・4年連続出場)



昨年の観客賞座談会では
 

 

派手さは無いけど、誠実に演奏しているのが伝わる。
正統派というかキチンと音楽を作ってましたね。

 


などという感想のほか、
英語の発音など細やかなところに
名匠:菅野正美先生のお力を感じました。

昨年の自由曲は
Leo Sowerby作曲
「Eternal Light」 (永遠の光)
Xabier Sarasola作曲
「Neskatx' ederra」(美しい女)

…と『歌』を前面に出した選曲で。

こういうストレートに「良い曲!」と思わせる選曲を、
東北らしい澄んだ発声で演奏されると
また格別な感じがします。
次回の選曲も楽しみです!
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2015/12/14/165758


そんな風にまとめた昨年。
さて、今年の選曲は?


課題曲はG1 Che se tu se'il cor mio 
(Giovanni Battista Guarini 詩/Claudio Monteverdi 曲)

自由曲はAnton Bruckner
「Virga Jess(エサイの枝は芽を出し)」
スペインの作曲家Julio Dominguez
「Deus, qui illuminas(すべての人を照らす神よ)」


ブルックナー、モテットの名曲と
「Deus, qui illuminas」は
神秘的な女声から、
繰り返され、高まる「Deus(神よ)」が
シンプルながら説得力を持つ作品。


L'Aube des Tempsさん、
昨年より人数が5人減ってしまったのが
少し心配なのですが
きっと繊細で歌を活かした
胸を打つ演奏をして下さることでしょう。




 

 

 

 


さて、今回のスポットライト!
Vineさんとは別の意味で
コンクールを感じさせない演奏をするこの団です。




 

 



8.長野県・中部支部代表

合唱団まい

(混声23名・8年連続出場・49回大会から14回目の出場)



昨年は自由曲のブラームス「愛の歌」で
指揮者の雨森文也先生が
ピアニスト平林知子先生と連弾で演奏し
話題を呼んだ団体。

 


19世紀の人たちは、
こんな風にブラームスを歌っていたのかな、と
思いました。


サロン的な雰囲気でね!


…などと(笑)。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2016/01/07/203747



今年の課題曲はG1 Che se tu se'il cor mio 

自由曲は三善晃
「五つの童画」より「やじろべえ」
信長貴富
「もし鳥だったなら」より「唄」


昨年は他の室内混声の7団体がすべてG1。
まいさんだけがG2を選ぶほどだったのに今年はG1。
そして三善先生と信長先生とのカップリングにどんな意味が?
まい団員さんからメッセージをいただきました。

 

 

 

長らくイタリアマドリガーレ、
フレンチシャンソンを歌ってきていたまいが、
これまでレパートリーになかった
ブラームスのドイツロマン派合唱作品に
真正面から取りくみ石の上にも三年。
そこで得たものを踏まえ、いざ、原点回帰!
ということで満を持して選ばせていただいたのが
モンテヴェルディ「Che se tu se'il cor mio」です。
私たちが愛してやまない
劇的なモンテヴェルディをぜひお聴きください!


自由曲は、三善晃作曲「五つの童画」より「やじろべえ」 

走馬灯のように目まぐるしく広がる戯けた音楽は、
まるでやじろべえがはしゃいでいるようにも聞こえます。
最後に説かれるかなしいやじろべえの真実。
訪れる絶望、失意。
「私は、それらを胎生の糧としない愛を信ずることができない」
と記す作曲者の深い愛は、
哀しいやじろべえの真実をも引き受けてゆきます。
短い曲の中の濃密なドラマをどんな風に表現できるか。
がんばります!


そして、信長貴富作曲「もし鳥だったなら」より「唄」 

「唄」は、詩人、建築家として嘱望されながら、
24歳という若さで亡くなった
立原道造の詩がテキストになっています。
亡くなる半年前の10月、
病身をおして東北地方への旅を強行した折に書かれました。
明らかにいのちを縮めるようなこの旅で、
「ああ、私は生きられる・・・・よい 時をえらんだ」と、
歌った道造。
彼にとって生きることは、現実を遠く置き去りにして、
ただ歌うことの中だけに見出されていたのかもしれません。
道造の見た東北の明るい秋の情景がそのまま浮かぶような、
穏やかな秋の日差しや青空を感じる信長貴富の音楽。
道造の言葉とともに湧き上がる生きることへの喜び、確信、
熱い思いをどのように歌いきるか。
団員一同精一杯挑みたいと思います。

 

 

 

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まい団員さん、ありがとうございました。
今回のまいさんの選曲について
雨森先生に伺った時、

「信長先生が小学校5年生の時に聴いて
 衝撃を受けた演奏があった。
 それは安積女子高校(現:安積黎明高)の演奏する
 三善晃先生の《狐のうた》から「訓戒による」。
 人生を変えたと言っても過言ではないほどだったという」

そうお聞きしました。
まい団員さんのメッセージはこう続きます。

 

 

三善晃の最高傑作の一つといえる五つの童画のやじろべえと、
三善晃を師と仰ぎ心から敬愛している作曲家 
信長貴富の原点ともいえるような初期作品のひとつ、唄。
並べて歌うことで、
根底に通じるものが見えてくるのではないでしょうか。
特に、現在演奏される機会の少ない「唄」について、
この曲に再び光を当てたいという
指揮者のたっての願いも選曲の理由の一つとなりました。

 

 

 

 

身体は現世から失われても作品に宿り、
さらに師と仰ぐ者の作品へ受け継がれる命。
合唱団まいさんの演奏なら
それを感じさせて下さると期待しております。

 

 

 

 

 






つづけて今回のスポットライトPart2!
実力も人気もNo.1の団体と言えば…?



 

 

 

 

 

 



9.佐賀県・九州支部代表

女声合唱団ソレイユ

(女声24名・11年連続出場・59回大会から11回目の出場)

 


3年連続1位金賞、
当ブログの観客賞でも2年連続1位の団体!


以前は「私たち、こういう曲をやります」
…みたいな、得意不得意があったんですけど、
今は何を持ってきてもソレイユの色という。
強靭さ、合唱団としての揺るぎなさが
備わってきた。


横綱相撲的な!

 


さらに昨年は課題曲のメンデルスゾーンで
オルガンを使用し、その完成度の高さも
話題になりました。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2016/01/09/094910



ソレイユさんの課題曲は
F2 Hegyi éjszakák Ⅲ(Kodály Zoltán 曲)

自由曲はPetr Eben
"Medicamina sempiterna(永遠の美容法)"より
De Facie formosa(1.美しい顔について)
De arte faciem colorandi(2.化粧の仕方について)
De crinibus(3.髪のお手入れについて)
De pulchritudine sempiterna(4.永遠の美しさについて)



ほう、「永遠の美容法」は高校生の演奏で
何度か聴いた覚えがあります。
一般の部では最近あまり演奏されないかな?




ソレイユ代表池田さんから
メッセージをいただきました。

 


課題曲

ヴォーカリーゼ、しかもA(ア)だけの曲は初挑戦です。
山の夜の静寂さや神秘的な空気感が伝えられるように、
色々なAの音を試行錯誤しながら練習しています。
鳥取のホールでどんな世界を表現できるか、
私達も楽しみにしています!



自由曲

古代ローマの詩歌をもとに作られた曲です。

まず、歌詞が面白いです。
日本語で歌えないのが残念でもあります(笑)。
ツッコミどころも多く、2曲目なんかは
「え!そんなに素顔見られちゃダメ!?」と
やるせない気持ちになりますが、
4曲目の歌詞でやっと、
「でも結局は中身が大事だよね」と
少し報われたような気持ちになります(笑)。
女性ってお化粧とか髪のお手入れとか
オシャレしたりとかめんどくさい!
って思うこともありますが、
それがまた楽しくもあります。
女性の醍醐味ですよね。

エベンの精巧で力強い曲の中に、
とても温かいメロディがちりばめられたりしていて、
歌うたびに感動しています。

結成11年が経って、お肌の曲がり角を曲がった人も
まだまだピッチピチの人もいますが、
少し大人な「永遠の美容法」をお届けできたらと思います。

 

 

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池田さんありがとうございました。
詩は古代ローマの詩人
プブリウス・オウィディウス・ナソ
(Publius Ovidius Naso 紀元前43年生)らしいのですが。

詩の全訳も送っていただいて読んでみたら
これが面白い!
全部載せたいところですがそれは控えて、

池田さんも
「え!そんなに素顔見られちゃダメ!?」と
やるせない気持ちになったという
「2. 化粧の仕方について」を抜粋しましょう。


 

 2. 化粧の仕方について

女の子たちよ、
毎日君たちの顔を手入れすること、
そしていかに美を長く留めるかを学びなさい
君たちは、元々は花が咲くように輝いてはいない顔を
化粧という技術によって
器用にそれらしく染められることを知っているだろう
(中略)
ただ、あなたの恋人に
このお化粧のツボというのを
発見されないようにだけ気をつけなさい
ただただこっそり、秘密にお化粧を使いなさい
朝早くに素のぼやっとした顔で出てくるのではなく、
完全にお化粧を仕上げてから恋人の前に現れなさい
君の化粧してない青ざめた頬を知ったところでどうなるだろうか?
(化粧している姿を見せないために)寝室のドアをしめなさい
誰が化粧していない未完成なあなたを愛するだろうか?
女の子たちよ、
毎日君たちの顔を手入れすることを学びなさい 女の子たちよ・・・!

 

 



化粧しなくても美しいソレイユのみなさんをご覧あれ!・・・あれ?

 

 

 

 

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(練習中に作ったハートマークだそうです!)


 

 

 

 



室内部門、最後の団体です。

 

 

 

 

 



10.徳島県・四国支部代表

Serenitatis Ensemble

(混声20名・4年ぶり・第65回大会から2回目の出場)

 


結成が2005年の「セレアン」とも呼ばれる
Serenitatis Ensemble。
Serenitatis (セレニターティス) には、
ラテン語で「晴れやかな」「穏やかな」という意味があるそうです。


課題曲はG1 Che se tu se'il cor mio 

自由曲は武満徹
「うたうだけ」
「恋のかくれんぼ」


どちらも谷川俊太郎氏の詩。
ジャズが自分の原点と語られた武満氏らしく
とても洒落たメロディとハーモニーを持っている曲です。
「恋のかくれんぼ」は
1987年の選択曲(課題曲)にも選ばれていますね。

4年前に出場された時は
指揮者の白神直之さんは
 

 

それぞれメンバー個人がもつ希望や幸福感、
はたまた絶望感や悲壮感、
そんなものが歌にこめられてこそ、
指揮者主導ではなく合唱団主導の
「団らしい演奏」ができるのではないかと思っています。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/20121108/1352379257

 


…と語られていました。
最近はジャズコーラスにも挑戦中だというセレアンさん。
まさに「うたうだけ」の詩にふさわしい団体ではないでしょうか。





1. むずかしいことばは
  いらないの
  かなしいときには
  うたうだけ
  うたうと、うたうと、うたうと
  かなしみはふくれる
  ふうせんのように
  それが わたしの よろこび


(谷川俊太郎「うたうだけ」より)

 

 

 

 

 

 



(明日の夜の同声部門のご紹介に続きます)