観客賞スポットライト 同声合唱部門 最終回





同声合唱部門、今回は最後の2団体をご紹介します。


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新京極・錦市場界隈




熊本から、大人の女性の音楽を得意とされる女声合唱団です!




10. 熊本県・九州支部代表

合唱団Le Grazie
https://twitter.com/legrazie1988

(女声22名・6年ぶりの出場・第41回大会から15回目の出場)



6年ぶりの全国出場おめでとうございます!
グラツィエさんの演奏はコーラス・ガーデンや九州大会・全国大会で聴いてきましたが、奥深く、幅広い表現力をお持ちの団体です。

今回の演奏曲は課題曲F3 飛翔―白鷺(「内なる遠さ」から)(高野喜久雄 詩/髙田三郎 曲)
自由曲は信長貴富作曲 女声合唱とピアノのための「だましてください言葉やさしく」より「1.もう一つのコップ(詩:高橋順子)」 「3.愛人ジユリエツト(詩:新川和江)」

どんな作品なのでしょう?
団員の青木さんからメッセージをいただきました。

 

 


「合唱団Le Grazie」です。

結成から30年。
高校を卒業するなり入った私も、とうとう4度目の年女越え。

周りでは、孫だ!介護だ!と話題も変化しつつあります。

しかしそれでも変わらないのが、我らが岩津整明先生の繊細で温かな音楽。

また再び岩津先生の指揮で全国のステージに立てることに、 団員一同大変喜んでおります。

ということで、個人的見解の曲紹介。
テーマは「愛」

まずは「白鷺」
雪のちらつく空には、
大きくあたたかな愛にあふれる場所があり、
白鷺はそこを目指し飛翔する。
死を避けることはできないけれど、
また再び愛を目指す白鷺。
また再び愛をあふれさせる手のひら。
この曲は、とてつもなく大きな愛の歌なのではないでしょうか。

ガラリと変わって自由曲。
一曲目は「もう一つのコップ」
年を重ね、ちょっと斜に構えたシングル女子の
リアルな日常の一場面を切り取ってあります。
独りを楽しみながらも、どこかそれを寂しいとも感じつつ、
そして、どちらの自分も好きだったりする自己愛の歌。
歌というより「ひとり芝居」に近いかもしれません。

2曲目は「愛人ジュリエット」
文字だけを見ると、不倫だとか、ロミ&ジュリだとかを想像されると思いますが、
この愛人は“ラマン(愛する人)”の意であり、
ジュリエットも一般的な女性名というイメージです。
夢の中の混沌とした世界で、船の名であり、薔薇の名であり、娘、妻、老女の名でもある”ジュリエット”の中から、自分の愛するジュリエットを探そうとしつつも、その恋がかなわないことを嘆いている男の歌です。

さまざま「愛」が皆様の元へ届きますように。

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九州支部大会とのこと。


ありがとうございました。

自由曲の初演を聴いてみましたが、大人の女性の多面的な要素がさまざまな音楽で表され。
グラツィエさんの音楽の魅力が十分に発揮されそう。
信長先生からも「大人の女声(女性)を想定し、若干ダークな印象を狙った音楽」とのこと。

 


男性から見る願望的女性像ではなく、女という性を生きる詩人の言葉をテキストとした女声合唱作品です。
生活の機微を飾らずに書き留めた「もう一つのコップ」。
シュールな幻想恋愛劇に思いを馳せてフィクションとリアリズムの狭間の熱情を描く「愛人ジユリエツト」。
選ばれた詩はどれも個性的ですが、少ない曲数で女性の多面性を表現することが求められます。
経験豊かな大人の女声合唱団に取り上げていただきたい作品です。(パナムジカHPより)



「経験豊かな大人の女声合唱団に取り上げていただきたい作品」!
まさにGrazieさんのためにあるような作品です。

結成から30年という時間の尊さ。
変わっていくものと、変わらない岩津先生への大きな信頼。
変化と不変なものの双方で磨き上げられたグラツィエさんの音楽と女っぷり。
この京都でのステージで見事に花開きますように。


 






同声合唱部門、最後の団体です。
繊細で、それでいて強靭な個々の歌心が生きる女声合唱団!










11.愛知県・中部支部代表

VOCI BRILLANTI
https://twitter.com/brillanti0202

(女声32名・7年連続出場・第63回大会から8回目の出場)


昨年の感想では

音符に対する言葉の割り振りが上手でしたね。
課題曲のF3:麦藁帽子なんて
本当に「八月の…」と言葉、
語感を活かして表現する。
圧倒的に上手だと思いました。

白鳥先生のすごく自由さを感じさせるピアノが
歌い手にも良い影響を与えていたかな。

自由曲:三善晃「ふるさとの夜に寄す」は
若い人が大半な団体だけど豊かな音色で。
しかも女性としての柔らかさも入った
音色になっていたから
慈しみの印象もありました。

淡さ、儚さに加えて、
そこに確かにある存在感があったんですよ。
女声合唱にもかかわらず、
とは言っちゃダメだけど(笑)
音符に込められた声の密度に満足しました。


…と好評でした。
さて、今年はどんな曲を?

団員のみなさんからメッセージをいただきました。

 

 


愛知県岡崎市を拠点に活動している女声合唱団VOCI BRILLANTIです!
7年連続8回目の全国大会に出場できること、団員一同大変嬉しく思います。
私達が今回演奏する曲は課題曲F4「その木々は緑」、自由曲は女声合唱曲「オンディーヌ」です。

「その木々は緑」は、思春期の揺れ動く心情や前向きな気持ちを歌った曲です。
これらを音楽で表現するために、指揮者の雨森文也先生、ピアニストの白鳥清子先生と何度も話し合い、笑顔で楽しみながら練習を進めてきました♪
私達ブリランティは中学生から社会人までの団員がいます。
幅広い年齢層のメンバーそれぞれが、自分にとっての「その木々」はどんな木なのか、その木々を見た自分はどんな気持ちになるのかを思いながら歌います。

自由曲「オンディーヌ」は、四大聖霊である水の精オンディーヌが、人間の騎士ハンスに一目惚れするところから始まる物語です。
課題曲とは一転して、既に婚約者のいるハンスを一心に愛するオンディーヌの物語は、今までブリランティが取り上げたことのない描写や表現が多くあります。
オンディーヌの世界を表現するために、詩の元となったドイツの作家フーケの小説「ウンディーネ」や、フランスの劇作家ジロドゥによる戯曲「オンディーヌ」を読んだり、映画を観たりすることで理解を深めました。
全国大会当日は、いつもより少し大人な私達の演奏を聴いていただけたらと思います。

そして、2020年3月22日(日)には第二回演奏会を行う予定です(^o^)
今後情報を発表していきます。
ぜひお越しくださいね!  

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中部支部大会とのこと。

 


ありがとうございました。

木下牧子先生が作曲された「オンディーヌ」はまず混声合唱曲として出版された後、女声合唱曲に編曲されました。
団員さんから元となる小説の「ウンディーネ」や戯曲にも触れられていますが、詩人の吉原幸子氏はこれらの物語から、純粋とは、そして愛とは?と突きつけるような詩を生み出しました。


「純粋とはこの世でひとつの病気です」




音楽はたゆたうような旋律と、美しく切迫したソリストたちが絡み合い、水の精と人間との交わりそうで決して交わらない二つの層を見るようです。

ブリランティさんが3年前に三善晃先生の「或る死に」を演奏されたのを思い出します。
詩人の村松英子さん18歳の時の作品ということもあり、年代が近いブリランティさんの透明な、ある意味無邪気さを感じさせる音が、音楽とピアノと結び付き不思議に老成したように奥深く響いたことを。

純粋を求めるのと同じくらい孤独を埋めたい、他人との交わりの矛盾に直面する時期。
「いつもより少し大人な私達」はそんな時かもしれませんね。

合唱と言えども、個人の息づきが感じられるブリランティのみなさん。
この同声合唱部門のフィナーレをドラマティックに歌い上げて欲しいと思います。



(同声合唱部門は今回で終わりです。
 明日の混声合唱部門に続きます)