「コンクール出場団体あれやこれや:出張版」2010(その3)


5. 長野県・中部支部代表
合唱団まい
(混声22人・2年連続出場)



えーとHP、そろそろ更新して下さい。まいの担当者の方…。
そしてウチへリンクするなら
http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20091220/1261313096
へお願いしますよ〜。



「まい」の今年の課題曲はG2のVillette。
ちょっと意外です。
というのは旋律の「線」が目立つG1の方が
個々人の歌がある「まい」には向いているような気がしたので。
Villetteはどちらかと言えばハーモニーを聴かせる「面」の音楽。
指揮者の雨森文也先生がどういう意図で
この課題曲を選ばれたのか、
そして「まい」がどんな演奏をしてくれるのか、期待してしまいます。



自由曲は矢沢宰詩、萩原英彦作曲
混声合唱組曲「光る砂漠」より
「3.早春」「5.ほたるは星になった」。
邦人合唱曲の中で燦々と輝く名組曲です。



「雀の声の かわったような」



アルトソロからはじまる矢沢宰15歳(!)の時の詩。
山桜咲く春から蛍舞う夏への季節の変化。
熱い声と歌を持つ「まい」ですから
蛍という生命の燃焼を喩えた「ほたるは星になった」を
存分に歌い切ってくれることと思います。



中部大会を聴かれた方の「まい」感想では

まず課題曲、圧巻は最後のPiu Lentoでした。
これこそ!という音楽の構築
それに歌い手がよく応えてくれた演奏でした。感激しました。
自由曲1曲目(早春)は、複雑で難解なピアノと、
シリアスだがさわやかな詩が
うまく絡み合って音楽的に持続しつづけていたし、
2曲目(ほたるは星になった)は
指揮者の想いを歌う側がしっかり汲みとって、
というかひとつになって表現し、
そこに生き生きとした情景が描き出されていました。


…というものでした。Tさん、感謝です。
「生きることへの懐かしさ」を感じさせる矢沢宰の詩。
そして「いま生きている歌っている」を感じさせる「まい」。
きっと生の輝きが発せられるステージとなることでしょう。
うーん、楽しみです。



さて、東京から伊那へ最近毎週のように通っている
「まい」団員の某お姉さまに写真を頼んだところ
練習中の写真が送られてきました。




ありがとうございます!
…でもけっこう手ブレしてませんか、この写真?


「ちょうど顔がハッキリしなくていいんじゃない?!( *`ω´) 」


そっ、そうですね。肖像権大事!ありがとうございました〜。









6. 山梨県・関東支部代表
S.C.Gioia
(混声24人・初出場)



初出場おめでとうございます!
…残念ながらこの団体の情報は
ほとんど入手できなかったんですよねえ。
(ちなみに「gioia」という言葉は
 イタリア語で「喜び」という意味らしいです)


唯一、指揮者と思われる薬袋直哉先生で
こんなページを見つけたぐらい。


母校へ教師として帰ってきて合唱部を指導!
薬袋先生の生き方に憧れる合唱人も多いのでは。


S.C.Gioiaの母体となっている山梨県立市川高校音楽部。
薬袋先生指揮の女声合唱で全国大会高校A部門へ出場されたのですが
ニューステットの「主を求めよ」が良くまとめられていて
全体に清潔で端正な演奏だったのが記憶に残っています。


課題曲はG1。
自由曲は Kverno「Ave Maris Stella」
こちらも市川高と同じく北欧の作曲家ですね。
冷たく澄み切った空気を描いたようなハーモニーの冒頭と
中間部の激しくリズミックな部分、
後半の訴えかけるような切なさと
また始まりの音楽に戻ったような静かな終結部。
私も歌ったことがありますが
はじめのKvernoらしいハーモニーと中間・後半部の激しい部分の
表現の振幅が課題だったような気がします。


初出場ということですが
良いホールを楽しんでもらいたいですね!


*追記
S.C.Gioia団員さんから訂正箇所のご指摘がありました。

昨年のブログに載っている紹介文について一点訂正させてください。
指揮者:高柳勉
副指揮者:薬袋直哉
両名とも市川高校に関わりがあります。


市川高校とS.C.Gioiaについての紹介は下記を参照して頂ければと思います。
http://scgioia.com/intro.html


この年の本番では高柳勉先生が指揮をされていましたね。
S.C.Gioia団員さん、ありがとうございました!






7. 島根県・中国支部代表
女声合唱団フィオーリ
(女声32人・2年連続出場)



斐川西中学校のOGを中心に結成されたというフィオーリ。
今年で結成25年とのこと。
おめでとうございます。


課題曲はF4「五月のうた」。
「大人の女声合唱団」であるフィオーリ。
高校生とは違う恋の雰囲気をどう表現してくれるか。


そして自由曲は西村朗「永訣の朝」。
フィオーリは過去、全国大会に出場したときは
毎回鈴木輝昭作品を演奏してきたのですが
今年は西村朗先生の作品なんですね。


西村朗先生作曲「永訣の朝」は3月コーラス・ガーデンで
合唱団 Le Grazieの演奏で聴きました。
宮沢賢治の妹:とし子が死に向かう様子を描いたこの名詩に
作曲者は
「あまり感傷的な音楽になることは避けたいと思った」
とのことですが、それでも充分涙腺を刺激する音楽です。


発語が明瞭なフィオーリの演奏が
賢治の詩世界を余すこと無く表現してくれることを願っています。








8. 京都府・関西支部代表
アンサンブルVine
(混声32人・7年連続出場)
(※上の団名リンクは伊東さんのHP
「〜目をひらく 耳をすます つぶやく〜」内のものです)



さあて、楽しい合唱の時間ですよ!
今年もよろしくお願いします、アンサンブルVine!!


アンサンブルVineの今年の課題曲はG1。
そして自由曲が
Ave Verum(O.Georgy)
Beatus vir,Sanctus Paulus(Pawel Lukaszewski)
Double,Double Toil and Troublen(Jaako Mantyarvi)


オルバンがハンガリー
ウカシェフスキがポーランド、
マンティヤルヴィがフィンランドの作曲家、ということから
東欧から北欧へ?という裏テーマ??
などと考えてしまいますがどうなんでしょう、伊東さん!

昨年のように隠しテーマはございませんが、
東欧北欧の合唱曲を集め、
「うっとり、しっかり、わくわく」という
三種類の味のする自由曲を選んでみています。
演奏会のようにお楽しみいただければと思っています。


伊東さん、お答えいただきありがとうございます。
「うっとり、しっかり、わくわく」かあ・・・。
今年も楽しくて美味しいステージになりそうですね。
あ。この西宮という関西での全国大会、
なにか意気込みとか目標や志などありませんか?

アンサンブルVINEにとっては
7度目の全国大会に出場することが出来ました。
VINEのモットーはいつも
「コンクールにちょっぴりユーモアと微笑みを」です。
凌ぎを削る、勝ち負け、何かを背負って、
というような概念を飛び越えて、自分たちらしさを発揮し、
アンサンブルの楽しみを表現出来れば良いなあと思っています。


Vineの出演順は8団体目と
真ん中あたりに位置するものなんですよね。
深刻な演奏の連続にちょっと疲れた頃、
Vineの演奏で微笑みが生まれたら素敵です。


さて、「楽しい」だけではありません。
才能にあふれた指揮者という立場だけではなく
数々の合唱イヴェントの企画、運営をされる
大変優れた実行者という面からも
次に続く伊東恵司という方の文章は必読です。

演奏から離れてしまってすみません。
せっかくの機会ということで
「私の意見 」を紛れさせていただきます。
コンクールに出場しているからには
コンクールの仕組みを頭から否定するものでないことは確かですが、
この仕組みを毎年の一般の合唱界の活動の軸にすることについては、
疑問を感じています。
皆さんコンクール(一般部門)は
2年に1回くらいの開催にしてもらい、
あとの1年は別のことをしませんか??
そうしないと、合唱文化の広がりが
期待出来ない気がしてきています。


コンクールというのはいわば馬の前の人参。
合唱団の成長プロセスのために、
スキルアップのために利用するということや、
課題曲との出会い等、様々な点での意義を感じるものです。
しかし、このグローバリゼーションの中、
世界的にみて、毎年一般団体が一位を競う
「国内合唱コンクール」をやっている国が
どれくらいあるのでしょうか?


そろそろ、我々は戦後を支えてきた観念に基づいて
誂えられた枠組みの中で競い合うばかりではなく、
21世紀らしい独自の合唱文化を自分たち自身で
試行錯誤していかなくてはならないのではないでしょうか?
東京には「東京カンタート」や「北とぴあの合唱祭」があり、
「軽井沢合唱フェスティバル」があり、
様々な動きが胎動しているようにも思います。
しかしこの東京文化圏一極集中の状況に
風穴を開けるためにも、
私は、関西発の企画にこだわって頑張りたいと思っています。
コンクールに出るも良し、しかし、
もっと違う枠組みの中で交流し
「競い合うのではなく、聞き合い、学び合い、
個性を発揮し合い、語り合い、」…上手い下手だけではなく
「合唱の果たすべき役割」や、
合唱が趣味人の集まりに終始しないための
「社会との結びつき」について
考えられる場を作りたいと考えています。


コンクールが終わったら、
2011年4月に大阪いずみホールを舞台に展開される
「第2回コーラスめっせ」に着目してくださいね。
フィリピンの作曲家パミントゥアン氏と
藤井宏樹先生を招き、演奏会あり、講習会あり、
ワークショップあり、ストリートコンサートあり、
交流会ありの楽しいイベントとして開催します。
ぜひそのためだけにでも関西にお越しを。



<コーラスめっせブログ> (いとうけいし)


<コーラスめっせ(有志による)>


<アルティ声楽アンサンブルフェスティバル(有志による)>


<学生指揮者合宿(合唱指揮者協会関西支部主催)>


伊東さん、ありがとうございました!
昨年も大変刺激的な文章でしたが今年もさらに…。


例えば吹奏楽の内規では
3年間連続して全国大会に出場した団体は、
その翌年は地区大会も含め、
吹奏楽コンクールに参加することができないというものがあり、
この制度は客観性を伸ばしコンクール以外の活動を充実させるために
一役買っているという意見もあります。


かつて、ハーモニー誌でのコンクール座談会で審査員の先生が
「●年連続金賞の団体にずっと出続けてもらうのではなく
 合唱連盟がその団体へ、コンクールの代わりに演奏会や
 演奏旅行のお膳立てをするのも良いのではないか」
という意の発言がありました。

伊東さんの意見は、
上の発言の範囲を広げようとするものなのかな、とも考えます。



伊東さんの昨年の言葉。
「コンクール自体がホールの中の拍手で完結してしまわないように」


コンクールだけで合唱活動が完結するのではなく、
私たちが歌ったり聴いたりするのは本来何が目的なのか。
根源的な問題を見つめる伊東さんの視線がそこにあります。



さて、Vineの写真も送っていただきました。
これは関西大会なのかな?
みなさん笑顔がイイですよね〜。









休憩18分の後、初出場の団体が出場です。








9. 兵庫県・関西支部代表
ヴェネルディ女声合唱団
(初出場・女声18人)



HPによれば創立が2008年という
結成されてからそんなに時間が経っていない合唱団。
ちなみにヴェネルディとはイタリア語で「金曜日」という意味で
毎週金曜日に練習していることから名付けられたとか。


関西支部の代表選出は独特で
一般の部で順位を決めた後、
次の日のおかあさん大会の代表を考慮し
結果一般の部として代表にふさわしい団体を選ぶそうです。


ほとんどの年は一般の部の上位団体が
代表に選ばれるのですが
今年はこのヴェネルディ女声合唱団が
おかあさん大会の代表、
さらに一般の部の代表のひとつとして選ばれたわけです。
一般の部の実力団体を抑えてのこの結果。
初出場ですし、どんな演奏なのか楽しみです。


課題曲はF4。
そして自由曲はKocsar「春の目覚め」
Kodaly「ジプシーがチーズを食べる」
Bardos「お嫁さん」


…という非常にスタンダードと言うか
大変失礼ですがひと昔前の中学生の選曲という印象。
しかしこの選曲で関西支部代表なんですから
いったいどれほどの演奏なのか、期待が高まります。




(つづきます)