合唱団訪問記:雨森文也先生へのインタビューその6

 

 


合唱団訪問記の再掲。

第6回はCANTUS ANIMAEの基本的なスタンスを。

そして文中リンクの「CANTUS ANIMAEはどこに行く」は
今年、2017年2月に最新版が発表されております。
こちらも是非ご覧ください。


www.cantus-animae.net

http://www.cantus-animae.net/2017/02/06/info_new_dokoiku/


(文豪の部屋HP掲載時 2002.7.17)

 

 

 

 

 

合唱団訪問記 

 

第26話

 

 

 

CANTUS ANIMAEの“志”

 

 


 

「合唱団訪問記」

 

 『雨森先生へのインタビュー』

 

その6



<CANTUS ANIMAEはどこに行く>


文吾  「雨森先生がCANTUS ANIMAEに
    求めるもの、というか展望、みたいなものを
    お聞きしたいのですが…」

雨森先生「展望ねえ・・・。

    まあ CANTUS ANIMAEはどこへ行くのか
    でも書いたんだけど」

文吾  「3年前になりますね」

雨森先生「だけど、基本的なスタンスは
     3年前に書いた時と変わってないね。

     ・・・ま、自分でもあれは不可能だと
     思ってるんだけどさ(笑)」

文吾  「不可能って!(笑)」

雨森先生「・・・不可能と思いながらもやっていく、というか。       

     例えばプロの演奏団体だったら。
     タリス・スコラーズは絶対世俗曲を歌わないし
     コンソート・オブ・ミュージックは絶対宗教曲を歌わない。

     唱法を掘り下げていけば、他のジャンルは歌えない。
     ・・・そういうのが出てくるわけだよね。

     まあ、そういうのが一般的な常識なんだけど」

文吾  「はい」

雨森先生「だけど、古楽の唱法をマスターした人間でも、
     オペラのアリアを歌う唱法も
     同時に身につけて使い分けることが
     人間には可能だと僕は思うんだよな」

文吾  「・・・・」

雨森先生「プロフェッショナルの演奏家だったら
     古楽の演奏家は
     絶対ベルカントの唱法はしないけどね。

     でもね、できると思うんだよ。
     やろうと思えば」

文吾  「ふ~む・・・できるんですかねぇ?!」

雨森先生「だってね。
     箸も使えばナイフだって…、こう・・・。
     (使い分ける身振りをして)」

文吾  「いや先生、それはっ!(笑)」

雨森先生「まあ不可能だとは思うんだけど(笑)。

     ・・・それでも『できるんじゃないか』、と。

     音楽には色々なジャンルがあるけれど。
     1つのジャンルを狭く深くやるか。
     それとも色々なジャンルを浅く広くやるか。

     普通は二者択一だよね」

文吾  「そうですねえ」

雨森先生「広くやろうと思ったらそれは浅くなるし
     深くやろうと思ったらそりゃ狭くなるし。

     でも
     『広く深くやってもいいじゃねえか!』って(笑)」

文吾  (笑)。

雨森先生「まあ常識で考えれば、
    上手く行かないことは分かってるし。

    1日は24時間しかないわけだから
    狭く深くやっている人が24時間頑張っているのを
    広く深くやっている側が敵うわけない!
    ・・・と言われればそれまでなんだけど。

    でも、もしかしたら出来るかもしれないじゃない?(笑)
    がんばれば」

文吾  「がんばれば(笑)」

雨森先生「まあ、あきらめない、ってスタンスだよね。

     もうひとつは
     アマチュアだからここまでしかできない、じゃなくって
     プロはアマチュアの上を行く、じゃなく。
     …アマチュアとかプロも関係無しに。
       
     音楽を志しているんだったら、目指すのは
     芸術性が高く、人の心に深く響くような
     そんな演奏を目指そう、と。

     音楽をやる、ということはそういうことだと思うんだよ。

     だからCANTUS ANIMAEも
     そういう志(こころざし)を持った合唱団でいて欲しい」

Mariさん「・・・いま、隣で話してたんですけど。

      『現在のCANTUS ANIMAEの状態って

       “広く、浅く” だよね~』って(笑)」

雨森先生「や(笑)。

     『広く深く』行こうと思ったらとりあえずは
     まず『広く』スタンスを構えてないと
     深く行けないわけだからね。


     カラヤンは初めて音楽ビデオを作ったり
     積極的なレコーディングや、いかに売るか、と
     人のやらなかった、新しいことをいっぱいやったんだよね。
     それで今の音楽産業の隆盛がある。

     …だから
     『これまで人が考えなかったことを初めてやる』人間がいないと
     ダメだと思うんだよな、絶対に!

     既成の枠の中で『これはここまでしかできない』…と
     その中でやっていたら、同じ物しか出来ないよ。

     ま。その結果ね、出来なくてもいいんだよ。
     そういうことを『志を持ってやった』…という事に
     価値があるんじゃないかな、多分」

文吾  「・・・なるほど」



 (つづきます)