観客賞スポットライト 大学ユース部門 その4



今回も2団体をご紹介します。


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栄摂院紅葉 Photo by Nodaさん

 

 

 



7.愛知県・中部支部代表

混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ

(混声123名・4年連続出場・第64回から5回目の出場)

 



毎年100人を越える人数のグランツェさん。
伊東恵司さんが指揮者の団体です。

昨年は会場へ向かう飛行機欠航というトラブルながら見事な演奏でした。
詳しくは昨年の「全国大会あれこれ・前編」の「グランツェさんの全国大会」をお読みください。



「ピアノからフォルテまでのダイナミクスの幅広さがすごく良く出ていたし、メリハリのある演奏」
特に信長先生の「第一章 絶え間なく流れてゆく」が「気合が凄かった」「貫かれた」などと大変好評でした。

グランツェさんの課題曲は大学ユース、室内合唱部門で唯一のG4 雪(「甃のうへ」から)(三好達治 詩/川浦義広 曲)。
課題曲にグランツェさんは公募作品のG4を多く選ばれている印象があるのですが、その解釈・演奏も毎回、若者らしい魅力に満ちた生き生きとした印象があります。

それでは自由曲に何を選曲されたのでしょう。
団長の髙田さんからメッセージをいただきました。

 


こんにちは、混声合唱団名古屋大学コール・グランツェです。
今年も全国大会という素晴らしい舞台で演奏させていただけることを非常に嬉しく思います。
今年の全国大会は指揮者の伊東恵司先生のふるさと京都での開催ともあり、団員の熱意もより一層高まっております。

さて、今年度は自由曲としてJozsef Karai作曲の「De Profundis」を演奏いたします。
この曲は聖書の詩篇をテキストとして手掛けられた作品です。
神々に選ばれし民ユダヤ人が"深き淵"から主を呼び求め、待ち望み、許しを乞い、救いを求めるという内容を歌っています。
救いを求める悲痛な祈りの言葉もやがて熱を帯び、魂の救済を主へ訴え、やがてそれは絶叫の渦へと姿を変えます。
一度救われたかのように感じられたのも束の間、現実に戻され、再び救いを求めて深き淵から祈ります。
コンクールという舞台でこのような曲を演奏することは、私たちにとって非常に大きな挑戦であると心得ております。

「歌う」という言葉は「訴う」を語源としているという話はよく言われております。
私たちが過去の人々の思想や感情に想像力を巡らせ、私たちなりの解釈で聴いてくださる皆さんに訴えかけること。
それが私たちが歌う上での義務であり、この曲を表現する上での責務であると心得ております。

全国大会では主への祈りを誠心誠意「訴え」ます。

 

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中部大会終演後ということ。

 


髙田さん、ありがとうございました。

自由曲のKarai「De Profundis」は髙田さんから申し分の無い紹介をしていただきましたが、いわゆる合唱という枠から出て、人々それぞれの祈りと叫びを感じられるような箇所がある作品です。
ともすればその箇所はキワモノの効果と受け止められる危うさもあるのですが、表現力に長けたグランツェのみなさんならその心配は無用でしょう。

作品の背景を学び、その時代に生きた人たちに思いを馳せ、今を生きる自分たちの歌として「訴え」る・・・。
ステージに表現者として立つ者の姿勢として、とても望ましいものだと思います。
グランツェのみなさんのその素晴らしい姿勢が演奏に結び付き、聴く私たちを別世界へ誘ってくれることを期待しています。






続いて、地元:京都のこちらの団体です!

 




8.京都府・関西支部代表

同志社グリークラブ


(男声43名・第1回大会から11回目・2年ぶりの出場)



指揮者はこの同志社グリー出身の伊東恵司さん…って、前のグランツェさんと連続?!
はー、人気指揮者だとこういうこともあるんですね。
同志社グリーさんで伊東さんが出られた時には精一杯拍手します!

2年前の出場時には課題曲「葉月のお月」の関西弁のニュアンスがさすが。
レガートができている、柔らかい発声が良かった…などの感想がありました。

地元:京都での開催で同志社グリーのみなさんは気合十分でしょう。
さて、選ばれた曲は?

団員さんからメッセージをいただきました。

 

 

【選曲】 
課題曲M2「Ne pitkän matkan kulkijat」
今年2月に開催した弊団の定期演奏会でよく似た言語であるエストニア語を扱った事や、今後のために外国語の経験を積んでおきたかった事などが理由のひとつです。
また、大まかに分類した時に激し目の曲である自由曲と円やかな響きが特徴であるこの曲を歌い、正反対とも取れる別種の面白さをコンクールの場で披露したいという思いがありました。

自由曲は男声合唱とピアノのための組曲「回風歌」から終曲を選択しました。
今年の全国大会は1957年の開催以来、実に62年ぶりに我らがホームである京都で行われます。
今を生きる115年目の同志社グリークラブとして我々が出来る事は何かを考え、数ある候補曲の中から現代を代表する作曲家である松本望先生の作品を選ばせて頂きました。
緩急激しい曲調の中で足掻き続け、その果てに見えた、決意のあらわれを高らかに歌い上げ、コンクールでの演奏を締め括ろうと思います。

 

【全国大会への想い】
同志社グリークラブが最後に全国大会に出場したのは、2年前の第70回全日本合唱コンクールでした。
当時は金賞を獲るまでに至らず、客席で審査発表を聞きながら悔し涙を流しました。
今年は特に京都開催という事もあり、全国大会出場というものに強いこだわりを持ち、ひたむきに練習に取り組んできました。 
今回の関西合唱コンクールにて一位金賞を受賞し、夢の舞台へ進むことが出来、大変嬉しく思っております。

我々同志社グリークラブを応援して下さっている方々には、感謝しても感謝しきれません。
弊団のモットーである「聴衆と一体となった音楽」を我らがホームである京都の地で感じていただければ幸いです。
今後とも同志社グリークラブへの応援、よろしくお願い申し上げます。

 

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「毎年参加させて頂いている祇園祭の山鉾巡行の前夜に行われる宵山コンサートの様子です。今年は大雨が降るなか、たくさんのお客様の前で熱唱しました」とのこと。

 

 

 

ありがとうございました。
京都開催は62年ぶりなんですね!
地元:京都での大会に出場できる嬉しさが伝わってくる文章と思いました。

 

 


同志社グリーさんはツイッターアカウントで京都の観光名所をご紹介してくれています。
現在は1回だけですが、これからどんどん更新されることを期待して!

 


さて、課題曲はシベリウス!
同じ曲でも、きっと関西学院グリークラブさんとはまた違う魅力を引き出してくれるはず。
そして自由曲は松本望先生の男声合唱とピアノのための組曲「回風歌」から終曲の「3」。
団員さんが書かれるように緩急激しい曲調、それは鋭いリズムから抒情的なフレーズ、不穏な無伴奏から歌い上げる最後まで。
木島始氏の詩は、多くの困難に抗うような決意で貫かれている作品です。
昨年出場できず、「夢の舞台」とまで書かれたこの京都での全国大会への経緯と重なるものがあるのではないでしょうか。
同志社グリーのみなさんの強い決意が、同じように困難に取り囲まれた私たちと「一体となった音楽」を生み出しますように。


(明日に続きます)