今回は5位から1位まで。
(2010年に発行された本、ではなく
2010年に読んだ本です)
- 作者: 高殿円
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/06/24
- メディア: 単行本
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悪質な税金滞納者から取り立てを行う特別国税徴収官、
略してトッカン。
冷血無比で鬼のような上司:鏡雅愛の補佐として働く、
25歳の鈴宮深樹。
ペットの高級犬にまで差し押さえする上司に
ついていけないものを感じながらも、職務に奔走する!
「トッカン」、全く知らない著者だったものの
いやこれは面白かった!
税金を滞納する側、徴収する側、
それぞれの立場がよく描かれている。
物語の運びもテンポ良く、
税金というものを嫌味なく知ることが出来るし、
国税局というものに限らない良質の
「お仕事小説」であり、成長物語である。
登場人物が実は…というのはお約束かもしれないが、
それをここまで巧くやられたら唸るしか無い。
どん底まで打ちのめされた主人公が、終盤に立ち直る姿、
そして登場人物の別の一面にホロリとさせられてしまう。
おっさんの私にも染みる本だけど、社会人の若い女性へ、
特にエールをおくる本なんじゃないかな!
第4位 山田詠美「学問」
- 作者: 山田詠美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/06/30
- メディア: 単行本
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山田詠美の新たな代表作、と評されるだけはある素晴らしい作品。
高度成長期始め、東京から静岡へやってきた仁美と
地元の3人の子どもの交流と成長を描いたもの。
登場人物に食欲、睡眠欲という欲求をそれぞれ強く配し
性の目覚めも描いていく。
仁美が憧れる心太の「人たらし」という性格模写が秀逸。
最後にこの心太が
仁美にあることを言いかけて止めてしまう箇所があり、
読み終えてからも「心太は何を言いたかったのか?」
と謎だったのだけど
作者と吉田修一との対談で、なるほど、と思った。
http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/366813.html
何に「恥」を感じるかは人それぞれだと思うけれど、
欲求をコントロールできない自分を意識する瞬間は、
その最右翼かも。
たいていは「コントロールできない」という意識を曖昧にして
恥の感覚から逃れようとしているのかもしれない。
そしてこの対談での
「書くことより書かない部分のほうが重要」
という作者の言葉も響くが
それはもちろん「単純に書かない」のではなく、
「書いている部分の終わり」で
いかに読者をジャンプさせるか、なのかなと思った。
読後、女性で、自分とこれほど違う主人公の仁美が、
自分の中に生きている感覚。
これこそ物語を読む喜び。
第3位 タチアナ・ド・ロネ「サラの鍵」
- 作者: タチアナ・ドロネ,Tatiana de Rosnay,高見浩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/05
- メディア: ハードカバー
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私の詳しい感想はコチラ。
http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20100818/1282080493
弟を探す前半クライマックスも凄かったが、
後半の「人の不幸を踏み台にした自身の幸せ」という
テーマも深い。
深刻な内容というだけではなく、
巧みな小説技法にも惹きつけられた作品でした。
第2位 宮部みゆき「小暮写眞館」
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/05/14
- メディア: 単行本
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閉めた古い写真館をリフォームすること無く、
そのまま住居としてしまった家族。
息子の男子高校生:英一くんを中心に話が進む。
その英一くんが
にわか「心霊写真専門家」としてしぶしぶ乗り出すのだが、
解決の過程でのさまざまな人々の暮らし、
その心の描き方が熟達の名噺家の語り口。
特に4歳で亡くなった娘さん「風子」ちゃんに関わる話は、
最近の周囲ともリンクしていて・・・。
西宮の全国大会への行き帰りにこの本を読んだのだけど
何度も涙を抑えることが出来ず恥ずかしかった。
英一くんの大変素晴らしい成長小説でもあり
(ラストの2つのカメラ。あのギミックはヤバイ。素敵過ぎる)
鉄道小説でもあります。
「鉄道は人間と人間を繋ぐものだ。
だから鉄道を愛する者は、けっして人間を憎めない」
なんて言葉、
「そうかな?」とも思うけど(笑)、いいよね。
多くの人に心から勧めたい作品でした。
ただ.、
「芸術は人を待ってくれないけど、人は芸術を待つことはできます」
…という言葉はそのままの解釈でいいのかな?
みなさんはどう解釈します?教えてプリーズ。
第1位 藤谷治「船に乗れ!」
- 作者: 藤谷治
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2008/10/01
- メディア: 単行本
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- 作者: 藤谷治
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2009/07/02
- メディア: 単行本
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- 作者: 藤谷治
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2009/11/05
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私の詳しい感想はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20100502/1272810356
違う世界へ誘ってくれる、
世界を広げてくれるのが読書の喜びだとしたら
2010年、私にとってこの本を越える本は無かったということ。
(もちろん本屋大賞1位の「天地明察」も読みましたよ)
いいシーンはいっぱいあるんですけど、
ラスト近くにチェロの恩師が自ら技能の限界を見せるシーンが
個人的に大変好きです。
また時間のある時に少しずつ読み、
文中に流れる曲を聴こう。
何度も何度も。
それだけの深さと広さと、熱さがある小説だから。
次回はノンフィクション、その他の10冊を。