観客賞スポットライト 同声合唱部門 その3

 

 


同声合唱部門、今回は2団体をご紹介します。

 

 

 

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札幌羊ヶ丘展望台とクラーク像。







創団してすぐに全国出場。
昨年は金賞2位という波に乗ってる女声合唱団と言えば?


 

 


5.香川県・四国支部代表


monosso

(女声38名・3年連続出場)




今年は佐賀の合唱団MODOKIはコンクールへ出場せず、
monosso1団体を振られる指揮者の山本啓之さん。
Skypeでお話を伺いました。


まず課題曲F3の立原道造:詩、三善晃:作曲の「麦藁帽子」。
そして自由曲に同じ三善先生の「三つの抒情」から
「2.北の海」
「3.ふるさとの夜に寄す」
選ばれた理由からお聞きしたいんですが。


「昨年も一昨年も、
 団員みんなが理解して歌える曲を、
 と邦人作品を選曲して。
 今年も邦人作品を選ぼうと思っていたんだけど。
 課題曲は『麦藁帽子』で決定して、
 それに付ける曲は?と考えた時に
 自分は三善先生以外考えられんし。
 頭にパッと『三つの抒情』が浮かんだんやね。
 『抒情しかない!』と」


実際に練習されていかがですか?
今回の麦藁帽子、1団体を除き、
女声6団体がみなさん選曲されていますが。


「monosso以外はみんな良いサウンド鳴らしそうね…。

 いやあホンット難しいけんね、麦藁帽子!
 他の団体の演奏を聴かせてもらう機会が
 いっぱいあったけど、
 聴いてると難しいし、
 やってみるともっと難しいし。

 三善先生のテンポ感(♩=80)を維持しながら
 音楽が動いていくようにするとか。
 けっこうゆっくりなテンポで
 出だしも音域的に高くないのに流れなきゃならない。

 それができないからと言って
 テンポを速めてしまえば世界観が変わるしね。
 言葉のディクションの捉え方も聴く人にすぐわかってしまうし。
 歌い手の技術が問われる、
 本当に嘘がつけない曲。

 和声ひとつの進行にしても
 いろいろ考えられて作曲されているので。
 だけど奇をてらっているわけでも無いわけや!

 シンプルに思えるけど、内容は凄く濃くて深い!
 やってもやっても底が無い。
 まー、練習楽しいよ!」


続いて中原中也「北の海」
立原道造「ふるさとの夜に寄す」と続きます。


「中原中也のニヒルな感じ…。
 あれはこの作品に、くさびのように違うものを
 埋め込みたかったんじゃないかなあと考えていて。
 そして立原道造の原風景である
 『ふるさとの夜に寄す』ね」


ピアノも美しい作品ですよね。


「そう! 今回の3曲全部に言えるけど
 ピアニストは大変やと思う。
 ピアニスト、歌い手、指揮者…三位一体やね。
 やっぱりそれぞれの領分をしっかり作っていかないと
 今年の作品は演奏できない!
 monossoピアニストの酒井信先生の演奏も
 楽しみにしていただきたいと思います」


昨年の練習のように?(笑)


「丁々発止でやってます!
 monossoとの協演も3年目で
 酒井先生からもウマイ切り返しが
 出てくるようになった(笑)」


切り返しって、漫才じゃないんですから(笑)


「だいたい自分、練習中に指揮振ってないもん!
 パートをバラバラにした団員でチーム作って
 酒井先生のピアノの周りに行ってもらって。
 『ピアノと合唱とのやり取りの中で何か探して!』
 って練習。


 昨年金賞2位というmonossoとしては
 望外の成績をいただき十分なので
 成績は別として、
 昔の演奏の焼き直しじゃなく、
 長い時間かけて自分たちが見つけたものを
 多くの人に聴いてもらえればいいな」

 

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四国支部大会での写真ということ。

 



そういえば課題曲、自由曲とも、
9番目に出場のVOCI BRILLANTIさんとかぶってますが?


「それよ! 
 今年の2月にCANTUS ANIMAEさんとの
 ジョイントコンサートの熊本練習で
 雨森文也先生にお会いした時
 『選曲がかぶっているらしいね!』と言われ
 『マジですか?!』って。

 『いや、自分は昨年の12月に決めてましたよ』
 『僕も同じぐらいの時期だったな』
 …なんて張り合ったけど(笑)。
 まぁ、雨森先生のような方と
 考えがかぶったというのは光栄やね。

 VOCI BRILLANTIさんの名前が出たけど、
 来年3月3日にそのVOCI BRILLANTIさん、
 そして女声合唱団ぴゅあはーとさんの3団体で
 高松でジョイントコンサートをするんだよ」


ああ、ツイッターで「ひなまつりJC」という
アカウントからフォローされ、
「JC…女子中学生?!」と驚いて
ツイッターのアイコンを見たらおっさん3人が並んでて
さらに混乱を招いたという噂の・・・。

 

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「(笑)。
 公募ステージや地元合唱団の講習会、
 ピアニスト講習会など内容は盛りだくさん!
 演奏曲はほとんど作曲家がかぶらないので
 題して『女声合唱作品見本市』


ほー、私も行こうと思います!
…ところで山本さん、先ほど成績は別と仰いましたが
「見本市」なら「にほんいち」を目指すべきなのでは?!


「えぇー・・・。
 それはVOCI BRILLANTIさんにお任せして(笑)」


そんな!(笑)


「いや、成績うんぬんより
 月に一回良い音楽をしたいという想いの方が強い。
 monosso団員、よくがんばってくれよるなと思うんだよ。
 みんなで1ブロックずつ、1フレーズずつ、
 ひとことずつとか、
 音楽をどうしましょうか?ということを
 問い続けながら練習しているから。
 歌い出すと何かを探そうとする音がするもんね。

 monossoも三善先生の作品は初めてで、
 こういう名曲に若い人たちが向かい合えるのは
 凄く良いことだと思うし。

 やっぱり
 『何かを見つけられている』と思いながら
 練習するのって楽しいじゃん!
 毎回新しい発見があるって
 こんな幸せなことは無いもんね。

 三善先生という合唱の王道を通り、
 自分も団員も勉強した結果のチャレンジを
 出そうと思います!」


山本さん、ありがとうございました! 









続いては「言葉の魔術師」が率いる男声合唱団!











6.大阪府・関西支部代表

メンズ・ウィード

(男声29名・4年ぶりの出場・第49回大会より4回目の出場)

 



私が推している本格合唱漫画「はしっこアンサンブル」は「都立端本工業高校」が舞台なんですが。

 

その「工業高校 + 合唱」という組み合わせから「淀工?淀工グリー??」という感想が多いこと!
そう、このメンズ・ウィードさんは淀川工業高校グリークラブ(現・大阪府立淀川工科高等学校)のOB合唱団なんですよね。
現在はOB以外の方もいらっしゃるそう。

4年前には信長貴富先生「Fragments」で客席を泣かせたというウィードさん。
混声合唱部門に出場のうたうたいさんも指揮される、言葉の扱いに長けた高嶋昌二先生が指揮者です。


ウィードさん、今回の演奏曲は
課題曲:M4 春(「じゆびれえしよん」から) (山村暮鳥 詩/信長貴富 曲)
自由曲:みなづきみのり詩、信長貴富作曲
男声合唱とピアノのための「帆を上げよ、高く」より「2.春愁のサーカス」。

信長作品で揃えられましたね。
「春愁のサーカス」はパナムジカさんの楽曲紹介では「スケルツォ風な曲の後に壮大なコラール続く」作品。
ピエロを描いた詩で、おどけ、哀感など様々な感情が高嶋先生の技でどう聴かせてもらえるでしょうか。
 みなづきみのり 夢見るさかなのあぶく 帆を上げよ、高く



関西支部大会を聴かれた方の感想は
「曲作りと言葉の扱いの上手さに『わ~染みるな~~!』って思った!」
…だそうです(笑)。


昨年の3月、合唱団こぶさんの演奏会へ行った時に、客演指揮の高嶋先生関係で淀工グリー最後の部員さんも会場にいらっしゃり。
「あぁ、淀工グリーも終わってしまうのか…」と悲しかったのですが。

 

↓ こちらのブログを読んでみると…



おお、1年生が3人入部!
そしてピアニストの加藤崇子先生からはこんなツイートが。

 

 

 

 

さらに嬉しいニュースも教えていただきました。

 


淀工は今年も一年生が3名増え、現在6名になりました。
コンクールは8名からしか出場できないのでOBと一緒にウィードで出ました。
現役生を全国大会に連れて行きたいというOBたちの願いが叶い関係者一同とても喜んでいます。

 


加藤先生、ありがとうございました。
Kitaraのホールに現役生も乗っているそうです!

母体の団体が無くならず、続いていくことに、ウィードのみなさんもさぞかし嬉しいことでしょう。
「春愁のサーカス」の輝くような最後に、その喜びを重ねて聴いてしまいそうです。



(明日に続きます)