2018年の演奏会、コンクールを振り返る・前編
みなさま、今年もよろしくお願いします。
たまにはこういうことをやっても良いと思って。
2018年1月27日
Sing and Pray KOBE
兵庫・神戸文化ホール
神戸での国際合唱コンクール。
ポーランド、フィリピン、タイ、韓国、中国、インドネシアなど海外15団体、国内7団体、総勢1200名が参加予定とのこと。
…むーん、チケット代無料のコンクールなので批判は控えていたのだけど。
直前まで参加団体やスケジュールが分からず、さらに少ないスタッフで運営されていたので手が回っていないなあ、と感じることが。
そして難しいとは思うが、特に海外団体の予選の基準はどうなっているんだろう?と思うほど、レベルの低い団体が幾つもあった。
もうちょっと審査基準を厳しくして団体数を絞っていれば、夜の10時までコンクールが続くことも無かったのでは?と。
(高校生にその時間まで演奏させることの可否も含めて)
ただ、昼休憩、夜休憩がそれぞれ2時間以上あり、神戸の街でゆったり食事と観光を楽しめたこと。
演奏中のスマホでの録画といい、「ユルい」国際合唱コンクールの雰囲気を味わえたこと。
レベルはともかく特に海外団体のいわゆるコンクールらしい選曲、雰囲気から外れた演奏もあって楽しめたこと。
神戸のコンクールを参考にして、全日本の全国大会や声楽アンサンブルの全国大会で、出場団体を今までの3分の2に制限したら不満が続出するだろうか?
会は早く終わり、休憩時間が増え、ゆとりある視聴ができる(もちろん審査員も)。
そもそも今のコンクールは、これが本当にベストの時間割なのだろうか?
逆に、ゆとりのまったくない1秒を争う進行、最初に聴いた団体を思い出せないほど過酷な長時間の日程のコンクールが、現在の日本の合唱の鑑賞スタイルを作っているのではないか?
・・・など、「無料なんであんまり厳しく言えないけど、それはそれとして面白い体験でしたよ」というイベントでした。
ちなみに1位が「百年後」を演奏した武庫川女子大付属高校合唱部、2位が武庫川女子大付属の中学校合唱部。
武庫川女子も当然良かったけどロシアのジュニアコーラスも良かったです。
次回もあるんでしょうかね?
1月28日
ブルガリアン・ヴォイス アンジュリーテ 広島西条公演
広島・東広島芸術文化ホール くらら大ホール
素晴らしかったブルガリアン・ヴォイス アンジュリーテ。
力強いという言葉を超えて、強靭な声が作り上げる広がりと深さで、後半は頭が痺れたように。
CDでは何度も聴いた曲の実演で、なるほどこういうアンサンブルなのか、という発見もあったし、ある意味10代の終わりから聴いていた青春の曲でもあるので、音楽の説得力と自分の思い出が相まってヤバかった。
ひとりひとりの歌手としての実力の高さとともに、あれだけ精緻に響きとリズムを合わせる練度。
いやあ、本当に聴けて良かった。
結成30周年記念で23年ぶりの来日だそうだけど、次回はもっと早くに訪れて欲しいな!
唯一残念だったのは、指定席で合唱の全体像を掴むため前から13列目の席を取り、それでも十二分に鳴り響いていたけど、叶うならもっと前の席を取って音のシャワーを浴びたかった、音に打たれたかった!
アンコール曲「トドラは夢見る」
なお、「酒の街:西条、帰りに良い日本酒飲もうかな~」と浮かれていたが、終演後に突然の体調不良。
理由はその日の朝、神戸で食べた貝の肝による腸炎で、この後3日ほど休み、他にも溶連菌陽性などで1月は全部で1週間ほど休むことになり職場での立場が非常に悪くなる…。
そんなわけで予定では2月に有休を取り松原混声合唱団さん、千葉大学合唱団さんの演奏会に行くはずだったのだが、そんなの許されるわけもないので泣く泣く断念。
行きたかった・・・。
2月18日
コールサル7th.Concert
松山・松前総合文化センター 広域学習ホール
東京から駆けつけた作曲家の森田花央理さんに応えるような気迫のこもった「石像の歌」。
客演指揮者の山本啓之先生の言葉の捌きが光り緊張が満ちていた「幼年連祷」は良い曲を良い曲と感じさせる好演でした。
あと情緒ある伊予鉄道郡中線に乗って、レトロな雰囲気の松前(まさき)駅で降りたのも良い思い出。
松山は好きな街なので機会があればまた行きたいなー。
3月18日
G.U.Choir5th演奏会
兵庫・川西市みつなかホール
指揮者の山口雄人さんがエセンヴァルズが好き過ぎてラトヴィア行ったとか、WYC参加された経験とか、森田花央里さんの委嘱作品とか、非常に刺激的で充実した演奏会でした。
これだけの作品をこれだけ高い水準で、深い共感を持って演奏されたことに、敬意を抱きます。
行って良かった!
↓ 詳しい感想。
4月29日
若い指揮者のための合唱指揮コンクール
東京・第一生命ホール
前回はブログに詳しい感想を載せたのだけど、今回は夜勤明けでほとんど眠っていない状態で聴いていたもので頭がモーローとしていました。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2016/05/21/141904
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2016/05/22/171712
ツイッターでの感想を転載します。
本選に出場された6人のうち3人まで終了。
その年代、作曲家、作品「らしさ」とは何か?
そのままでも充分に高水準なPVDの演奏に対し、わずかな傷の芽を摘み取るのか?
それとも自身の思う作品の魅力を加えるのか?
20分でも指揮者それぞれの向かい方が伝わり興味深い。
そして「過去に学び、言おうとあらかじめ用意してきたこと」だけではなく、現在、今のPVDの演奏にしっかり対峙し、生きた指摘ができるかどうか。
それが指揮者としての厚みなのかもしれないな、などと。
6人のリハ終了。
「歌」としてのアプローチか、それとも全体の「音楽」からのアプローチか。
「歌」の人が多かったけど、個人的には「歌」と「音楽」両方への視点がある人に好感を持ちますね。
本番終了!
リハ、本番合わせて一番印象が良かったのは谷郁さん。
メンデルスゾーンでは言葉、アクセントに言及する。
ベースの音を聴かせ音楽の主従を理解させる。
生理的に緩みがちなテンポの箇所を指摘し、流れを澱ませない。
歌と音楽、両面から深く音楽を捉えていた。
谷さんの他にも今回の本選出場者は図形とテンポだけではなく、みなさん音楽がちゃんとあったが、谷さんはそれに加え、歌としての呼吸、フレーズの面からも合唱指揮として優れていたと思う。
続けてリハが良かったのは市川恵さん。
ブルックナーを歌の面から、わかりやすく明確に、イメージ豊かに指導。
しかも指示と歌わせるテンポがとても良い。
「この人の指揮なら歌いやすいし、楽しいだろうなぁ」と思わせる。
リハが続けて良かったのは白井智朗さん。
緊張感あるノールハイムを和声、細やかなテンポと、全体の音楽から見据え、キリキリと要所のネジを締めるようにして、さらに音楽として一段高めた。
本番で印象が凄く良くなったのが浜田広志さんと中村径也さん。
どちらもリハで指摘していたが個人的にはピンと来なかった箇所が、通すと実に効果的だった。
また両名とも指揮に雰囲気があり、音楽と棒(…腕だけど)がしっかり結び付いていた。
そんなわけで順位予想?わかんないよそんなの!笑
【速報】
— TokyoCantat (@TokyoCantat) April 29, 2018
1位 中原勇希
2位 白井智朗 谷 郁
3位 該当なし
ノルウェー・スカラシップ賞 中原勇希
ラトビア特別賞 中原勇希
初見演奏賞 中原勇希
ルネサンス賞 白井智朗
ロマン・近現代賞 谷 郁
オルトナー副賞 中村径也 白井智朗
オーディエンス賞 市川 恵 pic.twitter.com/k5HiK1xtZK
結果。
…そういうわけで1位の方には全く言及できず。
(こんなの本命だけ外して、2位、3位、4位当てたようなもんじゃん!)
私の耳は節穴ということが判明いたしました・・・。
それにしてもモデル合唱団のEnsemble PVD(音楽監督:藤井宏樹)は本当に素晴らしかった。
素晴らしい発声とさまざまな指揮者の要求に応えられる柔軟性。
おまけに指揮者へのホスピタリティまで感じさせる笑顔。
「PVDの献身無くして今日の指揮コンはない」との言葉に完全同意。
いつか演奏会へ行きたいなあ。
4月30日
「小さな夜の音楽会#06」ルックスエテルナ・鈴優会
東京・豊洲文化センター シビックホール
「小さな夜の音楽会#06(通称・さよこん)」良かった。
ルックスエテルナ、鈴優会という二つの団体の個性と演奏が良かったのはもちろん、選曲もルネサンス期と今をときめく邦人作曲家の作品ということで対比が興味深く、全部で1時間ながら密度の高い、非常に充実した会だったと思う。
鈴優会さんによる四人の作曲家による連作ミサ曲『深き淵より』も森山至貴、相澤直人、市原俊明、名島啓太各氏がキリスト教徒ではないため「キリスト教徒ではない方が、宗教曲を作曲する意味は?」との問いに対する各氏の答えが興味深かった記憶がある。
市原俊明氏の「Sanctus」が後半に口笛、フィンガークラップもあるノリの良い曲で楽しかったです。
あと1時間という短い時間が良かった。
今回は「これを聴いた!」と印象が強かったし、集中が続いた。
この会のプロデューサー三好くんの名司会で引き出される指揮者、作曲家の言葉に客席とステージがぐっと近づいた感じ。
(あんまり褒めると調子に乗るから褒めたくないんだけど!)
(後編に続きます)