観客賞スポットライト 大学ユース部門 その4

 



大学ユース部門、今回は最後の3団体をご紹介します。


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Kitaraホールがある中島公園。

 

 

 


9.島根県・中国支部代表

島根大学混声合唱団

https://www.facebook.com/shimadaikonsei/

(混声38名・4年ぶりの出場・第30回大会から12回の出場)



4年ぶりのご出場おめでとうございます。
島根大学混声合唱団さんの指揮者は浜崎香子先生。
浜崎先生と言えば出雲市の中学校で鈴木輝昭先生に委嘱活動を行い、中学生ばなれした高品質な演奏で全国に名を響かせている方です。
私も過去に島根大学混声合唱団さんの演奏で鈴木輝昭先生の作品を聴き、その精緻な音楽に唸った覚えが。

さて4年ぶりの全国出場、島根大学混声合唱団さんの演奏曲は
課題曲:G1 William byrd「Agnus Dei」
自由曲:三善晃作曲「地球へのバラード」から「鳥」「地球へのピクニック」

ほぅ、今回は三善晃先生の作品なんですね!
団員さんからメッセージをいただきました。

 


御縁の国からこんにちは!島根大学混声合唱団、通称“しまこん”です。このような掲載の場を頂き、大変嬉しく思います。

課題曲は、去年の夏ごろに団内の有志でWilliam byrdの「三声のミサ」を演奏した経験から選曲しました。
「三声のミサ」はWilliam byrdの魅力が凝縮されているような曲で団員からも大変好評でした。
そして、課題曲に「4声のミサ」がありバードをやりたいという団員の希望により選ばせていただきました。
自由曲には、三善晃先生の「地球へのバラード」から2曲選ばせていただきました。
この選曲は島根大学混声合唱団にとって大きな意味があります。
まず、当団はここ10年程はコンクールの自由曲に鈴木輝昭先生の作品を歌い、5年連続で全国大会に出場という成績を残しています。
しかし、今年までの3年間支部大会を抜けられず団には暗雲が立ち込めていました。
そういった状況を打破するために、今年は三善先生の作品からとなり、「地球へのバラード」を選びました。
自由曲には新しい島混への希望、不安、これまでの悔しさ、願いなど様々な感情が込められています。
また、「地球へのバラード」は30年程前にも自由曲として全国大会で演奏した曲であり、島混にとって思い入れのある曲というのも理由の一つです。


なるほど、三善先生の作品が新生・島混さん誕生のきっかけとなったわけですね。
ところで 

>「地球へのバラード」は30年程前にも自由曲として全国大会で演奏した曲

…こういうことを書かれると気になっちゃうじゃないですか! 調べました!

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ブレーンさんのHP、1989年の第42回全国大会で島混さんは確かに「地球へのバラード」を演奏されています。
この時は「私が歌う理由」「鳥」でした。
https://www.brain-shop.net/shop/g/gG989301/

(…ちなみに一番上の佐賀大学の学生指揮者さんは、同声の部に出場のmonosso指揮者:山本先生です 笑)

 


ただ、本当に全国大会への出場が決まった時、結果を客席で聞いていた団員の間に広がっていた感情は“喜び”というより、“信じられない”という気持ちでした。
4年の間にすっかり代替わりし、今のメンバーは全国大会に出場した経験のない団員ばかりです。
ズバ抜けて実力が高い人もいるわけでは有りません。
その中でもお互いの声を聴き合い、誰かの音を、誰かが補う、そういう音楽作りをしてきました。

全国大会ではホールいっぱいに“しまこん”らしい音楽を、響かせます!
“全力で楽しむ事”を合言葉に、最後の1音まで全力で歌いますので、よろしくお願いします!

来年3/9(土)には、松江市総合文化センタープラバホールにて、第54回定期演奏会を開催しますので、此方もどうぞよろしくお願い致します。

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中国支部大会での写真だそうです。

 



団員さん、ありがとうございました。
「地球へのバラード」は数えきれないくらい聴いているのに、特に若い方が演奏されるとその新鮮さに驚くことがあります。
思うに、鳥と人の繋がりやこの地球をひとつの天体と感じるような、若さゆえの世界への手触りと重なるからかもしれません。
そういえばこの「地球へのバラード」は、東京大学柏葉会の当時大学生が三善先生と詩の選択から一緒に創り上げた作品でした。
https://www.cantus-animae.net/2016/05/02/20th-shoen-5/

きっと今回も島混さんの共感がこもった新鮮な「地球へのバラード」が聴けることでしょう。
新生・島混さん、4年ぶりの全国出場、メッセージの通り「全力で楽し」んでください!






続いては日本最古の名門男声合唱団の登場です。

 

 

 



10.兵庫県・関西支部代表

関西学院グリークラブ

(男声85名・10年連続出場・第59回大会から12回目の出場
 第1回大会からは26回目の出場)



昨年は観客賞第2位。
Bob Chilcott作曲の「Newton's Amazing Grace」で「アメージング!」と座談会メンバーに叫ばせた関学グリーさん。
コンクールを忘れさせるステージと評判でした。

今年の課題曲はM2 Die Nacht (Friedrich Wilhelm Krummacher 詩/Franz Schubert 曲)
おぉ、31年前にも課題曲の名曲!
当時、関西支部代表の京都産業大学グリークラブさんの名演が耳に残っているのですが、関学グリーさんが新たな名演を創られるのでは。

 

 

自由曲は千原英喜先生作曲「東海道中膝栗毛」より「お江戸日本橋/鹿島立ち」。
十返舎一九の「東海道中膝栗毛」や和歌などをテキストにした、耳慣れたメロディが散りばめられた日本情緒あふれる作品。
関学グリーさんの千原作品演奏では、2年前の「那須与一」が非常に印象深いものがありました。
この大学ユースの部ではこれまでに3団体が千原作品を演奏されますが、関学グリーさんなら締めとして納得の演奏をして下さるかと。

さらに今年で連続10回目の全国出場、8年連続金賞の関学グリーさん。
今大会で9年連続金賞受賞となり、10回連続出場をゴールドで飾られることに期待が高まります!


あ、ちなみにもうかなり古い話題ですが、どこかの元・アメフト監督のように「かんさいがくいん」って呼んじゃダメですよ!
「くわんせいがくいん」グリークラブさんです! お間違えなく!







大学ユース部門最後は、地元・札幌の男声合唱団の登場です。


 




11.北海道・北海道支部代表

北海道大学合唱団


(男声47名・5年連続出場・第50回大会から14回出場、通算28回目の出場) 



昨年は課題曲のプーランクで私を泣かせた北大合唱団さん。
自由曲の鈴木輝昭先生への委嘱作品も、いわゆる「男声」の粗暴な押せ押せのイメージから遠く離れた、柔らかく精妙な響きと表現。
過去にはクリスマスゲリラライブ、どこでもあそこでもエンヤー・・・と話題を呼びながらも、演奏となると一転して真摯に、紳士に!
今回は札幌という本拠地でどんな演奏をされるのでしょうか?


学生指揮者の渡邉さんからメッセージをいただきました。

 


われわれ北海道大学合唱団は今年、ここ数年の倍近くになる20人の新入生を迎え50人ほどとなり、週に3回の練習、多くの本番、間違いなくそれより多い飲み会、そして忘れちゃいけないエンヤーと、以前にもまして騒がしく活動しております!
今年は様々な演奏機会にも恵まれ、「北海道150周年記念式典」「軽井沢国際合唱フェスティバル」「北京国際合唱フェスティバル」など数々の貴重な舞台で演奏してまいりました。

そして今回は全国大会開催地が札幌ということで、コンクールも団員一同、意欲十分!
ホームグラウンドとなるこの地で北大合唱団らしい演奏ができたらと思います!

今回コンクールで北大合唱団が演奏いたしますのは、言語もバックグラウンドも異にしながら根底に"死"という共通のテーマが流れる、不思議な取り合わせの二曲です。
課題曲「秋の夜の会話」は、会話の語感を大切にしつつ、その細かな表情変化を受けてさりげなく揺れ動くサウンドを如何に具現化するか……といったことに四苦八苦。
情感の機微を穿つ演奏を目指して目下練習中です。

自由曲の「Stopwatch and an Ordnance Map(邦題:ストップウォッチと軍用地図)」は、「弦楽のためのアダージョ」(合唱界では"Agnus Dei"として知る人も多いかも)で有名なバーバー唯一の男声合唱曲。
客演指揮者である尾﨑あかり先生が以前より「北大合唱団でやりたい!」と温めていた曲のひとつでもあります。
軍隊の行進を思わせるティンパニの上で、戦禍の地に伏す兵士を取り巻く惨憺たるドラマがスケールの大きなコーラスによって冷徹に描き出されているこの曲。
ダイナミックに展開する合唱、尾﨑先生の端正かつ繊麗な指揮、そして団としてニ度目の共演となる向愛佳さんによるパーカッションにもご注目ください!

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昨月に出演された「北京国際合唱フェスティバル」での写真だそうです。

 



渡邉さん、ありがとうございました。
多くの新入生を迎えられて良かったですね!

「軽井沢国際合唱フェスティバル」は私も昨年行っただけに、ネットで大賀ホールでの北大合唱団さんの雄姿を嬉しく観ました。
北大合唱団さんの特長である柔らかい響きの男声の魅力が、このネット放送で大きく広まったんじゃないでしょうか。
「北京国際合唱フェスティバル」での活躍も公式ブログで楽しく読ませていただきました。
http://blog.livedoor.jp/hokumalechor/archives/29206168.html

「秋の夜の会話」と「Stopwatch and an Ordnance Map」の2曲、確かに言語もバックグラウンドも、さらに音楽形式も全く違いますが、「死」という共通のテーマ。
どれほど違いを際立たせられるのか、また、共通する死の匂いを感じさせられるのか…ティンパニ3台を使用するという自由曲にも期待が高まります。

今回の会場である札幌Kitaraホールは北大合唱団さんにとって、何度も歌ってきたであろうホール。
「ホームグラウンドとなるこの地で北大合唱団らしい演奏ができたら」、その願いのまま、この大学ユース部門のトリを見事に飾って下さい!



(室内合唱部門の記事に続きます)