観客賞スポットライト 同声合唱部門 その1




2日目、11月24日 日曜日




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ロームシアター京都
(Wikipediaの写真転載。ライセンス確認済み)




昨日までは室内合唱部門への出場団体をご紹介していたこの企画。
午前10時から開場、10時半からオープニング、同声合唱部門の始まりです。


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男声、女声が出場するこの部門。
全11団体中、今年は女声が7団体と多め。

さらにこの同声部門の特徴をあげると「年代の幅が大きい」ことでしょうか。
同じ男声・女声でも、年代が違えば、これほど印象が違うと驚くかも。
若い年代の純粋さ、または人生経験がにじみ出た演奏など、それぞれの年代の良さを発見することになるかもしれません。

さらにこんなプロモーションも!

 


#全国大会で朝カツ推進運動


これは私も推進しないわけにはいきません(笑)。
みなさま、どうぞ遅刻などなさらないようお気を付けて。
ぜひぜひ、最初の団体から聴きましょう!


同声合唱部門のトップバッターは、もちろんこちらの団体です!

 

 

 

 

 


1.島根県・中国支部代表

女声合唱団フィオーリ
https://twitter.com/chor_fiori

(女声30名・3年ぶりの出場・第45回大会から18回目の出場)



フィオーリさんは3年前の出場時には三善晃作曲 こどものための合唱組曲「オデコのこいつ」より「けんか」「なぜ」を丁寧に演奏され、音色、表情変化も巧く、語り口も優れていた記憶があります。

 

今年の課題曲はF4 その木々は緑(「その木々は緑」から)(覚 和歌子 詩/横山潤子 曲)
さて、自由曲に凄い作品を持って来られたそうですが?

フィオーリ団員さんからメッセージをいただきました。

 


令和元年は私たち女声合唱団フィオ-リにとって変革の年となりました。
結団から34年、今年の第30回記念演奏会にあたり、初めて委嘱作品に挑戦することにしたのです。
作詞 金丸桝一、作曲 信長貴富「そうそうと花は燃えよ」という単一楽章の大曲を、以前から師事している雨森文也先生の客演指揮、初めてお招きした平林知子先生のピアノで演奏するという、とてつもなく高い山に登るような心持ちで取り組みました。

 「そうそうと花は燃えよ」は、“人はなぜ生きる”と生涯問い続けた詩人金丸桝一の長編詩です。
―地球において時は水のようにそうそうと流れていく…今、この一瞬に、そうそうと燃え上がる花のように、人生の日暮れを告げる錚々(そうそう)とした鐘の音のなかでも、最期まで怒り狂うほどに懸命に生きよ―それは決意であり、私たちへの励ましではないかと感じています。
この素晴らしい詩に、信長先生の美しく壮大なメロディーが一層の輝きを与えてくださりました。
冒頭のメインテーマからさっそく、新しい信長ワールドに引き込まれてしまうことでしょう。

初演に向けて、信長先生ご本人から音楽の意図を細かく伺い、柔和な人柄の中にも音楽への妥協はしない強い意志を感じ取って、この曲と向き合ってきました。
練習を重ねて新しい音楽を育て、この度の全国大会で多くの皆様に演奏を聴いていただけることに、喜びをかみしめています。
コンクールでは、演奏規定用のショートバージョンをお届けします。
初演ノーカット版は、来年の定期演奏会で、常任指揮者 石橋久和先生による再演が決まっております。
同時に名曲「百年後-タゴールの三つの詩―」の公募合唱も予定しております(詳しくはSNS参照)。
2020年7月5日(日)は島根県松江市のプラバホールへぜひお越しください。
パワーアップしたフィオーリの演奏をお楽しみに!!

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(左)今年6月の演奏会舞台袖での撮影。
(右)演奏会後、先生方へ感謝の気持ちを込めてサプライズで歌のプレゼントをしているところだそう。



ありがとうございました。
なんと委嘱作品の演奏団体が1番目なのは、前日の九大混声合唱団さんと同じ!
しかも作曲家は同じ信長貴富先生!
これは面白い偶然ですね。

さて、いただいたメッセージからも「私たちの歌」として、並々ならぬ想いが伝わってきますが、それもそのはず。

 

わたしたちの団名であるフィオーリはイタリア語で“花”。
信長先生がいつかは取り組みたいと思っておられた詩の題名に“花”が入っていたことが作曲のきっかけになった、と演奏会の解説に寄せてくださいました。

 

…ということ。
信長先生ご自身の「作曲人生の重要な場面でいつか手がけてみたいと願っていた詩が『そうそうと花は燃えよ』だった」という言葉もあり、作曲家、演奏者ともに熱い想いがこもった作品のようです。
演奏を聴かれた人の言葉には

フィオーリさんの自由曲、初演聴きましたがとても素晴らしい作品でした。

フィオーリさんの信長さんの委嘱曲は本当に聞き応えありです!


このような賞賛の言葉がいくつもあり、期待が高まりますね。

結団から34年という歴史で初めての委嘱初演。
またそれに充分応えられた作品ということは、団員さんのメッセージから伝わります。 

 

そうそうと燃え上がる花のように、人生の日暮れを告げる錚々(そうそう)とした鐘の音のなかでも、最期まで怒り狂うほどに懸命に生きよ―それは決意であり、私たちへの励ましではないかと感じています。

「それは決意であり、私たちへの励まし」
フィオーリのみなさんの心からの共感、その言葉と歌が、今度は聴く私たちの決意や励ましになりますように。

 

 






結成して4年、月1回集まっての練習、さぬきの女声合唱団と言えば?

 

 

 

 

 





2.香川県・四国支部代表

monosso

(女声43名・4年連続出場)



9月29日(日曜日)
高松の女声合唱団、monossoさんの練習を見学させていただいた後、
指揮者の山本啓之さんにお話しを伺いました。

 

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今回の演奏曲を選ばれた理由からお聞きしたいんですが。
課題曲がF3:髙田三郎先生の「白鷺」。
そして自由曲が新実徳英先生の「はくちょう」。
…これって、「白鷺と白鳥を並べると面白い!」みたいな?


「違う違う!(笑)
 まず自由曲から先に決めてたんや。
 昨年の全国が終わってすぐに楽譜準備してたもん。
 それからよ、課題曲が発表されたのは」


そうなんですか。
では課題曲に「飛翔 ― 白鷺」を選ばれたのは?


「髙田三郎先生の作品を
 monossoの若い人に歌って欲しかった。
 言葉の咀嚼や日本語に向き合うという意味で
 ”課題”曲としてやるべきだと。」


髙田先生らしい美しい旋律と言葉の噛み合いが魅力ですね。


「そう、monossoのみんなも
 もう少し言葉に執着してくれると…。
 難しいのは言葉のどこがエェ塩梅か?ね。
 やり過ぎも良くないし。
 全部同じようなわけにもいかんし。
 たとえば 『くりかえし雪となり』 という箇所は
 また新しく雪に生まれるという
 優しい言葉と音にしたいし。
 音と言葉のタッチをいっしょに作らないと。
 だからいまエェ塩梅を探しとるところやね。」


先ほどの練習ではピアニストの酒井信先生とも
テンポについて綿密にやり取りをされていました。
ピアノが重要な曲ですよね。


「そうやね、酒井先生、大変やろうね」


他人事のように…(笑)。


「いや、酒井先生、カンがええしね(笑)。
 ついつい注文をつけてしまう。
 丁寧にやってどんどん遅くなっていくんじゃなく、
 Andanteと書かれたものにどこまで留まれるか?
 ちゃんと一歩一歩音楽が進んで行かんと。」


ピアノの右手の特徴的な音型を
「白鷺がさまよっている」と
表現されたのが良かったです。


「そうね、さまよってる。
 白鷺がどこへ行くかわからない感じ。
 あの音型、最初は酒井先生も
 『まちがっとんのかな?!』
 みたいな顔しとったからね(笑)。

 詩もそうだけど、あの音型のように
 白鷺がさまよい、どこかへ行き、
 戻ってきて完了する。
 そういう白鷺の姿を通して、その儚さや苦しさ、
 そして喜びといった、人生を表したような、
 深みがわかるような演奏ができたらええね、と。」


なるほど…。
続いて自由曲の新実徳英先生
女声合唱とピアノのための「西風のうた」から
「はくちょう」なんですが。
実はこの曲、約30年前にラジオで
福岡の西南女学院高等学校音楽部さんの
演奏を聴いてからずっと好きな曲で!


「あ、そうなんや。
 自分もちょうど同じくらいに聴いたな。
 大学の1個下の後輩に西南女学院の妹さんがおって。
 練習も聴かせてもらった。」


へー!


「大学から合唱を始めて、
 まだいろんな曲を聴いていないときに
 あの『はくちょう』は衝撃的やった。」


川崎洋氏のひらがなで書かれた詩が幻想的で。
新実先生の音楽もその雰囲気のまま夢見るような。
でも、今までの山本さんの選曲からすると
路線が違うような気がするんですが?


「ああいう作品は発声を良くするためには
 意外と向いてたりするんやね。
 パーツを磨かなければいかないし。」


技術的な向上に必要な選曲だったと?


「もちろんそれだけじゃなく、
 淡い幻想的な世界の作品を
 たまには演奏したいな、と。
 『はくちょう』の女声でしかありえない儚さとか、
 混声にはない良さだもんね。
 MODOKIじゃ絶対やれんし!」


(笑)。


「他にもヘテロフォニーやクラスターの音響。
 こういった幻想的な響きにどう想いを込めるか。
 あと、新実先生のヘテロフォニーなど
 新しい挑戦を始めた頃の作品って
 最近はそんなに演奏されんやん。」


そうですね。


「30年経って
 新実先生の音楽の変遷をもう一回たどりたい。
 もう一回探してみたいというか。
 そして、この曲が30年前に作曲されたことの凄さに
 びっくりして欲しいというか。

 『はくちょう』もピアノが非常に重要なんやけど…。
 でも、白鷺と比べてピアノの役割も違う。
 歌の役割も違う。
 すべてが違う。

 同じピアノと女声という邦人合唱曲で、
 鳥を題材にしてもこんなに違うというね。
 だから、この選曲は偶然という名の必然!」


おお!


「そして自分の干支はトリ年!」


…やっぱり狙ったんじゃないんですか?


「絶対違うから。」

 

  

 

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四国支部大会の写真ということ。

 


酉年の指揮者が選ばれた、
「白鷺」と「白鳥」という2曲。
対照的な音楽の選曲の妙を楽しみにしたいと思います。
山本さん、monossoのみなさん、ありがとうございました!



(明日に続きます)