観客賞スポットライト 混声合唱部門 最終回






11月3日から毎日更新してきたこの連載も今日で最終回!

週末の東京の天気は…

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土曜は晴れ時々曇り、
日曜は曇り。
降水確率は20~30%なので
傘の心配はいらないかも?
(岡山より2、3度温かいんですね…)





11月3日から21日間に渡って連載してきました
この「観客賞スポットライト」。
今日は最後の2団体をご紹介します。








昨年はトリでしたが今年はそのひとつ前。
素晴らしい発声と確固たる音楽性で魅了する団体です。









19.奈良県・関西支部代表

クール シェンヌ


(51名・16年連続・第50回大会以来17回目の出場)





昨年は課題曲のモンテヴェルディで

紳士・淑女の団体ですね~。

ゆったりしたテンポで
あそこまで音楽を聴かせられる凄さ!

オーソドックスと言うか、王道と言うか。
「シェンヌ」の音が戻ってきた!

 


自由曲のレーガーでは

オトナでしたね~。

声が他と違いましたよ。
やっぱり激戦区の関西支部を抜け出ただけはあるな、と。

複雑な和音を丁寧に、流れも素晴らしく。
そしてあの浄化されるような美しいラスト!

たっぷり歌い、美しくこの大会を締めてくれましたね。

 

 

 

指揮者:上西一郎先生の
団員さん個々への徹底した指導と
堅牢な音楽作りが確かな説得力を生み出します。



シェンヌさんの今年の課題曲は
G1 Adorna thalamum tuum, Sion 

自由曲はJohannes Brahms
「Vier Quartette Op.92」
 (4つの四重唱曲)」より
「O schöne Nacht(おお、美しい夜)」
「Spätherbst(晩秋)」
「Warum(なぜ?)」


団員の山氏さんからメッセージをいただきました。

 

 

こんにちは。
奈良市内の大和西大寺で活動中の
クール シェンヌです。
今年は昨年の『43名』を更新し(笑)
『51名』での出場です。

そうなると、G1を選ぶのは去年以上に冒険!
になるはずなのですが、
今年も迷わずにG1の一択。
近年入団の若いメンバーをレッスンするには
ちょうど良いので、
毎回まずはこの曲を
たっぷり1時間はかけて練習しています。


自由曲は、今年3曲
(ドイツ・レクイエム、3つのモテット、
 祭典と記念の格言)取り組んだJ.ブラームスから、
44歳時作の「4つの四重唱曲op.92」を選択しました。
シェンヌのコンクール史上では初となる、
ピアニストとの共演曲となります。
今回は全国で活躍されているピアニストの
水戸見弥子さん( http://mitomiyako.com/ )に
ご共演頂きます。

表題の通り、
この曲は本来は四重唱曲として
作曲されていますが、
J.E.ガーディナーの名演CDもある様に、
合唱団で演奏されることも多いです。
とはいえ元々が独唱者用に書かれたものですので、
一見簡単な様に見える譜面でもこれが難曲…。
人数も増えた中、
『独唱者の様に各自が歌いながら、
 パートで一つにまとまって聞こえる』。
お聴き頂く方にこう感じて頂ける様に、
後少し更にブラッシュアップしてまいります。


・1曲目「おお、美しい夜」
 ピアノの左手でのE-Durの
 美しい分散和音で始まる、
 夜の星々が瞬き
 ナイチンゲールの囀(さえず)る夜。


・2曲目「晩秋」
 1曲目と同じE音で始まりながら、
 調性が同主調のe-mollで語られる
 ドイツ晩秋の風景。

個人的には一番好きな曲です。
色濃いブラームス的憂愁の世界に浸りましょう!


そして最終曲の「なぜ?」では、
前半の4/4 Lebhaft(活発な)の曲想から、
後半の6/8 Anmutig bewegt(優雅に動いて)への
対比で表現されるゲーテの詩の世界をお楽しみください。

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人数が増えた分、なかなか練習や合宿で全員が揃った写真が撮れないので、
唯一オンステメンバーが全員揃った貴重な瞬間を撮影した(笑)
『関西コンクール』でのパート別写真
(女声の人数が特に増えたのが判りますね)と、
指揮者上西とピアニスト水戸さんとのツーショットです。

上西と水戸さんの別バージョンの写真を見たい方は、
クール シェンヌの公式フェイスブックへどうぞ(笑)!
https://www.facebook.com/ChoeurChene/

 


山氏さん、ありがとうございました。
51名という人数になっても
G1のルネサンスポリフォニーを選択するその志。
素晴らしいですね。

そしてブラームスの四重唱曲!
独唱者用として書かれただけあって、
そのフレーズの美しいこと。
さらにピアノが華麗に彩りを添え、
「さすがブラームス!」と唸ってしまいます。

山氏さんは
『独唱者の様に各自が歌いながら、
 パートで一つにまとまって聞こえる』ように、
とされていますが
一見矛盾したその理想。
シェンヌさんなら大いに期待してしまいます。

うーん、こうなると「4つの4重唱曲」なのに
3曲しか演奏されないのは非常にもったいない。
「Abendlied」もぜひ聴かせてください!(笑)


コンクールで初めてのピアノとの協演。
ひたすらに美しいブラームスの作品。
上西先生の高い音楽性と
人数が増えても理想を失わないシェンヌさん。
コンクールのステージでありながら
コンクールを忘れさせる…
そんな素敵な音楽の時間になることを願っています。











さて、記念すべき第70回全日本合唱コンクールも
次の団体で最後です。
幅広い年代にもかかわらず、
常に意欲的な選曲をされる実力団体は?













20.宮城県・東北支部代表

グリーン・ウッド・ハーモニー

(64名・19年連続出場・第2回大会以来35回目の出場)





比較的大人数でも課題曲はG1を選曲することが多い
グリーン・ウッド・ハーモニー(以下GWH)さん。

昨年の課題曲:モンテヴェルディでも

個人的には一番納得がいく演奏でした。

今井先生の音楽性が
演奏へ豊かにあふれていた。
各部の表現に気を配りながらも
全体の流れを失わない。さすがです。


…などと少人数の団体も顔負けの
アンサンブルを聴かせ。

さらに自由曲は80代の団員さんもいらっしゃるというのに
難解な現代作品を選曲し、
しかも説得力ある演奏をして下さいます。 

 

歌い手さんも現代作品の音を
聴けるようになってきてるんじゃないかと。
だって、クルタークをするって決まった時、
団員さんみんな喜んだらしいんですよ!

一同 へー!

「自由曲はクルタークです!」
その発表で拍手が起きる合唱団!

一同(笑)。

同じ世界の話とは思えないな。
GWHの団員さんは
違う次元から来てるんじゃないか(笑)。

 



そんなGWHさん、
今年の課題曲はG1 Adorna thalamum tuum, Sion 

自由曲は
Anton Webern
「Entflieht auf leichten Kähnen」
 (軽やかな小舟に乗って逃れよ)

Paul Hindemith
「Messe」より「Gloria」

課題曲はやはりルネサンス・ポリフォニーのG1。
自由曲はウェーベルン、ヒンデミット。
どちらも20世紀前半に名を成したドイツの現代作曲家。



団員のMARさんからメッセージをいただきました。

 


今年も全国大会のステージに立てることを嬉しく思います。

例年のごとく、課題曲、自由曲ともに
今井先生の細かい解釈の書かれた
「分析譜」を使って練習していますが、
作曲家によって
「ああ、こんな作り方をしているのか!」と
音の構成などがまるでパズルのように
見えることもあったりして、
面白さを感じ、曲に対して
さらなる興味を持つことも多々あります。
この分析譜から発せられる要求に、
団員はどれだけ応えられるのか!

今年は大トリで歌わせていただくようですが…
自由曲の1曲目にウェーベルンを選んでいますが、
団としては3回目になるのかな?
もはやレパートリーの1曲ですね。
もちろん今までとは違う新しい解釈になっています。

そして最後に歌う、ヒンデミットのGloria。
Gloriaのことばに
ヒンデミットの音楽の美しさを乗せ、
また表現することができればいいなと思っております。


少なくとも昨年、一昨年のような
「?」ということにはならないのではないかと(^^; 

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上の写真は東北支部大会、下の写真は今井先生と分析譜とのこと。

 

 



MARさんありがとうございました。

ウェーベルンは3回目ということですが
前回?の2006年熊本大会での演奏は、
私も聴いていました。
その時はシェーンベルクの
「深き淵より」と一緒でしたね。
こんな曲をレパートリーにするのは間違いなく
日本でGWHさんだけです(笑)。

ヒンデミット「Gloria」も確かに
昨今のGWHさんの選曲にしては聴きやすい作品です。
この和声の連なる緊張感…痺れます。


少し音楽と離れるのですが
今年のハーモニー誌の春号の企画がとても良く
「ハーモニー誌春号、2つの座談会がイイ!」
という記事を書きました。
そこにGWH団員の中村さんによる
大変興味深い発言があったんですね。

 



記事中の「合唱団とマネジメント」という項で
GWHさんは多くの人に仕事を割り振る。
「立ってる者は年寄りでも使う(笑)」…そう。

少しでも合唱団の仕事に関わることで、
より一層、団の活動に主体的になれるし、
「団にとって自分が必要!」
との意識も生まれるのじゃないかと。


同じ年代で活動するほうが気は合うし、
声の均質性も生まれやすいし、
それはそれで素晴らしいと思います。
ただ、GWHさんのように
10代から80代までの幅広い年代層の人が
指揮者:今井邦男先生を中心に
それぞれ主体的に現代作品へ挑む!
それが記念すべき第70回全国大会のトリということに
なんかいいなぁ、と思ってしまったのでした。


GWHさんの現代曲を聴き始めは
大きな「?」が浮かんでいた私と仲間ですが
いつの間にか

「なんか…耳が慣れてきたかも」
「現代曲特有の和音にハマりそう」などと。

この東京大会で初めてウェーベルン、ヒンデミット。
そしてGWHさんを聴く方がいらっしゃるかもしれません。

GWHさん、どうかまた新たな音楽への扉を開いてください!








<ありがとうございました>



これで大学ユース、室内合唱、同声合唱、混声合唱部門、
全51団体のご紹介を終わります。

前企画「コンクール出場団体あれやこれや:出張版」から数えて
今回でちょうど10回目になりました。


今回も本当に多くの方にお世話になりました。


すべての合唱団のみなさまに
お礼を申し上げるのはもちろんですが
メッセージをご寄稿して下さった方、
団員さんをご紹介して下さった方、
写真を送って下さった方・・・などなど。


もう一度この場で、お名前だけを記して
この連載を終わりにしたいと思います。


わかさん、K.Mさん、都留文科大学合唱団幹部のみなさま、こんみさん、外池さん、りかさん、たさん、Yさん、Tさん、はるのさん、河野さん、アンチ野菜さん、池上さん、まのさん、内藤正太郎さん、いつつばさん、Mさん、縄裕次郎さん、宮井さん、M.Tさん、寺田有吾先生、Kさん、ふじもりさん、池田大樹さん、T.Sさん、I田さん(M村さん)、桑原春子先生、雨宮昌子さん、古作敦さん、さゆさん、山本啓之さん、Mariさん、Yさん、N.Oさん、せのをさん、平林知子先生、マネージャーIさん、村田さん、安積フィメールコール東京のSさん、エリカさん、きらりんさん、おのださん、猿渡健司先生、Oさん、後藤秀樹先生、合唱団ユートライツイッター担当さん、もっつぁさん、K.Sさん、黒川和伸さん、aranさん、K.Oさん、阿部さん、C.Eさん、Fさん、M園さん、おやびんさん、伊東恵司さん、村上信介先生、大山敬子先生、藤原さん、しおりさん、山氏さん、MARさん、全日本合唱連盟の中の人さん、くーらさん、ピアノストさん、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団様、鯖くん、最初にこの企画を始められたぜんぱくさん。

 

お名前が漏れた方がいらっしゃいましたら大変申し訳ありません。

他にもこのブログにスターを付けて下さった方、読者になって下さった方、ツイッターで「いいね」やリツイートをして下さったみなさま、Facebookで「いいね!」やシェアして下さったみなさま、感想を寄せて下さったみなさま、そして最後に。

読んで下さったみなさまに心から感謝を申し上げます。

ありがとうございました!


(観客賞スポットライト2017 おわり)