全国大会:一般の部感想(最終回)

東京都(東京支部代表)
創価学会しなの合唱団(男声73名)


一見ホスト?のように見える妖しく若い指揮者の方。
課題曲は池辺先生のM3「枯れたオレンジの木のシャンソン」。
おー、非常に練られた柔らかい声が
繊細な響きを保ったまま、ずっと続いていく・・・。
このハーモニー感は素晴らしい。
ただ、ずっと一定の響きのまま、なので
シャンソンらしい(池辺作品らしい)
旋律の動きや軽さなどは感じさせず、やや重い印象になったかも。
男声/男性ならではの哀しみは
充分感じさせてくれた演奏でした。


自由曲は新実先生の「日本が見えない」。
これまた大変練習したことが分かる声と表現。
しかし、音楽の各ブロックはとても上手く出来ているが
1曲を通した流れ、
つまり次のブロックへ繋げる音楽が希薄なような。
そのため残念ながら音楽が止まって聞こえてしまう。
そうすると特徴的な足踏みや息だけが目立つことになり、
「巧いんだけど・・・効果、だよね」という印象を持つことに。


それでも、何回も書きますが、
各ブロックの作りこみは大したものだと思ったし、
指揮者の才能の煌きも感じました。
この指揮者の師匠?である清水敬一先生の
同曲演奏の印象が私には強かっただけなのかもしれません。





宮城県(東北支部)
グリーン・ウッド・ハーモニー(混声65名)


課題曲はGWHには珍しい邦人曲のG3。
というか私、邦人曲を聴くのは初めてかも?
全体に適度な緊張感があり、
リズミックな部分と流れが共存している良い演奏。
表情付けも良く、
それでいて作為的なものは感じさせない自然な演奏でした。


自由曲1曲目:シュトックハウゼン「Armer junger Hirt」は
音楽の軽やかな変化がさすが!
2曲目のレーガー「Fruhlingsblick」も音楽の豊かさを感じさせる演奏。


ただ、6月の演奏会が終わってから
コンクールの練習をしたためか
楽譜持ちの団員さんもちらほら。


いつものGWHと比較し、分かりやすい曲のためもあって
演奏の錬度がやや低いように感じられ
「この曲で何を聴かせるのか?」
という追求が私には今ひとつ感じられませんでした。


それでも2曲目は
ゆったりとした雰囲気から華麗に広がっていく声、という
“歌”を感じさせる演奏。
それは今井先生、GWHの深さを再認識させるものでもあったのです。





静岡県(関東支部)
浜松合唱団(混声62名)


女声の青のドレスが目にまぶしい(笑)。
課題曲はG4の上田先生「家居に」。
やや音程に疑問があったり、
ソプラノの響き不足を感じたりもしましたが
テナーの良さや言葉の扱い方、
音楽の流れが自然な印象でした。


自由曲:スクルテ「Jurai(海へ)」
初めて聴く曲ですがリズムが面白く、分かりやすい曲。
迫力もあり、聴き易く、様々な変化が楽しませる。
Bassも良いし、後半への盛り上げも良かったです。






大阪府(関西支部)
なにわコラリアーズ(男声65名)


課題曲はM2:ラインベルガー「Waldmorgen」
やはりトップテナーの柔らかく、かつ深みを持った声は素晴らしい!
旋律の始まりも、漫然と流れ出すのではなく、
その歌のためのエネルギーが湧き起こり、
それをきっかけとして歌が始まっていくような・・・。


流麗な旋律、さらに
しみじみ聴き入ってしまう弱音の美しさ、と
なにコラの水準の高さに改めて感心する演奏。



自由曲はサンドストレム「The Singings Apes of Khao Yai」
(カオヤイの歌う猿たち)
題名通り、タイのカオヤイにいる猿たちの鳴き声を模した作品。
始まる前に・・・猿耳を被る団員たち、そこまでやるか!


この曲は、いわゆる「音響効果」的な作品で、
音楽的な深みとなると疑問符を付けざるを得ないような曲。
コンクールで上位を狙うのはハードルが高い曲とも言えます。
それでもこの曲を選んだのは、なにコラの余裕なのか、それとも…。


音響効果とは言っても、普通の合唱団では
この作品の魅力を伝えきるのは難しいと思うのに
なにコラは声、表現、そして動きの変化によって
見事にその面白さを伝えてきます。
以前、演奏会で聴いた時よりも遥かに。


ソリストの声も演出も決まり、
「人の声の可能性」までも感じさせ、
会場中が高揚した雰囲気に!
演奏を終え、笑顔で手を大きく振りながら退場するなにコラメンバーを目に、


(…ああ、ひょっとしてこの曲は、なにコラの
 「コンクールとしての」アンコールだったのかも・・・)


と、笑いながら、少しの切なさを持って拍手を送りました。





三重県(中部支部代表)
ヴォーカルアンサンブル《EST》(混声45名)


さて、一般B最後の団体というだけではなく、
このコンクール岡山全国大会でのラスト、という大トリ中の大トリ。


課題曲はG1。
最初から力強い声。
声だけではなく歌う意志にもエネルギーあるなー、という印象。
ESTはやはりなにか大柄で “ニホンジンガッショウ” という枠から
少しはみ出している気がします。(良い意味で!)
声に輝きがあり、それでいて表現のそこかしこに細かい配慮がある。


大胆でありながら繊細、そんな印象を持つのもESTの魅力。


自由曲1曲目はウィテカー「Hope,faith,life,love…」。
ウィテカー特有の和音が広がります。
題名にある言葉が幻想的に続き、
音と言葉、声で作られるその世界に引き込まれ。


確固たるESTの実力がその曲の魅力を充分伝え、
余韻が残る中、突然後ろ向きになる団員さん。
「?」と思っていると
2曲目のグイド・ロペス-ガゥイラン
「iQUE RICO E!(なんてすてきなんだ)」の始まりです。


振り返ると色とりどりのシャツに着替えた団員さんたち。
マンボを思わせる曲調とダンスで
1曲目とは丸っきり違う世界を作り上げます。
(またこのダンスが思い切り良く達者!)


ノリで押し切るだけではなく、
合間に挟まれた気怠さを感じさせる女声ソロも素晴らしく
この団の表現力の幅と深さを充分に示し。
なにコラに続き、またもや会場の空気をヒートアップさせます。お見事!


団員さんの退場も洒落ていて凄いな〜と感心していたら
最後に残った指揮者の向井先生までもがアピール!
会場中が笑いに包まれ、
“大トリ”としてその責務(?!)を
充分に果たした素晴らしいステージでした。






<付け足し>


そんなわけで一般の部AB全31団体の感想はこれで終わります。
いんや〜、長かった!
言い訳になりますが、あやふやなメモを頼りに
2ヶ月以上前の演奏の感想を書くなんて、
記憶力が乏しい私にとってはかなり難しいことでした。
不快に思われるような記述があったらお詫びいたします。
(また、間違いなどの指摘は遠慮無くコメント欄でどうぞ)


全団体の感想を書く、なんてことは
これが最初で最後だと思いますが
書きながら自分で分かったのは
演奏への何らかの「疑問」を頼りに
自分は合唱へ、音楽へ向き合っているということ。


それは「なぜこの演奏で涙が出るんだろう?」というものや
また逆に
「素晴らしい演奏なのに心が震えないのは何故?」
という様々な疑問が心に残り、
その答えを見つけるために演奏を聴き続けている、
そんな気がします。


やや否定的な意味で疑問符を付けた団体には申し訳ありませんが
それでも、その演奏が音楽として
私に伝わる充分な水準に達しているからこその疑問、と
思ってもらって結構です。



「好き」の反対語は「嫌い」では無く
「無関心」だ、という言葉をどこかで見ました。
聴いて、なんとなく流してしまう演奏よりも
それが例え否定的であったとしても疑問を持つような、
そんな団体の“これから”を私は楽しみに待っています。



今年の全国大会:札幌の地には
まだ行けるかどうか分かりませんが、
もし行けることになったら、持っている疑問の答えを探しに、
そして新しい疑問を生み出すために、向かいたいと思います。



出演した全ての団体のみなさんへ、
お疲れ様でした、そしてありがとうございました!




…さー、ようやくハーモニーの座談会、読めるぞ〜〜〜。



(おわり)