観客賞スポットライト 大学ユース部門 その2

 

 



大学ユース部門の続きです。
今日は4団体をご紹介!

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最初は8年連続金賞受賞の実力派。
そして観客賞でも常に大人気のこの団体です。

 

 




2.山梨県・関東支部代表

都留文科大学合唱団

(混声60名・10年連続出場・第51回から11回目の出場)

 


昨年はハンガリーの作曲家、
ジェンジェシの作品を演奏された都留文さん。
男女比1:3ながら男声を良く聴く知性あるソプラノを筆頭に
充実したハーモニーと心を掴む表現が魅力の団体です。


都留文科大学合唱団団員さんからメッセージをいただきました。
まず課題曲ですが…。

 


こんにちは!私たちは都留文科大学合唱団です。
我々は常任指揮者の清水雅彦先生のもと、
現在約70名で活動しています。

今回選んだ課題曲「子どもは……」は、
音にも歌詞にもその思いが濃縮された、
慈愛に満ちた曲だと感じています。
少人数で歌う練習、
また、歌詞についてイメージを共有することで、
歌い出しのその前から世界観を表現できるように努めてきました。
全国大会ではホール一杯に思いが伝わるよう、
また練習を重ねていきたいと思います。

 

 


そして自由曲なんですが
ここ最近は海外作曲家の作品を演奏してきた印象の都留文さん。
しかし、今回は邦人作曲家、日本語の作品だそうです。

 

 


自由曲は、
≪ぼくの村は戦場だった ~あるジャーナリストの記録~≫より
第二章 「111000000」
第三章「ぼくは兵士だった」
第四章「願い」の三曲を歌わせていただきます。

この作品は、清水雅彦先生が独唱曲として
2014年に初演されたものを、
信長貴富先生に編曲を依頼、
合唱版としてアレンジしていただいた委嘱作品です。

また、曲のもととなった本『ぼくの村は戦場だった。』は、
都留文科大学のOGである山本美香さんの著作にあたります。
山本美香さんは、大学を卒業後、
放送記者を経て、フリージャーナリストになり、
アフガニスタンやイラクなど、
各地の激しい紛争の様子を報道し、世界に発信し続けました。
その後、美香さんは、2012年のシリア内戦の取材中に砲撃を受け、
45歳という若さでこの世を去ることになります。

今回この作品を歌えることに、
私たちは大変深い縁を感じています。
国内の軍事情勢の変化、近辺諸国の動き、
日本の安全神話が揺らぐ現在に歌うことも、
ひとつの縁ではないでしょうか。

これまでに、山本美香さんのご家族にも
実際に聴いていただきました。
県大会・関東大会でも
たくさんの人が聴いてくださいました。
一時は、曲の持つテーマの重さにつぶされそうにもなりました。
しかし、それを受け止め、支えあい、表現を磨いてきました。
今この曲を歌える喜びを胸に抱き、
全国大会でも精一杯歌います。
様々な縁によって成長した、
新たな文大サウンドを是非お楽しみください。
11月25日、東京芸術劇場に私たちの「願い」を響かせます。

 

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関東大会での写真だそうです。

 

 

団員さん、ありがとうございました。
信長貴富先生の制作活動において
戦争は重要なモチーフとなっていますね。

そして都留文科大学のOGである山本美香さんの著作を元に、
清水雅彦先生が初演された独唱曲を合唱に編曲…。
文中にある言葉の通り、演奏者と大変縁が深い、
想いのこもった演奏になりそうです。

 

ぼくの村は戦場だった。

ぼくの村は戦場だった。

 

 
「ぼくの村は戦場だった。」はこれから読むつもりですが
本のレビューの中で山本美香さんのこんな言葉が引かれていました。

「 目をそらしても現実が変わるわけではない。
  そうであるなら、目を凝らして、耳を澄ませば、
  今まで見えなかったこと、聞こえなかったことに気づくだろう。
  戦場で何が起きているのかを伝えることで、
  時間はかかるかもしれないが、
  いつの日か、何かが変わるかもしれない。
  そう信じて紛争地を歩いている 」


都留文科大学合唱団さんの精一杯の願いが
客席の私たち、そしてホールの外にも響き渡りますように。







 

 


続いて「団名と一致してないじゃん!」のツッコミを長年受けた
地元の名門合唱団が3年ぶりの復活です。







3.東京都・東京支部代表

東京工業大学混声合唱団コールクライネス

(混声127名・3年ぶり・第30回大会から33回の出場)



「小さい」を意味するドイツ語「kleines」が団名なのに
100人を優に超える団員数なクライネスさん。
大人数でも繊細な演奏が持ち味です。

学生指揮者の外池さんに、メッセージをいただきました。

 


【クライネスについて】

 

私たち東京工業大学混声合唱団コールクライネス(以下、 クライネス)は
総勢100人を超える合唱団です。
毎年、たくさんの新入生とともに、
12月の演奏会に向けて楽しくまじめに練習をしています!!
新入生の8割近くが合唱初心者な年もあるクライネスですが、
練習を通して年末にはみんな一人前の歌い手に?!
また、 楽しい団内行事でみんな活躍できたりします。
そんな歌の練習からサークルらしい活動まで、
すべてを糧にして団員全員一人一人が
輝けるような団体を目指して活動しています。

 

 

 

ところでクライネスさんといえば
学生指揮者でコンクールに挑む姿が印象的だったのですが
今年は岩本達明先生が指揮者なのはなぜでしょうか?



【岩本先生に本番指揮をお願いした経緯】

4年前にコンクールの部門編成が変わってしまったり、
賞としては結果に結びづらくなってきたりしたことで、
「コンクールに出る意味とは?」ということを
みんなでずっと考えることになりました。
数曲に深く踏み込んでいく事で得られる教養や技術向上、
それを共有していくことで生まれる一体感、
これこそがコンクールに出る意味だと思います。
コンクールで得た技術や一体感を演奏会へ、
そしてまた次のコンクールへ、その先の演奏会へ。
クライネスとして長いスパンで成長していきたい。
長くクライネスの成長を望むなら、
素晴らしい先生方のご協力をお願いしよう。
そんな想いを私たちが岩本先生に伝えた時に意気投合し、
コンクールの本番を振っていただけることになりました。

 


なるほど…。
岩本先生が指揮されるコンクールという場でのクライネスさん、
楽しみですね。


さて、クライネスさんの課題曲は
G2のプーランク「Salve Regina」
自由曲はプーランク「Figure humaine(人間の顔)」から
1曲目の「De tous les printemps du monde」
(この世の全ての春の中で)
終曲「Liberté(自由)」の2曲というプーランクステージ。

 


【プーランクへの思い】

選曲は「プーランクは近現代の中で一番すごい作曲家だ!
いい歌を歌えるようになるにはいい曲をやろう!!」 ということで、
私たちと岩本先生の話し合いの中で即断!
特に「人間の顔」はプーランクの最高傑作です。
ナチス・ ドイツとの苦しい状況下で書かれたこの作品。
現代に生きる私たちなりの世界の平和への
願いを込めて選曲しました。

二重合唱でありスケールの大きな作品を、
大人数のクライネスで取り組めるということが
とてもうれしいです 。
素晴らしいプーランクの音、「自由」への渇望、
祈りを如何にして声の力で表現できるか。
私たちは挑戦し続けたいと思っています。

聴いていただいた方に何かを感じていただければ嬉しいです。
応援よろしくお願いします!!  


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外池さん、ありがとうございました。
「人間の顔」は大変な難曲で
「自由」のクライマックスは
ソプラノソロのHi-E(高いミ!)というだけではなく、
フランス語の語感、
プーランクらしい和音とエスプリを
高い緊張感と両立させ、
説得力ある音楽を作らなければいけません。

しかし、岩本先生の音楽性と
大人数でも繊細な表現が存在する
クライネスさんなら大丈夫でしょう。
100人を越える人数での
「自由」への渇望と祈りを期待しています。

 

 

 






続いては東北支部からはじめましての団体の登場です。


 

 

 


4.宮城県・東北支部代表

ジュニア&ユースコーラス“Raw-Ore”

https://twitter.com/raworechorus

(混声64名・初出場)



初出場おめでとうございます!
団名“Raw-Ore”の由来が気になりますね。
Raw-Ore団長さんにお聞きしました。


私たち、ジュニア&ユースコーラス“Raw-Ore”(ロー・オーレ)は
2006年に創団し、
最初は小学生から高校3年生までを中心に、
ジュニアコーラス“Raw-Ore”として
依頼演奏を主にして活動していました。
そしてコンクールに取り組み始めたのは2012年からで、
その時から小学生から大学生・社会人までの
ユースコーラスになりました。

“Raw-Ore”とは「原石」という意味で、
団員一人ひとりが原石であり、
磨きをかけると輝くことができるという思いをこめています。

練習は、土日の週2回しか練習がありませんが、
少ない練習の中で、お互いを高め合い、
充実した練習を行っています。


なるほど、「原石」!
未来を感じさせる素敵な団名ですね。

さらに全日本合唱連盟さんからこんな情報も。

 

小学校の合唱団がここまで大きくなるのは全国的にかなり珍しいかも!

 


今回の演奏曲については…。

 


課題曲G4「まぶしい朝」は、
若さあふれる私たちの流れる音楽で最高の朝をお届けします。
(団長としては、出だしのテノールは
 日本一上手だと思っています。笑)

自由曲「Agnus Dei=空海・真言・絶唱」は、
空海の祈りのお経とともに、楽器や絶唱を使用し、
最後には、我が団が誇る歌姫、歌王子(?)達の
ソロによるカノンなどに乗せて、
皆様に平和が訪れるように願いを込めて歌います。

 

日本一上手!まぶしい朝のテノール!!
これは期待できそうですね。
自由曲の千原英喜先生「Agnus Dei=空海・真言・絶唱」は
2012年の富山大会で淀川混声合唱団さんも演奏されました。
虚空蔵菩薩真言、光明真言、Agnus Deiをテキストにし
男性の語りから始まり、鳴り物も入る演奏効果が高い曲です。
東北支部を聴いた方からは


Raw-Oreは今回の東北支部大会で
個人的に最も印象に残りました。
名前の通り、ジュニア世代まで含んだユース団体であり、
若くエネルギーに溢れながら、
一方で演奏の精度も非常に高かったように思います。
課題曲G4は今年聴いた中でトップ3に入るくらい好きな演奏でした。
自由曲の千原英喜Agnus Deiもスケール感ある演奏。
ソリストも秀逸でした。

…との感想が。
自由曲もそうですが、
課題曲に期待が高まります!


団長さんからはさらに


東北支部大会はレベルが高く、
全国まであと一歩というところで毎年悔し涙を流してきました。
そして今年、創団11年目にしてようやくつかんだ全国の切符。
初出場なので、右も左もわからないですが、
幅広い年代が集まっているからこその私たちの音楽をお届けします。
そして、全国大会をきっかけに多くの方々に
ロー・オーレのことを知っていただきたいです!
よろしくお願いします。

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東北支部大会での写真だそうです。

 

 

Raw-Ore団長さん、ありがとうございました。

「Agnus Dei=空海・真言・絶唱」、
元々は委嘱初演団体の和歌山児童合唱団が
海外の児童合唱団とジョイントする時に作られた曲のため、
キリスト教聖歌と空海の真言、密教を合わせた…という話も。
ユースということで若い年代の団員さんもいる
ロー・オーレさんにふさわしい曲かも?

11年間の力をためた初出場の勢いで
客席のみなさんへ力強く音楽を伝えていただきたいです!

 

 

 

 

 

 

 

続いては8年ぶりに全国出場のこの団体です。

 

 

 

 


6.山口県・中国支部代表

山口大学混声合唱団

 

(混声37名・8年ぶり・第30回大会から15回目の出場)




山口大学混声合唱団の団員さんからメッセージをいただきました。

 


こんにちは。山口大学混声合唱団です。
今回、観客賞という企画があるということで、
寄稿させていただきます。

私達山大混声は、部の運営はもちろん、
指揮者も学生がやっています。
とても稀有な事だそうで…。
フレッシュな指揮と演奏をお届けできたら僥倖です。

学生だけの団体なので、伸び伸びと、自由に活動しています。
毎日8時間の夏の練習では部の雰囲気が芳しくない時もあり、
合宿では指揮者逃亡(!)というハプニングもありました。
でも、紆余曲折あっていい曲に仕上げることができました。
青春してるな~と思います(笑)

8年ぶりの全国大会出場なのですが、あまり意識はしていません。
山口にいる時と同じように、今できる最高の演奏をします。

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山口大さんの今回の選曲、
課題曲はG2プーランク「Salve Regina」
自由曲は草野心平詩、千原英喜先生作曲の
「コスミック・エレジー」から
「2.鬼女」「3.わが抒情詩」

今度は学生指揮者さんに
インタビューされた内容だそうです。

 

○課題曲の選曲理由について

自由曲を先に決めていたので、
課題曲では外国語曲に挑戦してみたい気持ちがありました。
G2(プーランク)の方が聞き心地がよく、
振りがいがあると感じ、こちらに決めました。

 


○自由曲の選曲理由について

今回演奏させていただくのは「コスミック・エレジー」は、
僕がずっとやってみたいと思っていた曲集でした。
十二月の定期演奏会では全ての曲を演奏させていただきますが、
今回はコンクール向きに
「鬼女」「わが抒情詩」の二曲をチョイスしました。

 


○聴きどころ

課題曲、自由曲は全て雰囲気が違う曲なので、
3曲の「違い」を聴いていただければと思います。
歌い手と指揮者の距離感が近いという、
僕達の強みを生かして頑張ります。

 

 

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「夏の練習の際、大会の目標を習字したもので、毎年やっています」…とのこと。

「鬼女」とかはわかる気がするんですけど
「コケットソー」はどう目標にするんでしょうね?(笑)


 

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大学も垂れ幕で応援しています!


団員さん、指揮者さん、ありがとうございました。
山口大学合唱団さんからは
多くの写真を送っていただいたんですが
眺めながら、なんか、いいなあ・・・と思ってしまいました。
習字をしたり、指揮者が逃げたり(笑)。
プロの指揮者先生を抱える団体と比べて、
ひょっとしたら道に迷っている感もあるんですけど、
でもそこがきっと演奏の味になってる!

草野心平が書いた「我が抒情詩」。
暗い日本の中で、かすかに光る希望。
哀しさの中の明るさが今を生きる若者を連想させるんですが。
是非ともそんな希望を持って演奏していただきたいと思います。




(明日に続きます)