コンクール出場団体あれやこれや:出張版 その5


さて、一般Aの部も残り3団体です。
個人的に私、イチオシの団が登場しますよ。




関西支部代表・京都府
アンサンブルVine
(混声32人・6年連続の出場)
(※上の団名リンクは伊東さんのHP
「〜目をひらく 耳をすます つぶやく〜」内のものです)



Vineとは葡萄の蔓の意味。
演奏会やコンクールの目的のために呼びかけ、
本番後は休眠するという季節的に結成されるアンサンブル。
(HPから)


Vineの今年の課題曲はG1:ジェズアルド、
自由曲は「O, Mistress Mine!」(Orban)
「A Boy and a Girl」(Whitacre)
「Pseudo-Yoik」(Mäntyärvi)


それぞれの曲は・・・


って私が書かなくても良いんだった!
指揮者の伊東恵司さんからメッセージを頂いています!!

アンサンブルVineという合唱団は、
恒常的に活動している団体ではないので、
音楽をじっくり醸成していったり、
立派な声を使って「がっつり」というよりは、
割と知的なセンスでアンサンブルしていくような曲
(新しい目でいろいろ実験しやすい曲)
を選曲しているように思います。
これは近寄りがたくシリアスでヘビーな感じがしていた
「コンクール」というものに対して、
もう少しリラックスした楽しい要素を持ち込めないかという
思いから出発しての私のスタンスです。
団員にも分からない?今年の隠しテーマは「男女の愛」。
「ジェズアルド(狂おしい愛)」から始まって
「オルバーン(シェイクスピア)(軽妙なやりとり)」
「ウィティカー(若い二人の愛と死)」と、
男女の愛を歌った曲ばかりを並べたラストに
歌詞のないナンセンスソングを持ってきましたが、
実は最後に「愛」的なハッピーエンド要素を
エッセンスとしてふりかけたりしていますので、
注目して「見て」ください。
もちろん以上の設定は自己満足ですが(笑)。
いつもコンクールで演奏会のような演奏をすることが目標です。


伊東さん、ありがとうございました!
団員さんも知らない隠しテーマまで教えて頂けるとは(笑)。



Vineを初めて聴いたのは6年前の宝塚国際室内合唱コンクール。
最初は抑制が効きすぎたような印象があったのが
徐々にその表現の幅が広がり、演出が加わり、
知的さや優しさはそのままに、
合唱の楽しさと魅力を
見事に伝えてくれる合唱団に成長した気がします。


Web交換日記相手はアンサンブルVineの演奏を
「ステージ上で、爽やかな春の風が吹いているような雰囲気」
表現したり


私はと言うと
「7月の札幌、午前中。
まだそんなに暑くはない外に出て、木もれ陽を浴びて歩いた時」
などと表現したり


・・・イイ年のおっさんたちを詩人にしてしまう合唱団、Vine(笑)。



それにしても伊東さんの
「コンクールにもう少しリラックスした楽しい要素を持ち込めないか」
という考えからのこの選曲は素敵なものだと思います。
Vineに対して「もう少しシリアスな曲を」という意見があるのも
分からないでは無いですが、
「コンクールでこそ」こういう選曲と演出を
やる意味があるのではないでしょうか。


明るいもの、軽やかなもの、というのは
一段、低いものに見られてしまう傾向があって。
(みんなが大好きな「心をこめて」という言葉。
 だけど「心をこめ」た演奏って、
 どうしていつも重くてテンポが遅めなものばかりなんだろう?)


「日本のコンクールは何故こんな雰囲気なんだ!」
と眉間にしわ寄せて怒るよりも
楽しい曲と軽やかな演出で自分たちが全国大会へ出場しちゃう。
少なくともVineの時だけは緊張に満ちていたホールが
笑顔で満たされる。


・・・それって素敵ですよね?




「いつもコンクールで演奏会のような演奏をするのが目標です」


伊東さんのこの言葉を、自分も含めてもっと考えるべきなのでは。



ハッ! 今、眉間にしわを寄せていた!!
課題曲はともかく、Vineの自由曲でこんな顔してちゃいけないよね。
伊東さん、最後の締めをお願いします!

キタラホールは、9年前に
なにわコラリアーズで課題曲を振り出す緊張した瞬間に、
客席で誰かがお金を落とした音が
「豊かに芸術的にホール中に」広がっていった、、という
想い出があるホールです。楽しみにしています。


(笑)。
みなさん小銭には気をつけましょう!






東京支部代表
Combinir di Corista
(混声32人・2年連続の出場)



団名の由来が
コンビニエンスストアのように品揃えの豊富な
何でも歌える合唱団に!」
という昨年初出場のこの合唱団。
その一見フザけた(失礼)団名に
聴くまでは半笑いでいたのですが聴いて驚いた。


「ブランド品が揃えてあるコンビニだとぉ?!」


声がまず素晴らしかった。
しかも美声の人たちが集まっているのではなく、
優れた合唱表現のために磨き上げた印象。
そして音楽の素晴らしさ。
知的で「伝えること」を考え抜いた表現。
指揮者:松村努先生の音楽性の高さと
それにしっかり応えた団員さんの努力。


そんなわけで迷うことなく私は「最優秀新人賞」を差し上げ、
成績も金賞2位のシードという素晴らしいものだったのですが、
私はこの合唱団に対し、
意地の悪いリクエストをしたのです。


今回は課題曲G3、自由曲はミシュキニスという東欧の現代作品。
団名「コンビニ」なんだから、
来年は品揃え…選曲の幅の広いところ、見せて下さいね、と。


そして出場団体の選曲が発表される時期が来ました。
コンビニは・・・課題曲G3。
むう、去年と同じか、やっぱりコンビニじゃなく、
専門店だったのかなー自由曲も海外の現代作品かなーーー。



え?! コンビニの自由曲を見た瞬間、
私は思わず笑ってしまいました。


「Les Fleurs et Les Arbres」(花々と木々)
(Saint-Saens)
「1.Dieu! Qu'il la fait bon regarder」
(神はなんと彼女を美しく見せたまうことか!)
「3.Yver, vous n'estes qu'un villain」
(冬よ、お前はおぞましい)
「Trois Chansons de Charles d’Orléans」から
Debussy


サン=サーンス!そしてドビュッシー
しかも「シャルル・ドルレアンによる3つの歌」だとぉ?!
合唱人だったら知らないと恥ずかしいこの名曲。
名曲ゆえに、コンクールで選曲するにはかなーり勇気がいる曲です。



ど、どういうことなの?!とコンビニ団員さんに聞いてみました。

当団は、名前の由来「コンビニエンス・ストアー」の通り、
創設時よりコンビニのような豊富な品揃えを目標としています。
未知のジャンルがたくさんある中でも、
今年はグローバルに、
フランスものにチャレンジすることとなりました。


おおお〜、まさに「看板に偽りなし」ですね。
そして
「この札幌の全国大会に対する意気込み(もしくは目標や志)が
ありましたら どうかお願いします」という問いには

少ない経験値の中で、全国大会に出場できることは
とても重要な経験だと思っています。
レッスンの過程や準備についてといった、
実際的に自分たちの成長のために必要な勉強はもちろんのこと、
当日、多くの素晴らしい団の演奏から学べることが
多々あるということも貴重な経験です。
全ての経験が今後の当団の栄養源となっていくと思うので、
余すところなく味わい尽くす、というのが目下の目標です。


なるほど、創団が2005年という若い団ですからね。
さて、東京都大会でコンビニの演奏を聴いた方の感想によれば

課題曲の日本語の扱いのうまさはさすがでした。
こうしたいんだ。という方向が見えた演奏だったので
全国までにはもっと完成度を上げてくると思います。
(松村先生ですものねぇ)
今年も要チェックの団です。
自由曲はフランス語に聞こえました!(笑)


お!期待できそうです!
(フランス語に聴こえさせるだけでも難しいんだよねえ)
そういや課題曲G3は萩原英彦先生の曲。
フランスの香りがする萩原作品ということを考えての
G3選択だったらさすがと言うしかありません。
最後に団員さんのメッセージはこう締められていました。

まだまだ未熟な団ではありますが、
音楽に燃えに燃えて、
良い音楽を目指してとにかく頑張っていますので、
その心意気だけでも感じとって頂ければ幸いです。


ありがとうございました!


さて、今年のコンビニのフランス料理。
電子レンジで温める「なんちゃってポトフ」なのか?
それともドアを開けると
シェフとソムリエがお迎えしてくれる「本格フルコース」なのか?!
期待に胸が高鳴りますねえ。



さて、一般部門Aグループ、最後の団体です。



四国支部代表・高知県
混声合唱団Pange
(混声29人・2年連続の出場)



昨年のプログラムによると団名はラテン語で「歌え!」という意味で、
「一人ひとりが自分の中にある音や思いを表現する音楽をしよう
 という気持ちが込められています」とのことです。


昨年の自由曲はウィテカーの「Cloudburst」で
Aグループの枠から出るような表現だったのですが
今年は課題曲G1に自由曲は「De Profundis(深き淵より)」(karai)。



四国大会の演奏を聴いた方の感想は


「少人数でも積極的に攻めていこう、という気持ちがあった」


とのことですから、
またAグループの枠から出るような演奏なのかもしれません。
団名の「歌え!」という強い気持ちを感じたいですね。



(続きます)