札幌の天気予報。
土曜日 曇一時雪。
日曜日 曇一時雪か雨・・・だそうです。
まだ数日後なので予報が外れる場合もありますが、防寒と靴の滑り止めはしっかりと!
(…飛行機、ちゃんと飛べば良いけど)
11月1日から連載してきたこの企画も今回が最終回!
今日は混声合唱部門最後の2団体をご紹介します。
私の地元岡山県から心に訴える選曲をされる団体の登場です。
13.岡山県・中国支部代表
合唱団こぶ
https://www.facebook.com/kobsoja/
(35名・10年連続出場・第62回大会以来10回目の出場)
こぶという団名は指揮者:大山敬子先生のイニシャル「K」と中学校での教え子「OB」たちの文字をつなげた「K + OB」から。
今では教え子の中学出身以外の団員さんも多くいらっしゃるそうです。
昨年は観客賞第4位。
座談会では
課題曲G3「子どもは……」凄い良かった!
ゆったりと、丁寧な演奏でしたね。
そう、丁寧にフレーズを作っていく・・・。
演奏に想いがありました。
自由曲(林光先生「原爆小景」から)「水ヲ下サイ」は
迫ってくるような・・・。
こういう昔の名曲を今やることに意味がありますよね。
そこからの「夕焼け」! 泣けた!
(あれは泣けた、ズルい、など口々に)
まさに「絶望からの希望」でしたね。
あのバイオリンの音に、もう…(泣く)。
わかってんだよ!
バイオリンが来るとわかってんだけど!(涙)
コンクールとしての評価が
得られるかどうかはわからないけど
こういう場でああいう曲を演奏することに
意味があったんじゃないかな。
課題曲から自由曲までの全3曲に
こぶのみなさんの想いが貫かれた、
コンクールでは無い、
演奏会の1ステージのような演奏でした。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/03/18/091212
今年のCORO MIWOさんとのジョイントコンサートでは松本望「永遠の光」を演奏され。
まっすぐな心で素直に感動を伝えようとする印象でした。
最後に全国大会で多くの人を泣かせた信長貴富「夕焼け」を。
バイオリンの美しい旋律とピアノ、合唱の絡み合いから平和への強い願いが紡がれ、心を打ちました。
こぶさん、今年の演奏曲は
課題曲:G2 Chor der Engel(Johann Wolfgang von Goethe 詩/Franz Schubert 曲)
自由曲:ぼくの村は戦場だった 〜あるジャーナリストの記録〜 から
第二章 111000000
第三章 ぼくは兵士だった
第四章 ねがい
原文/山本 美香 テキスト構成・作曲/信長 貴富
おお、大学ユース部門で出場の都留文科大学合唱団さんが昨年演奏された曲を!
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2017/11/04/184249
(都留文さんは合唱完全版を来月9日の演奏会で初演されます)
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/11/16/181244
指揮者の大山敬子先生からメッセージをいただきました。
七夕の日に巡り合ってしまった水害の難儀を越えて、今総社・真備のまちのいたるところに復興への強い意志と希望が感じられます。
そしてこぶの被災したメンバーのうちの一人はやっと帰って来られ、一緒に北海道に行けることになりました。
私たちは9年前、全日本合唱コンクールで初めて全国大会に出場することができました。
その時の舞台が今年度と同じ、札幌のKitaraホールでした。自由曲に松下耕先生の「今年」を演奏いたしました。
「涙があるだろう今年も 涙ながらの歌があるだろう・・・生きていくかぎり 否むことのできぬ希望が」と歌った舞台から9年目の今年、同じホールで全国大会の舞台に立つことができます。
そして今年の自由曲で私たちが歌うものも「希望」です。
シリア内戦の取材中に銃撃を受け逝去された、フォトジャーナリスト山本美香氏の伝えたかった「希望」を私たちは正しく伝えることができるのか?
戦争を遠い国の出来事としてしか認知していない私たちが歌ってよいのだろうかとも躊躇します。
でも「目をそらしても現実が変わるわけではない。目を凝らし、耳を澄ませば見えなかったこと、聞こえなかったことに気づくだろう。伝えることで、いつの日か、何かが変わるかもしれない。そう信じて紛争地を歩いている。」と書き残された美香さんの言葉に勇気をもらい、曲と向き合っていきました。
自分たちという小さな器のフィルターを通した音楽があるのではなく、楽譜が望んでいる音楽の世界に身を置いて自らを変化させ、発信(歌う)していくことが、正しく伝えることなのだと思い練習しています。
道半ばになるかもしれません。
でも現実とそして希望から目をそむけない覚悟だけは、Kitaraホールに響かせたいと願っています。
こぶ団員の藤原さんからは
今年のコンクール、特に今年は初めて全国大会を経験したKitaraの舞台ですから、個人的には気持ちもいつも以上に特別です。
あのとき立ったメンバーが本番舞台に立つ約半数の15人おり、メンバーの入れ替わりが大きかったのに、こんなにも!?と、ちょっとびっくりした半面、胸がいっぱいになります。
いっぱい笑い、時には涙を流しながらやってきたメンバーですから。
中国支部大会での写真ということです。
大山先生、藤原さん、ありがとうございました。
被災された団員さんも一緒に北海道へ行けるようになったこと、本当に良かったですね。
そして昨年に続いて強いメッセージ性を感じられる選曲です。
「楽譜が望んでいる音楽の世界に身を置いて自らを変化させ、発信(歌う)していくこと」
大事なことだと思います。
しかし、実現するには大変に難しいことです。
これは全ての問題に通じることなのかも。
世界中の紛争も、楽譜が望む音楽にも、現実と希望から目をそらさないこと。
こぶさんの演奏を聴くことで、遠ざけていた問題を自分の側へ引き寄せることになるかもしれません。
10度目の記念すべき全国出場。
めぐりめぐった札幌で、こぶのみなさんがまた強く、真摯に「希望」を伝えて下さることを願います。
札幌の全国大会、最後の団体!
ひとりひとりがソリストとして、豊かな音楽性を披露してくれる団体は?
14.奈良県・関西支部代表
クール シェンヌ
(53名・17年連続出場・第50回大会以来18回目の出場)
昨年の座談会では
素晴らしかったですね…。
参りました・・・。
いや、本当に。
課題曲G1、あれだけ良い声で歌ってくれると
「こんなフレーズだったかな?!」って(笑)。
声が良過ぎると全く別の曲に聞こえてしまうという(笑)。
これぞ「シェンヌクオリティ」!
豊かな、リッチな音が鳴っていて。
それでいて必要な箇所では
テノールのひそやかさが上手くて・・・。
自由曲のJohannes Brahms
「Vier Quartette Op.92」
(4つの四重唱曲)」
やー、良かったねこれも!
前から好きな曲なんですけど、
それをこんな良い演奏で聴ける…幸せでした。
本当に海外の団体みたい! 凄いな!
やっぱり余裕を感じさせる、
オトナの音楽と言うのが素敵ですね~。
うんうん頷きながら聴いちゃいましたよ。
素晴らしい演奏には言葉が出ないですよ(笑)。
「不幸はさまざまだが、幸福は似ている」
じゃないけど、
「良かった!」という言葉に収斂されちゃいますね。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/03/31/144324
団員の山氏@安芸さんからメッセージをいただきました。
奈良市からこんにちは。クール シェンヌは今年創立35周年を迎えました!
今年の課題曲は悩みに悩みました。バードもシューベルトもどちらも良い・・・。
8月の合宿でも指揮者も団員もどちらも捨てきれず、1曲に絞るはずが、結局両方共合宿中歌い込んでしまいました(笑)。
あ、最終的にはG1のW.バードになりました♪
【自由曲について】
1曲目はJ.ブラームスの「5つの歌 op.104」から「夜警 II」
※変ホ長調、3/2、6声部(S,A1,A2,T,B1,B2)
冒頭、「Ruh'n sie?(眠っているかい?)」の呼びかけが、ホルンを表すEs→BのSop下降音で歌われます。
そして同じ音形がT→B1→B2と2分音符で繋がっていき、その間を他声部が音価の違う四分音符、八分音符で縫うように動いていきます。
冒頭のこの短い4小節で、聴く人を一気に音楽の中に連れて行ってしまうところが、流石ブラームス♪
その後全音符のⅠの和音で「Sie Ruh'n!(眠っているよ!)」と歌われ一旦曲は落ち着いた後、属調の変イ長調への転調から半休止。
そして遠隔調の変ハ長調への転調と目まぐるしく進みますが、最後には原調の変ホ長調が戻ってきて曲は締め括られます。
もう1曲は、M.レーガーの「3つの合唱曲 op.6-1」から「慰め」。
※ハ短調、3/4
「慰め」という表題から受ける印象と違い、冒頭のピアノの八分音符での2オクターブの下降、左手の3連符が緊張感を生み出します。
最初に、アルトがC→Es→Gの分散和音で「地上には痛みなど無い」と噛みしめる様に歌い出します。
他パートとの会話を通して納得したかの様に、一瞬同主調のハ長調が支配し平安を感じさせますが、またすぐに打ち消され、次の歌詞「そして死は存在していない」が同じ旋律で、今度はバスに声部を移して歌われます。
最後に、「神に心を寄り添うのだ!」と解決方法が示され「慰め」を手に入れたことにより同主調のハ長調に完全に転調し、「神の愛によって守られている者は、本当に忠実な愛を持っている」と安らかに歌われ、ppで曲は締め括られます。
【広報・渉外 山氏@安芸】
関西支部大会での写真ということです。
山氏さん、素晴らしい楽曲解説をありがとうございました!
軽やかなブラームスの「夜警 II」と、レーガーの複雑な感情を表す美しいフレーズの「慰め」。
シェンヌさんはメシアンやシェーンベルクのいわゆる現代音楽ももちろんお上手なんですが、こういうロマン派(…レーガーでそのレッテルはややためらいますが)の作品演奏は、本当に聴く者を唸らせますね。
昨年の座談会でも出た「声が良過ぎると全く別の曲に聞こえてしまう」は多くの人が思うことなのでは。
もちろん声だけではなく、フレージング、和声の重ね方…音楽を構成するものに、ひとつとして手を抜くこと無く、積み上げているからこその演奏。
話は違いますが、今年の9月に「エストニア国立男声合唱団」の演奏会を聴いて、その「フィンランディア讃歌」で涙してしまったんですね。
まさかこの曲で泣いてしまうとは自分でも思わなかったので、色々理由を探してみたのですが。
自分が出した答えは、シェンヌさんの演奏と同じく「あるべき音が、足りないところも、そして力みもなく、あるがままに響いていたこと」でした。
楽譜が望む美しい音が、まさにそのように響き、聴く者に届く。
今回シェンヌさんが演奏される曲は、ひょっとしたら和声やリズムだけで捉えれば、難曲として扱われないかもしれません。
しかし、シェンヌさんの演奏を聴けば、その譜面にある真の美しさや陰影、輝きを実感できる。
それこそが芸術というものの奥深さであり、シェンヌさんが本物を求めてきた証だと思うのです。
札幌での全国大会、最後の演奏。
シェンヌさんの演奏で「コンクール」ではなく、それを忘れさせるような豊かな「音楽会」になりますように。
<ありがとうございました>
これで大学ユース、室内合唱、同声合唱、混声合唱部門、全48団体のご紹介を終わります。
この札幌での全国大会は思い入れがありまして。
もちろん出身地ということもあるのですが、初めて大学や一般の部を聴いた全国大会でもあり(28年前の北海道厚生年金会館!)、合唱団員として最後に立った全国のステージでもあります。
4年前のmonosso指揮者:山本さんとコールサル指揮者:ぜんぱくさんとのお話でも触れていますが、初めての全国大会というのはそりゃあ記憶に残るものです。
1990年に初めて聴いた全国大会は、高度な技術もそうですが、高い緊張感が続く演奏ばかりで途中で気分が悪くなり、会場のベンチで横になる始末。
おかげで「凄い演奏があった!」という衝撃は残っているものの、具体的な団体の感想はまったく憶えていません、もったいない。
以前からラジオ放送やレコード、CDで全国大会の演奏を聴いていたはずなのに、それだけ生で聴く演奏は衝撃でした。
話は変わるようですが、「全国大会の会場は固定にするべきだ!」という意見もあります。
もちろんその意見の理由を尊重すべきなのは承知しているのですが、それでも自分は今のままの「地方持ち回りの全国大会」に票を投じます。
なぜなら、例えばこんな光景が目に残っているから。
2016年鳥取での全国大会、合唱団まいさんの演奏する「唄」で、あふれる涙をそのままに流し続け聴いていた、地元の女子高生。
2015年長崎、お江戸コラリアーずさんの演奏する「飛ぶものへの打電」に、まさに身を乗り出すように聴いていた九大混声合唱団の男子学生たち。
2012年富山、アンジェルス&ウィステリアさんの「ウミガメの唄」で仕事中に泣いてしまう富山県合唱連盟のスタッフさんたち…。
いくらでも、そんなエピソードは挙げられます。
「地元で全国大会があるから、手伝いのついでに軽い気持ちで聴いたらぶったまげた。
あれがあったから自分も新しく合唱団を作る気になった」
そんな話を何度聞いたことでしょう。
そして断言できるのは、あの時の札幌全国大会が無ければこのブログもこの企画も、間違いなく存在しなかったこと。
ベンチで横になっていた自分は具体的な演奏は憶えていないけれど、こんなことをずっと考えていました。
(…ひょっとしたら、自分が思うよりずっと合唱の世界は奥深く、広いのかもしれない・・・)
28年経ち、自分は全存在を賭けて当時の自分に言えます。
「そうさ! 28年経っても未だにそう思うぐらい合唱は奥深く、広いぞ!!」…と。
自分は今回の連載を、28年前の自分に向かって書きました。
こういうブログをやっていると現役大学生と会うこともあるんですが、賢く、コミュニケーション能力が高く、明るい人ばかりなんです。
パッとしない、石を転がして這い出てきた虫をいじめていたような、学生時代の暗い自分を思い出すとまぶしさにめまいがします。
でも、当時の自分と同じ、そういう人たちにこそ、この全国大会を聴いて欲しいなあと思い、書きました。
札幌でこの連載を読んでいる人がいるのかはわかりませんが。
インターネットはとても便利で、もちろんこれが無ければこの連載は一行だって書けやしません。
でもいつも思うのは、ネットの世界だけで完結するのではなく、リアルに触れるきっかけとしてネットがあって欲しいということ。
この連載をきっかけに、「札幌の全国大会に行ってみようかな」と思ってもらえれば最高だし。
そうじゃなくても、次の全国大会や、他の演奏会、記されている曲を聴こうと思うことでも。
28年前の自分が感じた衝撃。
「この世界には自分が想像できないほど奥深く、広いものがあるんだ!」
この連載を読まれたあなたの、そんなきっかけになりますように。
新千歳空港へ向かう車窓から。
* * * * * * * * * * *
今回も本当に多くの方にお世話になりました。
すべての合唱団のみなさまにお礼を申し上げるのはもちろんですが、メッセージをご寄稿して下さった方、団員さんをご紹介して下さった方、写真を送って下さった方・・・などなど。
もう一度この場で、お名前だけを記して、この連載を終わりにしたいと思います。
都留文科大学合唱団ツイッター担当者さん、西川さん、河野さん、いつつばさん、SHIGEさん、りかさん、新潟大学合唱団ツイッター担当者さん、高橋さん、うえのみおうさん、安藤さん、まのさん、といさん、岡田さん、Coro Ponteツイッター担当者さん、島根大学混声合唱団Uさん、島根大学混声合唱団Sさん、わふーおさん、北海道大学合唱団中の人さん、渡邉さん、エリカさん、合唱団「櫻」Sさん、難波夕鼓先生、天馬さん、藤森さん、鈴木さん、まやさん、合唱団まいKさん、合唱団まいTさん、M.L.R.ツイッター担当者さん、寺田有吾先生、Chor Doma:Kさん、まぐろ。くん、細てつさん、合唱団「い~すたん」Yさん、女声合唱団ソレイユIさん、松本さん、合唱団お江戸コラリアーずマネージャーIさん、古作敦さん、山本啓之さん、さゆさん、加藤崇子先生、大原靖久先生、歌うコンシェルジェさん、山氏@安芸さん、おのださん、きらりんさん、ケンゴさん、湘南はまゆうAさん、muffさん、MARさん、CANTUS ANIMAE:Fさん、ひしきさん、Mariさん、M園さん、合唱団やえ山組ツイッター中の人その4さん、村上信介先生、富吉さん、パナソニック合唱団Wさん、Le camarade:Cさん、黒川和伸さん、梅さん、岡崎混声合唱団Oさん、岡崎混声合唱団Hさん、今くる代さん、なってぃさん、Combinir di Corista:Eさん、阿部さん、大山敬子先生、藤原さん、shokoさん、合唱倉庫さん、阪本健悟さん、鯖くん、全日本合唱連盟中の人さん、帰ってきたぜんぱくさん。
お名前が漏れた方がいらっしゃいましたら大変申し訳ありません。
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(観客賞スポットライト2018 おわり)