観客賞スポットライト 混声合唱部門 その1

 

 

 

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ロームシアター京都 Photo by Ken5さん




今日から混声合唱部門の出場団体をご紹介します!
昨年は14団体でしたが、今年は2団体増えて16団体。
もちろん全部門お勧めですが、やはり大会の華と言えばこの混声合唱部門。
いずれ劣らぬ声の饗宴です!


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それではご紹介を始めましょう。
14:30から混声合唱部門の開始です。



最初の団体は最年少指揮者による伸び盛りの団体の登場です!

 

 

 


1.愛媛県・四国支部代表

I.C.Chorale

(35名・第67回大会から6年連続出場)



大学ユース部門を除く一般部門で最年少28歳の指揮者:村上信介先生。
今年はカンサォン・ノーヴァ指揮者:下薗大樹先生も同じ年齢でダブル最年少。

アイ・シー・コラーレ、通称いよコラさんも創団6年目で全国6年連続出場と、四国を代表する団体に。
昨年の座談会では

課題曲G3の「まいまい」。
かなり研究した上での解釈なんだろうなと
好感を持ちました。

自由曲の三宅悠太「Vocalise Ⅱ/海辺にて」、
高いところで音を響かせて。
狙った音響空間として良いなーって。

最後の「悲しむ人よ、塵に口をつけよ」では
ちょっと泣けてしまった。
「望みが見いだせるかもしれない」での
ほのかな灯りのような希望に
また感じ入ってね…。


という感想がありました。


さて、今年の演奏曲は?
指揮者の村上信介先生よりメッセージをいただきました。

 


皆さんこんにちは!
愛媛県の混声合唱団、I.C.Chorale、通称「いよコラ」です。
6年連続で全国大会の舞台に立たせていただく機会をいただき、ありがたい限りです。

課題曲:G2 Ensam i dunkla skogarnas famn (Emil von Qvanten 詩/Jean Sibelius 曲)
例年同様、課題曲を全曲歌った上で、団員の投票により選曲しました。
シベリウスが20代前半の頃に書かれた作品ですが、発掘・初演は90年代に入ってからと新しく、楽譜に音楽記号が全く付されていないこともあり、言葉に立脚したフレージングや和音の展開を丁寧に紐解きながら、自分たちの音楽を作ろうと努力しています。
夏にはG.U.Choir指揮者でハンガリー留学中の山口雄人くんとラトヴィア留学中のシンガー山﨑志野さんによるワークショップを松山で開催していただき、そこで学んだソルフェージュの手法や北欧音楽のサウンドを課題曲に還元しています。
詩は、単なる風景の描写ではなく、抑圧から独立に向かおうとするフィンランドの姿とリンクしており、特に「sjungen,alla(すべてが歌う)」という言葉は、抑圧されている側も、抑圧している側も、皆が歌うという意味が込められているように思われ、合唱に携わる我々がこの曲を歌うことに強い意義を感じています。

自由曲:混声合唱とピアノのための「春と修羅」より〔Ⅱ〕(詩:宮澤 賢治/曲:信長 貴富)
今までいよコラが取り組んでこなかったようなレベルの作品を取り上げ、団としてもう一歩先を目指したいと考え、この曲を選曲しました。
人間と畜生の間に位置し、常に戦う自我精神である「修羅」と、涅槃の象徴である「春」。
二つの相反する要素を描くかのように、日本の伝統音楽的な粘着質な音使いと西洋的な輝きある音響が対比され、やがてロマン的カタルシスに向かっていきます。
持続する緊張感やスケールの大きさは、今まで我々が経験したことのないものです。
特に詩の解釈は難解な部分があり、「春と修羅」を題材にした論文や宮澤賢治の詩集を読み漁りつつ、作曲者の解釈を音使いから読み解こうと、皆で意見を出しながら練習を進めています。

最後に
課題曲、自由曲の一貫したテーマとして、詩が自然を題材しているという点がありますが、そのありようは対照的です。
自然の風景を目にして希望を取り戻す課題曲に対し、春が輝きに満ちるほど己の卑小さに絶望する自由曲。
この2曲の対比を描き出せるよう、全身全霊で歌い上げます。
3年振りの混声合唱の部のトップバッターとして、開幕をバシッと飾れるよう頑張ります!

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 四国支部大会とのこと。


村上先生、ありがとうございました。

理知的に、テキスト、音楽の両面から作品の本質に迫ろうとするその姿勢、素晴らしいと思いました。
特にハンガリーやラトヴィア留学中のお二人から、地元松山で学ぶ機会を設けるというのも良いですね!
いよコラさんの「伸び盛り」「勢いある」という印象は間違ってはいないと思いますが、ただやみくもに突っ走るだけではなく、こうして必要なものを得るために一歩ずつ進んで行く。
それも地元に還元する形で。

信長先生の「春と修羅」は3年前のCombinir di Coristaさんの名演奏(観客賞1位)が思い出されますが、いよコラさんならまた違った味わいの、瑞々しい「春と修羅」を聴かせていただけるのではと期待しています。

 

「自然の風景を目にして希望を取り戻す課題曲に対し、春が輝きに満ちるほど己の卑小さに絶望する自由曲」。
相反するその選曲は、自らを恃むことと落胆を繰り返しながら前へ進む若者と同じではないですか。
混声合唱部門のはじまり、バシッと力強い一歩をお願いします!







続いて言葉の魔術師さんが混声でふたたび!











2.福岡県・九州支部代表

混声合唱団うたうたい

(40名・第66回大会以来7年連続出場)



同声合唱部門、大阪からのメンズ・ウィードさんと同じ高嶋昌二先生を指揮者に抱く結成11年目の団体。
昨年の座談会では

課題曲G3、フレーズの抑揚と余韻、
音楽のメリハリとさすが高嶋先生!と思う
良い演奏でした。

自由曲の千原英喜「Agnus Dei = 空海・真言・絶唱」も、
男性の語り部が凄くがんばっていました!

全体の音楽でも、目指そうとするものは
しっかり伝わってきましたよ。

…という感想でした。

今回の選曲は課題曲G1 Ave Maria (Tomás Luis de Victoria  曲)
自由曲:作詩:石川啄木・藪野椋十、作曲:千原英喜
混声合唱組曲「世の中には途法も無い仁もあるものぢや」より「3.世の中には途法も無い仁もあるものぢや」

 


第三曲は啄木の歌集「一握の砂」に寄せた藪野椋十の「序」に歌集冒頭の歌を加えて作曲。
「第一曲の序、第二曲の内的/夢幻世界、第三曲の短歌世界、終曲の見果てぬ夢。
全4楽章を啄木の一生に重ねてみようと作曲-千原英喜」(全音HPより)

 



広島の合唱団あるさんの委嘱作品。
3年前の中国大会で、あるさんはこの作品を自由曲に選ばれ、私も聴かせていただきました。

啄木の短歌「東海の小島の磯の白砂に」へキャッチーな旋律を付けたものから始まり。
「ラプソディー・イン・チカマツ」のように男女のしゃべりの掛け合いあり、コミカルな部分ありの、さまざまな様式の音楽が目まぐるしく移り変わります。

千原先生のこの作品への「それぞれに機智とユーモアをもって、ニュアンス豊かに演奏していただきたい」という言葉。
高嶋先生、うたうたいさんの名コンビなら、きっと実現して下さることでしょう!








続いて観客賞では上位の常連。
昨年コンクールをお休みした団体の復活です!











3.佐賀県・九州支部代表

MODOKI

(70名・2年ぶりの出場・第50回大会以来20回目の出場)




2年ぶりにコンクールへ出場される
MODOKI指揮者:山本啓之さんへのインタビュー。
10月25日、私が住んでいる倉敷に
山本さんが寄って下さったので近所のファミレスにて。




2年ぶりのコンクール参加、
そして全国大会出場、おめでとうございます!


「ありがとう。
 ルーティーンから1回外して、
 去年は全国いろんな所へ歌わせてもらって。
 また新しくコンクールへ向かえて嬉しいね。」


コンクールに新鮮に向かえると?


「それもあるけど…。
 曲が曲だけに
 そんなことも言ってられない(苦笑)。」


…課題曲からお聞きします(笑)。
今年はG1:Tomás Luis de Victoriaの
「Ave Maria」。
MODOKIさんがG1を選ぶのは珍しい気が?


「いや、課題曲がビクトリアかパレストリーナだったら
 選ぶことにしているんや。
 パレストリーナは2012年の富山で選んでるし。」


その2人の作曲家には理由があるんですか?


「パレストリーナは勉強すべき古典。
 ビクトリアはスペインの作曲家で
 動きがあって、さらに音画的で
 あの時代にしては凄くドラマティックなところ。
 そして、人数が多くても大丈夫そうと思って。」


ビクトリアの熱さはMODOKIさんに
合っている気がしますね。


「でも70人オーバーでビクトリアをやるのは正直大変!
 県大会の時は4人ずつのユニットを
 バラバラに配置して歌うとか
 いろいろやってるけどね。
 もっとやり方を探さないかんかな…ってとこやね。」






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5月の合宿時とのこと。





続いて自由曲です。
Arnold Schönberg「Friede auf Erden(地上の平和)」。
かなりの難曲ですが・・・団員さんのお話しでは
山本さんが30年前からやりたかった曲だとか。
この「地上の平和」を最初に聴いた時を憶えてますか?


「たぶん大学2、3年生の時に
 京都エコーさんの演奏を聴いて。
 『なんだこの曲は?!』と思ったわけ。」


「地上の平和」に衝撃を受けた!


「そう。
 その頃はこの曲がドイツ語ということさえ知らなかった。
 それからパナムジカさんという存在を知って
 初めて頼んだ楽譜が
 プーランクのクリスマスのための4つのモテットや
 マルタンのミサ、そしてその次に
 『地上の平和』を頼んでたわけや!

 でもある程度人数おらんとできんだろうし。
 声楽的な素地の高さもいるし。
 それは今でも無いかもしれんけど(苦笑)。

 だから・・・そうね、
 やっぱり夢だったんやね。
 30年経ってやっと今やったらできるかな、と。

 だけどホンマやってみたら大変!!」


やっぱり大変ですか(笑)。


「もー、音むっつかしいし
 ドイツ語大変やしね!
 声楽的にも和声的にも難易度が高くて
 とにかくソルフェージュが大変!

 でもあの難しい所を乗り越えて
 最後にD-durで終わるのに意味があるんやろうね。

 『地上の平和』はスイスの詩人:マイヤー作なんやけど
 聖書のルカ伝を元にしていて。
 今回の選曲の繋がりとしては
 まずビクトリアの『Ave Maria』で聖母マリアを褒め讃え、
 救世主が生まれても、やはり争いは起きてしまう。
 人はどうしても争うものなんだ。
 それでも私たちはやっぱり『地には平和を』と願いたい。」


…人間への絶望があり、
でも最後に希望があるような。


「そう! 三善晃先生の
 『絶望を胎生としない愛を信じない』ね。
 人間のギリギリの叫びみたいなところが
 この曲にはあると思う。

 来年MODOKIはできて30周年やからね。
 その区切りの前にこの曲をやりたかった。
 みんな目を白黒させながら一生懸命やってます。
 自分たちに合っている合っていないじゃなくって
 この名曲にコンクールでチャレンジできて
 全国大会でみなさんに聴いてもらえるのが本当に嬉しいね。」


楽しみです!
山本さん、ありがとうござ…


「ちょっと待って!
 来年2020年3月8日(日)、
 佐賀市文化会館大ホール
 邦人作曲家の昭和の名曲で揃えた
 MODOKI単独の演奏会を開きます!
 なんと客演ピアニストに平林知子先生をお迎えして
 全4ステージ弾きまくっていただくから!」

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えー、単独演奏会は6年ぶりですか?
私も予定に入れておきますね。
…でも全国大会で「地上の平和」演奏してから
約3か月後にこの大変な演奏会って・・・。


「それもチャレンジ!
 全国大会も演奏会も全力!!」


期待してます(笑)。
山本さん、ありがとうございました!




(明日に続きます)