観客賞スポットライト 室内合唱部門 その4

 




さて室内合唱部門、今日は2団体をご紹介します!


・・・の前に。

 

 

指揮者の独り言 「帰ってきた全国コンクール出場団体あれやこれや」を書くにあたって。




えええーっ?!
もともとこの「観客賞スポットライト」という企画は「コンクール出場団体あれやこれや:出張版」という名前だったのですね。
そして、なぜ「出張版」という名が付いていたかというと、最初にぜんぱくさんという方が始められた企画で、ちょうど10年前に私がお手伝いするため区別で「出張版」を付けたというわけです。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/20081115/1226756311


そういうわけで本家本元オリジナルのぜんぱくさんが書かれる紹介記事。
今回は初出場の団体に限ってということですが、私の文章なんて比べ物にならないくらい含蓄に富み、深い思索と卓越した視点で合唱団と演奏曲へ切り込んでいくに違いありませんよ!
始まるのを正座して待ちましょう!!

 


…では、待っている間に私も私なりにがんばってご紹介します。

 

 

f:id:bungo618:20181108211710j:plain

札幌時計台

 

 



室内合唱部門、続いてはお久しぶりの県から初めましての団体です!

 

 

 



8.茨城県・関東支部代表

M.L.R

https://twitter.com/M_L_R_mito

(女声20名・初出場)

 


初出場おめでとうございます!
茨城県から一般部門の代表は職場部門を除くと、53回大会のあひる会合唱団以来なんと18年ぶり!
ちなみに職場部門を含むと日立製作所以来13年ぶり、大学部門では流通経済大学があひる会と同じ年に出場されたのが最後だそうです

しかしこの団名「M.L.R.」…謎ですよね? 
どういう意味なのか? そもそもなんて読むのか??
M.L.R.団員さんからメッセージをいただきました。

 


初めまして!M.L.R.(むーるーりー)です。
私達は、茨城県立水戸第二高等学校コーラス部のOG合唱団です。
卒業しても歌いたいというメンバーが集まり、2010年に結成されました。
団名は、結成メンバーが1年の時コンクール自由曲として歌った「女に 第2集」より「会う-手紙-川」(詩:谷川俊太郎 曲:鈴木輝昭)を英語にし、その頭文字をとりました。
合唱未経験者ばかりだった当時の私達が、合唱に魅せられたきっかけの曲です。
M.L.R.としても歌っており、全団員が大好きな曲です。



なるほど、輝昭先生の名曲!
「会う(Meet)-手紙(Letter)-川(River)」で「M.L.R.」!

 

(…でもそれなら「むーるーりー」じゃなく「みーれーりー」じゃないかとちょっと思ったんですが、ゴロが悪いですね)

 

 


課題曲の「麦藁帽子」は、立原道造の美しい色彩で描かれる夏の情景に、三善晃先生が甘美なメロディとハーモニーを作りました。
眩い陽射しと吹き抜ける風、花が咲き誇る真夏の光景と、麦藁帽子への憧憬が伝わるように歌いたいです。

自由曲は信長貴富先生の「不可思議のポルトレ」から「歌はどうして作る」「アウギユスト」です。
与謝野晶子の詩であるこの2曲は、どちらも「真実」という言葉に強い思いが込められています。

「歌はどうして作る」では「「真実」は何処に在る。最も近くに在る。」と断言されており、芸術への真摯な姿勢と自信が表現されています。
「アウギユスト」は四男・アウギュストのことであり、その子こそが「「真実」の典型」だと、これも断言されています。
「歌はどうして作る」は、その自信を裏打ちするような確信に満ちた旋律とハーモニー、「アウギユスト」は息子への深い愛情と、それを劇場のように表現するお茶目さが魅力的な2曲です。
私達の母校・水戸二高は、共学ですが女子しかいない学校です。
女性ばかりの3年間を過ごした私達にとって、男尊女卑が根強かった明治の激動期にこのような詩を書いた与謝野晶子には畏敬の念を禁じ得ません。
その強さが少しでも伝わりますように。
3曲とも表情がまったく違うので、それぞれの世界観を表現できるように頑張ります!

私達の支部大会は、これまで最高で銀賞。
今回は金賞を頂いた上、全国大会に行けることが決まって夢のようでした。

しかしいつまでも夢見心地ではいられません!
全国に恥じない演奏ができるように頑張っています。

よろしくお願いいたします!

f:id:bungo618:20181108211204j:plain

 


団員さん、ありがとうございました。
前に出場の合唱団まいさんも、同じ信長先生の作品で寺山修司の肖像を描いた作品。
そしてM.L.R.さんは、与謝野晶子の強い意志と真実を描く作品を演奏されるんですね。

「不可思議のポルトレ」は昨年の同声部門でCoro Piaceさんが「伴奏」「明日」を。
一昨年も同声部門でmonossoさんが同じ曲を演奏されています。
終曲へ向かって盛り上がる選曲も良いですが、2曲目の「アウギユスト」で終わるのもM.L.R.団員さんが書かれているように「お茶目」でお洒落でイイと思います。

名門・水戸第二高等学校コーラス部さんの演奏は全国大会で何度も聴いたことがありますが、共学なのに女子しかいないのは知りませんでした!
そしてメッセージからは与謝野晶子が現代に甦ったかのような強い想いを感じられます。
初出場、「その強さが少しでも伝わりますように」という願いのまま、どうか演奏で貫いて欲しいですね。

 

 

 





続いては室内部門でおそらく一番若い指揮者の団体が登場です。






 


9.福岡県・九州支部代表

Chor Doma

(混声22名・2年連続出場・第66回大会から3回目の出場)

 



昨年は4年ぶりの全国出場だったため
「次回の全国出場は4年後なんかじゃなくもっと早くにお願いします」…などと書いたのですが、その願いを叶えてくれて、今年も出場!

昨年の座談会では

 


若い団体なんだけど、
若さだけじゃなく、
音楽が生きていた感じがありました。

一列に並んで、
指揮者の寺田有吾先生が歌い手の中に入っていて。

そのためか、ひとりひとりの発信力だったり
主体性が生きていて「これがDomaだな!」と

伸びしろがあるな、と感じたし
もっともっと成長するんだろうという気がしたな。

聴いていて「愛おしい」感じ!

若さゆえのひたむきさが演奏に表れ、
「アレルヤ」という喜びが
繊細に、多様に歌われることに打たれました。
「表現したい」という想いがまず存在するから、
合唱団としての未来を感じさせるのだと思います。

http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/01/20/170055



Chor Domaさんの課題曲はG1 Agnus Dei(「Mass for Four Voices」から)(William Byrd 曲)
さて、自由曲は?

Doma団員さんからメッセージをいただきました。 

 

 

今回、自由曲Chanson Éloignéeを選んだ背景には一つの出会いがありました。
今年の1月、スイスからの留学生が入団し、半年間という短い期間ではありましたが、共に歌い語り飲み、一緒に活動しました。
彼がフランス語話者だったため、せっかくなら今年はフランス語の曲に挑戦してみようということになり、選んだのがこの曲です。
これまで、モートン・ローリゼンの曲は何度か取り組んだことがあり、そのハーモニーの繊細な美しさに感覚として心惹かれながらも、リルケの難解な詩、そして馴染みの薄いフランス語の発音には苦戦続きでした。

この詩は、ドイツ詩人として名をはせたリルケが、最晩年を過ごしたスイスの地で、母国語ではないフランス語でもって書いたものです。
それまではどこか暗い影をもつ詩を書いていたのに対し、これらフランス語詩は屈託のない明るさを持っています。
詩人自身もこれらフランス語の詩は「すべてがお菓子を焼くように出来あがった」と述べるほど、気負いなく書かれたものです。
私たちはこの音楽の中に、詩人として生きた一人の男の人生への肯定を見出しました。
幼少期の両親の不仲、軍隊学校での生活、うまくいかなかった結婚生活、そして戦争ーー。
その鋭い感性のために苦悩と孤独に苛まれ生きてきた詩人は、人生の終盤にそれらすべてをあるがまま、我がものとして受け止めたように思われます。
ローリゼンの描く、ゆらぎのある和音やフレーズ、中盤の力強いtuttiは人生への後悔や葛藤、喜怒哀楽を描いているかのようです。

人生経験も浅く若い私達ですが、感じたもの、音楽の中に見つけたものをDoma流に表現していけたらと思っています!

 

 f:id:bungo618:20181108211545j:plain

 

 

団員さん、ありがとうございました。
スイスからの留学生をきっかけとしての選曲、良いですね!

自由曲のChanson Éloignéeは軽く明るい曲調で進みますが、書かれているように「ゆらぎのある和音やフレーズ」が繊細な魅力となっています。
フランス語への挑戦が、今までのDomaさんの演奏と、一味違う雰囲気を醸し出してくれるかも?

そして「私たちはこの音楽の中に、詩人として生きた一人の男の人生への肯定を見出しました」という捉え方。
Domaのみなさん、それぞれの音楽と人生の肯定を1曲の中に映し、ぜひ私たちに伝えて欲しいと願います。
留学生さんにDomaさんのひたむきな音楽が届きますように。

 



(明日に続きます)