「コンクール出場団体あれやこれや:出張版」2010(その5)

どうも「尋常ならざる熱意」で今日も更新しているひとり、文吾です。
いやね、とあるブログでこんなことが書かれておりまして。
(ご紹介感謝です)

さあ、金曜の夜または土曜の朝までに彼らは脱稿できるのか?
というところも見どころです。


わたしらはマラソンランナーか競走馬かっ?!(笑)
大丈夫、大丈夫です。
金曜の夜までに余裕で書き上げて
土曜の朝は遅くまで寝て
「あ〜あ、よく眠ったなあ〜」と
鼻歌気分で西宮へ向かっているに違いありません、きっと。

もちろん土曜の朝まで「うわー終わんねー!!!」とか
目を血走らせながらキーボードを殴ってるとか・・・ない、よ、ね。




・・・なんだか急に不安になってきました。
早速今日も始めたいと思います。


全国大会出場団体あれやこれや出張版2010
21日(日曜日)からは職場の部のあと
13:35分から始まる一般部門Bグループの団体の紹介です。



最初の団体は・・・シード団体!






1. 宮城県・東北支部代表
グリーン・ウッド・ハーモニー
(混声68人・12年連続出場)



昨年2位のGWH。
毎年私は
「難しい音の曲を毎回やるけど、
その音が合ってるのか合ってないのかわかんない!」
と、イチャモンをつけるのが常だったのですけれど
昨年のGWHは違った!


GWH団員:MARさんの昨年の言葉

今年のGWHは、
今までになく基礎を重点的に行っています。
ピッチの正確さや縦のハーモニーなど、
そりゃもう徹底的に。


…が功を奏し、
今までのGWHとは別団体のように
(ってこれも失礼な書き方ですが)
パートごとの純度が高く、
実にスッキリとした音の合唱団となっていたのです。


今年の課題曲はG1のヴィクトリア。
指揮者:今井邦男先生の的確な解釈、
明確な音楽の設計が大人数の合唱団GWHでも
「これぞG1演奏の見本!」
と納得する演奏を期待してしまいます。


そして自由曲
William Blake詩/ Rene Leibowizs曲
「Two Settings after poems by William Blake」より
(ウイリアム・ブレイクによる2つの曲)
「The Sick Rose (病める薔薇)」
「Never Seek to Tell Thy Love (恋心を告げてはならない)」


Edward Bond詞/ Hans Werner Henze曲
「Orpeus Behind The Wire」より
(鉄条網の向こうのオルフェウス
「V.Orpheus 」(オルフェウス


はい、不勉強な私は検索して聴いてみました。


(…試聴開始)


「おおおおおおおお〜〜〜!」
なんというか・・・GWHのいつもの路線爆発です。
でもLeibowizsの「The Sick Rose」なんて
不穏な予兆をはらんだ静けさみたいな雰囲気でけっこう好きだなぁ。
「Orpheus 」は音の難しさもそうですけど
高い表現力を必要とする曲と感じます。
この曲集の3曲目をGWHは2年前に演奏していますね。


さて、昨年と同じく団員MARさんから
メッセージをいただきました!

今年は昨年ほど面白いところはないかもしれませんが^^;
あくまで個人的意見で書いておりますので、
なにとぞご容赦のほど。


> 各曲を選曲された理由


まずレイボヴィッツに関しては、
正直私たちも知りませんでした。


先生が音源を持っていて、
選曲会議で聴いてみて「いいね」という意見が多かったのですが
実は楽譜の存在すら怪しい…ということで、
もし手に入れることができたら
歌ってみようという話になっていました。
(もちろん他にも候補曲はいくつもありました)
その後、テナーのパートリーダー
海外のあちらこちらにまで問い合わせたりして
ようやく手元へ…という経緯があり、
歌えることになったわけです。


ここ数年シェーンベルクを歌ってきましたが、
レイボヴィッツが彼の愛弟子だったと
知っていて選曲した、
というわけではないのです。念のため。


ちなみに、この2曲の詩はWilliam Blakeが書いています。
英文学を勉強した方なら
一度は聞いたことのある名前ではないかと思います。
(ハイ、私もその1人でした)

今年も、偶然にも12音の音楽となっておりますが
シェーンベルクとはまた違った味をお楽しみいただける…
ような演奏ができたらいいなあ。
と思っております。


お〜、その楽譜入手への執念、凄いですね。
テナーパートリーダーさんお手柄!

次にヘンツェですが
この「Orpheus behind the Wire」という曲集は、
アルゼンチンの軍事政権に抗議するため作曲されたと言われていて、
歌詞も当然ながら政治的、社会的メッセージを
含んだものになっています。
今回演奏予定の「Orpheus」もなかなか迫力のある音楽ですよ。


※実は以前、この曲集の他の曲
(3番:You Who Survived)を演奏したことがあります。
忘れもしない新潟での全国大会でした。


ちなみにヘンツェはレイボヴィッツの門下なのです。


なるほど。偶然とは言え
シェーンベルク - レイボヴィッツ - ヘンツェという
師弟として繋がる選曲になったのですね。


そしてこの全国大会に対する意気込みがありましたら 、
という問いには

意気込み、ですか。
特に毎年これという目標は立てていなかったかと。
(もしあれば他の団員でフォローしてー!)


毎年毎年、とにかく


「いい演奏をする」


これに限ると思います。



そのために、昨年にも増して「体質改善」に取り組んでおります。



ほかにあるとするならば…
自由曲がすべて英語なので


「いかにして自然な英語でメッセージを伝えることができるのか」


といったところでしょうか。これがなかなか難しいのですが…

だそうです。MARさんありがとうございました!
>昨年にも増して「体質改善」に取り組んでおります
とのことで今年のGWHの演奏も楽しみですね。
「Orpheus」も難解な不協和音の中にすっと浮かび出る
美しいハーモニーに惹かれる部分がありましたから。


「いい演奏をする」…シンプルだけど大変難しい目標。
GWHのみなさん、音と表現力への挑戦に今年もがんばってください!











2. 北海道・北海道支部代表
THE GOUGE
(混声45人・3年連続出場)



3年前にGOUGEが初出場した時には
「公募団体の合唱みたいで
 表現がこちらに伝わらない」…などと
私は大変失礼な感想を書いたのですが。
しかし昨年、地元札幌でのGOUGEは違った!
みずみずしい表現で、
特に自由曲の「やさしさは愛じゃない」からの演奏は
音と言葉が一致した説得力とはこういうものか、と
身を乗り出して聴いたことを思い出します。


今年の演奏はどんなものになるのでしょうか。
GOUGE団員さんからメッセージをいただきました。

GOUGEの課題曲はG2、自由曲は
詩:山崎佳代子、曲:松下耕
混声合唱組曲「鳥のために」から「街の歌」です。


課題曲は、女声がしっかりしてくれれば多分、大丈夫かなと…。
Sopの入りが怖いんですよね。Altは音量がもう少し。
ゆっくりながらも決してとどまらず、
常に動いて流れていく曲だと思うので、
Bグループならではの安定した演奏になればいいなと。


自由曲の詩人:山崎氏の来歴については
↓このあたりが詳しいですが、
http://concert.koyukai.info/?eid=643427
旧ユーゴ内戦の最中に現地にいた人の
生々しい言葉が歌詞に重みを与えています。
松下先生も山崎さんの詩に非常に共感し、
かなり力を入れて書いたであろう曲と推測しています。
ただ、個人的にはコンクール自由曲としては
難易度的にはさほど難しい曲ではないと思います。
言葉にばかりとらわれてしまうと
悪い意味で高校生っぽいというか、
音楽性の薄い演奏になってしまいがちなので、
なんとかしっかりと大人の演奏、
説得力のある演奏にできればと思っています。
曲の冒頭とラストのボーカリーズをしっかり鳴らしたいですね。


とのことです。
「街の歌」は組曲「鳥のために」の最終曲。
大変重い言葉をどう説得力を持って伝えてくれるか、
指揮者の平田先生の音楽性が演奏へ及ぼす力に期待です。


北海道大会を聴かれた方からは

GOUGE の課題曲G2は、圧倒的!
自由曲も、旧ユーゴの悲劇を音像としてたしかに再現。お見事!


…などという感想もあるので楽しみです。
最近の練習については

練習の雰囲気はいいです。
オンとオフがうまいこと使い分けられていて。
基本和やかでありつつも、
要所要所平田先生もギアが上がってきた感じです。


GOUGE団員さんありがとうございました。
…うん、平田先生。
トップギアに上げた演奏を心待ちにしています!











3. 三重県・中部支部代表
ヴォーカルアンサンブル《EST》
(混声47人・4年連続の出場)



昨年の1位団体。
もう揺るぎもしない実力団体ESTの出番です。


その力強い声と抜群の表現力。
海外のコンクールにも盛んに出場しており
「日本人の合唱」という枠から
踏み出している印象すらも受けます。


今年の課題曲はG1
そして自由曲は鈴木輝昭作曲
「無伴奏混声合唱のための リリケ アモローゼ」
(LIRICHE AMOROSE 古代エジプト恋愛叙情詩より)
3.Ah! Foss'io la sua schiava negra
(嗚呼! 余 彼女の黒人待婢となりて)
4.Te ne vuoi andare perche vuoi mangiare?
(貴方が立ち去りたいのは 食べたいからなの?)
6.Mi corichero a casa malato
(彼女め 非道い目に遭わせやがる)
(日本語訳:「私は家で病にふせる」)


古代エジプト人の恋愛模様をイタリア語で歌うこの曲。
その音も鈴木輝昭作品らしく難易度が高いですが
それ以上に恋愛と官能性、ユーモアまでをも含んだ表現も
難易度が高い曲です。
これらの曲を選んだ理由は?
昨年と同じく、EST代表の野田さんにお聞きしました。

課題曲はルネサンス音楽を原点とする《EST》としては、
迷わずG1のビクトリアを選択しました。
音的には昨年のジェズアルドほど難しくありませんが、
テノールは音域的に難所の多い曲です。


自由曲は昨年に引き続き鈴木輝昭作品です。
私ども《EST》はコンクールの自由曲として、
日本に紹介すべき海外の現代作品と、
海外に紹介すべき日本の現代作品を
二つの柱として選曲してきました。
前者としてはフェリシアーノやウィテカー、
カモレットやロペズ・ガビランの作品を、
後者としては鈴木輝昭氏の「詞華抄」「情燐戯画」や
千原英喜氏の「阿知女作法」などを取り上げてきました。
今年は後者で、無伴奏混声合唱のための
「LIRICHE AMOROSE」から3曲です。
昨年から3年計画でジョヴァンニレーベルより
「鈴木輝昭混声合唱作品集」を発売すべく
録音を続けておりますが、
「LIRICHE AMOROSE」全曲は今年録音し終わりました。


そうそう、ジョヴァンニさんで
鈴木輝昭作品を録音されていることは
昨年も書かれていましたね。
そしてESTにとって鈴木輝昭作品は
並々ならぬ思い入れがあるようです。

昨年の5月にヨーロッパ6大コンクールの一つ
フランス・トゥールの国際コンクールでグランプリをいただき、
今年の5月には6大コンクールのグランプリ団体が一堂に会する
ヨーロピアン・グランプリ(ブルガリアのヴァルナで開催)に
参加させていただきましたが、
そこでも日本の現代曲の代表として演奏しました。


鈴木作品は世界に誇るべき日本の現代曲だと思っています。
だから今まで海外のコンクールに参加した時は
必ず鈴木作品を演奏曲に入れてきました。
(2001年度ドイツのマルクトオーバードルフ、
2006年度イタリアのアレッツォ、
2009年度フランスのトゥール、
2010年度ブルガリアのヴァルナ)
鈴木作品はコンクールでも高校の部を中心に
たくさん取り上げられますが、
中には十分でない演奏も見られます。
鈴木作品はまずきちんと楽譜に示されたことを実現した上で、
その内容に迫る演奏をすれば
とても美しくそしておもしろい曲になると思います。
今年取り上げた「LIRICHE AMOROSE」は
古代エジプトのパピルスや土器の破片に
ヒエログリフで書かれていた恋愛詩の断片を
イタリア語訳したものに作曲されており、
昔も今も変わらぬ男女の恋愛の機微を
官能的に表現した作品です。
私達の演奏が「何か難しそうな曲」というレベルから脱却し、
この曲のおもしろさを伝えることができるよう、
頑張りたいと思います。


そう!この「LIRICHE AMOROSE」は
ちゃんと演奏すれば難解な印象は無く、
大変魅力的で面白い曲だと私は思っています。
技術力・表現力、共に高いESTが「LIRICHE AMOROSE」を
どんな風に表現してもらえるか、大変楽しみですね。
(自由曲1曲目の男声タメ息からして・・・笑)

今年は関西での全国大会です。
《EST》が全国大会ではじめて金賞をいただいたのは
前回の関西での大会、滋賀びわこホールの大会でした。
あれから一回りしたのですね。
ESTも人数が増えてA部門からB部門に移りました。
ESTが初めて全国大会に出場したのはびわこの前年、
郡山での全国大会でしたが、
実はその時の自由曲は昨年私どもが演奏した「詞華抄」IIでした。
その年は銅賞でしたが、昨年同じ曲で金賞をいただき
リベンジ?を果たしたわけです。
鈴木作品に始まり鈴木作品に戻ってきた8年間と言えるでしょう。
今年の兵庫県立芸術文化センター
とても音響の良いホールだと聞いています。
全国の皆さんにお会いするのを楽しみにしております。

野田さんありがとうございました!
そして写真も送っていただきましたよ。



今年5月にブルガリアのヴァルナで開催された
「ヨーロピアン・グランプリ」に参加した際に、
ソフィアでコンサートをしたのですが、
ソフィアの大統領府前で撮った記念写真です。


さすがEST、国際的ですね!





(つづきます)