観客賞座談会・混声合唱部門 最終回




観客賞座談会・混声合唱部門。

7位以内に入らずとも印象的だった団体の感想の続きです。

 

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kitaraホール。


 



VOCE ARMONICA

(35名)

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課題曲G1凄く良かったねー!


うん、良かった。
指揮者の黒川さんが研究して
「バードのおらしょ」と表わすだけあって
底にある情熱と優しさも感じられて。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/11/19/210622


弾圧されている悲しみが伝わりましたね。


頭が良い演奏だなあと思いました。
最初の女声2声の絡みも
今日演奏された中で1,2を争うぐらい良かった。


フレーズのふくらみや
ソプラノの高音域から降りるところも
ちゃんと美しさを意識していました。


自由曲のバーバー「Agnus Dei」は?


もうちょっと内省的な曲のイメージなので
驚きました(笑)。


最初からフルスロットルだったよね!(笑)
ソプラノの熱演!
ピアニッシモの安定感!


音程がとても良かったです。
発声も非常に練れていて。


上手だしボリューム感も出していましたね。
ただ難しいと思うのは、あの発声は
あの年齢層だからこそだと思うんですよ。
高い音圧を出すのは発声学的に言うと
ガッと声門閉鎖で締めて強く当てないと出ない。
今はあのサウンドを出せるけど、
これから続けられるのかなという懸念がある。


黒川さん自身も声楽家なので
今後の方針について考えているのでは。


あとそんなに積み上げをせず、
一気に天下を獲りに行ったような。
団員さんがこの曲を
どういう背景で歌っているのかが
今ひとつ見えてこなかったかな。


それも若さだし、
黒川さんが団員さんを
強く引っ張っているということかもしれませんね。
いや、安定感もあって
音程も発声も素晴らしい。
じゃあこの演奏に何を加えれば良いのかな?と。
むしろ引いちゃった方が?


あー、引いてフレーズを
長く取って欲しかったかな。
でも私たちこの曲は
良い演奏聴き過ぎているから!(笑)


一同 そうそう!(笑)


あの曲をあの人数で
演奏したというのが素晴らしいですよ。


この作品を選曲したことがまず凄いし
演奏も逃げずに真正面からぶつかったことを
高く評価したいですね。
演奏では引くことが大事かもしれないけど、
姿勢としては小器用にまとまらず
このままガンガン攻めて
おっさんたちを困惑させて欲しい(笑)。
未来の演奏に大きく期待しています!



メールの投票では

 

課題曲もしっかりとした構成で、音色も素晴らしかった。
そして何より、秀逸、感動の自由曲でした。


…という感想がありました。









Baum

(65名)


女声の就活スーツ止めましょう!


一同 (笑)。


いや、若い人があの服なら
合わせやすいというのはわかるんですよ。
でもせめてブラウスとか…。


ロングスカートや
パンツスタイルも認めるとかね。
年配の人がああいう服を着てるの、
見てると悲しくなっちゃう。


男声もリクルートスーツなら良かったのに!


一同 (笑)


その発想は無かった(笑)。
怖い考えなんだけど、
Baumなりの年齢制限なのかも?
ほら、アイドルグループで
制服似合わなくなって卒業するように。


「私、この就活スーツ、
 似合わなくなったので退団します…」って?
そんなバカな!(笑)


文吾 音楽の話も・・・。


音取りの音量と音色は
なぜアレだったんでしょう?
音量は大きすぎたし、
音色が作品に合っていなかった。


文吾 …音楽?


「無伴奏作品の音取りは
 その作品に前奏があるように」
という言葉、確か文吾さんから聞いたような?


文吾 ごめんなさい(笑)。
   自由曲:ウィテカー「I hide myself」
   ウィテカー特有の和音を
   整えてちゃんと出していました。


凄く綺麗でした!


男声の響きを高くしようとする気持ちが
見えた演奏でした。
サウンドを持ち上げようとしていた。
惜しかったのは英語のディクションが今一で
言葉が聴こえなかった。


地元の団体だけあって、
ホールを鳴らす術をわかってるなという
演奏でしたね。
初の銀賞、おめでとうございます。


ツイッターの感想では

北の大地で、この会場でこういうコーラス聴けて幸せだわぁ…と。
バームクーヘンみたいな雛壇の形状と相まってホールとの相性までも抜群でした。

…というのがありました。

 

 

 




混声合唱団うたうたい

(47名)


九州大会の演奏が
ホントにすっごく良くて。
だから今日のこの演奏は
「どうしちゃったの?!」って。


うん、九州大会の演奏は別団体みたいだった。
今回はホールの相性が悪かったのかなあ。
ブレスが入ってないから発声も浅くて。
昨年の演奏は良かったのに。


昨年の全国聞いて
「上り調子だな!」と思ったんだけど…。


「今年こそは!」と気負い過ぎたのかもね。


でも課題曲G3、フレーズの抑揚と余韻、
音楽のメリハリとさすが高嶋先生!と思う
良い演奏でした。


自由曲の
千原英喜「Agnus Dei = 空海・真言・絶唱」も、
男性の語り部が凄くがんばっていました!


全体の音楽でも、目指そうとするものは
しっかり伝わってきましたよ。




 

 



最後の団体です。

岡崎混声合唱団

(77名)

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課題曲G3
母体の岡崎高校も間宮作品を
演奏されていることもあって
その良さが出ていました。
オーソドックスな中にも
ちょっと民謡っぽさがあって。


4声が合わさった音と響きが
良く考えられているなあと。
メリスマがちょっとグレゴリオ聖歌っぽくて
違和感があったけどね(笑)。


少し歌い手と指揮者だけの世界だったかな。


男声のサウンドが高い響きだったのは良かったです。


男声…特にベースがデクレッシェンドで
ピアニッシモになるところとか
優しさがあって。
繊細で優れていました。


自由曲:三善晃「嫁ぐ娘に」より
「3.戦いの日日」は?


こちらもベースが良かったですね。
全体では言葉と音楽を繋ぐ意識をもう少し…。
単語だけ単体で歌っていたかな。


サラッと流していたというか。
でも「5.かどで」は良かった!


一同 そう! 良かった!など同意。


この曲はテノールが良かった。
娘よ さようなら」の箇所で
ジーンとしちゃいましたよ。




ツイッターの投票では

ピッチ正確なG3の安定に安心感。
三善先生は深いところまで染みてて、余韻までも岡混らしさ全面。

…という感想がありました。








《観客賞を振り返って》

…どうも、言いたい放題で本当にすみません!
この観客賞は2012年富山での全国大会で、仲間内にメモ帳を切り取った投票用紙を配ったのが始まりでした。
それからはメール、ツイッターでの投票と広がり、投票数が40~50票ほどになったのは非常に喜ばしいこと。
今まで投票して下さったみなさまに心から感謝いたします。

「観客賞」と銘打っているものの、「観客」の定義は難しく、この観客賞も「各部門の全団体を聴いていること」「ネットで《観客賞》というものに届き投票できること」「判官贔屓を防ぐため、実際の審査発表前に集計は締め切っている」というハードルの高さがあるのですが…。
(過去に、「運営さんにも協力していただき、『全団体を聴かなくても投票OK』で実行してみようか!」という案も出たのですが実現せず。実現できたらどういう結果になっていたかな?)



ちょっとこの観客賞の傾向みたいなものを。


〇意外と技術を重視?

もちろん全国大会ですからそれほど技術に差は無いのですが、「技術面では目をつぶって…」という団体は上位に入らないです。
コンクールに集う人たちだから当然なのかもしれませんが、実際の審査結果とそんなに変わらないのが面白いところ。
今年のおえコラさんのように審査結果も1位、観客賞でも1位という例が過去にも多々ありました。
銀賞の団体が観客賞1位を受賞されたことは何度もありましたが、まだ銅賞受賞の団体ではありません。
今後、出てくるかな?



〇初出場は有利?

初出場の団体はもちろん勢いがあるのですが、その勢いと新鮮さが観客賞では高く評価される傾向があるようです。



〇ブーストをかけるもの

邦人曲の日本語作品や鳴り物、演出はやはりブーストをかけ、上位になる可能性が高くなるようです。
ただ演出も「やれば良い」というわけではなく、その作品世界を充分に満たした技術と表現がないと票が集まらないよう。
「全団体聴く条件」を排したら、ブーストはもっと強まるのでしょうか。



〇完成度よりも?

全日本の審査基準がおそらく減点方式だからかもしれませんが、観客賞では「傷があってもアピールする演奏」は強いようです。
完成度よりも、心に深く刺さってくる演奏の方が票が集まりやすい。
ただ、心に深く刺さって、さらに完成度も高い演奏はもっと集まりやすい(笑)。





観客賞を続けていて意義を感じることは「演奏について語る場を提供している」というものです。
それも、できるならポジティブなものを。
本能かもしれませんが、私たちはまず危険や悪いものを語り合って共有し、安心したいという気持ちが強く。
それが理由で演奏感想でもネガティブなものが目立ってしまうようです。
あと書き方の問題で、他団体を貶めたり、留保を付けたり。
演奏の当事者が読んで、嬉しくなる感想にはなかなか見当たらないなあと、観客賞以前、ネットを始めた頃から感じていました。

ツイッターでハッシュタグ #混声合唱18 #同声合唱18 #大学ユース18 #室内合唱18 でそれぞれ検索すると、2団体だけという縛りがあるせいか、ストレートに「この団体の演奏が好きだ!」というのが伝わって、とても嬉しくなります。
「これを読みたいから観客賞を続けているのかも」とまで思います。

優れた知見による真っ当な批判の重要性ももちろん理解しているのですが。
その前に「私は、あなたの演奏をしっかり聴くつもりだし、良い所はちゃんと認めたい!」…そういう姿勢を示し、演奏者と観客との信頼性の構築から始めなければいけないのではないでしょうか。
批判だけが宙に浮いていることに私は意義を認めません。

 

 
このツイートのように「話を理解しないと褒められない」というのは演奏でも同じだと思うのです。
それと、批判は自身の理想の中で足りないものを指摘するだけなので容易いですが、賞賛は自分を超えるもので非常に創造的なのでは、とも。

・・・などと書きながら、今回の座談会でも多く批判的な文言を載せてしまいました。
どの程度編集すべきか、毎回非常に悩むのですが、「しっかり聴くつもりだし、良い所はちゃんと認めたい」という姿勢が伝わっていればありがたいです。
それでも不快に思われた方がいらっしゃいましたらお詫びいたします…。


ツイッター自体もいつまで続くかわからないし、投票方法、座談会などいろいろ改善しなければならないことは多いのですが、今後ともご指摘や応援をいただければ嬉しく思います。
とりあえず今年の京都・全国大会の座談会、料理がおいしくてビールがスーパードライじゃなくてそんなに高くない個室の店、どなたか知りませんかー?!


(2018年度観客賞座談会・おわり)